幕間 みんなで仲良く親睦会 よん!!
「「ではぁ~遊戯スタート!!」」
フクとセイは右手を天井に。人差し指を立てて、そのまま肩まで振り下ろして開始の宣言。
盤上遊戯が開始された。
「三、手下を倒したいし、ここかな」
——各々が、
「魔獣が仲間になりたそうに、こちらを見つめている。これは、仲間に出来るということか……」
——自作の盤上遊戯を、
「こいつ強いネ!? 最悪!! 死んだネェェェ!!」
——各々の心が赴くままに、
「やりました! 手下から村を解放しました!!」
——紆余曲折を経ながら楽しみ、
「この神器の攻撃力、強すぎないか!?」
——最終局面である魔王城に、
「クリティカル出ました!! ぃやったぁ!!」
——足を運ばせていった。
「魔王強すぎないか!? クソぉぉ! なんで僕の演じる人物はこんなに弱いんだァァ!! フレイムぐらいでこんなに損傷食らう奴に、勝てないなんて!! ムカつく! 現実の僕なら、絶対一撃なのにィ!!」
エンタクは両手で頭を掻きむしりながら、憤怒の感懐をまき散らす。
ほとんどの場合、演じる側よりも演じられる側の方が強くなりがちなのだが、エンタクに於いては全くの真逆らしい。
彼女がこの盤上遊戯内に実在したら、空を飛んで魔王城ごと空中から消し飛ばすだろう。
「よし、次は私よ! 体力は四割、私は水魔法師だから持久戦が得意。行けるわ!!」
次にミレナが魔王に挑む。
残りのターン数は二ターン。誰も魔王を倒せなかった場合、お金持ちの順で順位が決まる。現在の一番の金持ちはミレナだ。その次にフク。その下にシュウが居て、エンタクが一番お金を持っていない。
エンタクが魔王を倒せず憤怒したのも、お金を一番持っていなかったのが近因だ。
「よし、このままなら行ける!」
三人が固唾をのんで見守る中、ミレナは水魔法師ならではの立ち回りで、順調に魔王の体力を削っていった。のだが、
「うわあぁぁぁん! 相手から痛打の一撃食らったァァァァ!! 均衡が崩れて負けたァァァァ!!」
残りの体力が二割を切ったところで、魔王から痛打の一撃を食らってしまい戦線が毀壊。惜しくも敗北してしまった。
フクはミレナの敗北に安心したと息を整え、
「お二人とも、盤上遊戯を自分の感覚で遊んではいけませんよ。人物をしっかり演じなければ……」
勝ち誇ったかのように、鼻高に言った。
「なんだフク。随分と上から目線な物言いじゃないか。お前は僕より弱いんだぞ……そういうことは、僕より強くなってから言うんだな」
「エンタク様は知る筈もないですよね……何故、僕が闇魔法師を選んだのかを……」
エンタクは謎に自信満々なフクに、状況把握が出来ていないと指摘。だがフクはちっちっちっと口を鳴らし、状況把握が出来ていないのはエンタクの方だと笑って意趣返し。
「ん? 何が言いたい?」
エンタクは彼の趣旨が分からず、眉を顰めながら推問する。
「ねぇ、私さっきから思ってたんだけど、フクが魔王に掛けたベノムが、私達の行動が終わる度に、魔王の体力を地道に削ってるんだけど……まさか、フクが闇魔法師を選んだ理由って……」
その時、フクの趣旨を照察したのか。ミレナはゆっくりとフクの方を見ながら、びっくり仰天なことを言った。
