表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

10:腹の探り合いって、現実だとどんな感じなのかなぁ

 転生者。文字通り、

『転:この場合、“めぐる”という意味』

『生:生まれる』

『者:おおよそヒトを指す』

であり、仏教における輪廻転生という考え方からすると六道のいずれかにいくことを意味するが、世間一般的な認識だと、再び『人道=現世』に生まれ落ちることであるとされていることが多い。捉え方は人それぞれで別に構わないが、大事な部分としては“一度その人生が終わっていること”が転生における重要なポイントとなっている、ということだ。とすると、俺の場合は癌で一度死んでおり、それなのに今この場で(たぶん)生きているということなので、転生者と言っても過言ではないと考えられる。それは、あの“神”と名乗った男に『転生させる』と言われたことも大きいが、死んで別の場所に行くという考え方からしても、何らおかしなところはない。

 しかし、俺の記憶にある『転生』という言葉の意味からすると、決定的に違う点が一つある。それは、俺が完全に成熟した姿で草原に落ちていたこと、だ。生まれ落ちるということは、それ即ち何らかの生物の雌から幼体として誕生することである。それが卵からなのか胎盤からなのかは分からないが(クラゲの場合、あれは分裂なのだろうか...)、ともかく成熟した状態で、しかも母体がいない状態で生まれるなど生前の俺では聞いたことがない。例えるならアレだ......いかん、何も思いつかない。とりあえず、そうすると本当に俺が転生者なのかを確証づけるには、少々不確定な要素が多い気がする。

 だがそれも、今目の前に“アイアム転生者”と言っている人物がいるのだから、それを確かめるのには正に絶好の機会である。


=========================


「転生者...メンヒリットさんが?」

「その通り。まぁそれに関しては、今から転生者の特徴やこちらでの立場を説明するから、これとはまた別に質問して欲しい。良いかな?」

「そうですか...ええ、それで構いません。」

 メンヒリットさんの突然のカミングアウトには驚いたが、確かに彼の言うように転生者の情報が未だ皆無の俺が聞くのは、おそらく違うのだろう。まずは、目先の疑問を解決して、それから次の疑問を決めれば良い。たぶん、俺にはその方が合っているはずだ。それにしても、さりげなく次の質問を促す辺り、メンヒリットさんは見た目通りしたたかな人物のようだ。

「では最初に、“転生者”と呼ばれる存在には二種類がいるのだ。一つは、人間の女性から生まれる転生者。もう一つは、成熟した状態で突然この世界に現れる転生者、だ。両者に共通するのは、前世の記憶を持っていること、複数のスキルを持っていることの二つだね。」

「えっと...母体から生まれていない人も合わせて“転生者”って言うんですか?なんだか、変な感じがしますけど。」

「!なるほど、そう言う考え方があるのか...いや、申し訳ない。少々、言葉が足りなかったようだ。」

 そう言うとメンヒリットさんは、ここで言うところの“転生”という言葉の意味を話してくれた。転生というのは、彼らの信仰する宗教における考え方の一つが基となっており、そこに存在を当て嵌めて言葉としたのが『転生者』であるという。グーという呼称の唯一神がおり、宗教の教えに“死んだ者はグーの選定を受け、合格した者はグーの眷属として再び現世に現れる”というものがあるのだが、そこに含まれる『再び現世に現れる』という部分が曲解され、生前の記憶がある者や他者よりも優れた能力を持つ者がグーの眷属...つまりは転生した者であると考えられ始めた。そうメンヒリットさんは結論づけ、俺に続けて次のように口にした。

「つまり、転生者の出現は神の力によるものであり、それを生物の誕生の範疇に当て嵌めて考えること自体が間違っている...現在はそう解釈されているのだ。」

 メンヒリットさんの顔を見ても、それが嘘をついているようには思えなかった...まぁ人の表情を読み解く技術など持ち合わせていないので、完全に当てずっぽうである。だが、正直なところそこはさして問題ではない。重要なのは、その情報を彼から引き出せた、ということだ。情報さえ聞き出せば、その後はこちらで真偽を確かめれば良いだけである。それにその宗教の考え自体、まさに科学が発展する前の地球の歴史そのものだし、おそらく真実は至極現実的なものなのだろう。とりあえず、転生者の範疇は把握出来たし、次の情報を聞き出してもいい頃だろう。

