表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンリーズナブル  作者: 犬犬尾
第二章 アルヒスト攻防戦
77/112

幕間 みんなで仲良く親睦会 さん!!

「それじゃあ、ご飯を一通り食べたところでェェェ!!」


「皆さんには、自作の盤上遊戯で遊んでもらいたいと思いまァァァす!!」


 座卓の上に置いてあった食器を給仕の者達が下げると、フクとセイが同時に広間の前に出る。それと同時、廊下の奥からガチャガチャという音が聞こえてきた。

 盤上遊戯に使う、駒やサイコロなどの細かい物が入った箱か何かが、鳴っているのだろう。


 その後すぐ、八人の従者が盤上遊戯と木の棒が入った木箱——おみくじを持って広間の中に入って来た。

 六人は持ってきた盤上遊戯の木箱をセイとフクの前に。もう二人はフクとセイに一つずつ、おみくじを渡す。そして彼らは広間にいる者達に一礼して、退室した。


「まず最初にくじを引いてもらいまぁす!」


「偏らないようにアンコウエン側と、訪れた側で引いてもらいまぁす!!」


 フクとセイがおみくじを両手で抱えて、アンコウエン側と訪れた側で別れるように促す。その途中、


「「どんにゃ、盤上遊戯なんだぁ? おぉ?」」


 酩酊めいてい状態で肩を組んでいるグレイとマサムネが、ふらふらと互いを支えながら質問した。


 一言聞いて分かった。グレイはもう、盤上遊戯を遊べるほどの理性を持っていない。やっぱり大丈夫ではなかった。クウェル達に任せるのではなく、止めさせるべきだったか。


「うっわ……アンタもう、呂律回って無いじゃん」


「あぁ!? 回ってりゅよ、耳おかしいんきゃ? にゃぁ、グレイさん!」


 シノがマサムネとグレイの酔態を見て、引き気味に指摘。それに対し、マサムネは明らかに回っていない呂律で否定。続けざまにグレイも、


「回ってりゅか、回ってないかじゃ、回ってりゅなぁ!」


 真っ赤な顔で便乗。酔っているか酔っていないかなど、瞭然としている。

 そういえば何故、酔っ払いは酔っていないとやせ我慢するのであろうか。恐らく、人類では一生かかっても解けない謎だろう。


「はぁ、はいはいアタシが悪かったよ……」


 シノも同じことを察したのだろう。付き合っていられないと、お手上げのポーズをとって咨嗟しさ。謝ることで面倒な会話を完全遮断した。


「ではくじを引いてもらう前に、どういった盤上遊戯なのか、ざっと説明しますね」


 どういったものなのか訊かれ、説明するには丁度良いと、セイは足元に置かれていた木箱を開け始める。そして中から、俯瞰的ふかんてきに描かれた地図を取り出した。

 蝶番ちょうつがいによってくっ付いた二つ折りの板材の上に、絵の具で描いた手作りの地図だ。中々に絵心はある。


 セイは右手で木箱を持ち、左手で地図を手に。当然片手だけで地図を持てない為、横に居るフクに「片方持って」と指示する。


 そうしてセイはフクと二人で地図を持ち上げ、


「今回遊ぶ盤上遊戯は、アンコウエンの宗教観と、有名な童話の世界観を混ぜて作った、複数人でやる役割演技型です!!」


 盤上遊戯の説明を始めた。


 役割演技型とは、中々面白そうだ。広大なマップの中を、駒になり切って遊ぶ盤上遊戯である。所謂いわゆるRPGというやつだ。


「有名ってことは、あれか!」


「勇者が魔王を倒す、あれだよね?」


 楽しそうに互いを見合うハオとローコが、感興かんきょうしてしまうことを言ってくれる。


「そうそう! ただ今回は複数人でやる盤上遊戯なので、先に魔王を斃した人が勝になります!!」


 そして、その二人の発言をフクが肯定してくれたことで、シュウの感興は凋衰ちょうすいされずに済んだ。

 

