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召喚勇者はロボットで女の子  作者: 乱咲恋華
4/15

召喚勇者3

「どういうことですか?」


アリスからこう返事が返ってくるのは当然です。が、返答として説明は簡単で理解させるのは困難です。


「簡潔に何故分かったかと言えばニトロの解析結果上、この空間に存在する人間、生物はアリスさんのみと出たからですね」

 「信用できると思いますか?」


 これも当然の反応かもしれません。メイド姿のアリスはいぶかしげに目を細めてニトロを睨んできます。ニトロとしてはちょっと怖いのでどんどん説明することにします。この際アリスが理解できなくともニトロには関係ありません。とりあえずここまでしたのだから、説明くらいの義務は果たす。ということです。


 「まずここ、というのはお城ですが、この世界から少し空間のみをずらした場所です。城下町などないです。もっと言えば国などありません。あと王様含めてアリスさん以外は記憶の具現化のようなものです。かつては何処かに、このような国があったのでしょう。こんな人達もいたのでしょう。でも今は人ではありません。まぁニトロも大きく見れば変わらないので、それがどうということはありませんが、問題は自由意思のあるものではないということですね。シナリオに沿ってます」


 一見して自由意思があるように見えてそうではありませんでした。シナリオを進める為に不自然な行動が多かったのです。それが仕来しきたりのなさ、に繋がっていたのかもしれません。とはいえ実際にこういった国があった可能性も否定はできませんが。


 「シナリオはとにかく魔王を倒す勇者になるのが一つ。これは王様の思考改竄に負けるような弱い勇者を落とすためですね。本筋のシナリオは王様の思考改竄から他の者を救うルートですね。この場合の結果は分かりませんが多分最終的には結局魔族領でしたか? そこに行くことになるんじゃないですか?その先までは流石に想像もできませんが」

 「……」

 「アリスさんの役目もこのへんですね。王様倒す為の手助けと、説明役かと。あとニトロの勝手な予想で申し訳ないですが、アリスさんは何らかの理由でここへ来たはいいが、そこでこのシステムに組み込まれてしまった。というところじゃないですかね。でなければこの半永久機関に幾ら召喚者が来た時以外、時間が停止するようになっていたとしても、寿命の早い生物は不必要です。まぁ排除されなかっただけ優しくはありますね」

 「……」


 アリスは完全に沈黙しています。きっと分からないのでしょう。信じたくはない。しかしアリス中でのニトロは未だ召喚された勇者様です。何かしらの説得力はあるに違いありません。しかしそれも自分の周りの世界の全否定では認めることは無理でしょう。


 「あ~アリスさん? えっと結論というかここはなに? みたいな話であれば、ここは勇者を召喚して送り出す工場ですね。目的までは分かり兼ねます。で、アリスさん、元はアリスさんじゃないかもしれませんし、何をしていた、どんな人なのかも分かりません。記録は残ってないです。初めからそんな人だったのかもしれないですし、シナリオに組み込む際その役に書き換えられたかもしれません」


 よしっ、説明完了。ここを出るかとニトロが意気込んだのも束の間です。


「なるほど理解しました」

「え?」


 これは予想外の驚きです。アリスの精神はとてつもなく強いようです。


 「自分で言うのもなんですが、アリスさんくらいの生物に、すぐに信じろと言う方が馬鹿らしいと思うのですが?」

 「いいえ、私は以前から何か自分の中で不自然さは感じていました。あとは何となくで理解しました」

 「それは理解とは言わないと思いますよ?」

 「要するに今までの生活もろもろや、私があると思っていた記憶や対王様用の異能などなかったことにすればいいのでしょう?」

 「う、う~ん。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないですし」


 アリスの態度はニトロから見て異常ではありませんが、驚きではありました。おかげでニトロの方が戸惑ってしまいます。

 挙句の果てに先刻までの驚きはどこにったのか、アリスはその美貌を最大限に生かして微笑んでまで見せます。


「ではこの際名前も変えますか?」

「ニトロに聞かれても困ります」


こうなってくるとアリスが元はどんな人間だったのか気になってくるというものです。しかし今はどうしようもありません。ニトロは記録専門なのです。調査型ではありません。


「と言いますか、アリスさん、そんなんでいいんですか?」

「もう考えるのも面倒なので」

「すごいのか? すごくないのか分かりかねます」

「ところで勇者様、この後のご予定は?」

「ここを出て行きます」

「ではご一緒します」

「まぁ、そうでしょうね。一緒に行きますか。メイド連れとかお嬢様みたいでいいですし」

「では旅の準備が必要ですね」

「なるほど、確かにですね」


 なかなか誰かを連れて行くのもいいかとニトロは思いました。身一つでどこまでも行けるニトロには、準備などという発想は出てきません。これは興味が湧くというものです。


 「それで何を持っていくんですか?」


 小首を傾げて可愛らしくニトロはアリスに問います。

 ニトロは可愛らしい系です。

 アリスとは別系統なのです。

 なので負けていません。


 「とりあえず食べ物と服でいいんじゃないですか?」

 「そうなんですか?」

 「さぁ?」


ポンコツメイドでは旅の役に立ちそうにありません。せっかくのわくわくドキドキが台無しです。


 「あ! アリスさん。よくよく考えれば準備する時間はないかもしれません。今すぐにでもここを去った方が面倒がなくていいと思います」

 「何か問題でも?」

 

 アリスが平然と聞いてきます。もうニトロの中ではアリスが分からなくなってきました。しかし聞かれたら答えるのが礼儀です。


 「アリスさんに説明する際というか今もですが、この部屋だけ干渉されないようにしているんですね。そうしないと説明した先からここのシステムにアリスさんの思考やらなんやら書き換えられて説明損になるので」


