12:魔法、魔人、亜人、その他諸々
この話は長いので、明日はお休み。
魔法というものがある。それは、魔力という力を原動力として現象なり運動を起こすことを指し、物心がついた子供でも知っている常識だ。生物の身体には大差はあれど必ず魔力は存在し、使いたい?魔法のイメージを頭に思い浮かべる・声に出す言葉など方法は様々だが、それらがスイッチとなり魔法が起こる。魔法が料理とするならば、魔力が材料、イメージを頭に思い浮かべる・言葉にすることは調理方法であるといったところか。魔法の種類には、火や鉱物を出す“生成型”、風を吹かせたりモノを浮かせたりする“操作型”、傷を治したり水を蒸発させたりする“干渉型”の三つがあり、それのどれにも属さないものを“能力”と呼ぶ。生物...特にヒトには、一人一つ何かしらの能力を持つことが多い。
魔力だが、生物には身体の何処かに魔力を蓄えておく器官が存在し、その器官が大きいほど魔力を保有する量は必然的に多くなる。逆に言うと、その器官が保有出来る限界を超えた魔力は蓄積されない、ということも言える。生物によってその器官の大きさは異なるが、概ね同系統の種の間では器官の大きさは似てくるようだ。そこで、その器官の規模が最も大きいのが『魔人』と呼ばれる、人間と姿形、文化・知能レベルが同じ生物(という言い方が合っているか分からないが)である。人間と違うところと言えば、身体の何処かに必ず宝石のようなものが付いており、それは身体の成長とともに大きくなるらしい。宝石は個々人によってバラバラで、一つとして同じものは無いという。
魔物という存在。それは、数多くいる野生動植物とは一線を画し、“魔力災害”の一つに数えられている。魔物は通常の動植物が後天的に魔物になるケースが多いらしいが、その生まれた要因は確証が無いものの、その通常の動植物を遙かに上回る魔力の保有量からして、魔力が関係していると考えられている。ちなみに、その量は人間をも上回ると予想されている。ただし、人間や魔人のように魔法を扱える存在は少なく、大きな特徴としては“凶暴性”と“高い生命力”が挙げられる。魔物の体内には『魔晶』と呼ばれる物体があり、魔物の頭を潰す・身体をバラバラに引き裂くなどをしても、魔晶を身体から取り除かない限り動き続けるという。謂わば、魔晶は魔物にとっての原動力であると考えられている。
魔石。それは、生物が持つ“魔力を蓄える器官”と同じ機能を持つ鉱物の一種で、その性質から人々の生活のおける様々な道具に利用されている。魔力を原動力に、魔法のような効果を発揮する。もしくは、魔法に近い現象を起こす。そう言った道具のことを、魔動具と呼ぶ。そんな魔動具の生命線となる魔石ため、金鉱山や銀鉱山と同じ部類の『魔鉱山』なるものが存在し、そこなどで魔石の採取が行われているらしい。
=========================
「それにしても、タロー君が魔人領から来たことには驚いたな。あ、そこに置くわ。」
「うわっ、マジですか~...。まぁ、俺自身そこに住んでいたときには魔人に会っていなかったので、たぶん人間領ではあるとは思いますけど。」
「えぇ~、そんなことある?って、このゲーム知らないって言っていた割には、全然悩んでる様子無いけど、ちゃんと考えて動かしてるかタロー君?」
「ん?いえ、殆ど頭空っぽで動かしていますけど。」
そう言って俺は、右手に持っていた黒いチェス駒のようなものを置いた。目の前にはマス目が10×10のオセロやチェス盤と同じものが広げられており、その上に円錐の先端に球体が刺さったような形をした駒が白と黒、それぞれ一つずつ置かれている。そして、盤面にはまるでマス目を塗りつぶすかのように平たい灰色の石がいくつも置かれ、そんな盤を挟んで俺の向かいにいるのはボルン君だ。今いる場所は、先ほどまでメンヒリットさんと話していた大部屋で、カウンターを見ればハンナさんがいた。時間は...窓から見える外の様子からして、たぶん夜だと思われる。日中ジェルミットさんから聞いたところによると、この建物は(俺の生前の知識に当て嵌めると)村役場のようで、二階にはメンヒリットさんやジェルミットさんなど、村の重役の仕事場の部屋があるらしい。役所の役割を持つ建物はもう一つ存在し、ここはそれとは別に役人が主に利用するため、一般の村人の出入りはそれほど多くないという。そんな建物の一階の大広間で俺達は、ボルン君が持ってきてくれたボードゲームで遊んでいる。