「その通り!! よくぞ訊いてくれましたミレナ様! 僕が闇魔法師を選んだのは、魔王の体力を呪いで削り、自分のターンで楽々に倒す為だったんです!!」
フクはミレナに一礼をした後、ふんすと鼻を鳴らし、誇らかに腕を組んで胸を張る。
フクが闇魔法師を選んだのは、自分と違う魔法師でRPGを楽しむ為ではなく、勝つ為の戦略的なものだったのだ。
今思えば、魔王の体力の削れ方が妙であった。フクが魔王の体力をメモする度、その顔を下品な笑顔に変えていたのも、そういった理由があったからなのだ。
遊び方の説明はするが、勝つための説明はしないところが狡猾というか、初心者への懇情がないというか。
「いまや魔王の体力は二割を切っています! そして、エンタク様とミレナ様は一回休み!! イエギク君は、魔王城前の敵で大きく体力を削られ、挑むどころの話ではない!! そして僕は万全の状態!!」
フクはそう言いながら右手を前に、左手を頭の上に突き出し、
「この勝負!! 貰いました!!」
歌舞伎のようなポーズをとって宣言する。
もうここまでくると、負けフラグかと思える程の吹き捲りだ。
「今の最下位はエンタク様ですよね……僕が勝った暁には、僕とセイが作った服を着て、皆の前で仮装してもらいますよ!!」
もう勝った気でいるフクは「これですね……」と言って、横に置いている布の包から衣装を取り出した。
その衣装とは、
「嫌だ嫌だ!! なんだその服は! そんなの着たら、ただの変態じゃないか!! クソ! あの神器さえ買わなければ!! 二位にはなれたのに!! 屈辱だァァァァ!!」
エンタクが青ざめ拒絶反応を示す程の、布面積の少ない破廉恥なものであった。
例えば、胸や尻が横から覗けてしまうチャイナドレスのような衣装や、恥部しか隠せていないビキニのような衣装やらだ。
他にもあるが、挙げると切りがないので、これ以上は言葉にしないでおこう。
とにかく、趣味趣向だけに振り切って作ったかのような衣装ばかりである。
「ふ! ふ! ふ! は! は! は! 現実と盤上遊戯は違うんですよ!! エンタク様!! フゥーハハハ!!」
エンタクの深甚な動揺の仕方に、フクは天井を仰ぎながら、ダサすぎる決め台詞を吐いて哄笑する。その後すぐにミレナが、
「普通、現実と盤上遊戯じゃなくて、盤上遊戯と現実は違う、だけどね……」
と、苦笑いしながらツッコミを入れた。
ミレナも自分と同じように、ダサい決め台詞だと思ったのだろう。彼女が言った通り、反対であったらまだ様にはなっていたはずだ。
「流石にここからは勝てない、よな……」
シュウはどうしたものかと、息を吐きながら考え込む。
ここから勝つには、痛打の一撃を連続で出すという、針に穴を通す以上のミラクルを成し遂げなくてはならない。
「無理ですよイエギク君。君は今弱っているんですよ。宿屋で泊まって、帰ってこられる程の行動も残ってません。その状態で、魔王を倒すなんて不可能です」
「うーん。まぁでも、結局三位になるんだし、もう一度闘ってみようかな……」
「いいんですか? 魔王の体力を削った分、僕が魔王を倒すのを楽にするってことですよ? もしかしたら、僕が魔王から痛打の一撃を何度も食らって、負けるって可能性も、無い訳じゃないです。それでも、戦うんですか……?」
