幕間 みんなで仲良く親睦会 さん!!
「それじゃあ、ご飯を一通り食べたところでェェェ!!」
「皆さんには、自作の盤上遊戯で遊んでもらいたいと思いまァァァす!!」
座卓の上に置いてあった食器を給仕の者達が下げると、フクとセイが同時に広間の前に出る。それと同時、廊下の奥からガチャガチャという音が聞こえてきた。
盤上遊戯に使う、駒やサイコロなどの細かい物が入った箱か何かが、鳴っているのだろう。
その後すぐ、八人の従者が盤上遊戯と木の棒が入った木箱——おみくじを持って広間の中に入って来た。
六人は持ってきた盤上遊戯の木箱をセイとフクの前に。もう二人はフクとセイに一つずつ、おみくじを渡す。そして彼らは広間にいる者達に一礼して、退室した。
「まず最初にくじを引いてもらいまぁす!」
「偏らないようにアンコウエン側と、訪れた側で引いてもらいまぁす!!」
フクとセイがおみくじを両手で抱えて、アンコウエン側と訪れた側で別れるように促す。その途中、
「「どんにゃ、盤上遊戯なんだぁ? おぉ?」」
酩酊状態で肩を組んでいるグレイとマサムネが、ふらふらと互いを支えながら質問した。
一言聞いて分かった。グレイはもう、盤上遊戯を遊べるほどの理性を持っていない。やっぱり大丈夫ではなかった。クウェル達に任せるのではなく、止めさせるべきだったか。
「うっわ……アンタもう、呂律回って無いじゃん」
「あぁ!? 回ってりゅよ、耳おかしいんきゃ? にゃぁ、グレイさん!」
シノがマサムネとグレイの酔態を見て、引き気味に指摘。それに対し、マサムネは明らかに回っていない呂律で否定。続けざまにグレイも、
「回ってりゅか、回ってないかじゃ、回ってりゅなぁ!」
真っ赤な顔で便乗。酔っているか酔っていないかなど、瞭然としている。
そういえば何故、酔っ払いは酔っていないとやせ我慢するのであろうか。恐らく、人類では一生かかっても解けない謎だろう。
「はぁ、はいはいアタシが悪かったよ……」
シノも同じことを察したのだろう。付き合っていられないと、お手上げのポーズをとって咨嗟。謝ることで面倒な会話を完全遮断した。
「ではくじを引いてもらう前に、どういった盤上遊戯なのか、ざっと説明しますね」
どういったものなのか訊かれ、説明するには丁度良いと、セイは足元に置かれていた木箱を開け始める。そして中から、俯瞰的に描かれた地図を取り出した。
蝶番によってくっ付いた二つ折りの板材の上に、絵の具で描いた手作りの地図だ。中々に絵心はある。
セイは右手で木箱を持ち、左手で地図を手に。当然片手だけで地図を持てない為、横に居るフクに「片方持って」と指示する。
そうしてセイはフクと二人で地図を持ち上げ、
「今回遊ぶ盤上遊戯は、アンコウエンの宗教観と、有名な童話の世界観を混ぜて作った、複数人でやる役割演技型です!!」
盤上遊戯の説明を始めた。
役割演技型とは、中々面白そうだ。広大なマップの中を、駒になり切って遊ぶ盤上遊戯である。所謂RPGというやつだ。
「有名ってことは、あれか!」
「勇者が魔王を倒す、あれだよね?」
楽しそうに互いを見合うハオとローコが、感興してしまうことを言ってくれる。
「そうそう! ただ今回は複数人でやる盤上遊戯なので、先に魔王を斃した人が勝になります!!」
そして、その二人の発言をフクが肯定してくれたことで、シュウの感興は凋衰されずに済んだ。
勇者が魔王を倒すなど、王道中の王道ではないか。
それを中世後半から近世のような時代の異世界で、盤上遊戯として遊べるとは。それもアンコウエンの宗教観という、異世界テイストが加味されたものとなれば、感興がより興起してしまうというものだ。
——正直言って、すごく楽しみだ。
「…………?」
ふとシュウの視界に、列に並んでいないバーバラとフロリナが入った。
残り物には福があるという考えなのだろうか。
「アンコウエンの宗教観というのは?」