「ありがとうございます。それでは、転生者の立場というものh...っと。流石に、ここまで教えて頂いたのですから、今度は僕が質問にお答えした方がよろしいのでしょうか?」

「ん?そうだね......いや、最初に私の方から話す内容を決めてしまったし、それが終ってからにしようか。」

 その方が、太郎君も都合が良いでしょう?そう尋ねてくるメンヒリットさんは、どんなに考えないようにしていても、まるで俺の考えが見えているとしか思えない。それほど、穏やかで落ち着いているのだ。たぶん彼も彼自身の立場のため、俺のことを見極めようとしている結果なのだろう。そしてそれは、彼以外の三人...いや、二人か。ジェルミットさんやヴィスさんも、声は出さないものの、俺とメンヒリットさんの会話を注意深く観察している。フィーリアさんは...うん、別にいいや。そうは言っても、俺だって生前は色んな年齢やタイプの人間と話してきて、時には上手、逆に下手に回ったことだってある。そうした経験を活かし、どうにか自分の立場を安定させようと今も考えを巡らせているのだ。一先ずは、メンヒリットさんの厚意に甘えて、ここは彼の話を聞くことに徹しよう。

「ええ、それではお願いします。」

 俺がそう言うと、メンヒリットさんは話を再開した。

 転生者の立場だが、そもそも転生者という存在は決して数が多いわけでは無いらしい。だが、それもそのはず。なんせ、宗教上『神の眷属』であるのだから、そんな存在が三人に一人くらいの割合でいたら、それこそ(言い方は悪いが)希少価値が下がってしまう。ちなみに、日本人は三人に一人くらいが癌で亡くなっているらしい(年齢によってばらつきはあるだろうが)。話を戻すと、転生者の発見報告は大体年に二・三人ほどで、年によっては十人に上るときもあるという。ところが、メンヒリットさん曰く、報告されていないだけでその数はもっと多いだろう、とのこと。...少し、ヴィスさんの視線が鋭くなり、それに気づいたメンヒリットさんが若干焦ったように視線を泳がせた...ような気がした。今のは俺でも分かる。やらかしたな、メンヒリットの旦那よぉ。

 そんなわけで、メンヒリットさんは最後の方はかなりかけ足で話し終え、それで質問の答えとしようとしていた。...少し、俺の中で不満が湧いてきた。

「ではこれで太郎君からの質問には答えた...と言うことでいいかな?」

「...一つ、ご相談したいことがあるのですが。」

「えっと、何かな?」

「はい。可能ならば、次の質問をもう一度僕からにして頂けませんか?勿論、教えて貰った内容はとても有り難く勉強になったのですが、実はそこで少し分からなかったことがあったので、先ほどメンヒリットさんが提示してくださった内容と合わせた形で質問をしたいのです。如何でしょうか?」

「そ、それh「それは、私の方から答えさせて貰おうかな」...ヴィストレーネ。それは、どういう意味だ。」

 瞬間、空気が凍り付いたように感じた。なぜならば、メンヒリットさんが返答しようとしたのを、(自称)秘書であるヴィスさんが遮って発言をしたからだ。当然メンヒリットさんは、そんな彼女の行動に声を荒げないものの、確かな怒気を込めて問い詰めている。しかし、当のヴィスさんはそれを涼しい顔で見つめており、事前に聞いていた二人の立場が何処か歪に感じられた。...はっきり言って、凄く居心地が悪い。もう今すぐ時間停止の能力を使って、この場から立ち去りたい衝動に駆られている。それくらい、とにかく空気が最悪なのだ。両者がそんな睨み合いのようなことをしている中、ジェルミットさんがその固く閉ざしていた口を開き、

「太郎君。すまないがそこにいる三人の内一人をつけるから、そこの階段を上がって右手側の部屋で少し待っていてくれ。数分したら、私が一人で(・・・・・)向かおう。」

と言った。その瞬間、またしても空気が凍り、既にこの場にいるだけで息が苦しい。だから俺は、ジェルミットさんの指示通りにカウンターにいた、ボルンと呼ばれていた青年に目で合図をして、そのまま彼と一緒に階段を上がっていった。彼以外にも男女それぞれ一人ずつがいたが、メンヒリットさんが彼にだけ話しかけたということは、三人の内彼が一番立場が上なのだろう。そう思い、誰に気を使ったわけではなかったが、ボルンという青年に同行を頼んだのだ。まぁ、俺が合図しなくても既に彼はカウンターから出ていて、階段下で待機していたのだが...。ボルン君(年下っぽいから)は、俺に一切話しかけることなく階段を進んでいき、そしてそのまま黙って階段上右手の扉を開けて待機している。どうやら俺に、先に部屋へ入るのを譲ってくれているようだ。何という紳士。これは女子が放っておかないですわ。とりあえず、そんなことを考えて階下の惨状を一旦忘れることにした。