諦めるべきだと諭して来るフクに、シュウは向になって魔王に挑もうと腹をくくる。そのシュウに、フクは更なる追い打ちを掛ける。が、
「忠告ありがとよ。でも、勝てるかもしれないんだったら、そっちに賭けてみたくなるのが心情だろ」
シュウはそんな脅し文句には屈しないと、打って出た。
そこまで言われては、寧ろワンちゃんを狙って魔王に挑むのはやめてと、言われているように聞こえてくる。
狙っても狙わなくても、最下位になることは無いのだ。なら、一位を狙ってこそだろう。
「そうですか。ではどうぞどうぞ」
シュウのツッパリに、フクは両手を魔王城の方へ向けて差し出し、紳士っぽく一揖する。
シュウは実力を運で上回ってやると、心の中で意気込みながら魔王城に入った。
そうして、魔王の体力を順調に削っていったシュウ。ただ、フクの言った通り、万全の状態ではないシュウの班——パーティーでは、二割を切ったとはいえ、魔王を倒し切るまでには至らなか——、
「クソ、流石に負けたか……割と善戦したんだけどな」
パーティーの全員が体力の二割を切っている。そして、魔王の次の攻撃は全体攻撃だ。ここで体力の回復に回れば耐えられるが、それでは結局、戦況が後手後手になるだけ。
「惜しかったわねシュウ」
「イエギク君、なかなか盤上遊戯が上手いじゃないですか。正直、初めてだっていうのに驚きましたよ……」
そう言って、善戦したことを褒め称えて来るミレナとフク。
初めての盤上遊戯にも関わらず、うまく立ち回れたのは生前、テレビゲームでRPGを嗜んだことがあるからだ。
暇な時は、世話を焼いてくれた仲間とよく二人で遊んでいたか。
——流石に万事休すか……
シュウは心の中で諦観した。
残り一割の体力である魔王。それに対して、こちらは全員の体力が二割を切った満身創痍。ここから勝つには痛打の一撃を二連続で食らわせるしか——、
「ん? いや、まだあるぞ……痛打の一撃を二連続で出したら、ワンちゃんある」
諦観し、却って第三者目線で状況を見れた事で、シュウは活路を見出すことに成功した。
強力なアタッカー——火魔法師の体力を二人で回復し、その火魔法師で二回痛打の一撃を出せば、魔王を倒し切れる。
「流石に二連続は無理ですよ。約五十分の一を二回も……確立にしたら、二千五百分の一ですよ? 流石に無理です無理です」
フクはそんな超展開はあり得ないと、首を左右に振って水を指して来る。
だが、そんなことなど百も承知だ。
「やってみなきゃ分からんぜ!」
——ええい儘よ!! 当たって砕けろだ!!
シュウは考えた通りに、火魔法師を回復させ、二回連続で出すことを敢行する。
「お! マジで出た!!」
先ず一回目。七面サイコロで七を二個出すことに成功する。
「すご!! あと一回だせば、逆転勝利よシュウ!!」「行けシュウ! 一位になってくれ!!」
シュウの敢行に、ミレナとエンタクは他人ながら嬉しそうな表情で興奮。
フクは頭を抱えて「マジ!? やばいぃ!」と、血相を青ざめさせる。
ミレナとエンタクは前のめりになって、シュウの手を見つめた。
相分かった。
——勝利の女神は、運は! 俺に味方してくれている!!
魔王の全体攻撃で、仲間の魔獣が一体戦闘不能に。残ったのはシュウと水魔法師に、件の火魔法師だ。
——ここで二度目の痛打の一撃を繰り出し、魔王を倒して一位になる!!
