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アンリーズナブル  作者: 犬犬尾
第二章 アルヒスト攻防戦
74/112

幕間 最善は次善だったようです

もうちょい幕間を投稿します!

 頭を丸め、納衣のうえのような衣を纏った男たちが、お経が書かれた紙束を持って頭を下げ、おがむ。

 その男たちの中心に座る喪服を着たエンタクが、リンを二度鏘然(しょうぜん)と鳴らした。一度目は小さく弱く。二度目は少し強く響かせるように。


 二度目のリンの音が鳴りやむ前に、エンタクは目を閉じた。それと同時、男たちはおがむのを止め、紙束を開き始める。


 そう、葬式である。

 狼藉を働き出した魔獣や、賊が従えていた眷属達から民衆を守ろうと、殉職じゅんしょくした者達。また、守り切れずに殺されてしまった民衆を、弔うための葬式だ。


 当然ではあるが、全ての死者をコウエンタクで弔う事は不可能な為、各地の宗教施設でも葬式は執り行われている。


 読経どきょうが始まる。


我聞如是がもんにょぜ一時佛いちじぶつ住王舎城じゅうおうしゃじょう耆闍崛山中ぎしゃくっせんじゅう與大比丘衆万二千人倶よだいびくしゅまんにせんにく一切大いっさいだい……」


 淡々と読経する聖職者の男達に合わせて、周囲の者達も淡々と読経していく。

 紙に書かれているお経は、全て異世界文字だ。読める文字はほぼない。辛うじて読めても周りの読む速さに追いつけず、脳みそがパンクしそうになってしまう始末。


「えと、じんずう? え、いだつ? よ、読みにくい」


 シュウの横に座るミレナが、文字を目で追いながら呟く。その彼女よりも、遥かにレベルが低い——次元が低いシュウは「ヨメナイ」と、目を点にした。


「難しいですね」


 シュウの横に座るリフが愛想笑いをしながら、二人に共感を露わに。

 その彼の横に座るフィアンは、ミレナと同様に文字を目で追うばかりで、読経の速さに追いつけていないようだ。


 その四人の前に、左からグーダ、リメア、ローレン、アリスの四人が座っていた。

 リメア以外の三人も、読経の速さに追いつけていないようだ。


 さて、どうして遺族でも近隣住民でもないシュウ達が、葬式に参列しているのか。それは、コウエンタク内で葬式が執り行われているからだ。

 寝泊まりしている場所で葬式が執り行われるのなら、参加はしておこうということだ。

 当然、喪服もふくなど持ち合わせていないシュウ達は、急遽エンタク達から黒い衣を借り、羽織って参列することになった。


 ただ参加したのはいいものの、お経が全く読めない。口パクは無し。

 シュウは読経を諦め、葬式が終わるまで静かに待つことにした。


光顏巍巍こうげんぎぎ威神無極いじんむごく如是焰明にょぜえんみょう無與等者むよとうしゃ日月にちがつ……」


 読経が始まってから十数分経ち、リメアを除く一行全員が読経を諦め、静黙せいもくしていた。


「うぅ、うぅぅ……」


 内、ミレナは眠たそうに目を何度も開閉させていた。

 シュウは彼女の頬を「ミレナ」と、指で突っついて起こそうとする。突っつかれたミレナは「ぅん……」と、寝ぼけまなこを擦って目を覚まし、


「あぁ、ご、ごめん……」


 ハッとした顔で我に返り、紙を持ち直した。

 まだまだ、長い読経は続く。


我建超世願がごんちょうせがん必至無上道ひっしむじょうどう斯願不満足しがんふまんぞく誓不成正覚せいふしじょうしょうがく我於無がおむ……」


 それからまた十数分後。ミレナが「すぅ……すぅ……」と、小さい寝息を立てて、肩に頭を預けて来た。

 シュウは彼女の左肩を「ミレナ、ミレナ」と左手で揺らして、起こそうとする。


 ミレナは「ぁに? あ」と、唇によだれの跡を残しながら覚醒。シュウの肩から頭を離し、涎の跡を残したままお経に視線を移した。


「眠くなるのは分かるが、もう少し我慢しろ……」


 座る列が最後列でよかった。シュウはそう衷心ちゅうしんで思いながら、ミレナを注意した。

 せっかく参列したのに、居眠りするというのはバツが悪い。それに、死者や遺族に対する侮蔑と捉えられる可能性もある。

 まぁ賊の征伐せいばつを手助けした者だからと、許されそうでもあるが。


 そのシュウの目に、居眠りしているグーダが映った。


 シュウの左斜め前にいる彼も、ミレナと同じで壁に肩を預けて寝ている。リメアに起こすのを任せようとしたのだが、読経に有りのことごとを注いでいる彼は、グーダが居眠りしていることに気付いていない。