「道中、所謂雑魚敵が現れるのですが、その雑魚敵が魔獣だったり、人類の賊だったり、魔人だったりします。どれも基本的には撃退になりますが、撃退した魔獣の中で、偶に仲間に加わってくれる魔獣がいるんです、そこがアンコウエンの宗教観ですね」
「その魔獣や、各地にいる人類を仲間に加えて班を組んでもらい、お金を稼いだり、強力な神器を手に入れたりして、魔王がいる魔王城へ向かってください」
尋ねるフィアンに、セイが詳述。彼女に続いてフクが、盤上遊戯の遊び方を叙述する。
魔獣が仲間に加わってくれるというのは、あまりない発想だ。
人を仲間にするのか、魔獣を仲間にするのか。人だけのパーティーで行くのか、自分以外を魔獣だけのパーティーにするのか。或いは、人と魔獣を併合したパーティーにするのか。
更に、人は人ならではの。魔獣は魔獣ならではの長所と短所があれば、幅広い戦術が組めそうだ。
幅広い戦術が組めるとなれば、自分ならではのやり方で盤上遊戯を遊べるという証左でもある。RPGの良さが組み込まれた、面白い盤上遊戯であることを願いたい。
「すっごく面白そうですね!」
「だね、リザベートお姉ちゃん! 疑似的だけど、一度は魔獣を調伏したいって思ってたから、早くやりたいです!!」
リザベートとローコも自分と同じく、説明を聞いて感興したらしい。
二人とも目を燦爛と輝かせて嬉笑し、身体をそわそわさせている。相当楽しみなのだろう。
彼女達だけでなく、他のメンバーも面白そうだと言いたげな表情だ。
早くやりたい気持ちは充分に分かる。
そんな時、俄にフクが「ですが!」と、逆接を唱え、
「ただ遊ぶだけでは、すこーし物足りませんよね」
「と言う訳で、最下位の人には、一位の人から一つ、お願いを聞いてもらいまぁぁぁす!! まぁ、罰ってことですね! あ」
目を瞑って人差し指を振り、何やらありそうなことを呟く。そして、セイが横取りするように右手を前に突き出し、フクの含みの内容を吐露した。
最後に「あ」と声を漏らしたのは、右手に持っていたおみくじを落として、中にあった木の棒をぶちまけてしまったからだ。
セイのような調子に乗った横取りはやめよう。
「ほうほう、流石に無理な願いは駄目じゃろ?」
床にぶちまけられた全ての木の棒を、ローガは一弾指で拾い上げると、罰ゲームの内容を借問する。拾い上げた時の手の速さは、残像が生まれる程だ。
それを見たエンタクの胸襟は『年下が多いからって、すぐ格好つけやがって……』という呆れで溢れかえっていた。
「はい、出来る範囲のお願いですね」
ローガに答えるフク。
出来る範囲というのは、随分と抽象的なことである。
フクとセイとはあまり会話してこなかったが、エンタクに布面積の少ない服を着せたりする二人だ。
二人が一位になった場合、例えばそう、最下位が女性なら布面積の少ないスケベな衣装を。男性なら偏奇で恥ずかしい衣装などを、無理矢理着させたりするのではないのだろうか。
フクとセイが催したイベントの盤上遊戯というのも、何だか裏がありそうである。
「罰か! 面白そうじゃねぇか!!」
「絶対俺が一位になってやるぜ!! ウッピョォォォォォ!!」
「一位になってこそ、警備隊の隊長だ!!」
「アタシも、やるからには一位ネ!」
見た目からでも分かる負けず嫌いのグーダ、ボトー、フェン、ラウラの四人が、やる気十分な態度で心境を吐露する。
この四人が一位になった場合、筋トレなどの体力を使う罰ゲームを強いられそうだ。
「一位は分かったが、他の順位はどう決めるんだ?」
「お金を持っているかいないかです!」
盛り上がっている途中、腕を組んでいたハクロウがフクとセイに借問。フクがざっと答える。
「英雄の次に金持ちが上か。社会の縮図だな」
「あ、はは……エンタク様、面白い冗談ですね……」
その順位決めにエンタクは腰に手を当てて、洒然と的を射るように呟いた。