勢いに身を任せて、シュウは火魔法師以外を通常攻撃にしてしまった。
そして、七面サイコロを二個振り、ふり、フリ——、
「一と二、負けました」
受け入れられない現実——痛打の一撃が出なかったことに、シュウの頭の中は真っ白になった。
勝利の女神は、運は、シュウに味方などしてくれてはいなか——、
上げた後に下げる——興奮させ、燦爛たる希望を見せられた後に、絶望の淵に叩き落とされた事実。どちらかといえば、弄ばれたと言った方がいい。
「惜しい! 倒せると思ったのにね!!」「……期待してたけど、ダメだったなシュウ」
最後の最後で石ころに躓いてしまったシュウに、ミレナとエンタクは慰労の言葉を掛ける。その後、エンタクだけが「諦めて仮装するか、クソぅ……」と、肩を下ろして諦観した。
「ひやひやしましたよ」
フクはそう言って、頭の上に乗せていた両手をだらりと降ろした。それからフクが
「流石に二回連続はなか——」と、続けて喋ろうとした。その時だった。
シュウがダメージを計算しようと、魔王の札、武器の札、駒を魔算機に乗せてオドを込めると、
「ん?」
魔算機から『この神器で通常攻撃した場合、一定確率で、相手を眠らせることが出来ます。計算を開始』という魔法文字が浮かび上がって来たのだ。
当然、未だに文盲であるシュウには何が浮かび上がってきたのか、いまいち読むことができない。
「フク、これなんて——」
シュウがどういった文字が浮かび上がってきたのかと、フクに訊ねるよりも早く、魔算機による計算結果が魔法文字として浮かび上がった。
——その内容とは、
「は!?」
「魔王を眠らせることに成功しました、だって……」
——まさかまさかのものであった。
叫んだのはフク。教えてくれたのはミレナだ。
魔王の攻撃は来ず、シュウはそのターンで敗北することなく生き残った。
——勝利の女神は、運は、シュウに味方してくれていたのだ!!
ただ上げて下げた後にまた上げられたので、弄ばれてはいる模様。
「え? まさか、これって勝てる!?」
「多分。だって、睡眠状態のときって、損傷の値って二倍になるって話よね?」
「確かその筈、それで睡眠は損傷を与えなければ、二行動分続く」
俄が過ぎる出来事に、シュウはミレナ達の目を一人一人見ながら、確かめるように質問する。その焦っている彼に、ミレナとエンタクは優しく導くように教えた。
「いや!? え!? なんで!? は!? おかしいでしょ!? 百分の一ですよ!! てか、なんで痛打を二回出すより、凄い確率引いてるんですか!? 五千分の一!! え!? はぁ!?」
フクが目を泳がせながら惑乱する中、シュウは思索の大海原にダイブした。
一ターンでは最高火力を以てしても、魔王を倒すことは出来ない。
攻撃を一回でも食らわせてしまえば、魔王は目を覚ます。
眠っている時のダメージが二倍になるのは、最初に攻撃した者だけ。
目を覚ましたターンは攻撃が来ない。
最速の火魔法師以外は、乱数で行動順が決まってしまう。
故にどうするか。冷静に熟考するのだ
一分程度の沈黙。海面から浮上したシュウは、行動に出た。
「よっしゃ! 魔王撃破!! 一念岩をも通す! すげぇ運が良かっただけだが、勝ちは勝だ!!」
熟慮断行の末、シュウは無事勝利した。
事の顛末を話そう。
彼が取った行動とは、先ず火魔法師の攻撃力を上げるための集中だ。
これをすることにより、次の攻撃によるダメージが上がる。
さらに神器の効果を使って、火魔法師の攻撃力を上げる。
二ターンだけ攻撃力が上がるという微妙な効果だが、今はあってよかったと思える。
最後にフロストウェア——氷魔法の付与だ。
これで、ダメージが加算される。
現実なら、火魔法師に氷魔法の付与など無意味に等しいが、これはRPGなのでそこまで細かくはない。
そして次のターンに、最高火力の攻撃でフィニッシュ。
——シュウは万全の状態ではないパーティーで見事、魔王を倒すに至ったのだ!!
——逆転勝利! 一位だ!!