『バルトグラス。このボードゲームの名前だ。最初に先攻後攻を決め、その後10×10のマス目がある盤上を、角のマスからそれぞれ互いの番で自分の駒を一マスずつ移動させていく。そして、最初に盤上の角にある自分のゴールへ到達した方の勝利という、先攻が勝利確実の双六である。ただこのゲームには一つ特徴があり、それは各々マスを埋める大きさの平たい石を三十個持ち、それらを自分の順番が来たら駒を動かさない代わりに一枚だけ好きなマスに置くことが出来ることである。石を置かれたマスには駒は移動することが出来ず、そのマスを避けてゴールを目指すしか無い。石の配置に関しては、互いのゴールそれぞれを石で囲むように配置することは禁じ手である。ただし、相手の駒を上手く誘導し、結果相手が石で囲まれて身動きが取れなくなるのは、別段違反では無い。そんな攻防を続け、どちらかがゴールするまで続ける。そんなゲームだ。』
ゲームを大雑把に言うと、“自分たちで迷路を作りながら相手より先にゴールした方の勝ち”といった感じだろう。もちろん初めて見るゲームだし、かなり手探り状態で進めてはいるものの、結構手応えがあったりする。なんせ、今やっているのがかれこれ四回目だったりするのだ。故に、それなりに俺もルールを理解したり、ゲームを優位に進めていく方法を見つけたりと成長が著しいはず。だから、今、目の前で、黒い駒が十数個の石によって包囲されているのは、何かの間違いだと思いたい。盤上から目を離し向かい合うボルン君の方を見ると、彼は気まずそうに俺の方を見ている。はて、悔しいという感情よりも、情けないという感情の方が強いのは...なぜだろうなぁ。
「えっと...ま、まぁ、初めてやったみたいだし、こんなこともあるって!そんな落ち込むことないって、タロー君。」
「ハハハ。イエ、オキヅカイナク。オレハ、ゼンゼンヘイキデス。」
「...うん!これは、また今度やろう。それに、もうだいぶ遅くなってきたし、俺はそろそろ仕事の時間だから戻るわ。名残惜しいけど、また明日無な~。」
そう言ってボルン君は、石や駒を一つの巾着袋に全て入れると、盤と袋を持ってカウンターの方へと向かっていく。カウンターにいたハンナさんは、そんなボルン君に気づくと彼の手からゲーム一式を受け取り、彼に向けて何か口にしたようだ。少し遠かったから良く聞き取れなかったが、ボルン君が片手を彼女に向け挙げたの見るに、たぶんボルン君のこれからの『仕事』に対する激励だと考えられる。事実俺も彼に、頑張ってください、と言うと、ボルン君はハンナさん向けてしたのと同じことを俺にもしてきた。何とも将来有望な兵士さんだ。それにしても、ボルン君がいなくなったせいで一気に暇になってしまった。さて、これからどうしようか...と、そんなことを考えていると、
「山田さん。もしお時間ありましたら、こちらに来てちょっとお話聞かせてくれませんか?」
と、カウンターで俺に笑顔でそう言うハンナさんの姿が見えた。頭から生えた犬耳はやんわりと垂れ、顔は犬と人の中間のようなでありながら、そこには全く嫌な印象を受けず、むしろ年頃の女性らしい愛嬌のある笑顔がとても可愛らしかった。女性に免疫の無い俺でも、それは女性と言うよりも人柄の良さという意味で好感が持て、彼女の申し出に了承の意思を伝えた。