 シュウは左手を伸ばして、グーダの身体を揺する。そうすると、グーダも「ぁ?」と、ほうけた声を出して覚醒した。

 そして二度目の「あ」で後ろを振り向き、シュウに向かって感謝と謝罪の両手合わせ。シュウは苦笑いして返した。

 

 中途、リメアの肩がぴくぴくと動き、その手に持っていたお経が少し歪んだのを、二人は知る由もない。


 そうやって数十分が経ち。お経に一区切りがついた。エンタクが二度リンを鏘然と鳴らしたことが、一区切りの合図だ。

 そうして今度は、違うお経が読まれ始めた。


如是我聞にょぜがもん一時仏在舎衛国いちじぶつざいしゃえこく祇樹給孤獨園ぎじゅぎっこどくおん與大比丘衆よだいびくしゅ千二百五十人倶せんにんひゃくごじゅうにんく……」


「ね、眠い……」


 今度のお経は一区切りごとに、拍子木ひょうしぎのような何かが叩かれ読経されていく。

 拍子木のような物が叩かれる度、シュウは『眠っちゃダメだ。眠っちゃダメだ』と、眠らんとする意思を強めていく。

 

 問題はミレナとグーダなのだが。


——寝てやがる……


 二人とも、壁に肩を預けて居眠りしていた。

 横に居るミレナは「むにゃ、むにゃ……すぅ……すぅ……」と、お経を手に持ったまま、涎を口から垂らして熟睡。グーダはお経を座布団の横に置き、その鼻に大きい鼻提灯はなちょうちんを作って堂々と寝ていた。


——こいつらは……

 

 シュウは「おい起きろ」とツッコもうとしたが、


『シュウだって寝てた癖にぃ』


 人の事は言えそうにない為、諦めた。

 葬式が終わった後、ミレナが言って来るであろうセリフだ。いや、もう起きろと言ってしまった時点で、手遅れではあるが。


 一方、一部の警備隊の者——マサムネとラウラも、体勢を崩さずに寝ていた。また眠らずとも、長時間の読経に退屈して欠伸あくびをするギンジとボトー。

 シュウ達だけではなく、周りの者達も睡魔に襲われていた。


 ハオもうとうとしていたのだが、その都度ローコが太ももをつねって起こしているので問題にはなっていない。

 当然、その彼らの醜態をエンタクは重々承知していたのだが、顔色一つ変えることなく、目を瞑ったままでいた。


 それから十数分。


「……一切世間いっさいせけん天人阿修羅等てんにんあしゅらとう聞佛所說もんぶっしょせっ歡喜信受かんぎしんじゅ 作禮而去さらいにこ


 最後に一度リンが鏘然と響き、お経が終わった。


「すぅ……ん……うぅ……すぅ……ん? あ」


——寝ちまってた!?


 そのリンの音で、シュウは目を覚ました。


 ほんの数分、眠りに落ちてしまった。敗北である。

 そして葬式が終わった後に、ミレナから意趣返しの罵倒を浴びせられる破目はめになってしまった。


「すぅ……すぴぴぴぴ……すぅ……すぴぴぴぴ」


 涎を垂らし、気持ちよさそうに爆睡しているミレナと同レベル。どうどうと寝てる奴と同じ。睡魔に負けた馬鹿。


——クソぉぉぉぉ!! なんであと少し起きれなかったんだァァァァ!!


 苛立ちと後悔、反省の感情が起きたばかりの脳内を走り回る。

 いっそのことしらを切って、眠っていなかったと嘘を吐こうか。いや、それはそれでバレてしまった場合、卑賎ひせんになってしまうからやめておこう。


 そんなシュウを余所に、今まで前で座っていたエンタクが立ち上がった。

 彼女は振り返り、


「死者の弔いは終わった……これで彼らは苦しみやけがれの無い、幸福で清浄な国土へと、或いは、天国へと向えるだろう。遺族は棺桶を持って火葬場に向い、収めた遺骨を墓に納骨してやれ……それ以外は外へ! 出棺を見送る!」


 領主然とした立ち振る舞いで、葬式を終わらせた。

 遺族以外の参列者たちは、自然と部屋から退室していく。


 シュウはミレナを「おいミレナ。起きろ」と、揺さぶって起こす。前にいるリメアもグーダを「あの? グーダ?」と、青筋を浮かばせた笑顔で起こした。

 ミレナは「ふぇ?」と、惚けた声を発しながら目を覚まし、グーダは「んあ?」と、鼻提灯を破裂させて目を覚ました。


 二人は葬式が終わっていることに気付くと、『あれ!? もう終わってる!?』と言いたげな顔で驚いた。


 そんな彼らの更に前にいるマサムネとラウラも、惚けた声を上げながら目を覚ました。

 因みにハオの太ももは服の所為でうかがえないが、真っ赤に腫れ上がっている。その腫れ具合から、ハオがどれだけ寝かけたのか——ローコに抓られたのか察せられた。


 シュウ達は足並みをそろえて退室。参列者の後に続いて、コウエンタクの外に出る。

 そして石畳の道から砂利敷じゃりじきへ退き、後から出て来る者達の為に道を開けた。


 ぞろぞろとコウエンタクから出て来る参列者——近隣住民や仕事仲間の者達。その後ろからエンタクと聖職者が姿を現し、その更に後ろから棺桶を持った遺族が、一列になってずらずらと外に出て来た。