「いぇぇぇい!! シュウ最高ォォ!! ナイス逆転勝利ィィ!!」
「おう! ナイスありがとな!! 最高だ!!」
ハイタッチを催促してくるミレナに、シュウは快然とハイタッチをして答える。
シュウの思考回路は、魔王を倒した達成感でショート。放心状態だ。現実とは思えない逆転勝利だった。
「他の順位はお金順だし、ミレナは二位か……」
「うん! お金順だと、私が二位になるわね! フクが三位で、エンタクが四位かな?」
シュウに嬉しそうに返事をした後、ミレナは最下位のエンタクを見て言う。
彼女の横では、シュウに横取りされたことに「なぁぁぁぁぁ!!! なんでェェェェ!!!」と、発狂するフクが。
順位はシュウ、ミレナ、フク、エンタクの順で決定した。
結果論だが、魔王を倒す為に、アイテムを買いすぎてしまったエンタクの行動は、選択ミスだったと言えよう。そこの進退を見極めなければいけないところも、この盤上遊戯の面白い要素の一つなのだろう。
「シュウ! 僕を救ってくれてありがとう!!」
「うおっ!?」
突然胸へと、顔を埋めるように抱き着いて来たエンタクに、シュウは驚きの声を上げる。彼女はバタバタと足を動かすと、顔を上げて、
「横乳とか下乳とかがはみ出た服とか、ほぼ紐の下着を着せられる人形にはなりたくなかったんだ!! ありがとう!! シュウ!! 大好き!! 一生忘れないぃ!!」
顔だけでなく上半身をすりすりさせながら、更に強く抱き着く。
確かにあれらの衣装を着た姿を人前に晒すのは、恥辱過ぎて辛そうだ。
それにこんな感謝をされてしまっては、それに類する罰ゲームは選びづらい。というか選べない。
「なっ!? ちょっと!? なにべったりくっ付いてるのよ!」
「別にいいだろ! 減るものじゃないし!」
「そう言う問題じゃない!! 離れろぉぉぉ!!」
抱き着くエンタクに嫉妬して、頬を膨らませたミレナが引き離そうと介入。エンタクは「いやぁだぁぁ!!」と、子供の様に言い返して楽しそうに笑う。
それでも引き離そうとしてくるミレナに、エンタクはシュウから離れて逃亡。広間の中を走り回り、バレバレなシュウの後ろに隠れる。
「逃げるな! この!」
「いやぁぁ! 捕まえてみろ!」
捕まえようと手を伸ばして来るミレナから、エンタクはぴょんとジャンプをして逃げ、シュウを障害物にして避けまくる。
エンタクとミレナに周りをウロチョロされるシュウは、何も出来ずに振り回された。
「何やってんのよ!!」
「いや無理ですよ! あんなのされたら、誰も勝てませんって!」
「言い訳は聞きたくない!!」
その余所ではフクが、セイから盤上遊戯に勝てなかったことを詰責されていた。
勝ってしまってなんだが、先ほどの逆転をやられた側は一溜りも無いだろう。同情は出来ないが、理不尽な詰責ではある。
ようやく、エンタクとミレナの追いかけっこが終了。
二人は互いに胡坐をかいて——ミレナはエンタクを睨み付けながら。エンタクはその彼女の鋭い視線を、得意そうに聳やかしながら、身を寄せ合っていた。
「ねぇイエギク……エンタク様にエロい衣装を着るように命令してくれない! お願い! 後でお礼するからさ!」
「いや、別にいい」
近寄って来て、両手を顔の前で添えながら頼みごとをしてくるセイに、シュウは即答した。つまるところ、サキュバスなのでエロいことだろう、どうせ。
「そこを何とか! お願い! 催淫でエロい夢見せてあげるよ!! ちゅ!」
「もっとよくなった」「処女ビッチが」
——やっぱそうだった……
投げキッスをしてくるセイに、シュウと横から参加したフクが、視線を斜め下に外す。そんな二人の反応に、セイは「はぁ!?」と声を荒げ、
「女の子にそういうこと言うなよ!!」
指を差してツッコみをする。
シュウとフクは「子を付けるな、子を……」と、厳しい現実を突き付ける。そんな二人の反応に、またもセイは「おい! 正論とかモテねぇぞ!」と、ツッコミを入れる。重ねて、