日中、彼女はカウンターにいた三人には含まれていなかった。もしかしたらカウンターの奥の部屋にいたのかもしれないが、それでも俺以外の人間も既に知っている話をすることくらい、別段問題は無いだろう。そもそも、今現在彼女がカウンターに一人でいることを考えれば、彼女が俺の監視役であることはおおよそ予想は付いていた。昨晩一度会っているとはいえ、その時は俺の方に問題があったので、まともに話には今日が初めてになる。まだ羞恥心は残っているが、もう少し周囲の人間に対する情報収集を積極的に行っていった方が良いだろう。俺は自分の中で、そう結論づけた。そして、俺はカウンターに入ろうと入り口を探したが、どこにもハンナさんのいる場所に行けそうな通路が無い...どうしようもねぇな、これ。
「あ~、ごめんなさい。こちらとそちらでは、こちら側の奥にある扉からでないと行き来が出来ないので、カウンターを挟んでお話ししましょう?」
「あ、そうなんですか。ええ、別に俺は大丈夫ですよ。」
そんなわけで、俺はカウンター付近にある足が長い椅子を持ってきて、そこに腰掛けた。向こう側にいるハンナさんも、どうやら同じような椅子を持ってきて座ったようだ。お互いの準備が出来たところで、ハンナさんの方から話しかけてきた。内容は、お互いに改めて自己紹介をしよう、というものだった。まぁ、なんとなく予想は付いていたので、彼女が名前を言った後俺も続けて名前を告げた。彼女の名前は、ハンナ・ディスト。都から来た役場の役員の一人、とのこと。
俺も彼女に簡単な自己紹介をし終えると、早速彼女の方から話し始めた。
「一応、同僚の子から大まかな話は聞いているんですけど、昼間にジェルミット様が村長とヴィス様をお叱りになったというのは...。」
「...えっ、そうなん?」
「あ、あれ?たしか、山田さんを含めた四人で話している際、村長とヴィス様が険悪な雰囲気になって、それをジェルミット様が仲裁したって話を聞いたんですけれど...もしかして...。」
知らんよ、そんなこと。まさかの、談笑の序盤も序盤で知らない情報が飛び出し、俺は動揺を隠す時間も無かった。たしかに、あの場の空気が最悪になった理由は理解していたが、その後のことに関しては俺は知る由も無かった。ボルン君辺りから教えて貰うにも、彼も彼で俺と同じ部屋に移動していたし、知る術は無かったと思われる。
=========================
ギネアさんとは、あの後『ここ』についての情報を教えて貰うことになった。結局彼が何者であるかはよく分からなかったが、一先ずこの状況を有効に活用させて貰わなければ、ということで自分の中ではどうにか諦めがついた。それにギネアさんと話していると、俺が死んでから初めて出会った“神”と名乗る男を思い出し無性に鬱憤が沸き起こるため、深くは追求するべきでは無いと判断したことが大きい。
ギネアさんは前置きとして、
『この周辺の知識と、君の生活に重大な支障をきたさないレベルの常識は教えてあげる。だけど、それ以上は自分で調べてね。』
と言い、ここらの地理と地名が一覧で乗っている紙切れ一枚を手渡してきた。地図が良かったが、そこは言葉を飲み込み、素直に感謝の言葉を述べた。そして後者の常識についてだが、まとめると
『魔力と魔法と能力』
・冒頭にある通り。
『人間と魔人と亜人』
・それぞれに領土と国がある。目に見える敵対はしていない。
『魔具と貨幣』
・前者は魔石や魔晶と基に作り、魔力を動力に効果を発揮する道具。後者は、国や地域によって価値となるものが違うから自分で調べろ。
といった感じだ。貨幣に関しては相場などを知りたかったが、“自分で調べろ”と言われては、もうどうしようも無い。魔法や魔具という存在については、一応メンヒリットさんから『回復魔法』なるものを受けていたから、だいぶ創造はしやすかった。ただ、能力という部分は俺の持つ五つの能力も関係しているのではないかと思い、ギネアさんに俺は転生者なのかどうかを聞くのと一緒に尋ねた。そんなの知らないよ、と返された。謎が増え、頭を抱えた。
暫くしてギネアさんからの話が終わると、今度は俺の方から質問をしようと考えた。正直彼からの話は貴重ではあったものの、細かい情報が開示されたものでは無かった。それ故、もう少し俺自身の立場を安定させる目的で、ギネアさんに更なる情報を求める。しかしギネアさんは、それっきり新しいことは言わなくなり、終いには