彼女の正確な射には、順位決めのやり方を決めたであろうセイも苦笑いで返すしかない。あとフクもだ。
「今回は初回ですし、一人二十五行動くらいにしましょう」
「その分魔王も弱くなるので、安心してくださいね」
気を取り直してと、咳払いして言うフクにセイが続く。
そんな時、バーバラが右手を上げて、
「あの、申し訳ないですが、私とフロリナ様は遠慮させていただきます。横から観覧していますね」
「ごめんなさい、セイお姉ちゃん。フクお兄ちゃん……」
シュウが先刻、疑問に思ったこと——伏線が回収された。
頭を下げて謝罪するバーバラに、フロリナも頭を下げて謝罪する。
あぁだからか。盤上遊戯に参加しないから、くじ引きの列に並んでいなかったのだ。
シュウは胸襟で納得した。
だがそうなると、次なる疑問が浮かび上がって来る。それは、何故参加しないのかというものなのだ。フロリナの年齢的には、喜んで遊びそうなものなのだが。
「気にしなくていいですよバーバラさん、フロリナたん」
「フロリナたそは、めちゃ可愛いから許しちゃう!」
謝られたフクとセイは、とんでもないと首を振って返答する。
可愛いものや美しいものには目が無いのが、フクとセイである。可愛いは正義と、本気で思っているタイプだ。
「なんで二人は参加しないの?」
「フロリナは生物以外を視認できなくてな……だからだ」
先程シュウが思った疑問を、ミレナがエンタクに向かって代弁する。それをエンタクは、フロリナを憐憫するような顔で復答した。
なるほど。食事の時、一人で食べることが出来るはずのフロリナが、バーバラに食べさせてもらっていたのも、生物以外を視認できないからなのか。
フロリナの過去に何があったのかは知らないし、知るには関係値が浅すぎるが、エンタクが憐憫の感情を露わにしていたところから察するに、惨憺たるものだったのだろう。
「そうだったんだ。ごめん、フロリナ……」
「いえ、気にしないでください! エルフ様!」
ミレナもシュウと同じ結論に至ったのか。フロリナを見て深甚と謝る。その彼女に、フロリナは首を振って心配ないと主張した。
今はフロリナが楽しく生きていられるのだと信じたい。
「じゃあ、くじを引いてもらい——ッ」
「申し訳ないですが、我々三人もパスで……」
紆余曲折あり、ようやっと班分けが始まるという時に、ケインが前に出て来た。
彼の後ろには、爆睡するグレイとマサムネが。
言わんこっちゃない。マサムネが一緒に爆睡している為、まだマシに見えるが。
——本当に恥ずかしい酔態を晒しやがった、このおっさん。
「私が二人を見ておきます」
ケインが爆睡する二人を肩の上に乗せ、広間の奥の方へ運ぶさまを見たシュウは「グレイさん……」と、額に手を当てて大腐り。
同じくシノが両手を腰に当てて「これだから、酒好きの馬鹿は……」と、首を左右に振ってため息を零した。
「じゃあ、それぞれ四人の班に分かれてもらいまぁす!!」
「それでは、一人ずつ順番にくじを引いてください!!」
なんやかんやあってシュウ達は列に並びなおし、くじを引いていく。
シュウは三列目だ。その後ろにはミレナが。そしてくじを引く前、後ろにいるミレナが「シュウ?」と、背中を突っついて来る。シュウは「なんだ?」と、肩だけを後ろに向ける。
するとミレナは楽しそうに笑い、
「もし一緒の班になっても、手加減しないわよ」
宣戦布告してきた。
シュウは「当たり前だ。全力で楽しもうな」と、握り拳を出す。ミレナも「うん!」と握り拳を前に出して、シュウの握り拳に軽くぶつけた。
くじ引きの数字は、異世界文字で三だ。偶然かな。ミレナも三である。
——視点はほんのしばらくだけエンタクに映る。
そんな彼らの反対の列では、エンタクがくじを引こうとしていた。
どうやら、シュウが引いたくじの数字は三であるらしい。ミレナもついでにいるし、ここで3を引こう。そして、より親睦を深めたい。
——ええっと、3はこれか?