「てかどうせイエギク! アンタこれから、罰ゲーム何にしようか悩むんでしょ! どうせ優柔不断で受け身男なんだし! 男らしく、私の言うこと聞きなさい!」
矢継ぎ早にシュウの痛い所を突っついていく。
「なんで俺が、優柔不断な受け身男だって分かった!?」
シュウはどうして分かったのか、反射的にセイに問う。
「典型的な、モテない男っぽいからよ! アンタは!!」
「————ッ!?」
セイは声高に答えた。
普通に傷つく。そして、傷ついてしまう本能に抗えない自分の弱さにも傷つく。
「そういうノンデリ発言したり、しても女だからって許されると思ってるから、性欲だけの男しか寄り付かないんだぞ、セイ」
そう言ってセイの痛い所を突っついたのは、エンタクだ。彼女は立ち上がると、お手上げのポーズで首を振る。
「エンタク様ぁ!! その正論は酷いですぅぅ!! 慰めでエロい衣装着て下さいぃぃ!!」
酷烈なことを言われて精神的にずたずたになったセイは、涙目になってエンタクに縋りつく。だがエンタクは「絶対やだ」と即答し、縋りつくセイを振り払った。
「うぅ……」と崩れ落ちるセイ。諦めて自分の班に戻っていった。
魚心あれば水心。因果応報。悪因悪果。
やったなら、やり返されても平気でいられる心胆を持たなくては。
「他も終わったっぽいな……」
どうやら、他の班でも盤上遊戯は終わったようだ。
広間が賑やかに——最下位が一位から、罰ゲームを受けている。
例えば、
「じゃあ、デコピンじゃな……本気の」
「ほん、き……?」
「そうじゃ。じゃから、はぁ食いしばれ」
ローガからデコピンを受けて悶えるラウラ。
「俺が背中の上に乗るから、それで腕立て伏せ百回だ!!」
「ふっ! はっ! ふっ!」
ボトーに乗られ、腕立て伏せを強いられるグーダ。
「ローコちゃん! 一緒にハクロウさんの顔に落書きしよ!」
「いいの!? やるやる!!」
「…………」
リザベートとローコから、顔に大きなバツとマル印を書かれるハクロウ。
「エンタク様の代わりなんて思ってごめん! めっちゃ可愛い!! リメアたそ!!」
「私は男だァァァァ!!!」
セイの着せ替え人形にされるリメア。
「じゃ、じゃあ、逆立ちして、コウエンタク内を一周、で……」
「分かりました!! うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
フィアンに命令され、逆立ちで移動するフェン。
罰ゲームが終わっていないのは、あとは自分達の班だけである。
「さぁシュウ。僕は助兵衛な衣装を着なくてもよくなって、今は気分がいい。ある程度の罰ゲームなら、快く受けてやるぞ……」
それはさておきだ。エンタクが件の罰ゲームをどうするか、胸を張って嬉々として尋ねてくる。
優柔不断と言われた手前、悩むのはなんだか嫌だ。
となれば、こういう時はフィーリングで、その場で思い付いたことにするべきだろう。
そう思惟したシュウが、挙げたものは、
「…………じゃあ、俺とミレナだけを離れに呼んだ理由を、この場で聞かせてくれないっすか?」
罰ゲームと言うには、少し緩いものであった。だが、
「え…………」
エンタクは瓢箪から駒が出てきたような顔で、シュウを見つめた。
——あれ? 逆にスケベな衣装を着るより、酷い罰ゲームに……
「ん、んん……言った手前、撤回するのは酷いしな……し、仕方ない、分かった……」
エンタクは目を逸らすと、頬を赤らめながら羞渋と喋る。そして、逸らした視線をシュウに戻し、大きく息を吸って、
「き、君とミレナだけ、離れに呼んだ理由は! えっと! シュウ! 僕と、昵懇の誓いを結んで!! パートナーになって欲しいからだ!!!」
頬だけでなく顔を真っ赤に染めて、シュウの罰ゲームを受けた。
受けた後、エンタクは「ん……」と声を漏らしながら、視線をもう一度逸らした。
「は……?」
「「「はぁ!?」」」




