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9:腹の探り合いの描写は、大体どの作品でもやっている(だから難しい)

 俺の名前は山田太郎。ある日末期の癌が見つかり余命半年と言われながら、そこから手術や抗がん剤による脅威の踏ん張りを見せ、二年以上も生き続けた。色々あって最後は家のベッドで死んだ俺は、とある男に転生を言い渡された。そして俺はその男に五つの能力と一つの制約を与えられ、真っ逆さまに落とされ...草原に降り立っていた。草原で猛獣に襲われた俺は自身の能力を僅かながら使えるようになり、能力で操った猛獣に乗って、遠くに見えていた大きな森へと突入した。

 俺に与えられた能力は次の五つだ。

『催眠能力』『透明化能力』『運命操作ラッキースケベ能力』『女体化能力』『時間停止能力』

 中でも催眠能力と透明化能力は既に使えるようになっており、それぞれ使用する際の条件はあるものの、非常に利用価値の高いものと予想される。そんな俺だが、森で倒れていたところを見つかり、現在は見つけてくれた人が運んでくれた村に滞在している。

 転生の際、エロい能力を与えられた。ただし、エロいことに使うと男の象徴がもげるか最悪死ぬという。加えて、転生者だと疑われている...俺!


=========================


(転生、保護、身バレ...う~ん、実に簡潔。)

 そんな、ここ三日ほどの記憶を脳内で巡らせている俺は、今後を左右する重要な選択を迫られていた。それは、メンヒリットさんの質問にどう答えるか、というものだ。はっきり言って、即座に肯定した方が友好的な関係性を保てるだろう。なぜならば、メンヒリットさん含め他の二人も、『転生者』という単語に特に敏感なる素振りが見受けられなかったからだ。俺の思い違いかもしれないが、どうにも転生者という存在自体に慣れているように感じられる。とはいえ、そう単純な話ではない。もしここで仮に、俺は転生者です、と言ってしまえば、後々変えようにも変えられず、何か俺のあずかり知らない事態に巻き込まれる可能性がある。加えて、転生者が目の前の彼らにとっては処分対象だとしたら、俺の返答一つで今度は本当にお陀仏かもしれない。だが、ここで一番やってはいけないのが黙秘である。それは、相手にほぼ答えをいっているようなものだし、そもそも相手への印象が良くない。

 俺にしては、会話と会話の間の十秒にも満たない時間で、よくもまぁこれだけ考えられたと感心する。しかし逆に考えると、その時間ではここまで考えるくらいしか出来なかったため、それが少々悔やまれる。やはり、ギャルゲー・エロゲー・乙女ゲーの選択肢は秒数制限有りの方が面白いと思う。

「そうですねぇ...実は俺...」

 そう話し出した俺に対し、座っている三人はもちろん、未だに立ちっぱなしのフィーリアさんも、俺の次の言葉を今か今かと待っている。そして、どういうわけかカウンターの方からも妙に鋭い視線を感じるのだが...もしかして、あの人達もグルなのだろうか。一先ず俺は、自分の中で次に話す内容を整理しながら、その先の言葉を紡いだ。

「所々記憶が欠けているところがあるみたいで、ちゃんと全てお話し出来るようになるまで、もう何日か時間を頂いてもいいですか?できる限り、正確な状態で皆さんにはお話をして、それから判断して頂きたいのですが...。」

「「「「......。」」」」

 俺のそんな言葉に、誰も返事を返さなかった。俺は可能な限りを尽くして、孤独で悲壮感のある雰囲気を演出したのだが、それはあくまでついで(・・・)でしかない。本来の目的は、喋ったことに嘘を含まず、かつ時間を貰えるような言い回しで懇願する、というものだ。俺の性格上、どれだけ用意していても、全部を嘘で固めるとすぐに気づかれてしまう。それは生前、嫌というほど学んだ俺の欠点で有り、言い換えれば他者から信用されやすいという長所でもあった。まぁそれはどうでもいいとして、もう一つに時間だ。あればあるほどいいが、一先ずは転生者という存在がここではどういった立場になるのか、それだけでも知っておきたいと考えた。調べる方法は後で考えるとして、そのためには僅かでもいいから時間が欲しかった。

 俺の懇願を受け、三人は少し困ったような表情を見せたが、フィーリアさんだけ明らかに違った。なぜならば、

「そうした時間稼ぎは、どの転生者も同じなのだな。既におおよその確証は得ている。御託はいいから、さっさと貴様の口から真実を話せ。」

と言って、俺の首下に刃を近づけたのだ。その動作はまるで、剣術における居合抜きの如き速さと正確さで、俺の首から数ミリほどの間しか空いていない。慈悲や人情などは、彼女にとって吐いて捨てるほどどうでもいいことなのだろう。その現実を目の前で見せつけられた俺は、一瞬にして恐怖を感じ...そしてそれを上回る怒りを抱いた。