『それじゃあ、飽きたし帰るね。バイバ~イ。』
と言って、ジェルミットさんの身体から出てきたときと同じように、その姿が次第に見えなくなっていった。突然のこと過ぎて俺は、その場でただ彼の去り際を見ていることしか出来なかった。っていうか、飽きたって何だ。俺は何かの暇つぶしにされていたのか。あんなに、『君に会うためにやって来た』感満載の登場の仕方をしておいて、最後は『飽きた』......心のブラックリストに“ギネア”と記入するか。
ギネアさんが去った後、俺はボルン君と入室した部屋のソファーに座っていた。ボルン君も俺と同様に、向かい合う形でソファーに座っており、そんな俺達の耳に部屋の扉をノックする音が聞こえた。その音にボルン君は、前もって知っていたかのような所作で立ち上がり、扉へと真っ直ぐ向かっていく。そして扉を開けると、そこにはジェルミットさんの姿があった...なんだか、ものすごいデジャビュを感じるのだが...。とは思いつつも、ジェルミットさんの様子におかしいところはなく、先ほどまで見ていた寡黙そうな男性そのままである。ただ、酷く疲れたような様子で、彼は一組だけある机と椅子の置いてある方へと歩いて行くと、そこに座った瞬間一つ深いため息を吐いた。それでもどうやら、ギネアさんが身体を乗っ取っているわけでは無いようで、まずは一安心だ。そんな疲れた様子のジェルミットさんは、暫くしてから
『それじゃあ、下での会話の続きをしようか。』
と言葉を挟むと、転生者の立場とメンヒリットさんが転生者であるという話をしてくれた。
メンヒリットさんが言ったように、転生者は珍しい存在というわけでは無いが、その数は少なく、加えてその価値は情報や利活用という面で非常に高い。そのため多くの国は、その貴重な存在を守る目的で国の監視下で生活させたり、転生者に国政への協力を要請したりしているようだ。メンヒリットさんの場合は母体から生まれた転生者で、彼の兄のジェルミットさんは、彼が物心ついた頃には既にその片鱗が見えていたという。そして、メンヒリットさんは国の精査によって、十歳の年に転生者だと判明したらしい。それからメンヒリットさんは国の監視下で生活するようになったが、幼い彼にはそれが酷く辛いものだったとのこと。そのためジェルミットさんは(兄という立場もあるが)、メンヒリットさんを国政の立場から支えようと考え、国の役員になったのだという。それから数十年、二人は今の立場に落ち着いたようだ。
そんな話から始まり、その後は俺にジェルミットさんが質問したり、逆に俺からも質問を投げかけたりと、体感で三時間ほど談笑をしていたように思える。ジェルミットさんの弟を思う気持ちに心は打たれたが、それはそれ。俺は、またしても可能な限り自分の情報を開示しないよう、談笑を続けた。ギネアさんに教えて貰った情報を掛け合わせて、ジェルミットさんが納得出来そうな内容に落とし込むのは、だいぶ頭を使った記憶がある。
=========================
ハンナさんにジェルミットさんとの会話の一部始終を話す俺は、ギネアさんとのやり取りを迂闊に喋らないよう、細心の注意を払っていた。
「そんな感じで、ジェルミットさんが一階でそんなことをしていたのは聞いていませんでしたね...。」
「そうだったんですか...それにしても、山田さん。そんなに色々話しちゃって大丈夫なんですか?何か、ジェルミット様から口外しないよう言われていることとか...。」
そんな心配をしてくれるハンナさんに、俺は安心するよう伝えた。なぜなら、ジェルミットさんとの会話内容は一緒にいたボルン君が聞いていたし、ジェルミットさんがこの村の行政関係者ならば、そのうち俺の情報などすぐに知れ渡る。ならば、今からでも俺のことを事前に知ってくれている人を増やした方が得策だ、と俺は考えていた。そもそも、俺が今朝近くの別の建物で四人に囲まれて食事をしていたとき、周囲の他の人達から大量の視線を浴びていたので、むしろハンナさんやボルン君に俺の存在を広めて欲しい。
