1/4
1
ずいぶん前の話になりますが、私の体験談をお話しましょう。
当時の私は絵とかそういったものに凝っていまして、その手のお店をよく訪ねていたものでした。
ところがある日お店に行くと、妙に気になる絵が飾られていました。
無名の画家が描いたもので、その画力はなかなかのものでしたが、絵自体は奇妙なものでした。
若い女性がカジュアルな格好で立っている姿を描いたものなのですが、その顔がなんといいますか、ぐちゃぐちゃなのです。
右目は完全に潰れていて、その他のところも悲惨な有様でした。
――大型トラックに正面から突っこんだみたいな顔だな。
そのとき私はそう思ったものです。その絵をじっと眺めていると、店主がやってきました。
「変な絵でしょう。画力は美大生にしてはたいしたものですが」
「美大生が描いたんですか」
「そうです。しかも女ですよ。もう死んでしまいましたけど。生きて順調に伸びれば、今頃はそれなりの画家になっていたでしょうに」
「えっ、死んだんですか。これを描いた人は」
「ええ。母親だと言う人が、見るに忍びないと言って、うちに持ち込んできたんです」
「そうですか」
私は最初からその絵が気になりました。
気になって気になって仕方がなかったのです。
自分でも何故だかわからないほどに。