「キュキュウ」「ガオ、ギャオ」「キョココ」「シュルシュルリィ」


 石畳の先——コウエンタクの正門前には、棺桶を持って下山する霊柩車れいきゅうしゃではなく、霊柩獣れいきゅうじゅう——棺桶を固定する装置を装着したホウキュ達が、背中を降ろして待機していた。

 遺族たちは参列者に別れの挨拶を済ませた後、棺桶を落とさないようにホウキュ達の背中に乗っていく。そして、運ぶ準備——棺桶の固定ができ次第、順番にコウエンタクから去っていった。


「魔獣が棺桶を運ぶ手伝いをしてくれるなんて、すごいね!」


「全くだ。こんなに便利なんだったら、一緒に暮らさないってのは損だな」


 棺桶を乗せたホウキュ達に手を振って、ミレナはアンコウエンの宗教観に感嘆かんたんする。その彼女にシュウは、棺桶が魔獣の背中に固定される様を見ながら返答した。

 その二人に、横からアリスが「ですね」と相槌あいづちを打ち、

 

「本来魔獣は脅威なのに、彼らと分かり合うことが出来れば、脅威どころか強力な助っ人になってくれるのですから……」


 感慨深げに魔獣達を見る。


「中央都やフェアラードの方でも、アンコウエンの宗教観が広まってくれればいいんですが……」


 アリスに続いて、ローレンが少しうれえた表情で息を吐く。


 確かにそれは間違いない。他の領地にアンコウエンの宗教観が広まれば、死者も減り耕地も漸進的ぜんしんてきに広めることが出来る。魔獣と手を組む賊も漸減ぜんげんする。

 そうなれば、アルヒストは安泰の一途を辿るだろう。


 だが、現実は違う。


 ローレンのように、アンコウエンの宗教観が広まればいいと思った者はいたはずだ。宗教の歴史がどれほどまで長いのかは分からないが、長いことに間違いはない。故に、ローレンが初めてというのはあり得ないはずだ。


 でもそうなっていない。ということは、


「それは無理だろうね……」


 ふわふわ浮いて向かって来たエンタクが、シュウの思索しさくに正解だと答えた。

 彼女は地面にゆっくり着地すると、


「君達だって、最初は僕達と相容れない間柄だったんだ。仮に頭が認めても、手足はそうはいかない。それに魔獣達も馬鹿じゃないんだ。嫌忌けんきしてくる相手には嫌忌で返す……」


 頭に人差し指を当てて、ローレンの理想を酒然しゃぜんと切り伏せた。そして、彼女は腕を組んだ後に頭を少し傾け、


「そこから何が起こるかは、分かり切ったことだろ……? 魚心うおごころあれば水心さ」


 躊躇ためらわずに言い切った。

 小さく開けた口を閉じて、ローレンは蕭条しょうじょうな顔で視線を落す。周りに居た者も、蕭条まで行かぬとも、エンタクの指摘に何も言えず黙るしかなかった。

 

 そんな空気を作った張本人のエンタクは、背中で腕を組んで前のめりになり「それにしても、ミレナ、グーダ、シュウ……」と、にやにやした顔で、


「葬式中に居眠りとは、随分ずいぶんと肝がわっているな。ん? ん?」


 三人を嘲弄ちょうろうするように、一人ずつ顔を見やった。特にシュウは念入りに、じっくり見やった。まるで、ミレナに暴露してやったぞと言わんばかりに。


 シュウは上半身を少しだけのけ反らせて、恥ずかし気に外方そっぽを向く。

 やはり彼女にはバレていた。果然かぜん、シュウが寝ていたことを知ったミレナは、長耳を立たせて、


「えぇ! シュウも寝てたの!? 私に注意したくせに!」


 ぷんすかぷんぷん。頬を膨らませて指を差した。


「すいません……」


 シュウはミレナとエンタクに小さく頭を下げて謝った。


 悔しい。途轍とてつもなく悔しい。どうして我慢できなかったんだ。

 後悔がシュウの胸中を右往左往する。


 シュウは元気をなくした顔で反省した。その彼を見たエンタクは「シシシ」と、口元に手を当てて窃笑せっしょうする。

 シュウをからかうことができて、笑壺えつぼに入っているのだ。


「本当に申し訳ないです! エンタク様!! ほらグーダも!」


「イテテテ!! イテェって若頭!! ミレナ様も、イエギクのにぃも寝てたじゃねぇか!! 俺だけ折檻は不平等だっちば!!」


 グーダの耳を引っ張り、頭を下げさせるリメアを見て、エンタクは目をぱちぱちさせながら唇を口の中に入れ込んだ。

 思いっきり耳を引っ張られたグーダは、痛さにあれやこれやと反論。しかし、リメアは一切の仁恕じんじょなしと、というかそういうとこだぞと、聞く耳を持たずに耳を引っ張り続けた。