 勇者が魔王を倒すなど、王道中の王道ではないか。

 それを中世後半から近世のような時代の異世界で、盤上遊戯として遊べるとは。それもアンコウエンの宗教観という、異世界テイストが加味されたものとなれば、感興がより興起こうきしてしまうというものだ。


——正直言って、すごく楽しみだ。


「…………?」


 ふとシュウの視界に、列に並んでいないバーバラとフロリナが入った。

 残り物には福があるという考えなのだろうか。


「アンコウエンの宗教観というのは?」


「道中、所謂雑魚敵が現れるのですが、その雑魚敵が魔獣だったり、人類の賊だったり、魔人だったりします。どれも基本的には撃退になりますが、撃退した魔獣の中で、偶に仲間に加わってくれる魔獣がいるんです、そこがアンコウエンの宗教観ですね」


「その魔獣や、各地にいる人類を仲間に加えて班を組んでもらい、お金を稼いだり、強力な神器を手に入れたりして、魔王がいる魔王城へ向かってください」


 尋ねるフィアンに、セイが詳述しょうじゅつ。彼女に続いてフクが、盤上遊戯の遊び方を叙述じょじゅつする。


 魔獣が仲間に加わってくれるというのは、あまりない発想だ。

 人を仲間にするのか、魔獣を仲間にするのか。人だけのパーティーで行くのか、自分以外を魔獣だけのパーティーにするのか。或いは、人と魔獣を併合へいごうしたパーティーにするのか。

 更に、人は人ならではの。魔獣は魔獣ならではの長所と短所があれば、幅広い戦術が組めそうだ。


 幅広い戦術が組めるとなれば、自分ならではのやり方で盤上遊戯を遊べるという証左でもある。RPGの良さが組み込まれた、面白い盤上遊戯であることを願いたい。


「すっごく面白そうですね!」


「だね、リザベートお姉ちゃん! 疑似的だけど、一度は魔獣を調伏したいって思ってたから、早くやりたいです!!」


 リザベートとローコも自分と同じく、説明を聞いて感興したらしい。

 二人とも目を燦爛さんらんと輝かせて嬉笑きしょうし、身体をそわそわさせている。相当楽しみなのだろう。

 彼女達だけでなく、他のメンバーも面白そうだと言いたげな表情だ。


 早くやりたい気持ちは充分に分かる。


 そんな時、にわかにフクが「ですが!」と、逆接を唱え、


「ただ遊ぶだけでは、すこーし物足りませんよね」


「と言う訳で、最下位の人には、一位の人から一つ、お願いを聞いてもらいまぁぁぁす!! まぁ、罰ってことですね! あ」


 目を瞑って人差し指を振り、何やらありそうなことを呟く。そして、セイが横取りするように右手を前に突き出し、フクの含みの内容を吐露した。

 最後に「あ」と声を漏らしたのは、右手に持っていたおみくじを落として、中にあった木の棒をぶちまけてしまったからだ。


 セイのような調子に乗った横取りはやめよう。


「ほうほう、流石に無理な願いは駄目じゃろ?」


 床にぶちまけられた全ての木の棒を、ローガは一弾指いちだんしで拾い上げると、罰ゲームの内容を借問しゃもんする。拾い上げた時の手の速さは、残像が生まれる程だ。


 それを見たエンタクの胸襟きょうきんは『年下が多いからって、すぐ格好つけやがって……』という呆れで溢れかえっていた。


「はい、出来る範囲のお願いですね」


 ローガに答えるフク。

 出来る範囲というのは、随分と抽象的なことである。


 フクとセイとはあまり会話してこなかったが、エンタクに布面積の少ない服を着せたりする二人だ。

 二人が一位になった場合、例えばそう、最下位が女性なら布面積の少ないスケベな衣装を。男性なら偏奇へんきで恥ずかしい衣装などを、無理矢理着させたりするのではないのだろうか。


