親切な説明
説明回です。 能力までいけませんでした。
「まずはどしようか?」
サリアに一言相談してみる。 一心同体ということだしコミュニケーションは積極的にとるべきと思うから。
《そうね、やっぱり情報が必要だと思うわよ。 いろんなお店も並んでることだし、ちょっと尋ねてみなさいな。》
それもそうか。暮らしていくのに常識は必須だしね。 親切な人からこの世界のことを色々と教えてもらおう。
「あのお店のおねぇさんなんてどう? すごく優しそうだよ。」
僕はあるお店を指差し、サリアに提案してみた。 そこにいるのは茶髪でほんわりとした雰囲気の美人さんだ。 彼女なら丁寧に教えてくれるにちがいない。
《あんた、どこ見て判断してんのよ!? 黒装束でいろんな動物のドクロ売ってるじゃないの!! ろくな女じゃないに決まってるわ!》
うーん、その考え方は少し偏り過ぎな気がするけど完全に否定できないところが少し悔しい。でも僕はあのおねぇさんは大丈夫だと思う。 勘だけどね。
「スミマセーン。 ちょっと尋ねたいことがあるんですけど。」
「は、はい! いらっしゃいませ!!」
露店のおねぇさんは素敵な笑顔で迎えてくれた。 ほれ、見たことか。 僕の目に狂いはないのだ。
「あの、この町について教えてくれませんか?」
「ええっと、この町は初めてですか?」
「はい。 ちょっと困ってて……」
おねぇさんは一つ咳払いをしてから優しく説明してくれた。 一つ一つの仕草がかわいい女性だ。
おねぇさん(セピアという名前だそうだ)の話から分かったことをまとめると……
この町は始まりと終わりの町『スターテンド』と呼ばれて駆け出し冒険者の集まる町として親しまれているらしい。
ギルドや病院、趣向を凝らした宿に加えて学校まであるのだ。 そして、それは娯楽施設についても例外ではないらしくこの町が気に入って旅立たない人が多いのだとか。
それにしても、いくつか昔の日本の建物に似ているものがある気がするんだけど?
そんな僕の疑問はサリアの言葉によって解決された。
《スターテンドって名前で思い出しけど、たしか転生者は全員この町に生まれてくるはずよ。 ついでに言っておくと、この世界は日本人専用の転生世界だからもしかしたらこの町も日本人が作り上げたのかも知れないわね。》
なるほど。そういうことなら納得できる。 そしたら僕以外の日本人にも簡単に会えるかもしれないね。
次にお金だけど、 おねぇさんに実物を見せてもらったけど日本のお金とそっくりだった。 単位も円らしい。 違いは紙幣に描かれた人物が額の大きい順から魔王・勇者・国王となっていることだけだった。
何故か紙幣の解説時のおねぇさんが妙に上機嫌だった。いや、何故なんてどうでもいいじゃないか、こんなにも可愛らしいんだから。
問題の稼ぎ方についてだけど、18歳まではギルドへの加入はもちろん働く事さえ禁止されていて、学校へ通わなければいけないようだ。
困って年齢詐称を真剣に検討していた僕(とサリア)にセピアさんは言葉をかけてくれた。
「あの、1日だけでしたら私のお店で働きませんか?」
「え!? でも18歳までは働いちゃいけないってさっき……」
「お金に困っている様子ですし、丁度一時間ほど出かけなければいけない用事があるので、その間店番をお頼みできないかと……」
願っても無い話だ! 断る理由なんてないに決まっている!
「こちらこそお願いします!!」
これで日銭は確保できる! そう思い僕はセピアさんの好意に甘えることにした。
☆
セピアさんから商品の説明を受け、覚えきれないものは紙に書いてもらった。 まぁほとんど書いてもらったんだけどね。
彼女が扱っている商品は貴重なクスリの材料になるらしく割と繁盛していた。 人通りが多いことも理由の一つなのだと思う。
僕は接客の間に考えていたことを尋ねてみようと軽い気持ちでサリアに心の中で問いかけてみる。
──ねえ、サリア。ちょっと気になったことがあるんだけど──
《ふぇっ!? ちょっと急に話しかけてこないでよ!》
どうして怒られたのだろう? やはり女心とは難しいものらしい。
──いや、お金はなんとかなりそうだけど、家はどうしようかなって──
《えぇ、そうね。奴らには会わないようにしなくちゃ》
おかしい、どうも会話がかみ合っていない。
──サリアさ、もしかして何か隠してない?──
《…………》
…………
──実は僕、分離する方法を思いついたんだけど──
《本当!? 早くやりなさいよ! 今すぐに!》
思った以上の食いつきだ。 これなら秘密も聞き出せるかもしれない。
──じゃあ隠していることを教えくれる?──
《あのね、あのね、通行人の中に女神持ちの人間が3人いたのよ! 最初はすぐに言おうと思ったんだけど、もしかしたら私のせいでコッチの世界に来たのかもしれないし》
サリアは他の女神たちと接触し、叱られることを恐れたらしい。 しかし会ってみないことにはなんとも言えない。
《で! で! 分離の方法は!?》
──その話は後で! 早くその人たちを見つけるよ!──
「ただいま戻りました。 圭さん、お疲れ様です。 ケーキ買ってきたんですけどいかがですか?」
そこに丁度セピアさんが戻ってきた。 ありがたいけど今はそれどころじゃない!
「すいません、少し出かけてきます! なるべく早く戻ってくるので!」
急いでお店を飛び出す。
サリアがケーキに凄まじい執着をみせたことで身体が一瞬動かなかったのには驚いたけどそれ以上に僕の中の期待は膨らんでいた。
少々忙しくなってきたので二日に一回の更新を目指します。