情報というのは隠すから怪しまれるのであって、公開してしまえば怪しまれることもそれ以上追求されることも少なくなる。日本の政治を見ていると、そんな印象を受ける。
安心した様子のハンナさんに、俺からも質問を投げかけてみた。
「そういえば、ずっと疑問だったんですけど...ハンナさんって、亜人ですか?」
「ええ、そうですよ。まぁ、人間の方々にはあまり馴染みが無いのでわかりにくいかもしれませんが、私のような獣に近い特徴を持った亜人を、亜人の中では『獣人種』って呼ぶんですよ。」
「亜人...獣人種...ごめんなさい。俺、かなり常識に疎いので、その辺の違いって教えて貰っても良いですか?」
俺のそんな願いに、ハンナさんは快く了承してくれた。確かに知る機会が無いとよく分からない内容ですしね、と彼女は柔らかい笑顔を俺に向けてくれた。何だろう...心が癒やされるようだ...。『亜人』。そう呼ぶのは人間と魔人だけで、亜人と呼ばれる人々は自分たちのことをそうは呼ばないらしい。なんでも、亜人の中ではいくつかの種類に分けられており、そのいくつもの種類の集まりを総じて『亜人』と外部の人々は呼ぶのだという。彼女が属する種類は『獣人種』と呼ばれ、主に獣の姿に近い種類を指す言葉である。獣とは、生前の記憶が正しければ、身体を毛で覆っている四つ足歩行の動物であるはずだ。ハンナさんの姿はまさに犬に近い姿で、彼女が言うことでも無く、獣人種で間違いはないだろう。獣人種以外にハンナさんが挙げてくれた種類は
『鳥人種』『甲鱗種』『外殻種』『水住種』
の四つだが、彼女曰くこの十倍以上の種類が亜人にはおり、時には同じ種類だと思われていても実は微妙に違う種類だった、ということが良くあるという。だから、亜人側もそのの正確な数は把握していないらしい。特に『水住種』は、陸上で生活するハンナさんからすると、全く未知の亜人であり、その呼び方も正しいかどうか分からないようだ。
「そんなわけで、亜人の人達と今後関わるときは、そういう所に気を付けると好印象ですよ。ちなみに、私達獣人種が今のところ一番数が多い亜人だと認識されていますね、人間や魔人の方々からは。」
「なるほど...。」
“魔人や人間にも、そう言った“種類”ってあるんですか?”そう聞こうと考えて、その質問を飲み込んだ。そこまで聞くのは...たぶん、違うだろう。その二つの存在に関しては、今後調べる機会を早急に設けるべきだと俺は考え、ハンナさんとの会話を続けていった。会話を続けていく内に、彼女の性格なんかも何となくだが伝わってきて、次第に話しやすくなっていくのが分かる。そんなことを持っている俺だが、肝心の自分のことはというと、
「それで、山田さんがいた“カナガワ”っていう所は...」
「海があって、山に囲まれたところですね。ここまでの記憶は曖昧ですけど、ワーグ平原を通ってきたはずですので、その先のファセット地方かその奥の地域ですね、たぶん。」
「...えっと、その辺りは確か魔人の領土だったと思いますが、その“カナガワ”という場所には魔人も亜人もいなかった、ということで大丈夫ですか?」
「そうですねぇ...正直、生まれてから今まで人間以外の人に会ったことはないですね。だから、ハンナさんや他の皆さんが当たり前に知っていることにかなり疎いので、できればもう暫く色々と教えて貰いたいです。」
そんなことを宣う俺に、ハンナさんは一黙って視線を向けていると、その視線を気持ち鋭くさせた(気がした)。だがそれも一瞬で、直ぐさま先ほどまでの彼女特有の朗らかな表情になっており、俺の言葉に“もちろんです!”と答えてくれた。そんなハンナさんの人の良さに感謝するとともに、俺はいつ頃この村を出るべきか、そんな課題が一瞬頭を過ぎった。大広間を照らす灯りは、未だ爛々と俺達二人を照らし続けている。
今日の日付を見ての一言。
「ジェイソン来るじゃん」




