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Another Elements  作者: 翡翠 律
ー新緑の瞳の王-
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2.小さな訪問者

ブックマークしてくださった方、評価してくださった方ありがとうございます。

誤字訂正してくだった方もありがとうございます。

読んでくれている人がいると思うと頑張れます。


ニョキッ

 黄緑色のソレは土から顔を出した。

(まだ弱いな。もう少し...)

ニョキニョキッ


ポンッ

(おぉ...!!)

(あと少し)

パァッ...

「咲いた!」


 何をやってるかだって?

 土から芽を出させて、花を咲かせてるのよ

 え?何でだって?


「暇だからにきまってるでしょ」


 人間誰とも話さない何もしない日々が続くと、何かやりたくなるものなのです。

 そうここには誰も来ない。遠くにある城下街には沢山の行き交う人が見えるのに。

 何かのパレードだろうか、兵士達が軍馬とともに歩いているのが見える。


 こんな何もない野っ原に人間が正座してるなんて誰も思わないわよね。


 ...人間

 ではないのかもしれない、今の私は。


 正座した足にサラリと白金色の髪が落ちる。

 時折不自然にキラリと光ながら。


(そしてこの力)

 私は最近ようやく自由に動かせるようになった右手を少し離れた場所にある草たちにかざす。

 まだあまり動かない左手には例のお姉さんがくれたオパールが優しくキラキラと光っている。


(咲いて)


 私が心で願うと草の上部に丸い光の円盤が現れた。

 光の円盤から地面にむかってまっすぐに眩い光が放射される。

 するとどうだろう。草は光を受けて成長を早め、見る間に蕾を出し、綺麗な花を咲かせた。

 毎日毎日この力を使って花を咲かせた結果、いま私の周りは花畑のように花達が綺麗に咲き乱れている。



「綺麗に咲いたね、あなた達。でもいまの私にはあなた達を触ることもできなけりゃ、香りを嗅ぐことすらできないのよ」

 はぁ、とため息をつく。

 私のいる柱に囲まれたこの場所は不思議な空間だった。雨も降り注がないし、風すらよけていく。

 全てのものを遮断するかのように、こんなに近くに咲く花々の香りすら感じないのだ。


 そして、花を成長させる力を使いだしたあたりから、私はこの場所が周りを遮断する原因が何かわかるようになっていた。

 今までは何も見えなかったが、力を使い出してから自分の周りに薄く光る壁が存在するのが見えたのだ。

 ちょうど床の石の広さで、4本の白い柱を角として私はその壁に囲まれていた。


(こーいうのってなんて言うんだっけ?結界?)


 読書好きのあの子に...クラス委員長のあの子に、面白いから読んでよとおしつけられたファンタジー小説にこんな魔法が出てきたことがあったな。

 あの子、名前なんだっけ?

 あぁ、また思い出せない。思い出そうとしても自分の名前の時と同じようにまるでその部分だけモヤがかかったかのようにわからないのだ。


 何で思い出せないんだろう。

 何でこんな場所に私はいるのだろう。


 心配してくれた皆の気持ちを無下にした自分への罰なのかな。

 急にいなくなってこんな場所にいる自分は皆にさらに心配させているかもしれない。

 私が両親を突然事故で失ったときのように。


 あの時、両親の事故の知らせを聞いた時、私の心はぽっかり穴が開いてしまっていて、周りが心配してくれる声もちゃんと聞いてなかった。

 部活にも身が入らなくなって楽しむことに罪悪感と虚無感を感じてしまった。


 クラスメイトや部活仲間は、そんな私に本やゲームを貸してくれたり、休みがちになった部活に誘ってくれたり休日に買い物に誘ってくれたり、いろんなことをしてくれたが、私は皆に壁を作って接するようになってしまっていた。


 まだ高校生の私が1人で暮らせるわけはなく、近くに住む親戚が引き取ってくれたが、腫れ物にさわるかのように私を扱うおじさんおばさん達家族にはなじめなかった。

 ただ、その家に同居していた優しいおばあちゃんが私の将来を心配して悲しむのが嫌で、毎日ひたすら学校に行き塾に通った。

 あの日も、塾からの帰り道、いつも通りぼうっと夜空を見ながら帰宅して自分の部屋に入ったはずだった。

 部屋に空気を入れようと窓を開けた瞬間、私は強い光に包まれて、気がつくとこの場所にいたのだ。



 そんなことを思い出している間に夜がきた。

 もうかなりの時間を1人で過ごしたからか辺りが暗くなってきても怖くはな...


ガサッ...


(ひっ!?)


 怖くはなかっ

 ガサガサガサッ

(ひいぃーっ!!?)


 なになになにーーー!!?

 前言撤回!怖いからっ!

 野犬?野盗?

 もしかして、こんな不思議な世界だから魔物とか...っ


ザッ


「え、子供?」

 ひょこっと草の間から顔を出したのは、金髪の少年だった。

 背丈から小学校低学年ぐらい?7.8歳ぐらいかしら?

 少年は焦ったような表情をしている。

 石の床の近くまで来ると、跪き私の方を見た。


「私はフロージ王国第一王位継承者クリストファー・フロージです。貴方の聖域に入り込んだことをお許しください。」


 私は驚いた。

 彼が王子であると名乗ったことにではない。


 彼のどこか陰りのある青く美しい瞳に私は映っていなかったからだ。

 白い柱に囲まれた白い石の床、そしてその向こうに広がる月明かりに照らされた草原。

 彼の瞳にはそれしか映っていなかった。


 彼に私は見えていない?

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