 この説明にもアリスは平然としています。びっくりどころか不気味です。


 「それでですね。結果として異物判定されまして、実力行使に段階的になるのではと」

 「段階的とは?」

 「ニトロへの干渉から始まり王様たちを使った物理行使。最終的には強制退去ですかね。干渉はすでに防御してますので、次は物理行使ですね。強制退去は僻地に飛ばされても嫌なので自分で出て行きたいです」


 強制退去が最後なのは、この空間自体が誰かもしくは何処かの機密であるだろうからですね。


 「という訳で行きましょう」

 「はい」


 ニトロはの扉を開けて歩きだします。アリスもそれについていきます。等間隔に美術品が並び、床そのものにも幾何学模様が描かれる通路はニトロが思い描くお城です。正確には宮殿ですが、ニトロ的にはお城です。これを映すことができるのが最後となるとどうしても目移りしてしまいます。要するに通路を気持ち急いで歩きながらニトロはキョロキョロします。挙動不審です。


 「何をしているのですか?」

 「素敵なお城を目に焼き付けています」

 「通路がですか? 確かに素晴らしいですがもっと芸術的に素晴らしいと思われる部屋はいくつもありますよ?」

 

 とても良い情報でした。今でなければ最高の情報でした。今すぐ見に行きたい衝動にニトロはられます。しかしニトロは大人の女性です。妥協の出来る女なのです。


 「一番近くて素敵なお部屋はどこでしょう?」


妥協の出来るニトロは渋々見学は部屋ひとつで諦めることにしました。えらい子ですね。


 「寄り道するのですか? 敵は今にも現れるのではないのですか?」


 アリスが文句を言ってきます。メイドの癖に生意気でした。


 「いや敵なんていませんよ? きっと来ないですよ? ニトロはそう願っています。なので素敵部屋を教えてくださいな。出来るメイドアリスさん。どうかお願いします」


 しかし結局のところアリスに部屋を教えてもらわなければいけないので、ニトロは遜るしかありません。現実は厳しいのです。


 「そうですか……では仕方がないので出来るメイドが案内しましょう」

 

 現実は以外にもチョロイようです。


 出来るメイドの後をニトロは付いていきます。素敵部屋はどこかな? と、ニトロは期待で心を高鳴らせます。ニトロに芸術は分かりませんが。なんだか凄い! だとか綺麗! 、位は感じることができます。それだけで楽しいのです。


 「こちらです」

 「おぉ、入り口からして違いますね」


 案内された部屋は入り口からして、先ほどの食事をした部屋とは比べ物になりません。開き扉の左右の大理石の柱は重厚感を出していますし、扉その物の細工も精緻を極めているではありませんか。正しく宮殿です。


 「では失礼して」


 扉を開け放てばそこは芸術の間です。まず目に映るのはシャンデリアです。しかし無粋で大きなシャンデリアではありません。小さく精巧なのです。また入り口と同じく大理石の柱が目に入りますが、壁の金細工やシャンデリアとの調和が気品を漂わせています。


 「天井をご覧ください」

 

 見惚れていたニトロにアリスが助言をします。ニトロは何も迷わずに言われた通りに天井を見上げました。


 「あら、素敵!」


 そこに広がるは天井画です。天使を題材にしたような絵画であり、その芸術性はもちろんニトロにはよく分かりませんでしたが、それでもニトロは素晴らしく綺麗だと思いました。とにかく言葉にも説明も出来ないニトロではありますが、ただただ感動したのです。


 「これぞ異世界ですね。いいもの観れました」

 「そんなにいいものですかね?」

 「見たことないものを観るってのは良いことだと思いますよ? アリスさんも珍しいものとか見たら感動するでしょう?」

 

 アリスはニトロをジッと見つめます。


 「……微妙ですね」

 「……なかなかに不愉快ですね。まぁいいです。では大体目に焼き付けたことですし行きますか」

 「はい。それにしてもニトロ様は大変美しいですね」

 「何故急に媚びますか! 嫌味ですか!」

 「本心を口にしただけですが?」

 「嬉しいので良しとします!」

 

 などと言いながらニトロはアリスを引き連れて部屋を出ます。ニトロは相手の言葉をまっすぐ受け止める純粋さを持っているのです。なので実際にはしませんが、スキップするくらいの気持ちで歩きます。

 二人は長い廊下を進み、何度か角を曲がります。その上さらに進み最後の角を曲がります。しかしその先は行き止まりです。何もありません。


 「ニトロ様。何もここにはないですよ」

 「ここで良いんですよ」


 目的地はこの行き止まりです。間違いではありませんでした。後は出て行くだけです。おさらばです。


 「あ!」


 しかしそう簡単には行きません。


 「どうやら、時間切れでしたか」


 ぞろぞろと、ニトロとアリス二人を追うように角から人が出てきます。先ほどまでの静けさが嘘のようです。先頭に陣取っているのは、食事時に乱入した黒服のイケメンです。後ろの方には王様も居ました。ですがみな表情に生気が見られません。見るからに操られています。


 「面倒です」


 ニトロの率直な意見です。


 「寄り道しなければ間に合いましたね」


 アリスの率直な意見です。


 「実のところ私ニトロはバトルジャンキーなのです。なので、わざと時間を調整して戦いの場を設けたのです」


 そういうことにニトロはします。なのでニトロは悪くないのです。


 「どちらにしろニトロ様のせいですね」

 「ニトロは悪くありません」


次少しバトル

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