 フクとセイが催したイベントの盤上遊戯というのも、何だか裏がありそうである。


「罰か! 面白そうじゃねぇか!!」


「絶対俺が一位になってやるぜ!! ウッピョォォォォォ!!」


「一位になってこそ、警備隊の隊長だ!!」


「アタシも、やるからには一位ネ!」


 見た目からでも分かる負けず嫌いのグーダ、ボトー、フェン、ラウラの四人が、やる気十分な態度で心境を吐露する。

 この四人が一位になった場合、筋トレなどの体力を使う罰ゲームを強いられそうだ。


「一位は分かったが、他の順位はどう決めるんだ?」


「お金を持っているかいないかです!」


 盛り上がっている途中、腕を組んでいたハクロウがフクとセイに借問。フクがざっと答える。


「英雄の次に金持ちが上か。社会の縮図だな」


「あ、はは……エンタク様、面白い冗談ですね……」


 その順位決めにエンタクは腰に手を当てて、洒然しゃぜんと的を射るように呟いた。

 彼女の正確な射には、順位決めのやり方を決めたであろうセイも苦笑いで返すしかない。あとフクもだ。


「今回は初回ですし、一人二十五行動くらいにしましょう」


「その分魔王も弱くなるので、安心してくださいね」


 気を取り直してと、咳払いして言うフクにセイが続く。

 そんな時、バーバラが右手を上げて、


「あの、申し訳ないですが、私とフロリナ様は遠慮させていただきます。横から観覧していますね」


「ごめんなさい、セイお姉ちゃん。フクお兄ちゃん……」


 シュウが先刻、疑問に思ったこと——伏線が回収された。

 頭を下げて謝罪するバーバラに、フロリナも頭を下げて謝罪する。


 あぁだからか。盤上遊戯に参加しないから、くじ引きの列に並んでいなかったのだ。

 シュウは胸襟で納得した。


 だがそうなると、次なる疑問が浮かび上がって来る。それは、何故参加しないのかというものなのだ。フロリナの年齢的には、喜んで遊びそうなものなのだが。


「気にしなくていいですよバーバラさん、フロリナたん」


「フロリナたそは、めちゃ可愛いから許しちゃう!」


 謝られたフクとセイは、とんでもないと首を振って返答する。

 可愛いものや美しいものには目が無いのが、フクとセイである。可愛いは正義と、本気で思っているタイプだ。


「なんで二人は参加しないの?」


「フロリナは生物以外を視認できなくてな……だからだ」


 先程シュウが思った疑問を、ミレナがエンタクに向かって代弁する。それをエンタクは、フロリナを憐憫れんびんするような顔で復答した。

 なるほど。食事の時、一人で食べることが出来るはずのフロリナが、バーバラに食べさせてもらっていたのも、生物以外を視認できないからなのか。


 フロリナの過去に何があったのかは知らないし、知るには関係値が浅すぎるが、エンタクが憐憫の感情を露わにしていたところから察するに、惨憺さんたんたるものだったのだろう。


「そうだったんだ。ごめん、フロリナ……」


「いえ、気にしないでください! エルフ様!」


 ミレナもシュウと同じ結論に至ったのか。フロリナを見て深甚しんじんと謝る。その彼女に、フロリナは首を振って心配ないと主張した。

 今はフロリナが楽しく生きていられるのだと信じたい。


「じゃあ、くじを引いてもらい——ッ」


「申し訳ないですが、我々三人もパスで……」


 紆余曲折あり、ようやっと班分けが始まるという時に、ケインが前に出て来た。

 彼の後ろには、爆睡するグレイとマサムネが。


 言わんこっちゃない。マサムネが一緒に爆睡している為、まだマシに見えるが。


 ——本当に恥ずかしい酔態を晒しやがった、このおっさん。


「私が二人を見ておきます」


 ケインが爆睡する二人を肩の上に乗せ、広間の奥の方へ運ぶさまを見たシュウは「グレイさん……」と、額に手を当てて大腐おおぐさり。


 同じくシノが両手を腰に当てて「これだから、酒好きの馬鹿は……」と、首を左右に振ってため息を零した。


「じゃあ、それぞれ四人の班に分かれてもらいまぁす!!」


「それでは、一人ずつ順番にくじを引いてください!!」


 なんやかんやあってシュウ達は列に並びなおし、くじを引いていく。

 シュウは三列目だ。その後ろにはミレナが。そしてくじを引く前、後ろにいるミレナが「シュウ?」と、背中を突っついて来る。シュウは「なんだ?」と、肩だけを後ろに向ける。