「僕達も寝ていないだけで、リメア殿以外の五人、葬式中にも関わらず、うとうとしてしまいました。エンタク様、申し訳ないです」


「「「申し訳ございません、エンタク様……」」」


 リメアだけでなく、リフとフィアン、アリスにローレンも続けて頭を下げた。


——少しだけ、視点はエンタクへと移る。


 謝られたエンタクの所念しょねんは『ちょっとからかいすぎちゃったかも?』である。

 シュウを嘲弄する為に言った言葉が思った以上に飛び火してしまい、戸惑っている訳だ。

 少し反省するエンタクである。


「アンコウエン以外の、アルヒストの葬式では聖歌を歌いますが、こちらの葬式の、聖歌ではなく、ええっと……なんでしたか?」


——大スカーヴァティー・ヴィユーハと、小スカー、いや……


 名前を思い出せないと、キョロキョロするアリス。すると、すぐさまリメアが小さく手を上げて「お経です」と答えた。

 エンタクは正式名称を答えようとしたが、リメアの説明の方がこの場では適切だと思い、口を開けなかった。


「そうですお経です。その、お経を読むのはとても難しくて、ついて行けませんでした」


 ぺこりと頭を下げて謝罪するアリス。ミレナはうんうんと頷き、


「私も、全然読経に付いていけなかった。シュウなんて、読めてすらいなかったもん」


 シュウを両手の人差し指で差す。

 シュウは首に手を当てて「それは言わないでくれ」と、懇望こんもうするようにミレナを見た後、エンタクに頭を下げた。


——そろそろ、火事になりそう……


 そう思ったエンタクは「ハハ!」と呵々し、


「気にしなくていいよ。遺族でもあるまいし……知り合いの葬式だってのに、寝てた奴もいたし。死んだ奴らも、参列してくれただけで嬉しいはずさ。恨みはしないさ……」


 今までのはほんの冗談だと、場の空気を穏やかなものにした。


——視点はシュウに戻る。


 シュウには、エンタクはこういった行事には厳格だというイメージがあった。しかし、ここでも俗っぽさを見せるとは少し驚きである。

 話し合いの時に見せた厳烈げんれつな姿は、かなり稀な姿だったのだろう。普段は俗っぽくて、他人をからかい愛嬌あいきょうある笑顔を見せるのが、彼女の普通なのだ。


「もとより、開祖のお姉ちゃんは教えを、一般の民衆や異教徒に啓蒙けいもうするのを嫌がってたから、難しいなら理解しなくてもいいよ。それにお経を編纂へんさんしたのは、お姉ちゃんじゃなくて、その弟子たちだし……僕も基本は聞いてるだけだったから、構わないよ」


 エンタクは舌をチロっと出して、原点の話を持ち出してきた。


 開祖のお姉ちゃん。それは恐らく夢で見た、月白げっぱくの髪の少女と砥粉色とのこいろの髪の女性。

 どちらが開祖かは見当は付かない。ただ、エンタクの姉も彼女のように俗っぽくて、穏やかな人なのだろうと、シュウは推断すいだんした。

 アンコウエンの宗教は、人々に安泰をもたらす素晴らしいものだ。それを啓蒙することを嫌がり、あまつさえ編纂者は弟子ときた。ならば間違いない。


「私は是非覚えたいです!」


「覚えたいなら、それはそれで止めるつもりはない……精励してくれ」


 背筋を伸ばし、右手を高く上げて主張するリメア。エンタクは彼に微笑んで、新たな信徒を寛裕かんゆうに受け入れる。

 リメアは「はい! 頑張ります!」と、莞爾かんじしながら敬礼した。


「クソ、ミレナに寝るなって言ったのに……自分の事を棚に上げるとは、このことか」


 とほほと、シュウは額に手を当てて顔を左右に振った。そんなシュウを見ていたミレナは「へへ」と、一瞬だけ卑しく笑い、


「ほんと、シュウって最低よね! 見栄っ張り! 反省してよね! この馬鹿変態!」


 わざとらしくにシュウを窘めた。最後に堪えきれず、ミレナは「ぷふ!」と、口から息を吐き出して笑う。

 シュウはやり返しては、より卑賎になると思っていたのだが、


「最後の馬鹿と変態は余計だ! てか、絶対言いたかっただけだろお前!」


 彼女がからかってきているのが分かった途端、その思いは雲散霧消うんさんむしょう

 ミレナに怒りながら言い返す。


「あ、バレちゃった」


 そうやって、またもや嘲弄してくるミレナにシュウは「何故バレないと思った?」と、頬っぺたを両手でこねくり回して反撃。反撃されたミレナは「ふにゅぅぅぅぅ!?」と、悪役が退場するが如くの声を発して、シュウに分からされた。


