表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

可哀想なチューリップ【ショートショート】

作者: ricoteki
掲載日:2015/08/04

チューリップが枯れていたので

わたしは、そのチューリップに言いました。


「枯れてしまって、可哀想。

あなたは、可哀想なチューリップだね。」


すると、チューリップは言いました。


「私は枯れているけれど、可哀想ではないですよ。」


チューリップが強がっているので、

わたしは慰めました。


「無理をしなくていいわ。

本当は、枯れてしまってツラいんでしょう。

チューリップさんの気持ち、

わたしには、痛いほど分かるわ。

あなたはとても傷ついているのに

本心を隠し、気丈に振舞っている。

わたしはそんなあなたを、

とても気高く感じるわ。

美しいと思うわ。

だから、決して卑屈にならないで。

自分を惨めだと思わないで。

あなたは、とっても美しい。」


「ありがとうございます。

貴方は優しい人ですね。

もちろん、私は惨めではありません。

今の私が美しいとも思っていません。

枯れている私は、

枯れている私として、私は私のことを

愛しているんです。

私の心は、いつも満たされています。」



「可哀想に、チューリップさん。

そんなに強がって。

そう言って、自分の弱い部分を

守っているのね。」


「心配して下さって、

ありがとうございます。

私は大丈夫です。」


「ツラい時は、泣いたって、いいんだよ。」


「わたしは強がっていないん

ですよ。これは素直な気持ちです。」


「世界中の人が、あなたのことを

枯れて惨めなチューリップだと

乏めても、わたしはあなたの味方で

いるわ。安心してね。」


「安心してください。

わたしの回りに、わたしのことを

悪く言う人はいません。」


「みんな言わないだけで

心の中じゃ、あなたの事を、

枯れたチューリップだって

思っているはずだわ。」


「わたしは、

枯れているチューリップなので、

それは事実だと思います。」


「チューリップさん、

あなたは何もわかっていないのね。

あなたのことを思って言うけどね、

世の中、枯れていることを笑う人は

大勢いるのよ。

枯れるいるなんて、恥ずかしいって、

見下す人は、大勢いるのよ。」


「そうですね。

そう思う人も、いるでしょう。

しかし、私は、枯れていることを

恥ずかしいと思っていません。

それは、それで、いいと思います。」


「あなたって人の話が聞けないのね。

そんなんじゃ、

友達を無くしちゃうかもしれないわ。」


「あなたはあなたの考えを述べました。

私は私の考えを述べました。

それだけの話です。」


「今は、わたしの考えを述べたん

じゃなくて、一般論の話をしているのよ、

チューリップさん。

私は、そんな窮屈な一般論から

あなたを守りたいのよ。」


「…あなたの好意は有難いのですが、

私はあなたに守られなくても平気です。」


「そんな悲しいことを、言わないで。

誰もが、孤独では生きられないはずよ。」


「私は孤独ではありません。」


「いいえ、あなたは孤独だわ。

人の好意を受け取れないのは

悲しいことだわ。

あなたは、

自分の悲しさに気がつけない

可哀想なチューリップよ。」


「…残念ですが、

あなたとお話しすることは、

もうありません。」


枯れたチューリップはソッポを向き、

それ以上喋ることはありませんでした。


ああ、どうしましょう。

このチューリップは

自分の心の弱さを認めることが出来ずに

心を閉ざしてしまった。

そして、

他人の親切な気持ちを邪険に扱う、

貧しい心の持ち主なのだ。

可哀想なチューリップ。

枯れてしまって見た目が

汚いだけでなく、心もこんなに

荒んでいるなんて。

このままじゃ、このチューリップは

幸せになれっこない。

ああ、可哀想なチューリップ。

わたしが何とかしてあげなきゃ。

可哀想。

可哀想なチューリップ。


私があなたを救ってみせる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