エンタクは俯瞰視できる傑出能力を用いて、木箱の中にある3を探す。それもフクに傑出能力を使っているのがバレないように、まさぐりながらだ。
「あ、エンタク様、傑出能力を使うのは無しですよ!」
ただエンタクが大好きなフクだ。彼女の思惑などお見通しだと言わんばかりに諫める。
「分かってる」
——と言いつつ、使っちゃうけどね。
ただ、そこで退かないのがエンタクだ。嘘を吐いて、3をスッと手に取った。
——ふふん、僕の勝だ……
——視点はシュウに戻る。
シュウの班はエンタク、ミレナ、フクの四人になった。
まさかの、食事で同じ班であった三人が、盤上遊戯でも一緒の班になってしまった。
当然、エンタクが上機嫌な理由をシュウは知らない。
「では、始める前に軽く説明を」
「役割演技型ということで、先ず皆さんには誰を演じるのか、人物を選んでもらいます」
全員が別れ、座すると、フクとセイは立ち上がって注目を集める。
「選べる人物は、六属性の魔法師の内一人。お手元にあるこの箱の中に、六色の人型の駒があると思います。火魔法師なら赤、風魔法師なら緑、水魔法師なら青、土魔法師なら茶、光魔法師なら黄、闇魔法師なら紫です。自分が選びたい魔法師の駒を取ってくださいね」
フクは木箱の中にあった、小物入れと書かれた木箱を取り出すと、見やすいように掲げながら説明を始める。
そして中から順繰りに、頭と胴体だけの六色の簡易駒を、一つずつ取り出して見せていく。
小物はバラバラではなく、種類ごとに仕切りで別けて入れてある。
「はいはい質問、同じ色の駒が二つずつしかないんだけど、同じ属性の魔法師を選んだらどうなるの?」
ハオは右手を上げて、気になることを質問する。
ハオのいる班はフェンとフィアンとユリアだ。ハオの問いにセイが「それは今から説明しますね……」と、前置きをして、
「三人以上が同じ属性の魔法師を選んだ場合も考慮して、駒が入っていた箱には、六色の布が同封してあります。その布を駒の首に掛けてもらえば、その色の魔法師として扱うことが出来ます」
簡易駒が入っていた箱から、簡易駒と同じ大きさの六色の布——マントを取り出して説明した。
「質問です! やっぱり、魔法師の属性ごとに、能力は違ってくるんですか?」
「はい! 能力値はそれぞれの魔法師ごとに違うので、長所を伸ばした方がよいでしょう。土魔法師なら防御、火魔法師なら火力、水魔法師なら両立といった感じですね」
今度はローコが手を上げて質問。フクが指を立てて復答する。
演じるキャラによって能力値が違うとは。例えば、火力の火魔法師なら防御の高い土魔法師を仲間に加え、タンクとして扱う事で、バランスの良いパーティーを編成することが出来るわけだ。
これは本格的な盤上遊戯が楽しめそうだ。
「僕は当然、火魔法師」
「私は水にしよ」
「じゃあ、俺は風で……」
「それじゃあ、僕は闇魔法師で」
エンタクは赤色。ミレナは水色。シュウは緑色。最後にフクが紫色の駒を取った。
やっぱり、自分と同じ属性の魔法師を選ぶものなのか。と、シュウが思った矢先だった。
エンタクがフクに、
「なんだ、自分と同じ火にしないのか?」
どうして同じ属性の駒を取らなかったのか問いかけた。
「これは役割演技型ですよ。何を選んだっていいんです」
ただフクはちっちっちっと口を鳴らし、顔の前で人差し指を振って反論する。エンタクは「まぁ、それもそうか」と納得した。