 これにて折檻終了。めでたしめでたし。


「そうだシュウ、ミレナ。君たちはこれからどうするんだ?」


 少し羨ましそうに、エンタクが話題を切り替える。

 これから、まずはそうだな。シュウは顎に手を当てて少し考える。


「取り敢えず、一旦村に帰って、報告かな?」


 頬を赤く腫れさせたミレナが、代弁してくれた。彼女の言う通り、取り敢えずモワティ村に帰って、グレイ達に諸々(もろもろ)の出来事を伝えなくてはならない。

 エンタクの元で稽古を付けてもらったり、敵に対処する作戦を考えたりするのは、それからだ。


「それは、僕が協力してくれないという報告か?」


 もじもじ。エンタクは不服そうに言った。シュウは「まぁそうっすね」と、苦笑いで返し、


「八人で集まった時、強いエンタク様に頼るんじゃなく、俺達の尻拭いは、俺達でしようって話し合ったんです。エンタク様は、アンコウエンとここに住む民衆、魔獣を守る使命がある……だから、強くなろうって」


 笑みを解いて、真剣な顔でエンタクを見た。彼女は「シュウ……」と、悔悟(かいご)を宿した双眸で、元気のない顔で、シュウを見返す。

 どうしてエンタクは、元気のない顔でこちらを見てくるのか。


『僕も応えられなくて、すまなかった……』


 それは話し合いの時、彼女が見せた悔悟の感情が説明してくれている。

 エンタクは扶助できなくて、力になれなくて、断ってしまって、申し訳ないと思っているのだ。エンタクは何も悪くないのに。


 だったら、彼女のその悔悟をできるだけなくすべきだろう。


 シュウは廓然かくぜんたる表情で、エンタクに手を差し出し、


「俺たちはもう仲間です。だからエンタク様、必ず強くなって、貴方の為にも、奥に潜んでいる敵を斃すと誓います。だから、気にしないでください」


 笑いかけた。

 だがエンタクはシュウの手を取らず、


「あれは言葉のあやだ。律儀に守る必要はない……それに僕はまだ、君達に助けられた借りを返せてない。そこまで頼むことは……」


 恥ずかしさと不服を混ぜ合わせた顔で腕を組み、横を向いた。

 シュウは頑固な人だなと思い、


「じゃあ、ローレン。前に出て来い」


 後ろで話を聞いていたローレンに、バトンタッチした。ローレンは「分かった」と首肯。エンタクの前に立ち、


「エンタク様、話し合いの時の無礼、誠に申し訳ございませんでした」


 整粛せいしゅくに頭を下げた。


「エンタク様、国賊発言含め、こいつのやった無礼な行為を、許してやってくださいませんか? それで借りはチャラということで」


「待て、それに関しては、僕は別に気にしていない。それでチャラというのは、僕にとって、余りにも都合が良すぎる」


 ローレンを瞥見べっけんして言うシュウに、エンタクは掌を見せて言い返す。


 年長者としての性なのだろうか。ミレナと同様、頼ってばかりでは不満らしい。

 とはいえ、こちらとしても八人で決めたことを、今更変えるつもりもなければ、変えてどうこうなるものでもない。


「いいんすよ! 俺達にとってはそれで十分な返しですから。な! ミレナ! 他の皆も!」


 シュウは偽らず、ただ事実を返した。


「うん! というか言葉の綾とか、薄情なこと言わないでよ……私達はもう立派な仲間同士! 貸し借りなんて不用よ!」


「そうです! エンタク様はアンコウエンを守り、仲間の僕たちが敵を屠る。これが最善です!」


 シュウに続いてミレナが、その次はリフがエンタクを見る。

 それでも、彼女は「でも、でもでも……」と、横を向いたままでいる。


「最善を選べるのなら、次善ではなく最善を選んでこそです……エンタク様」


「私達に任せてください!」


「我々が、必ず悪を倒します」


 そう言ってフィアン、アリス、ローレンが順にエンタクを見る。リメアとグーダも、無言で笑って彼女を見た。

 だがしかし、エンタクは「でも、けど、だって……」と横を向いたまま、頑なにシュウの手を取ろうとしない。


 とはいえ、変化——進展がない訳ではない。

 エンタクは横を向いたまま、シュウ達の顔をチラ見しては視線を外し、また見ては外すのだ。


 シュウはあと一押しだと思い、


「それじゃあエンタク様、俺達に稽古けいこを付けてくれませんか?」


「君達に、稽古をか?」


「はい、それで借りはチャラ。そこからは仲間で、貸し借り不用。自分とその仲間の為に、奥に潜む敵を斃す。これでどうですか?」


 粗放そほう戻道れいどうに、一歩踏み込んだ。

 エンタクが無言でこちらを見つめて来る。


 シュウにとって、彼女は本当の仲間だ。共に闘い、共通の敵を、共通の目的を持つ大切な仲間だ。

 先程は言葉の綾だと言ったが、エンタクもこちらを仲間だと思っている。そうでなくては、魔獣が操られた証拠を集める時に断っているはずだ。


 だったらエンタクの為にも、奥に潜む敵を——枢機卿や白蛇を斃すのが、仲間としての責務だろう。いや、本当は責務などどうでもいい。ただ、自分がそうしたいから。利己的な理由が原拠げんきょである。


