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召喚勇者はロボットで女の子  作者: 乱咲恋華
12/15

道中2

  われは魔物である。見た目は二本の角を備えた四足歩行の偉丈夫だ。我がまだ弱かったころ、人が「ウシだ!」と言って襲ってきたことがあった。そこから推測するに我はウシと言う名の魔物だと思われる。

 我はこの森では最強である。食べるに困ることはなく、快適な暮らしが約束されている。毎日が楽しいといえるだろう。

 しかしそんな我にも悩みはある。我は最近になって【話す】という力を手に入れた。誰とでも【話】せた。我を恐れる森の畜生共。誰とでもだ。だが! しかし! 誰も我ほどの思考をもって話すことは出来なかったのだ。一度話せることに気づいてしまえば話したいと思うが自然なのだ。しかし真面まじめに話せる奴が居ない。それが悩みである。

 しかし、ただ悩むようでは我ではない。我は人のいる場所へ向かうことにした。人の劣化した畜生は森にも居たが、まるで話せなかった。やはり人と話すべきである。

 人の住む場所へ行く途中、人と出会った。これは好機である。やはり拓かれた道に出てみたのが良かったのだろう。

 人は金の毛と茶の毛の雌が2人だ。2人は我を恐れなかった。前回は随分と昔なような気がするが、人は我を見てすぐ逃げる。森の畜生共もそうであるように、よく逃げる。しかし2人は逃げない。良い話し相手となった。今までの生で一番の日であった。我は森の話をし、2人は旅の話をした。我は仰天した。世はそんなにも多彩なのかと。

 我は2人と別れ旅に出た。




 俺は何を間違ったんだ。分からない。分からない。

 勇者になりたかったんだ。それだけなけなんだ。正義感が強いね。と、母さんにも言われた。剣術は苦手だったけど一人前には成れた。努力さえすればいつかは勇者にだって成れるし、お姫様とだって出会えると思ってたんだ。

 俺は走る。ひたすら走る。こんなにも走れるなんて思わなかった。それでも走る。息が切れようとも走る。だけど……結局は倒れた。街道は走っていない。街道が見える位置ではあった。もう少し行けば魔物の森がある。広大な森だ。あそこには魔物が住むと言われている。伝説みたいなもので、誰も見たことはないけれど。

 俺は伝説を倒す。そうしなければいけないんだ。そうじゃないと国に帰れない。魔物を倒して、勇者になって帰るんだ。

 俺は立ち上がろうと顔を上げた。そこで見てしまった。魔物を……だ。街道に堂々といた。見た目は大きな牛頭だ。だけどそんなもんじゃないことはすぐに分かった。寒気がした。吐き気がした。手が震えた。心臓が縮み上がった。怖かった……。

 それでも気合を入れてよく見ると魔物の前には女の子が2人いた。お姫様とメイドだ。そうとしか思えなかった。なんでこんなところに女の子2人が? と思ったが、きっと魔物が攫ってきたに違いない。

 助けないと! そうは思ったが、様子を見ることにした。決して魔物が怖かったからではない。2人がまだ安全だから、様子を見ていることにしたんだ。もし2人が襲われていたら俺はすぐにでも飛び出しただろう。

 結局丸一日その場で様子を見てしまった。……おかしいんだ。お姫様と従者は談笑していた。魔物を交えてだ。俺の居る場所からは、内容まで分からなかったが楽しそうに話しているのだけは分かった。……おかしい。お姫様が何故魔物と談笑するんだ? 俺はお姫様を助けないといけない。だけど……お姫様は魔物と仲良くなってしまった。

 考えているうちに魔物は物凄いスピードで何処かへと消えた。お姫様と従者は街道を歩き出す。その方向は俺の住む国へと続いている……。お姫様と従者は魔物の仲間だ。その姿に騙されて門番が2人を通してしまったら? 

 ……俺は腰の剣を抜いて立ち上がる。



 

 私は13人から成る部隊を連れ弟を追っている。弟は正義感が強く、勇者に憧れる努力家だ。そして……人殺しだ。相手は悪人だ。だが私の国では相手が悪人だろうが善人だろうが、人殺しは犯罪だ。私は国外へと逃亡した弟を捕まえる為に街道を、部下を引き連れ馬で駆ける。普通は犯罪者を国外まで追いはしない。しかし弟にはしっかりと罪を償ってもらわなければならない。私は持てるコネを最大限に使い、部隊を動かした。弟は幸いにして死刑にはならないだろう。まだ若い。再起も夢ではない。こうして私自らが捕まえることに意味があるのだろうか? とも思う。 弟は帯剣しているはずだ。私がいることにより大人しくなればいいが……。

 弟を見つけた……魔物の森まであと僅か、というところでだ……しかし何ということだ! 弟が剣を振りかぶり少女2人を襲わんとしているではないか! 私は声を上げようとして……目を疑った……少女が横薙ぎに手を振った。それだけで弟が半分になってしまった……血飛沫を上げながら……だ……。何だこれは! 何だこれは! 弟の剣の腕は一流ではないが少女如きが素手でどうにかなるはずはない! ハッ……もしやあれが噂に聞く魔族なのか……? 魔族の女の容姿は男を惑わす美しさと聞く。よく見れば片方は絶世の美女だ。もう1人にしても十分に美しい。……魔族に違いない。弟の敵!