 はっきり言ってこいつには何の恩義もないし、そもそもメンヒリットさんが言ってくるならまだしも、なんでお前が言ってんの?最初から態度が悪いと思っていたけれど、まさか人柄全てが最悪だとは思わなかったわ。あ~、マジでこいつ絶許なんですけど~。じゃあ、今すぐテメェが俺に対してその素性全部明らかにしてみろ。そしたら俺だって包み隠さず話してやるわ。さっきの定型文より少ない自己紹介(情報量)で、俺が納得出来たと本気で思ってんのかこいつ。だとしたら、今すぐこいつの(最初は綺麗だなぁと思っていた)ブロンドの髪をひっつかんで、“俺は!こういう!ことが!出来る人間で~す!!”って自己紹介しながら、その顔面をテーブルに何度もぶつけてあげたいものだ。ん?残酷で狂っているって?んなのお互い様だろ。どこの世界に、初対面の相手の首下に刃突きつけて脅迫するヤツがいるんだよ。そんなの世紀末だけにしておけよ...。今の俺の心は、最高にホットだった。ただし、ここで頭までホットになるわけにはいかない。それでは人間としての理性ある会話が成り立たず、相互に無駄な時間過ごすことになるだろう。だから俺は、努めて真摯に振る舞った。

「僕としても、大変心苦しいのです。ですが、もしここで僕が今のあやふやな記憶を話しては、後々それが間違っていた場合、皆さんに多大なるご迷惑をおかけしてしまうと考えています。おそらく皆さんとしては、僕が転生者であるか否か、という点が重要だと見受けられます。」

「だからそう言っているだろう。だから、それくらい今この場で話せと言っている。ただそれだけだ。」

「ええ、仰ることはごもっともです。...ジェルミットさん、この場でのお話は先ほど仰っていた“都”という場所にお伝えするかと思われますが、もし仮にそれが虚偽の報告の恐れがある場合、非常に危険...ですよね。」

 俺のそんな問いかけに、ジェルミットさんは黙ったまま口を開こうとしない。それもそのはず、俺は先ほど彼らに質問の順番を“譲った”のだ。俺の返答に彼らが納得していないのならば、俺からの質問に彼らの誰一人も答える義理はないのである。しかし、そんなことは俺の想定の範囲内だ。俺は、自身の質問に対する返答は期待せず、さらに話を進める。

「そして、僕が先ほどの質問に対しはっきりと申し上げられない理由は、“転生者”という存在について知らないからです。」

「...それは、本当かな?」

 それまで口を閉ざしていたメンヒリットさんがそう呟き、俺はここぞとばかりに彼の方へと身体を向け、話し始めた。

「はい。最初は自分の憶測のみで、自身が転生者であるかどうかを伝えようと考えていたのですが、思い直し言葉や記憶を明確にしてからお答えした方が、お互いに不利益が無いだろうと判断し、時間を頂けないか進言させて貰った次第です。」

「なるほど。だが、それならば一番始めに口を開いた際、転生者について聞けば良かっただろう。なぜそうしなかった。」

 メンヒリットさんの語尾が、若干強くなっていることに気づいた。どうやら、彼も彼でフィーリアさんほどでは無いにしろ、苛立ちが先行し始めてきているようだ。しかし、それが今の俺には都合がいい。あまり恩を受けた相手にこう思ってはいけないのだろうが、俺も自分の立場を守るのに必死で、相手のことを気遣える余裕はない。だから俺は、その問いに予め準備していた言葉を返した。

「お恥ずかしながら、まさか転生者という言葉が一般的だったとは知らず、それを知らない自分が無知な常識知らずだということを、隠そうと考えてしまったのです。そこに関しては完全に僕に非があり、皆様にはご迷惑をおかけして、大変申し訳ございません。」

 そう言って俺は、フィーリアさんの剣で首を切ろうとするかのように頭を下げ、彼女も俺のそんな行動に驚き剣を引っ込めた。頭を下げる俺には他の四人の表情は見えないが、何やら小さな声で話し合っているのが僅かに聞こえてくる。

『...は...だが、...なわけには...。』

『しかし...ないだろう。』

『でも...としたら、報告は...と思うけれど。』

 フィーリアさんの声が聞こえないのは、彼女がおそらく俺の見張り役で有り、実質俺の処遇を決めるのは目の前にいる三人だからなのだろう。それに、フィーリアさん以外にも見張り役はいるようだし...。