彼の言う通り、RPGなら自分と全く違うキャラを演じるというのもありだ。奇を衒うとはまた違うが、そういった遊び方もできるのがRPGのいい所でもある。
「ん?」
突として、自分が選んだ駒の裏側を見ると、そこには光の魔刻石が嵌めてあった。
——何に使うんだ? 暗い時の明かりとか? いや、そこに付いてるし、明かりなら嵌めて使う必要はないよな……
「皆さん、選びましたか?」
全員が演じる駒を選び終わった頃合に、フクとセイが小物が入っている箱を手に取って立った。
シュウは説明を聞き逃してはいけないと、思考を中断する。
セイとフクは、中から六面サイコロを取り出すと、
「では、誰がどの順番で動くか決めてもらいます」
「お手元にある、サイコロを二つ振ってもらい、その数が大きい順で動いてもらいます」
順番決めのやり方を説明する。
各々が言われた通りに、小物入れの箱からサイコロを二個取り出し、それを振って順番を決めていった。
「お、十」
「えぇ、八」
「マジか、四」
エンタクは十。ミレナは八。シュウは四が出た。
フクは「エンタク様、僕の分、振っといてください」と言って、エンタクに代行を頼む。
エンタクは「ん」と適当に返事をして、フクの代わりにサイコロを振った。出た目は、
「お、十一。一番おっきいぞ」
十一だ。
「ありがとうございます」
シュウ達の班は、フク、エンタク、ミレナ、シュウの順番になった。
「皆さん、順番は決まりましたね。では、駒を中心にある王城に置いてください」
セイが言うと、全員が各自で王城に駒を置いた。
「僭越ながら私とフクが、敵駒の配置と、札と、それに魔算機に魔変機を……」
それをフクとセイは確認すると、各班の元に足を運んで、魔物の札を特定の街のマスの上に置いていく。加えて箱の中にあった、文字が書かれた木製の札と、謎の模様が描かれた金属板を横に置いた。
「ちゃんと一位取りなさいよ……」
準備をする中途、エンタクと同じ班になったフクの耳元で、セイが囁く。
フクは「分かってますよ。余裕で一位を取ってみせます」と、セイに囁き返す。
果たして、彼らの目的は何なのか。今は彼らのみぞ——いや、彼らとエンタク、それにローガも知っている。
「特定の街や村には、僕たちが先程置いた、魔王の手下が居ます。魔王に占領された街って設定です」
「その手下を倒すと、住民たちから褒賞としてお金や、盤上遊戯を有利に進められる神器や道具が貰えたりするので、積極的に倒しに行きましょう」
「移動はサイコロを使って、出た眼だけ動いてください」
「王城から遠ざかれば遠ざかる程、敵は強くなっていくので、序盤は王城付近を、終盤は王城から離れた場所に移動していただければ、遊戯を楽しめると思います」
フクとセイは交互に補足説明をする。
シュウは練り込まれている盤上遊戯に、またもや胸中で『おぉ』と感嘆符を浮かべた。
「それでは先ず、遊戯の基本の動きを僕がお見せします」
フクはそう言いながら、サイコロを振る。
「五ですね……僕はここに行きます」
出た目は五。五マス移動して、右下にある街に近づく。
「移動すると、敵と遭遇します。王城付近なので、一番の箱ですね。敵は六種類。サイコロを振って、出た目の敵と闘っていただきます」
フクは小物入れの箱の中にあった、異世界文字で一と書かれた箱を取り出し、サイコロを振るう。
「一、スライムですね。一番雑魚です」