 するとミレナは楽しそうに笑い、


「もし一緒の班になっても、手加減しないわよ」


 宣戦布告してきた。

 シュウは「当たり前だ。全力で楽しもうな」と、握り拳を出す。ミレナも「うん!」と握り拳を前に出して、シュウの握り拳に軽くぶつけた。


 くじ引きの数字は、異世界文字で三だ。偶然かな。ミレナも三である。


——視点はほんのしばらくだけエンタクに映る。


 そんな彼らの反対の列では、エンタクがくじを引こうとしていた。

 どうやら、シュウが引いたくじの数字は三であるらしい。ミレナもついでにいるし、ここで3を引こう。そして、より親睦を深めたい。


——ええっと、3はこれか?


 エンタクは俯瞰視できる傑出能力を用いて、木箱の中にある3を探す。それもフクに傑出能力を使っているのがバレないように、まさぐりながらだ。


「あ、エンタク様、傑出能力を使うのは無しですよ!」


 ただエンタクが大好きなフクだ。彼女の思惑などお見通しだと言わんばかりにいさめる。


「分かってる」


——と言いつつ、使っちゃうけどね。


 ただ、そこで退かないのがエンタクだ。嘘を吐いて、3をスッと手に取った。

 

——ふふん、僕の勝だ……


——視点はシュウに戻る。


 シュウの班はエンタク、ミレナ、フクの四人になった。

 まさかの、食事で同じ班であった三人が、盤上遊戯でも一緒の班になってしまった。


 当然、エンタクが上機嫌な理由をシュウは知らない。


「では、始める前に軽く説明を」


「役割演技型ということで、先ず皆さんには誰を演じるのか、人物を選んでもらいます」


 全員が別れ、座すると、フクとセイは立ち上がって注目を集める。


「選べる人物は、六属性の魔法師の内一人。お手元にあるこの箱の中に、六色の人型の駒があると思います。火魔法師なら赤、風魔法師なら緑、水魔法師なら青、土魔法師なら茶、光魔法師なら黄、闇魔法師なら紫です。自分が選びたい魔法師の駒を取ってくださいね」


 フクは木箱の中にあった、小物入れと書かれた木箱を取り出すと、見やすいように掲げながら説明を始める。

 そして中から順繰りに、頭と胴体だけの六色の簡易駒を、一つずつ取り出して見せていく。


 小物はバラバラではなく、種類ごとに仕切りで別けて入れてある。


「はいはい質問、同じ色の駒が二つずつしかないんだけど、同じ属性の魔法師を選んだらどうなるの?」


 ハオは右手を上げて、気になることを質問する。

 ハオのいる班はフェンとフィアンとユリアだ。ハオの問いにセイが「それは今から説明しますね……」と、前置きをして、


「三人以上が同じ属性の魔法師を選んだ場合も考慮して、駒が入っていた箱には、六色の布が同封してあります。その布を駒の首に掛けてもらえば、その色の魔法師として扱うことが出来ます」


 簡易駒が入っていた箱から、簡易駒と同じ大きさの六色の布——マントを取り出して説明した。


「質問です! やっぱり、魔法師の属性ごとに、能力は違ってくるんですか?」


「はい! 能力値はそれぞれの魔法師ごとに違うので、長所を伸ばした方がよいでしょう。土魔法師なら防御、火魔法師なら火力、水魔法師なら両立といった感じですね」


 今度はローコが手を上げて質問。フクが指を立てて復答する。

 演じるキャラによって能力値が違うとは。例えば、火力の火魔法師なら防御の高い土魔法師を仲間に加え、タンクとして扱う事で、バランスの良いパーティーを編成することが出来るわけだ。


