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おかえりなさい、わが世界へ
長い悪夢から覚めたような心地だった。目の前には天井。白くて、無機質で、僕がよく知っている、人の経営する病院の天井だ。僕はそこで寝そべっている。
はっと息をのむ声が聞こえる。体が重たい。動かそうとしても言うことを聞かない。まるで魂が肉体から剥離していたかのような、脳と体の齟齬が起きている。ゆっくりと時間をかけて、僕は声のしたほうに顔を向ける。
そこにいたのは僕の母親だった。
「……おかえり」
母さんは目に涙を浮かべて、僕にそう言った。
「……ただいま」
母さんが伏せている僕の体に腕を回す。暖かい。暖かい。
「……ただいま」
もう一度言う。母親に向けてだけではなく。この世界に向けて。世界よ、ただいま。