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さて、少し続くかにゃー






「きゃー」



目の前で楽しそうにクルクルと踊っている妖精さん



何時もの服の上に黄色の雨合羽、何時もの皮のブーツではなく、エナメル製の長靴を履いて雨の中を走り回っていた



「あめもへっちゃらさー」



パシャパシャと水溜りに入りながらも陽気な歌を歌う妖精さんを微笑ましく感じながらもぬかるんだ道を踏みしめながら自宅へ帰っていた



「雨も好きー飴も好きーお家でいっぱい食べたーいなー」



何時もの薬草、山菜採りの最中に急に降り出した雨だけれど、幸いにもついこの間作った妖精さん雨セットが役に立って本当に良かった



普段なら萎えるしかないような通雨にもこうしてほのぼのとした気分になる事が出来た



さて、なんとか無事に自宅へと到着した



とにかく体を冷やしてはと思い、入浴後、暖かい食事を摂った



2人でのんびりとしていると玄関からコンコン、と小さな音が聞こえた



こんな所にお客?いやいやそれはない!



自分に知り合いはいないし、師匠の知り合いもまず普通にこのようにノックをして訪問を告げるような殊勝、と言うかぶっちゃけまともな人はいない



つまり、こんなまともなことをする、と言うのは今まで会ったことがない人で間違いはないだろう




一瞬の軽巡の後、取り敢えず来訪者を見てみようと思いドアに付いている覗き穴から姿を確認すると…




なんとも濡れ鼠でボロボロの女の子2人だった





「…」



現在タオルで身体を包んだ2人の女の子に温かいココアを出してそれを2人はゆっくりと飲んでいる最中だった



なんか咄嗟に入れちゃったけど、知らない人と話すのはこんな山奥で育った自分としては殆どない事で、これまで話したことがあるのは師匠とたまに来る師匠の知り合い達くらいだ



会話をする事に長けていない自分が、全く知らない人といきなり話すなんてそんなハードルの高い事は出来ません!なんとか、顔だけは見られない様に、と愛用のローブを着てフードを被る事でなんとかこの空間にいることができているが、凄くきまずいし辛いものがある。あー本当、家に帰りたい…あ、家ここじゃん。マイハウス。つまりはあれよ「もう遅いから今日は帰るね」と言ってこの場を去る事は出来ないという…



なら迎え入れなければ良かっただろ、と思うかもしれないから言っておくけど、誰だってこんな状況なら入れてしまうだろう



通り雨だと思っていた雨は勢いも強くなり本降り、下手したら土砂崩れなどが起こる可能性まであり、この子達が帰るのも危険。雨に伴い強風まで吹きだした為、そんな中外にいるのは危険であると思ったからだし、そもそも女の子2人を外に出したまま自分は家の中とかそんな鬼畜な事は出来ません。服は所々破れてるし、泥なんかも跳ねてたし…別に人見知りだからって人に優しく出来ないわけじゃないし…



とまぁそんなわけで少しビビりながらも扉を開けて2人を中へ招き入れる



「ありがとうございます!」と言い入ってきた2人はローブ姿を見て少しギョッとしていたけれど、2人に大きなバスタオルを渡して身体を温める様にお風呂場に連れていった



2人の服はまぁ当然だけれど雨でびちゃびちゃになっていた為、一応着替えを渡しておいた



多分乾かさなければいけないだろうから居間にある暖炉の前にロープを張り、そこに服を干せる様に準備して先程食べた師匠に教えてもらった汁物の豚汁を温め直す



いい感じに食事が出来、妖精さんに頼んで料理を並べ終える頃に2人は上がってきた


風呂の感謝を述べられ、精一杯の言葉を振り絞り、食事を用意した旨を伝える



少し多めに作った為、残るかなーと思っていたが、余程お腹が減っていたのか途中で涙を流しながら全て食べ終えていた




で、食事を終えてそれらの食器を下げて代わりに温かいココアを出してその間に洗い物を洗った


そして、それらが全て終わり、憂鬱になりながらもリビングに戻るとタオルに包まってココアを飲む2人と目があって今のこの気まずい雰囲気ってわけ



「…」



「あの…」



久し振りの対人でなんと、声をかけていいか考えていると先に向こうから声をかけられた



「この度は、命を救って頂き、ありがとうございました。あなたは私達の恩人です」



透き通る様な金髪ショートの少女が頭を下げてきた


するともう1人のウェーブのかかった桃色髪の少女もありがとうございました。と金髪少女同様頭を下げた



いや、命の恩人って大袈裟な…



そう思ったことを伝える



「いえ、本当に助かりました!扉を開けて頂いた時、私はあなたが神の様に見えました」



それはないだろう!と桃髪少女の方を見ると彼女も真剣な表情で、うんうん。と頷いていた



「先ほどの服装を見てわかる通り、私達は王都の学院生です。今回は学校の課題であるギルドの依頼、という形でここまできたのですが…」



学院生と言われればこの国の人であればピンとくる。様々な学校はあるけれど、学院、と呼ばれるものは王国には一つしかない



王立学院



王族や有名貴族、大手の商家の子ども、等等、普段では中々会えない様な有名な人達の子どもが集まり、卒業後は王国の騎士団や宮廷魔導師などなど、謂わば花形の仕事に就くことができる



他の学校と違うところが、平民であっても入学できれば、問題なく入学できるところにある。さらに言えば卒業さえ出来れば選り取り見取りな就職先、学生中に出来た伝手で就職、有名貴族と恋愛の末結婚など、まさにシンデレラストーリーや英雄物語の中の主人公の様になれる



しかし、勿論だけれど、そう簡単ではない



日々の厳しい授業に訓練、通常の大人でも難しい課外授業などなど、下手したら死んでしまう様な事もあるらしい



この2人を見るにまぁ貴族だろうねー



「なんとか目的地である山へ辿り着き、野宿の準備をしていたのですが…私達の討伐対象であるアンデッドが…」




いや、まぁそりゃ野営地とは言え自然のハンター達が跋扈する危険地帯で火なんか焚いたりしたら襲われますよ



しかも討伐対象がアンデッドて…



アンデッドは大体わかると思うけど死んだ生物が生前の強い思いで体が動き出す、と言うものと、死体を操る魔法使いがいるらしい。基本的にアンデッドを生み出したり使役する魔法使いは魔法使いの中で禁忌とされている



「そして、何とか全員が散らばる事でなんとか生き延びることができました。私達も必死に逃げました。しかし、アンデッド達の数は多く、四方から私達を攻めてきました。それでもなんとか逃げ回り、時に撃ち払いなんとかここまで辿り着きました」



「なんとかこの森に入った橋にたどり着いたのですが、そこには既にアンデッドがおり、更にその橋は落とされていました。 彷徨い歩いてやっと此方に辿り着きました。正直、こんな家があるなんて信じられなかったので驚きました」



…なるほどねー。



とりあえず、2人には雨が止むまではゆっくりしておけばいい、と伝える


読んで頂きありがとう御座います!

少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。

お手数でなければ、評価の方を宜しくお願い致します。

またコメントは随時受け付けております。

感想指摘誤字脱字罵詈雑言なんでも受け付けております!

主に私が飛び上がって喜びます。

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