「というか、俺たちの為にもそうさせてください。だって、エンタク様……大切なお姉さんに、アンコウエンを任されたんですよね?」


「え…………」


 エンタクは瞿然くぜんと目を丸くして、シュウを見つめた。


 エンタクはアンコウエンから出られない。何故なら、大切な姉からここを任されたから。それは、こちらが安全な未来を勝ち取る為、奔走しているのと同じくらい大事なことだ。

 いや、彼女とこちらとでは、その約束を守ってきた長さが違う。それも比較するのが、愚かしいと思える程の差だ。


 一言で言うなら、その長さは塵点劫じんでんごう。重みが違う。


「なんで……なんで、僕のお姉ちゃんのことを、君が知っているんだ……?」


 廃忘はいもう。エンタクはシュウに詰め寄った。


「…………嘘みたいな話かもしれませんが、夢で見たんです……幼いエンタク様が、白髪のお姉さんから、頼みましたよって、アンコウエンを任されたことを……」


 アンコウエンに入る時、創造主から見せられた夢。あれが、エンタクの幼い頃の記憶という確証はない。

 ただ、


「夢で、アンタクお姉ちゃんとの約束を…………」


 彼女の潤んだ双眸が、全てを物語っていた。


「それをミレナ達に話したら、エンタク様をアンコウエンから離すのは——ッ!?」


「シュウ!?」


 突然エンタクに両腕を掴まれ、シュウは身体をびくりとさせる。


「ぁ…………」


——こちらの腕を掴む力が、手が。


「その夢はどんな夢だったんだ!? お姉ちゃんの行方を見たりしなかったか!?」


 エンタクは泫然げんぜんと涙を流さんとばかりの哀痛あいつうした表情で、こちらを見てきた。


「それは………」

 

——瞬目しゅんぼく、シュウは固まってしまった。


 だって、自分は彼女の素願そがんに答えることが出来ないから。

 シュウは情動的に言ってしまったことを、期待だけさせるような言葉を発してしまったことを慚愧ざんきする。


 しかして、ここは正直に答えるべきだ。


「俺が見たのは、エンタク様が、二人のお姉さんと別れる時だけです」


 シュウは目を閉じて、横に小さく首を振った後、全てを告白した。


「二人……コウタクお姉ちゃんのことまで…………」


 エンタクは視線を落とし、数秒、シュウの両腕を掴んだままでいた。そして割り切ったのか「急に取り乱して悪かった」と、掴んだ手を離して謝った。


「いえ、お姉さんのこと、大好きで大切に思っているんですね」


「うん……大好きで、とても大切な人だ」


 シュウの言葉に、エンタクは逡巡しゅんじゅんや恥ずかしさを見せることなく正直に、嫣然えんぜんと笑ってみせた。さらっと吹く風に、彼女の髪が小さく靡く。


「エンタクって結構可愛いとこあるよね」


 つんつん。ミレナが後ろから、横腹を突っついて来る。シュウは顧眄こべんして、彼女の言ったことに「そうだな……」と、笑って復答した。


「ますます、やる気が湧いてきたわ」


 ミレナもエンタクの為に奮励ふんれいできると、笑顔で返した。

 エンタクが見せた笑顔は、姉を大切に思っていることの証明。純乎じゅんこたる真実だ。なら尚更、仲間である彼女の為にも、全てに決着を着けたくなった。


「聞こえてるぞ」


 そんな二人の掛け合いを、エンタクは聞き耳を立てずに盗み聞きしていた。

 ミレナが「げっ」と、驚きを口にすると、エンタクは「げっ、じゃない」と、腰に手を当てて小さく怒る。


 流石、神将を超える神人様。ひそひそ話は彼女に通用しない。

 という冗談はさておき、


「エンタク様、俺達に任せてください。お姉さんのことも敵を斃す道草で、一緒に探してみます。だから、どうかお願いします」


 シュウは下げた右手をもう一度差し出し、自分達に信託しんたくしてくれと、毅然とした顔でエンタクを見据えた。


「むむむぅ……助ける側が言うセリフと表情じゃない」


 エンタクは頬を膨らませて、シュウの手を取ろうとしない。そこにミレナが「任せてエンタク!」と、右手を大きく上げる。それから、彼女を軸にしてリメア達が「任せてください!!」と、声を合わせて見据えた。


