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うへぁ…かけたぁ( 。ω 。)
「ド、ドラゴンゾンビ!?うそ…」
誰かが悲鳴にも似た様な声をあげる
元来、知能が高く長寿のドラゴンなどが自然とアンデッドになる事はほとんどないとされる。
それは単に討伐される危機が無いほど絶対的強者であり、大抵の個体はその天寿を全うしその寿命を終えるからである。
そう言った生物はアンデッドにはならない。徐々に弱っていく中で自ら死ぬ覚悟が出来、殆どが満足して逝くからだ
街には冒険者ギルドが存在する
その中には生物の討伐も中には依頼としてある。
さて、冒険者ギルドとは、所謂何でも屋であり、しがらみが多く、中々自由に動けない国という組織に対して即座に対応出来るフットワークが軽い事が特徴的である。しかし、当然ながら何を受け、どうするか、というのはその冒険者に委ねられる。
冒険者の格を決めるため、ランクという物が存在する第10階位~第1階位。10から上に上がるに連れて1で最高ランク。10と9は新米
8~6が一般。殆どがこの辺りにいる
5と4になるとベテラン。ほんの一握りの者にしかなれない。
そこから先はそれこそ選ばれた人の遥か高み。俗に英雄、と呼ばれる様な奴等しかいない。
曰くある村に襲来した魔物の軍団を一人で木っ端微塵にした
曰く海に現れた魔物を魔法で滅し、その後、そこに大きく干からびた土地が出来た
曰く1階位同士の喧嘩で街が一つ破壊された
どれも御伽噺の様な話だけれど全て公式な記録が残っている
そして討伐する相手も階位が表示される
訓練されていない30人程の盗賊の討伐が7階位の冒険者6人パーティで討伐可能。
などなどそういう基準があるらしい。魔物に関してはピンキリの為、出来るだけ3階位以上が討伐に動くが、相手によっては10階位でも倒せる程度の場合もあるために一概には言えない
そして、ドラゴン。彼等と出会った場合、まずは相手の様子を伺う。そしてもし敵意や殺意がない様であればゆっくりとその場から去る。もしも、何らかの理由で怒りを見せていた場合、即座に撤退、標的にされない事を祈る。そして、その怒りが自分に向けられた物であった場合、出来るだけ安寧なる死になる様に願う。
決してそれに手を出してはならない。彼等の視界に入ってはならない。上位者のそれは時に気紛れで理不尽な災害の様な物だから。
さて、そんな理不尽な存在に出会った私ことエーリファリス=アベランは目の前の誰も予想できない様な光景に目を疑っていた
そもそもこの依頼中に何度驚愕したかわからない
アンデッドは確かに群となる。しかし、問題は数だった。通常アンデッドの群と言っても数十体がいいところだ。それが動物種も入れれば数百はいる群と遭遇した時は不覚にも生き残る事を諦めた
運良く逃げ切り、彷徨っていたところまさかこの危険な生物が蔓延る【終焉の土地】に人が住んでいる事に驚愕した
そしてその住人が自宅であるというのにローブのフードまで被り完全に顔を隠すという物凄く怪しい姿だった事にも驚いた
私とマリアについた切り傷や擦り傷などの為に一瞬で傷を治す様な伝説級のポーションを渡された事にも驚いた
なによりもそんな彼女の容姿だ
腰まで届く長い銀髪は部屋の灯りを反射しキラキラと輝いており、フードに隠されていた肌は陶器のような美しさ、菫色の大きな瞳で見つめられた時は吸血鬼の魅了の様に視線を切ることが出来なくなった程だった
しかも彼女の家にはそれが当然かの様に妖精が住んでいた
現在、
そんな彼女が何かを唱える
直後、衝撃
ドラゴンゾンビに風の塊がぶつかる
多分風の下位魔法エアショットなのだろうが、私が今まで見た誰のエアショットよりも強力で強烈だった
彼女の攻撃やフォローによって私達の攻撃もドラゴンゾンビにダメージを与えていく
しかし、腐っているとはいえ、絶対的強者。若干のふらつきをみせつつもゆっくりとこちらに顔を向けて大きく息を吸い込んだ
「ブレス!?」
まずい!例えこの距離でもドラゴンの強力なブレスを受ければ私達など一溜まりもないだろう
「皆下がって!!」
ルルの声が聞こえて言われた通り少し下がる
「【ウィンドストーム】」
大声で叫ぶと共にドラゴンゾンビの周辺に暴風が吹き荒れる
風属性中位魔法であるウィンドストーム。その名の通り、風の竜巻を発生させ高密度の風の魔力によってズタズタに切り裂く事ができる魔法。
周囲にいた残りのアンデッド達も吹き飛ばされたり急流の流れる水路に叩き込まれていった
そして肝心のドラゴンゾンビは…
「う…そ…」
「効いて…ない」
いや、多少は効いてはいるみたい。身体にはいくつもの切り傷がついており、多少だけれど体制が崩されているみたいだけれど、致命傷にはなり得ない
「…くっ…」
「ルル!!」
ルルが苦しそうに呻き、膝をついた
…魔力切れだ
徐々に暴風は止みドラゴンゾンビがまたブレスの体制に入ってしまった
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