王子様は友人です
昼食を終えた後、俺達は『集会場』に集められた。
重大な任務とか作戦とかを言い渡されるのがこの場所だ。
念の為にミーナも連れてきた、隊長の許可はとってある。
みんなザワザワしている中、入口から警備兵を連れながら王族らしき人物が入って来た。
一気に空気が変わった。
壇上に上がった王族の顔を見て内心ホッとした。
「砦の諸君、いつもお仕事お疲れ様。トワラルト国第5王子の『マーリス・トワラルト』だ。今日は君達に伝えなければならない事があったのでやって来た。あ、あまり固くならなくていいから。そういう空気が苦手だから。」
そう言うと空気がちょっと柔らかくなった。
「エライヒト?」
「偉いけどね・・・・・・、性格は良いんだよ。」
このマーリスという人物は顔なじみである。
僕が貴族学院に通っていた頃、マーリス王子と同じクラスだった。
本人は気さくな性格で親しみやすい。
「早速だけど、まずは魔族領に関して。実は不穏な話が出ているらしい。クーデターが起こる気配がある、と諜報部からの連絡があった。まぁすぐに何か起こるという事ではないので、頭の隅っこにでも入れておいて欲しい。後、これは身内事なんだが・・・・・・、我が姉であるルイーザ・トワラルト第2王女の婚約が白紙になった。」
うん、やっぱり公になるよね、もう知れ渡っているけどね。
「それに関連して、ザイド・ミスト伯爵の身柄が拘束された。国内がザワつく可能性が高いので暫くは静観する様に。」
・・・・・・はい? 拘束?
兄さん、何かしでかしたの?
あの後、部屋に戻ってきた僕を訪問者がやって来た。
勿論、マーリス王子だ。
「いやぁ、驚いたよ。ロイの隣に小さな女の子がいたから。直前にオーフィン隊長から話は聞いていたけどね。」
「一昨日の話だからね。ミーナ、挨拶して。」
「オージサマ、コンニチハ。」
「ミーナちゃんて言うんだね、こんにちは。」
マーリス王子はミーナの頭を撫でた。
「ところで実家が迷惑かけてすまないね。」
「いやぁ、たいした根性だと思うよ。王族との婚約を破棄して公爵令嬢との愛をとるなんてなかなかいないよ。余程赤い糸に結ばれているか、世間知らずのお坊っちゃんだと思うよ。」
「多分、後者だと思うよ。それでルイーザ様の様子は?」
「俺も細かい事は知らないけど、婚約破棄の話を聞いた姉さんは、部下を率いてミスト家に突撃、ザイドと話し合いをしたらしいよ。」
「部下を率いた時点で話し合いする気無いよねっ!?」
「父上も母上も止めようとしたらしいけど、ホラ姉さんは感情で動く人だし、曲がった事が大嫌いな人だから。ミスト家に関しても怪しい事が無いか調査したらしい。その結果、ザイドの学院時代の成績の書き換えが発覚した。」
「書き換え?」
「そう、首席で卒業した事が嘘だった、て言う事。わが子可愛さで教師に頼んだらしいよ。」
・・・・・・マジですか。
僕なんか首席どころかギリギリで卒業出来た身だから、余計家族の目が冷たかったんだけど、何かそれを気にしていた僕が馬鹿馬鹿しくなったよ。