「むむむむむぅ」


 するとどうしてか、エンタクは何か言いたげに下を向いてねてしまう。


「あれ、エンタク様……?」


 シュウは『少しくどかったか?』と胸中で呟き、口を開けて額から汗を垂らした。


 シュウに続いて、ローレンが「まさか、何か琴線きんせんに触れるようなことでも!?」と、事を荒立てるようなことを言う。さらに続いて、アリスが「なに!? それは非常にまずいのでは!」と、狼狽ろうばい云為うんいで表現。

 

——それは流石にないんじゃ……


 というか仮に、先程の掛け合いが琴線に触れてしまったのなら、理不尽が——、


「違う! そうじゃない!! 僕も一緒に、君達と闘う!!」


 シュウの思惟しゆいを破って、エンタクはまさか過ぎることを声高に主張した。

 当然、その後のシュウ達の反応は、


「「「え!? えェェェェェェ!?!?!?!?」」」


 である。


 そりゃあ驚くに決まっている。何故なら、エンタクの口から力添えは無理だと断ってきたはずなのに、今度は力添えすると言って来たからだ。

 ああ言えばこう言う子供だと思える程の、秀麗しゅうれいな掌返しだった。

 

「エンタク様かわいい」「かぁわぁいぃいぃ」


 それを蚊帳かやの外——茂みの影から見ていたフクとセイ。果たして、彼らが驚いていないのはどうしてか。


——それは、


「でも、エンタク様が長期間アンコウエンから離れると、魔獣達が狼藉を働いてしまうのでは……?」


 シュウは咄嗟とっさにエンタクへ質問した。

 エンタクは背中で手を組むと、


「その、実は! 僕はアンコウエンから、長期間出れない訳じゃないんだ!!」


 今まで貯めていたであろう鬱憤うっぷんを吐き出した。

 これまた秀麗な掌返しに、ミレナ以外の全員が「え!?」と、聳動しょうどうを受ける。件のミレナは、


「なんで嘘ついてたの!?」


 エンタクの謎の行動に、前に出て問い詰めた。

 エンタクは胸の前で「違う違う!!」と両手を振って、


「嘘を吐いていたわけじゃない!!」


 弁明をさせてくれと、シュウ達全員の目を一人ずつ見る。


「その、スイリュウの息子と、ヴァンパイアの仲間が帰ってくれば、そいつらを中心にアンコウエンを任せることが出来る、と思う……絶対ではないから、言えなかったんだ」


——可能性があったからだ。


「そうだったんですか……」


 シュウは理解したと息を吐いた。


 可能性はある。だがあくまで可能性。多分その可能性も、決して高いものではないのだろう。むしろ低い。

 それはエンタクの弱々しい喋り方や、臆面おくめんほのめかしていた。


 可能性が低いのに、それに賭けるなど捨て鉢と言ってもいい。だから言えずに、こちらの要求を拒否するしかなかった。してや、初対面の相手。彼女なりに、期待だけさせることになっては、忍びないと感じたのだろう。


 とはいえ、豁然かつぜんたる光が差し込めたことも事実。スイリュウの息子と、ヴァンパイアの仲間が帰って——、


「ん? てか、いまヴァンパイアって言った?」


 シュウが唐突に思ったことを、ミレナが代わってエンタクに訊いた。


「うん、スイリュウの息子とヴァンパイアの仲間と言ったぞ」


 やはり聞き間違いではなかった。シュウとミレナは「ヴァンパイア!?」と、互いを見合って驚く。そして、


「シュウ!」


 ヴァンパイアと言ったら分かるよね、の呼名こめいだ。シュウは「分かってる!」と、意思の疎通を果たし、彼女と息を合わせて、


「リザベート!!」「リザベートだな!!」


 今まさにモワティ村に住んでいる、適正な者の名を呼んだ。


——リザベート。


『自分がどういう存在なのか、知りたいって、思ったんです』


 彼女に自分のやりたいことをやれと言った翌日——荷馬車の中で、言って来た言葉だ。


 彼女が自分を知る為には、同じ人種のヴァンパイアが居るであろう、テレボウに向かうのが一番だと思っていたのだが。まさかその必要がなくなるとは。

 それに加えて、未知ではなく既知の領域——アンコウエンという安心、安全、安泰待った無しの場所に、リザベートを連れて来るだけでよくなってしまうとは。


 幸に続く幸だ。


「なんだ? ヴァンパイアがどうかしたのか?」


 唐突過ぎて何のことか、要領が得られていないエンタクが説明を求めてくるが、ミレナは「ごめん! それはこっちの話!」と、両手を合わせて謝った。

 エンタクは「そ、そうか……」と事情を把握したのか、それ以上の追究はしなかった。


「それよりも、先ほどおっしゃられた方々は、今どこに?」


 話に一区切りつくと、リフが重要なことをエンタクに訊いた。


「今は、アルヒストの何処かをのらりくらり遠征中だ。ヴァンパイアの仲間が、スイリュウの息子から指南を受る為、もとい、調伏する為にな」


「ではその方々が帰ってこれば、エンタク様もアンコウエンを離れることが出来ると!?」


 答えたエンタクに、フィアンが両手を合わせて近づく。


 他国ではなく、国内の何処かを遠征しているのなら、アンコウエンに帰還するまでの時間は長くないだろう。いやまぁ、根拠の無い憶測だろと言われれば、ぐうの音も出ないのだが。


