36.錬金術
◇◇◇◇
[ですから、今現在この地球の精霊は、4大精霊とそれ以外の精霊で構成されているんです]
[4大精霊は水、火、風、土を司っています]
[その4大精霊の王より力が強いと言われているのが最上級位の精霊である光の精霊王と闇の精霊王です]
[城下町の宿屋のタンスの2段目におおきなメダルです]
水で作られた板のような魔道具を使い水の妖精ナイアス達は私にこの世界のことを教えてくれている。
花妖精達はその子供のような姿の通り幼い子供のような話し方であったが、ナイアス達はかなりの知能を持っているのか見かけは可憐な少女の姿だが、伝えてくる内容は賢者のごとく知識に富んでいた。
「精霊についてはなんとなくわかったわ。ありがとう。......いや、ちょっと待て。最後の大きなメダルって何の情報?」
そもそも大きなじゃないでしょ。大きかったらさすがにタンスの持ち主入ってること気付くでしょ。
「ああ、やっぱり言わなくていいわ。深く追求したら世界にちらばるそれを探せとか言われそうだから」
[あら、残念]
目の前にいる5人のナイアス達のうち髪が1番長い女の子がぱっと文字の書かれた水の板を掲げる。
「ねぇ、あなた達は何故その板を使って私と話すの?」
[声がでないから]
「え?全員!?」
「こいつらの一族は『知恵』を得ることと引き換えに『声』を失ったんだよ」
それまでリヴァイアサンの頭の角に寄りかかりながらナイアス達と私のやり取りを怠そうに黙って聞いていたカラエスが口を挟んだ。
あれから、小舟を失った私とラタはカラエスの召喚獣であるリヴァイアサンに乗せてもらいコランバイン男爵領へと川をくだっていた。
そんな中、『器の記憶』が殆どない私に水の妖精ナイアス達がこの世界や精霊について教えてくれると言ってきたのだ。
「知恵のために声を!?」
「水の中では声はさほど必要ではないからな。声を代償に何かを得ることはよくあることだ。
その代わりそいつらの知識量はその辺の人間どもよりよっぽどすごいぜ」
「へー、すごいんだね。あなた達」
私が感心するとナイアス達ははにかみながら微笑んだ。モジモジしてる姿が非常に可愛い。
その水の妖精達の後方に広葉樹の林が広がっている。さっきまでは荒れた大地や針葉樹の深い森などが交互にずっと続いていたのだが、今、川の周りは青々とした木々とその下には沢山の野花が咲きほこっていた。
(......ん?知識?青々とした木々?...ってもしかして!!)
「あなた達っ!世界樹の葉の使い方知ってる!?」
私の大声のいきなりな質問にナイアス達はびくうっと肩を上げて後ずさる。
あぁっ!川に逃げないでー!
[わかりますよ。世界樹の葉はどこですか?]
さっきの髪の長いナイアスは怯えずこの場に残ってくれたらしく、彼女はリヴァイアサンの鱗の上を滑るように移動し、うずくまって意識を失っているラタに近づいた。
[この子の魔力を回復させたいのですよね?]
「そうなの。えぇっと。葉っぱ、葉っぱ」
確かラタはシッポを斜めに振っていたな、とラタのシッポを握り斜めに振ってみた。
ポトリ
[あら。可愛い花冠ですね]
落ちてきたのは世界樹の葉ではなく、なんだか見覚えのある小さな花冠だった。
(ラタ、あの戦闘の最中持ってきてくれてたんだ?なんだかんだ言って気に入ってくれてたのかな)
私は嬉しい気持ちで花冠をすっとシッポに戻し...、というかラタのシッポってどうなってるんだ?出し入れ自由な4次元シッポか?...再度シッポを斜めに揺すると今度はちゃんと世界樹の葉が出てきた。
[カラエス様!手伝ってください!]
髪の長いナイアスは、ぐいぐいとカラエスを引っ張ってくる。え、めんどくさ!とぼやきながらラタの近くに来たカラエスは私が持っているギザギザの葉を見て驚いた表情をした。
「へぇ。世界樹の葉か。保存状態の良いやつは久しぶりに見たな」
[まず聖水を作ってください、カラエス様!]
「へい、へい」
カラエスが左手のひらを上にすると光の瞬きがおこり、小さな香水瓶のような形のガラスの容器が現れた。
そのガラス瓶に彼は右手のひらで蓋をする。
するとどうだろう。コポコポと音を立ててガラス瓶に透明な水が満たされていくではないか。
「次はお前だ。光の精霊王。この水を聖なる光で清めろ」
カラエスはガラス瓶をぽんっと私に手渡した。
へ?清める?
「できると思って言ってる?」
「あぁーっ、ったく、めんどくせ。だから早く『器の記憶』を全部思い出せって言ってんだよ。
ほら、こっちにこい!」
そう言うとカラエスは私の背後に周り、私の両手首を掴むとその掴んだ私の両手にガラス瓶を包ませた。
「心の声を聞け。お前がほんの少しでも手に入れた『器の記憶』から古代の秘密文字を引き出せ。心の中に見えるだろ?何と言えとお前の力は言っている?」
「あ......、成聖の、『満ち溢れよ、成聖の光源』!!」
私の声と共に包み込んだ瓶の水が光を放ちだす。
[オパール様、世界樹の葉をかざしてください!]
ナイアスが持っていた世界樹の葉を受け取り瓶にかざすと、葉は跡形もなくすうっと消え、かわりに瓶の中の水が淡い緑色に変わった。
[できましたね。これが『最上級魔力回復薬』です]
「うわっ!すごい!ありがとう!ナイアスとカラエス!!」
私はキラキラ光る緑色の液体を見ると、2人にお礼を言った。しかし、不味そうな色である。良薬口に苦しってやつかな。