出た目は一。フクは箱の中から、裏面に一と書かれたスライムの札を取り出す。その下には、光の魔刻石が嵌めてある。そして、
「対戦の時の動きは、武器で攻撃する通常攻撃、魔法攻撃、武器と魔法を合わせた特技、回避、逃げるです。回避と逃げるは、確率です。全員初期装備はこん棒です。敵はスライムなので、魔法を使わず通常攻撃で……」
スライムを攻撃した。
思ったのだが、こういったRPGとなるとダメージの計算はどうするのだろうか。やはり、手動で計算するのだろうか。
シュウがそう思考していると、
「三とでましたね。スライムの体力は三なので、撃破です」
フクは謎の金属板——魔算機に、こん棒の札とスライムの札、そして駒を上に乗せてオドを込た。
すると何ということか。次の瞬間、それぞれの札に嵌めてあった光の魔刻石が淡く発光。同時に、魔算機の上空に赤色の二つの魔法陣——縦と横で球状の形をした魔法陣が、浮かび上がったのだ。
浮かび上がった魔法陣は不規則に回転。回転速度は次第に早くなり、ある時を起点に今度は減速。停止する。
都合、球状の中心に『三』という異世界文字が出て来た。
異世界ならではの計算方法だ。
シュウはその光景を瞬きをせず、釘付けになって見ていた。
やはり異世界ファンタジーというのは伊達ではない。素晴らしすぎて、異世界そのものを崇敬してしまった。
異世界ファンタジー恐るべし。
「敵を倒すと経験値が貰えます。経験値が一定数貯まると、強さが上がります。強さが上がると、体力、攻撃力、防御力、素早さ、オドの量、そして新たな魔法が覚えられます。逆に負けた場合、王城に戻されてしまい、更に一行動休みになってしまいますので、強い敵と会った場合や、自分が弱った状態の時は逃げるのが吉ですね」
フクは戦闘を終えると、自身の駒とスライムの札を、今度は魔算機とは違う別の金属板の上に乗せてオドを込めた。そうすると、また駒の魔刻石が淡く光り、駒を中心に赤い魔法陣が出現。先程と同じように、魔法陣が回転する。
また何かあるのか。シュウはそう思って属目したが、今回は何も起きずに魔法陣は消えてしまった。
何が起こったのかいまいちわからない。
「今回は倒してしまったので関係はありませんが、攻撃時、低確率で痛打の一撃というものが出ます。痛打の一撃が発動すると、防御力を無視して、攻撃力分の損傷の値を相手に与えることができます。痛打の一撃は七面サイコロを二個振って、二個とも七が出た場合のみ発動します。痛打の一撃が出た時は、魔算機ではなく手動で計算してくださいね」
フクの言葉から察するに、魔算機と呼ばれる板が自動的にダメージ計算をしているのだろう。スライムやこん棒、駒に嵌めてある魔刻石が光ったことから、それぞれの魔刻石で、何かしらのプログラムが組み込まれていたと類推できる。
恐らく、その組み込まれたプログラムを基に、魔算機がダメージを計算したのだ。
——痛打の一撃という要素もあるし、すっごく面白そうなんだが……
「説明はここまでです。分かっていただけましたか?」
そうやって動きのテンプレートを見せたフクは、質疑応答を設ける。質問は無し。
「もし分からないことがあれば、随時質問してもらっても構いません」
「私とフクが、随時お答えします!」
「「ではぁ~遊戯スタート!!」」
フクとセイは右手を天井に。人差し指を立てて、そのまま肩まで振り下ろして開始の宣言。
そうして、盤上遊戯が開始された。