 三人の会話が終わると、今度はヴィスさんが口を開いた。

「フィーリア、剣を下げなさい。...そして、山田さん。もう、頭をあげてちょうだい。」

 彼女のそんな言葉に、それぞれ行動を起こす俺とフィーリアさん。フィーリアさんの方を横目に見てみると、あまり納得がいかない様子が窺える。ヴィスさんはそれだけ言うと視線でメンヒリットさんに合図をし、彼はそれに頷くと俺へと身体を向け話し始めた。

「太郎君...その...まぁ、まずは私達の質問に答えてくれてありがとう。時間のことだが、それはもう少しこの場での会話を進めていって、本当に進展が無い場合のみ設ける。ということでも良いだろうか?」

「ええ。お時間さえ頂ければ、必ずやご期待に添える形で先の質問への回答が出来ると思います。こちらこそ、ご検討頂きありがとうございました。」

 メンヒリットさんにそうお礼を言う俺の心は、その殆どを“安堵”が占めていた。同時に、まだまだ質疑応答が続くことへの倦怠感と、それを打ち消そうと自身を鼓舞しようとする心がい交ぜになり、酷く疲れ始めている。だが、漸く掴んだ彼らと対等になれるチャンス、絶対に逃してなるものか。メンヒリットさんは俺のそんな反応を見て、何を思ったのか少しその表情に笑みが浮かんでいる。俺は不思議に思ったものの、ここで下手に言及し突っ込まれてボロを出すことを危惧し、その疑問は深く心の内にしまい込むことにした。“触らぬ神に祟り無し”というが、あのことわざの対象は神とかよりも、もっと身近な相手にこそ相応しいような気がする。

「それじゃあ、折角だから太郎君のさっきの質問にこちらも答えようか。たぶん私の記憶違いでなければ、二つほどあったような気がするけれど...どっちにする?それとも、二つ続けて答えようか?」

「えっと、それなら『転生者』という言葉についてだけ、詳しく教えてください。もう一つの方は、流石に僕が立ち入って良いような内容では無いと思うので、今回は控えておきます。」

「そっか...うん、了解。」

 そう言うメンヒリットさんの考えは全く読み取れなかったが、おそらく俺の判断に多少は満足したのだろう。俺としても、そんな政治方面について土足で聞き入ろうとするほど馬鹿じゃない。そもそもそれほど興味が無いし、仮に俺の予想通りこの場での会話がそのまま何処かのお偉いさんに伝えられるとしても、さほど影響はないと考えた。だって、俺みたいな存在に時間をかけるほど、政治家たぶんという人間は暇ではないだろう。だから、貴重な情報収集の場でそんなことに時間も労力も割きたくない、というのが俺の本心だ。

「じゃあ、早速転生者について話していこうと思うけど、あまり多くは期待しないでね。私も他の三人もも、その存在の全てを知っているわけじゃないからさ。」

 メンヒリットさんは、そう前置きをしてから話し始めた。...いや、完全に知っているわけでもないのにこの人達、まるで俺のことを追い詰めるかのようなプレッシャーを与えてきたの?ちょっと流石に俺の心も穏やかでは済まないぞ、これは...まぁ、別に抗議するほどの勇気も度胸も無いから、黙っているけれど...大人しく!黙っているけれども!!

「(マジで冗談じゃねぇぞ、コンチクショー...。)」

「?どうした、太郎君。...やはり、少し疲れているのかな。少し、休もうか?」

「ああ、いえ。確かに、久しぶりに沢山喋ったので口は疲れましたが、脳みそはまだ全然元気ですので、どうか話を続けてください。その方が、僕も早く色々と思い出せるでしょうから。」

 俺の言葉にメンヒリットさんは申し訳なさそうに了承すると、転生者についての話を再開してくれた。ふむ、やはり最初の印象通り、メンヒリットさんはいい人のようだ。ジェルミッドさんもヴィスさんも、今のところあまり口数は多くないが、メンヒリットさんに近しい人達なのだから、きっといい人達に違いない。だが、フィーリア。テメェは別だ...なんてね。もちろん、フィーリアさんも納得がいっていないものの、(ヴィスさんの指示だが)俺へ向けていた剣を納めてくれたし、ちゃんとした場で話せば分かってくれる人だと思う。そう、人間の中に本当に悪い人なんかいないんだ。ただ、状況と関係と時期が偶々悪かっただけで、話せばきっと皆理解し合えるはずなんだ...と、妄言を吐いてみたり。

 そろそろメンヒリットさんの話に集中しよう。聞いていなくて、後で泣きを見るわけにはいかないからな。

「まず始めに言っておくと、私も転生者だ。」

「......え?」

 メンヒリットさんの言葉に、俺はそう返すしかなかった。

太郎曰く、「嘘は一から作った話で、俺のはあくまで事実の誇張である」とのこと。だから、嘘ではないらしい...知らんけど。

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