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アンリーズナブル  作者: 犬犬尾
第一章 モワティ村の救済
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第29話 ジヒノシロ 後

加筆修正したら文字数が馬鹿みたいに増えたので、二話に別けました。


申し訳ない!

「驚かされたよ……まさか、踵を返して、自分を犠牲に君を助けるなんてさ……」


 転んで泥まみれになったミレナの前に、シュウを飲み込んだ光の箱——縮小した箱を持ったレイキが歩み寄って来る。

 周辺の大地は球状に切り抜かれ、魔獣が暴れまわった跡のように雑然としている。


「本当は君ごとレクイエムに巻き込んで、転移魔法で逃げようとしたのに……こっちの作戦の穴を突いたことといい。やられたね、これは……」


 レイキが盛んに喋り続ける中、ミレナはシュウを——シュウを飲み込んだ箱を取り戻そうと、熟思していた。


 自分たちを囲んでいた思念体は消えたか、或いは見えなくしているのか。恐らく後者だろう。

 慎重に、気付かれないようにして光の箱を、シュウを取り戻さなくては。

 考えろ。思考を巡らせろ。


「気に食わないけど認めるよ……君とあの男は、僕にとっての壁だった……でも僕が上回ったんだ。どうせ君たちは、僕のような奴が成長しない人種だって、思ってたんでしょ? お生憎さまだったね……」


 いけしゃあしゃあと成長を誇示するレイキ。彼の言葉はミレナの頭には入っていない。彼女の頭の中は一点集中——シュウを取り戻すこと以外に何もない。

 

「おおっと、一人語りが多くなってしまったね……さてさて、君が仲間思いな奴なのは知っている……そこで僕から君に提案だ。この通り、僕はレクイエムを行使したことによって、もうオドはカラカラだ。でも君の方はまだ、オドは多く残っていると見受けられる。君が今ここで、僕を殺すことは容易いだろう」


 殺す。そうだ。こいつを殺せば——、


 殺し。殺人。なんで、どうして、怖い。できない。手が震えて、体が震えて、人の命を奪うことが怖くて、何もできない。


 シュウに戦前、人を殺せるかどうかを問われた。これがまさに、彼の言いたかったことなのだろう。

 あの場では、強く答えることが出来た。嘘ではなかった。ううん、違う。嘘をついてしまう羽目になるとは、思わなかった。

 本当に自分の所為で、自分以外の誰かが殺しを強要されるのなら、出来ると思っていた。


 でも違った。

 人殺しなんていやだ。怖くて逃げたい。

 これが本音である。


 目の前で大切な人が命の危機に瀕しているのに、身をていしてまで守ってくれたはずなのに、脚がすくんでしまっている。


 これが自分の本性だ。


 心底、腹立たしい。どうしてここまで醜いのか。


 何故、なんで、どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうして。ドウシテ、私の心は私が思っている以上に、何でこんなに醜いの。


 あの言葉は——、


『その背負ってる物、私が勝手に背負うから!!』


『返せてないのは私の方なの』


 あの思いは——、


 今度こそは後悔したくないから、エゴだと言われても止める。


 もう仲間だと思ってたのに。


——全部、嘘だったっていうの?


「違う……助け、なくちゃ……もう、後悔はしたくない、の……」


「そうだよ。その通りだ。後悔はよくないよね……この男が助かるには、僕がレクイエムを解くしかない。この意味が分かるかい? 君の行動で、この男の命運が決まるんだ。この男を助けたかったら、僕と一緒に転移魔法で付いて来てくれ。そうすれば、レクイエムは解除すると約束しよう。多少は、レクイエムに身体を侵食されているだろうが、君の再生能力があれば問題じゃない。心して決めるんだ。彼を助けたかったらね……」


 理想の自分と、そうでない醜い自分。暖かい場所で、自分に有利な理屈だけをねて、ただ逃げていた都合の良い理想。

 捨てなくちゃ。自分だけが楽な理想を捨てて、シュウと居られる理想を掴む。もう二度と、あの赤い日のように——、


 思い出しかけた悪夢は、小さな傷跡を残して消えた。


 シュウとミレナの出会い方が違ったように、リメアに魔女の切手が渡ったように、グレイとリフの命が救われたように。ミレナの心は、前回の世界線のようにならなかった。

 その理由はミレナの中に、シュウを助けなくてはという強い意志が、助けられるという堅靭けんじんな自信があるからだ。


 先ず、本体が目の前に現れることはないだろう。姿を隠し、木の裏か何処かで遠見しているに違いない。目の前の分身を狙うふりをして、奥にいる本体か思念体に当てる。考えたのなら実戦だ。


 ——怖いけど、撃て! 撃つんだ!!