 これは本格的な盤上遊戯が楽しめそうだ。


「僕は当然、火魔法師」


「私は水にしよ」


「じゃあ、俺は風で……」


「それじゃあ、僕は闇魔法師で」


 エンタクは赤色。ミレナは水色。シュウは緑色。最後にフクが紫色の駒を取った。

 やっぱり、自分と同じ属性の魔法師を選ぶものなのか。と、シュウが思った矢先だった。


 エンタクがフクに、


「なんだ、自分と同じ火にしないのか?」


 どうして同じ属性の駒を取らなかったのか問いかけた。


「これは役割演技型ですよ。何を選んだっていいんです」


 ただフクはちっちっちっと口を鳴らし、顔の前で人差し指を振って反論する。エンタクは「まぁ、それもそうか」と納得した。

 彼の言う通り、RPGなら自分と全く違うキャラを演じるというのもありだ。奇を衒うとはまた違うが、そういった遊び方もできるのがRPGのいい所でもある。


「ん?」


 突として、自分が選んだ駒の裏側を見ると、そこには光の魔刻石がめてあった。


——何に使うんだ? 暗い時の明かりとか? いや、そこに付いてるし、明かりなら嵌めて使う必要はないよな……


「皆さん、選びましたか?」


 全員が演じる駒を選び終わった頃合に、フクとセイが小物が入っている箱を手に取って立った。

 シュウは説明を聞き逃してはいけないと、思考を中断する。


 セイとフクは、中から六面サイコロを取り出すと、


「では、誰がどの順番で動くか決めてもらいます」


「お手元にある、サイコロを二つ振ってもらい、その数が大きい順で動いてもらいます」


 順番決めのやり方を説明する。

 各々が言われた通りに、小物入れの箱からサイコロを二個取り出し、それを振って順番を決めていった。


「お、十」


「えぇ、八」


「マジか、四」


 エンタクは十。ミレナは八。シュウは四が出た。

 フクは「エンタク様、僕の分、振っといてください」と言って、エンタクに代行を頼む。

 エンタクは「ん」と適当に返事をして、フクの代わりにサイコロを振った。出た目は、


「お、十一。一番おっきいぞ」


 十一だ。


「ありがとうございます」


 シュウ達の班は、フク、エンタク、ミレナ、シュウの順番になった。


「皆さん、順番は決まりましたね。では、駒を中心にある王城に置いてください」


 セイが言うと、全員が各自で王城に駒を置いた。


「僭越ながら私とフクが、敵駒の配置と、札と、それに魔算機まざんき魔変機まへんきを……」


 それをフクとセイは確認すると、各班の元に足を運んで、魔物の札を特定の街のマスの上に置いていく。加えて箱の中にあった、文字が書かれた木製の札と、謎の模様が描かれた金属板を横に置いた。