「そうなるな。でも飽くまで可能性だ……それに任せる為には、時間を掛けなくちゃいけないし」


「ですが、可能性はあるということですね!!」


 腕を組んで視線を外し、幾許いくばくか自信なく呟くエンタクに、今度はアリスが両手を合わせて近づく。フィアンとアリスから、所期しょきの眼差しで見つめられるエンタクは「うん……そうだな」と、気恥ずかし気に頷いた。


 さらに、一行最後の女性であるミレナも両手を合わせ、エンタクに所期の眼差しを向けて近づいた。ミレナに関しては、ただの悪ふざけである。


 エンタクは「そんな目で見るなァァ!!」と、三人を大きな声で退けさせ、


「君達が、仲間だの僕の為だの、さんざん僕をたぶらかすようなことを言うから、引けに引けなくなったんだ!! 賭けてみたくなったんだ!! でも期待しすぎるな!! 卑怯じゃないけど卑怯だァァァ!!」


 両の握り拳を上下に振って顔を赤くし、情動の勢いのまま躍然と、協力したくなった本音を吐露とろした。

 そんな彼女を、蚊帳の外で見ていたフクとセイがまた「エンタク様超かわいい!」「超かぁわぁいぃいぃ!!」と、両手で口元を隠しながら所懐しょかいを述べる。


 当然、前回からフクとセイの会話が聞こえていたエンタクは、二人に向かって指を差し、


「お前等うるさいぞぉ!!」


 激おこプンプンだ。これまた当然、からかっていたフクとセイは「逃げろぉ!!」と、茂みの影から逃げていく。


「あ! おい! 待て!!」


 その彼らを追いたいが、シュウ達がいる所為で追いかけられないエンタクは、その場で留まることしかできない。


「「「ハハハハ!!!」」」


 そんな掛け合いを見ていたシュウ達は、言葉にし難い面白さに声を揃えて笑った。


「君らまで! 笑うなァァ!! わぁらぁうぅなァァァ!!」


 赤い絵の具をそのまま垂らしたような顔色で、エンタクはシュウ達に怒った。

 葬式の直後。喪に服すとは相反する明るい空気。流石に慎まなくてはと、シュウ達は笑うのを止めた。


 シュウは笑い泪を右手の指で拭き取って、


「すみません、エンタク様」


 エンタクをからかう笑いではなく、感謝の気持ちを込めて解顔かいがんした。

 その解顔が、自分をからかう為のものではないと気付いたエンタクは「むぅ……」と赤い顔を薄くして、


「言っておくが、成功はさせるつもりだ……だ、だから! 君らの仲間にも手伝ってもらうぞ!」


 フンっと外方を向きながら、シュウと握手を交わした。


「当然です!」


「騎士の我々が、国防長官に騎士の者を派遣するよう、献言けんげんしてみますね!!」


「では、傭兵の僕の方から、傭兵協会の会長に傭兵を派遣するよう、献言します」


 ガッツポーズをして答えるローレン。彼に続いて、アリスとリフがどういった形で扶助するのかを答える。

 エンタクは彼らの明るく精彩な表情に「助かる。できるだけ多く頼むぞ」と、ニッコリ笑った。

 「はい!」と、六人は快諾かいだくする。


「まさか、もっといい策があるなんてね」


「あぁ、どうやら俺達が考えてたのは、次善の策だったらしい」


「これが、本当の最善の策ってことね……リザベートを連れて来なくちゃ」


 シュウとミレナも明るい雰囲気に微笑みながら、会話した。

 北西——ルマティアがある方向を見る。敵は枢機卿に白蛇。ルマティアの何処かに潜んでいる。


 エンタク無しで闘うのは少し不安だったが、彼女が参戦するなら百人力。いいや、十万や百万力以上と言っていいだろう。

 ミレナを救えずに終わった世界線よ、創造主よ、運命よ、今はどんな顔をして見ている。


 怒りか、諦めか、焦りか、絶望か。将又はたまた、相も変わらず静観か。黙殺もくさつか。

 悪かったな。ここまで来たら、こちらのものだ。


——てめぇに、目にもの見せてやるよ……


 シュウは精悍せいかんな表情を解き、ミレナを見て、


「それじゃあ、一旦村に帰るか! 吉報を持ってな!!」


 右手を上げてハイタッチを催促。ミレナは「うん! 帰宅ね!」と、ぴょんっとジャンプをしてハイタッチした。


 完全勝利を収めてみせる。

一応使わせてもらったので、書いておきます

お経の部分は、無量寿経と阿弥陀教の一部を使わせてもらいました!

先人の功績最高!感謝!


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