「ブリザード!!」


 殺意を乗せて、しかして殺意に呑まれることなく正確に、奥の敵にのみ攻撃が被るように。大胆でありながら、繊細に放つ。


「アハハ!! わっかりやすいね!! そう来ると思って、予めディスガイズを使っていたんだ。追い詰められた奴がどんな行動を取るのかは、考えれば直ぐに思いつくからね……」


 だが、氷柱はレイキの身体をすり抜け、何事もなく地面に突き刺さった。

 的を外した。なら今度は違う方向へと撃つのだ。


「君は運がいい。今の僕は機嫌がいいんだ。今のは水に流そう……さぁ、もう一度提案だ。僕と一緒に、転移ま——ッ」


——撃て!!


「誰が信じるか!! シュウを返せ!!! ブリザード! ブリザード!! ブリザード!!!」


 今度は更にオドを込めて、より繊麗せんれいに、声がした方へ魔法を何度も放つ。


 だが、氷柱は的に当たらなかった。でもいい。外れたのなら外れたなりに、使い道はある。理性は保てている。冷静でいられている。次に生かせ。


 こういう奴は自分の意の通りに事が運ばない時、必ず激憤する。


「そうか、そうなんだね……愚かだ。余りにも愚かだよ。僕の厚意を踏みにじるなんて……世の中は見た目社会なのを知っているかい? 多くの者はそれを否定し、ポジショントークで他より優れていると感じて承認欲求を満たすが、あれは間違いだ……現実は違う」


 ミレナの予想通り、レイキの額に青筋が浮かぶ。

 凶悪ではあるが傲岸不遜であるが故に、ぎょしやすい。


 レイキは、ミレナに何か狙われているとも知らず「いいか……」と、右脚をゆっくり上げ、


「お前のような身体が貧相で! 沸点も低くて! 道理も分からないような不細工は! 馬鹿みたいに首を縦に振るのが筋なんだよ!! それが縮図だ!!」


 ミレナを何度も踏み潰していく。


 踏み潰されるために激痛が走る。

 痛いのは嫌だ。辛いのも嫌、苦しいのも嫌。でも一番嫌なのはシュウを失う未来。その未来を迎えないためなら、こんなの苦でも何でもない。


 ここで、踏み潰して来るレイキ——思念体を殺すのは簡単だ。でも、それでは意味がない。意識を自分に集中させるのだ。


 耐えろ。いや、耐えられる。耐えて当然のことだ。


「分からないならここで理解しろ!! 悔悟しろ!! 懺悔しろ!!」


 身体のあちこちを痛めつけられても、痛みに声を上げることなく、ミレナは丸くなって痛みに耐え続けた。


「自分は秀でた存在だなんて、勘違いして夢見てるんじゃないぞ!!! クソ女!!!」


 踏み躙られ、顔面が地面にへばり付く。口の中は、垂れてきた鼻血な味なのか、傷口から出た血の味なのか分からない。重ねて、地面に顔を打ち付けた時に入ってきた土が、不快感を加速させる。 


「現実を見ろよ……周りに迷惑をかけるな、無能なら無能なりに振るまえ、それが社会だ。人付き合いなんだよッ!……」


「ウグッ!?」


 思念体におでこを蹴られ、ミレナの俯いていた身体がひっくり返る。

 おでこに血がにじむ。


「そう……なら、そっくりそのまま返してやるわよ」


 ミレナは小さく笑い、鼻血と泥まみれの醜い顔でそう言ってやった。

 レイキは顔を更に怒りで歪める。

 ミレナはそのムカつく顔をもっと歪めてやろうと、大きく息を吸って指を差し、


「勘違いして夢見てるのはアンタよ!! 現実を見るのもアンタの方だわ!!! ブリザード!!!」


「浅はかだね!! ワンパ——ッ!?」


 全てはこの時の為に。全部が全部、布石だ。


「聞くに堪えない、稚拙な理論だね。ミレナ様の仰る通りだ!!!」


 神将——ローレン・アメニアが登場した。


 共感覚を使ってモグラの身体を借り、ローレンに助け舟を出したのだ。痛みに耐えていたのも、鼻血を垂らしていたのも、それが理由だ。


 風を切るどころか、風を置き去りにする速さで、ローレンが何もない空間を蹴る。

 見た者が釘付けになる大道芸のように、何もない空間で蹴る速度を鈍らせるローレン。否、彼の足の接触部分に、謎の歪みが発生する。


 蹴る速度が鈍くなったのは、鈍重に空間が歪むのは、レイキの思念体が居るからだ。


 悪なる存在を本能的に理解できる彼にとって、光屈折操作など無意味に等しかった。

 ローレンが足を振り切ると、透明ではなくなった詐欺師が地面に叩きつけられ、明滅しながら消滅する。


「お前は!? なッ!? 何!?」


 だしぬけな出来事に、光屈折操作を解除してしまう本体のレイキ。だがレイキは、それすらも構うまいと、ミレナを連れ去ろうとしたのだが、意外なもので足止めされることとなる。