「ちゃんと一位取りなさいよ……」


 準備をする中途、エンタクと同じ班になったフクの耳元で、セイがささやく。

 フクは「分かってますよ。余裕で一位を取ってみせます」と、セイに囁き返す。

 果たして、彼らの目的は何なのか。今は彼らのみぞ——いや、彼らとエンタク、それにローガも知っている。


「特定の街や村には、僕たちが先程置いた、魔王の手下が居ます。魔王に占領された街って設定です」


「その手下を倒すと、住民たちから褒賞としてお金や、盤上遊戯を有利に進められる神器や道具が貰えたりするので、積極的に倒しに行きましょう」


「移動はサイコロを使って、出た眼だけ動いてください」


「王城から遠ざかれば遠ざかる程、敵は強くなっていくので、序盤は王城付近を、終盤は王城から離れた場所に移動していただければ、遊戯を楽しめると思います」


 フクとセイは交互に補足説明をする。

 シュウは練り込まれている盤上遊戯に、またもや胸中で『おぉ』と感嘆符を浮かべた。


「それでは先ず、遊戯の基本の動きを僕がお見せします」


 フクはそう言いながら、サイコロを振る。


「五ですね……僕はここに行きます」


 出た目は五。五マス移動して、右下にある街に近づく。


「移動すると、敵と遭遇します。王城付近なので、一番の箱ですね。敵は六種類。サイコロを振って、出た目の敵と闘っていただきます」


 フクは小物入れの箱の中にあった、異世界文字で一と書かれた箱を取り出し、サイコロを振るう。


「一、スライムですね。一番雑魚です」


 出た目は一。フクは箱の中から、裏面に一と書かれたスライムの札を取り出す。その下には、光の魔刻石が嵌めてある。そして、


「対戦の時の動きは、武器で攻撃する通常攻撃、魔法攻撃、武器と魔法を合わせた特技、回避、逃げるです。回避と逃げるは、確率です。全員初期装備はこん棒です。敵はスライムなので、魔法を使わず通常攻撃で……」


 スライムを攻撃した。

 思ったのだが、こういったRPGとなるとダメージの計算はどうするのだろうか。やはり、手動で計算するのだろうか。


 シュウがそう思考していると、

 

「三とでましたね。スライムの体力は三なので、撃破です」

 

 フクは謎の金属板——魔算機に、こん棒の札とスライムの札、そして駒を上に乗せてオドを込た。

 すると何ということか。次の瞬間、それぞれの札に嵌めてあった光の魔刻石が淡く発光。同時に、魔算機の上空に赤色の二つの魔法陣——縦と横で球状の形をした魔法陣が、浮かび上がったのだ。


 浮かび上がった魔法陣は不規則に回転。回転速度は次第に早くなり、ある時を起点に今度は減速。停止する。

 都合、球状の中心に『三』という異世界文字が出て来た。


 異世界ならではの計算方法だ。


 シュウはその光景を瞬きをせず、釘付けになって見ていた。

 やはり異世界ファンタジーというのは伊達ではない。素晴らしすぎて、異世界そのものを崇敬すうけいしてしまった。


 異世界ファンタジー恐るべし。


「敵を倒すと経験値が貰えます。経験値が一定数貯まると、強さが上がります。強さが上がると、体力、攻撃力、防御力、素早さ、オドの量、そして新たな魔法が覚えられます。逆に負けた場合、王城に戻されてしまい、更に一行動休みになってしまいますので、強い敵と会った場合や、自分が弱った状態の時は逃げるのが吉ですね」


 フクは戦闘を終えると、自身の駒とスライムの札を、今度は魔算機とは違う別の金属板の上に乗せてオドを込めた。そうすると、また駒の魔刻石が淡く光り、駒を中心に赤い魔法陣が出現。先程と同じように、魔法陣が回転する。


 また何かあるのか。シュウはそう思って属目したが、今回は何も起きずに魔法陣は消えてしまった。

 何が起こったのかいまいちわからない。


「今回は倒してしまったので関係はありませんが、攻撃時、低確率で痛打の一撃というものが出ます。痛打の一撃が発動すると、防御力を無視して、攻撃力分の損傷の値を相手に与えることができます。痛打の一撃は七面サイコロを二個振って、二個とも七が出た場合のみ発動します。痛打の一撃が出た時は、魔算機ではなく手動で計算してくださいね」


 フクの言葉から察するに、魔算機と呼ばれる板が自動的にダメージ計算をしているのだろう。スライムやこん棒、駒に嵌めてある魔刻石が光ったことから、それぞれの魔刻石で、何かしらのプログラムが組み込まれていたと類推できる。

 恐らく、その組み込まれたプログラムを基に、魔算機がダメージを計算したのだ。


——痛打の一撃という要素もあるし、すっごく面白そうなんだが……


「説明はここまでです。分かっていただけましたか?」


 そうやって動きのテンプレートを見せたフクは、質疑応答を設ける。質問は無し。


「もし分からないことがあれば、随時質問してもらっても構いません」


「私とフクが、随時お答えします!」


「「ではぁ~遊戯スタート!!」」


 フクとセイは右手を天井に。人差し指を立てて、そのまま肩まで振り下ろして開始の宣言。

 そうして、盤上遊戯が開始された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