 部屋に入ると、そこは階下のあの空間ほどでは無いにしろ約十五畳ほどの広さがあり、数ある家具や調度品が無駄な空間を空けることなく配置されている。そのお陰で、ものが多いのに空間が狭く感じない、そんな不思議な感覚に襲われた。壁を見てみると、絵が二枚ほど掛けられているだけで、残りは扉が一つだけあるという、何とも家具や調度品の数に対して寂しい印象を受ける。しかし、それがまたこの部屋をレイアウトした人物のこだわりが見えるようで、少し興味深い。まぁ、俺にそんな造詣の深さなんて無いけどな。

「えっと...ボルンさん、でよろしかったですか?」

「......プッ。」

 俺の問いかけに何やら反応したボルン君は、小さく吹き出すと、そのまま大きな声で笑い出した。そんな彼の変わりように驚く俺だが、ボルン君はそのまま笑い続けるわけではなくすぐに元の状態に戻ると、俺に話しかけてきた。

「よう、昨日の朝振りだな。覚えているか、俺のこと。」

「え?...えっと、もしかして俺が目を覚ましたときに会った人、かな?」

「そうそう!なんだ、覚えてんじゃん。いや~、あの時はありがとな!お陰でグレイズ隊長にすぐに会えたぜ!」

「は、はぁ...。」

 第一印象の紳士のような行動からは想像出来ない、随分と明るくて砕けた青年であった。そして、どうやら俺と彼は昨日の段階で既に対面していたようで、俺も彼からそのことを告げられるまで完全に忘れていた。故に、先ほどまで彼の顔を見た際、すぐには思い出すことが出来なかった。だが、そういえばその時も俺の身体を気遣う言葉を掛けてくれた記憶があるので、彼の普段の振る舞いが既にそうなっているのだろう。それにしても、先ほど階下で鋭い視線を向けていた人と同一人物とは思えないほど、今の彼には鋭利さというか...怖さというものが感じられない。敢えて言うならば、その性格の変容振りが少し怖いくらいだ。だが、そうした性格の使い分けは誰しもが持っているものだし、別段おかしいわけでもないか...。

「それにしても、下は凄い雰囲気だな...あ、そういえば改めて!俺の名前はボルン、ボルン・マルリーク。一応、この村の駐在の兵士って扱いだな。お前の名前は...って山田太郎だったな、そういえば。」

「はい。ですが、こちらも一応改めて名乗っておきますね。山田太郎です。えっと、姓が山田で、名が太郎ですね。よろしくお願いします。」

「へぇ~、俺や他の人らとは違って名と姓が逆なんだな。...なぁなぁ、お前ってどこ出身なん?そうした名前の並びって、この辺じゃ聞かねぇからな。」

「っと...あ~、記憶が朧気なんだよな。いや、今話せる範囲で全然構わないし、最悪分からないならそうはっきり言ってくれて良いからさ。ちなみに、俺はなんと!あのバルバト出身なんだぜ!どうだ、俺ってば都会っ子だろ?」

 そう続けざまに話を繰り広げるボルン君は、とても話しやすい相手で、つい余計なことまで口走ってしまった。彼の提案通りに、“分からない”で済ましてしまうのは簡単だろが、彼の方からも色々と情報を話してくれたのだから、俺も可能な限り情報を開示した方が良いのだろうか...。正直、彼が厚意で話してくれたのか無意識に話してくれたのかは定かではないが、何となく借りを作った気分になってしまった。だから、俺は...。

本文中の宗教の教え、概要。

→『死スル者、ソシテソノ価値ヲ認メラレタ者、神ノ選定ヲ受ケル。選定を受ケ神ニ見初メラレシ者、神ノ眷属トナリテ現世ニ再現シ、己ガ成スベキ事ヲ成サン。(中略)転生、ソレ即チ神ノ身技。故ニ、ソノ力ヲ生命ノ理ニ当テ嵌メルコト、愚行ナリ。』

...考えるの疲れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