 的が外れ、地面に突き刺さっていた氷柱。そこから伸びた氷が虎視眈々と、思念体におとりを任せ、後方で傍観ぼうかんの一手だったレイキ——その足を拘束したのだ。


「図ったか女!!」


「アンタが長々と講釈垂れてる間に、策を労させてもらったわ!! バーカ!! べろべろべー!!」


 舌を出して卑しく、下品に嘲弄ちょうろうするミレナ。

 レイキの赤い瞳に殺意が滲む。


「殺す!!! 上からの命令何て知ったものかよ!!!」


「私を忘れないでもらいたいな!!!」


 レイキの手から光柱が三本発生し、ミレナに向かって直線移動。しかし、その攻撃をローレンは目にも止まらぬ速度で切り刻んだ。


「人の邪魔をするナァァ!!」


 激昂してローレンに矛先を向けるレイキ。

 だが、縦横無尽——ローレンの素早い動きをレイキは捉えることが出来ない。


「神将君!! そいつが握ってる小さな箱を取って!!!」


「承知……隙あり、貰った!」


「あぁァァ!! ガァッァ!!!」


 光柱を全て躱し、ローレンはレイキの右腕を切り落とした。

 切り口から真っ赤な血が飛散し、レイキの純白の服に血の斑模様まだらもようを刻んでいく。


 講釈を垂れていた時とは正反対。今となっては容姿も、卑賎ひせんなものへとなり下がった。


「右腕一本で済んだだけでも感謝してもらいたいね。君はそれ以上の罪を犯している。ミレナ様……これを……」


 切り落とした腕を広い、手に握られた光の箱を掴む。それがどういった物なのかを確かめることなく、ローレンはミレナに手渡した。

 受け取ったミレナは座り込み、光の箱を全身で握りしめた。その様は、二度と離さないと強く思う、形の現われと言えよう。


「ナイスだわ! ありがとう!」


「いえ、この程度、当然のこと……さて悪よ、大人しく投降してもらおうか……」


 感謝してくるミレナに、ローレンは振り向くことなく謙虚に返し、レイキに剣先を向ける。


「あぁ、クソ。痛い、痛いよ兄上……助けて」


 両膝をついて蹲り、切られた傷口を見るレイキ。その顔は、苦楚くそによって歪曲わいきょくしていた。歯を食いしばり、涙を流して痛悔つうかいする姿は、清々しい程に潔かった。


 ローレンは近寄り、そのレイキの首元に剣を突き出す。

 ブラフの可能性を考慮に入れてのことだ。

 

「その痛みが罪だ。投降すれば、命までは取らない」


「本当……にか?」


「あぁ、騎士に二言はない」


 レイキは顔を隠すように首を垂れさせ、


「わかったよ……投降する」


 そう言った。


「信用しちゃ駄目よ神将君!!」


 ローレンが剣を収めようとした直前、レイキが嘘を吐いたことに気付いたミレナが叫ぶ。その言葉が命運を別つことに。


「アハァ!!」




※ ※ ※ ※ ※ ※




——どうなった?


『レクイエムに飲み込まれた』


 無機質な声が、シュウの自問に答えた。


——このまま死ぬのか?


『レクイエムが解除されない限り、光に呑まれて消える』


——誰かいるのか? 


『私は光の主たる、へダル様に作られた神造機械。名はシロ』


 機械のように——いや、そう述べる通り機械なのであろう。


——意味が分からねぇ……


『意味など必要ない。其処に有るか否かである』


——んなこと訊いてねぇよ。何者なんだ? なんで答える? 質問に答えてくれるくらいの情があるなら、こっから抜け出すことに協力してくれ! 


『何者であるかを第一の質問と仮定。解、上述と同義。何故答えるかを第二の質問と仮定。解、光の主たるへダル様によって定義さ——』


——ああもういい!! テメェが意思の無い機械ってのは分かった!! クソ! 一体どうすりゃ……


 真っ白の光だけが広がる謎の世界。海の底に沈んでいく浮遊感。身体を動かしても藻掻もがくことしかできず、体力だけが奪われていく。

 それにどういうことか。手足の感覚が、先端の部分から徐々に失われていくのだ。


——抜け出し方を探さなくちゃいけねぇ……


 考えろ考えろ考えろかんがえろかんがえろかんがえろカンガエロカンガエロカンガエロ。


——このままじゃ、ミレナが……


『レクイエム、解除』



※ ※ ※ ※ ※ ※



「甘い! トルネード!!」


 レイキの手元——地面の中から光柱が飛び出す。ローレンは剣先を地に向け、小さな風の渦を発生。光柱を危機一髪で裂けた。


 身体を空中で翻し、着地。再び剣を構える。


「熱!? 何!? おぉっとっと! わぁ!?」


 突然、ミレナの指の隙間から光が外に充溢じゅういつする。


 その発生源は光の箱だ。

 光の箱は膨張と発熱を繰り返し、ミレナの手に収まり切らなくなって、地面へと転がり落ちる結果に。


 変化の原因は推して知るべし。即ち——、


「シュウが……出て、来た……」


「チッ……まだ改良がいるな」


 驚喜きょうきするミレナと、苛立ちに青筋を浮かべるレイキ。相反する感情が、同じ空間で混ざり合う。


 レクイエムが解けたことで、シュウと飲み込まれた物が飛び出してきたのだ。

 但し、全てが飛び出してきたわけではない。出てきたのは、比較的大きな木と岩のみ。そして、それら全てが白い何かに侵食されていた。


 もし飲み込まれた全ての物が出て来たなら、近くに居たミレナは土砂に巻き込まれていただろう。


「シュウ……よかった! 大丈夫なの!?」


「あぁ……だい、じょうぶだ……」


「全然大丈夫じゃないじゃない!!」


 青ざめた顔で答えるシュウ。その彼に、ミレナは憂憤ゆうふんを宿しながら駆け寄る。


「男と一緒に殺してやるよ!!」


「させぬ!!」


 シュウに駆け寄ったミレナに、レイキは光柱を数本放つ。が、ローレンが邪魔はさせないと、神剣を振って光柱を消し飛ばす。


「ありがとう神将君! 私はシュウの体を見るから、貴方はそいつの相手を!!」


「承知!!」


 ミレナに指示されるがまま、ローレンはレイキに突貫する。

 大丈夫だと見届けたミレナは、シュウに視線を落とし、


「何これ……白いのが、身体を蝕んでるの? 周りのも……」


 その身体を侵食する未知の白い何か。それを躊躇うことなく触れた。


 触れれば、謎の病を罹患りかんしてしまう可能性があるのにだ。常人なら顰蹙ひんしゅくして避けるようなことをだ。


 今彼女の頭の中は、シュウを助ける以外何もない。


 「何やってんだ。あいつは……」


 ミレナに治癒魔法を受ける中、シュウは見た。

 ローレンが思念体を切るのではなく、蹴り飛ばしたり、峰打ちしながらレイキと闘っているのを。殺しに一歩、踏み込めないでいるのを。


「神将!! そいつは脅威だ!! 殺せ!! 逃げられるとまず——ッ!? グッ!? ぁガ……ぅエ!?」


 ミレナを軽く押し退け、立ち上がろうとしたシュウに、感電したような鋭い痛楚つうそが走った。視界が揺れ動き、嘔吐感を催してしまったシュウは軽く首を抑え、吐くのを堪える。


 四肢の先は確かに存在している。だのに、白い何かに侵食された部分には感覚がない。

 麻痺などでは言葉足らず。それは、手足がなくなったと表現してよい滅尽めつじんだった。


「ころ、す…………」


 シュウの言葉に、ローレンは息を荒げて逡巡してしまう。


「だが! 殺しは、殺しは悪だ!! そんな赦されない行為をするなど、騎士としてあってはならない!!」


「アハハ! バカ発見だ!! ブレスク!! 感謝するよ神将……君が馬鹿でよかった。楽に逃げられるよ……」


 好機だと、レイキは光を席巻せっけんさせる。

 シュウは目を焼かれながらも、枯渇寸前のオドを捻出して「ッ! ゲイル!!!」と、最後の魔法を放った。


 しかし後の祭り。


 ほどなくして、ねじ切られるような痛みがシュウを襲うだけだった。


「じゃあね。次は必ず、三人とも殺してあげるよ……首を洗って待っててね」


 まばゆい光の中、レイキは姿をくらませた。


「待ちやがッ!? ……ぅグッ!? ぁ……ァァグ……クソ……身体が……逃が、す……わけ、に、は……」


 シュウはレイキを追いかけようとした。だが、満身創痍の彼の身体は言う事を聞かない。


 何してんだ。動け、逃がすな。動くんだ。

 転移魔法を使ったとしても、そう遠くにまでは逃げられていないはずだ。ローレンに無理なら、自分が殺さなくては。手を汚すのは自分と決めたはずだ。ここで殺さなければ、もっと最悪な事態になるかもしれない。


 覚悟を翻意したはずだ。師匠の意思をないがしろにしてまで、選んだ未来みちだ。


「なら、立ち上がって、立ち、あが、って……追い、かけて……あの、サイ、アク、ヲ……ァ、ノ……ニド、ト……」


 身体から大切な何かが失われたように、全身が覚醒を拒絶する。死なないために、脳が意識を強制停止しようとしているのだ。


——死んででも、殺さなきゃ行けねぇってのに……


 その燃える意志とは裏腹に、シュウの意識は乖離かいりした。

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