 私は部隊員に攻撃命令を出す。




 儂は人生で一番最悪な報告を聞いた。……魔族が現れた……だと! 犯罪者を追って、国外に出た部隊が、我が国に向かう魔族と接触したようだ。部隊は報告に戻った隊員以外、殺されたという。それも一瞬でだ! それも相手は少女の姿をしているという。主と従者、そう見て取れたと報告にはある。

 信じられるものではなかった。だが、放っておける話でもなかった。何故なら実際に死傷者が出ているからだ。他の幹部も同意見だった。だから殺された部隊の5倍の戦力をぶつけてみた。

 ……結果は惨敗だ……儂は確信した。悪夢がすぐそばまでやって来ているのだということをだ! 国には恩がある。国には未来がある。国には王がおる。国には息子も孫も住む。守らねばならん!!!

 相手は今まで戦ったどんな軍よりも強大なものと思うこととする! 王の許可は既に得た。

 儂は見守る幹部たちの前で軍団長として総攻撃の命令を下した。




 余はこの地の王である。代々とその意志を先代達から受け継いだ、偉大なる王だ……しかし、それも今日までか……先ほど報告があった。我が国の軍は全滅したようだ。相手はたったの2人だというに……魔族……話に聞く通りの力だったか……さらには魔物も一体戦場に現れたらしい、との報告まで上がっている。どちらも伝説級のものではないか……不運と言っていいのだろうな……。

 余は王である。民あっての王である。これからも死が余を貫くまで王である。だが、この地の王は今日までだ!

 余は訪れる危機を目前に顔面蒼白な重鎮達に宣言する。

 この地を民と共に逃げ出すことを!

 この地を捨てることを!

 しかし、いつの日か戻ってくることをだ!




 ニトロとアリスは食堂に居ました。食堂です。テーブルが5つある食堂です。きっとお店です。多分昼になると混んでいたりするんじゃないでしょうか? 味は庶民向けで、働き盛りに大人気! みたいな感じでしょうか? まぁ実際は分からないですけどね。なぜなら


 「なんでこの国、誰もいないんですか? せっかく苦労してここまで来たのにですよ?」


 大きな旅荷物の詰まったバックパックをドスンと元気よく床に下ろして、ニトロがぼやきます。アリスも同じく荷物を下ろしますが、こちらはヨロヨロです。直ぐ傍に椅子があるにもかかわらず、そのまま地べたに座り込みます。よほど疲れたんでしょうね。


 「そうですね。まぁ何故人がいないかはメンドイのでいいとして、休みましょう。あと食料を物色するつもりなら肉は止めてください」

 「まぁ、何故か盗賊? なのか、何なのか。わかんない人が攻めてきましたからね。死体を量産するつもりはこれっぽっちもないんですけど……あぁ勢いよく攻めてこられるとですねぇ」


 運が悪いのか、この国にニトロ達が到着するまでの間、良い出会いもあったのですが、それ以上に何度も襲われたのです。女の子を襲うなんて最低ですね。当然返り討ちにしました。流石はニトロです。


 「じゃあここ食堂ぽいですし、食べ物探してきますね」


 と、ニトロが座り込む、超絶美少女駄目メイドに声をかけたその時です。


 「こんなところに生き残りがいましたか。目ざわりは畜生はすべて殺したと思っていたのですが」

 「高位の魔族であるお嬢様でも見逃すことはございます。この国の人間は軍隊であろうと、あんなにも弱いのです。弱すぎて見逃すこともあります。」

 「そんなものかしら?」

 「今ここで片付ければいいだけです」

 「そうね」


 なんか食堂にお嬢様とメイドが現れました。背が高く、金色の長い髪をしたフリフリドレスを着たお嬢様です。無駄に爪が長いです。指と同じくらいの長さがあります。邪魔そうです。あとアリス程ではありませんが綺麗ですね。あくまで一般的にはですよ? 他の層では常にニトロが1位です。何の話か? 何の話でしょう? あぁ、あとメイドがいます。普通ですね。特に言うことはありません。


 「ん? 貴女……綺麗な顔しているわね。あなたから殺しましょう」

 「流石ですお嬢様」


 この2人はあれですね。自分の世界で生きている人ですね。


 「ニトロから殺されるらしいですよ。アリスさん?」

 「面白い冗談ですね」

 「……」


 ニトロの背中に隠れたアリスがニトロの、ないハートを傷つけます。いつの間に隠れたんですかね? あと隠れておきながら態度がデカいです。でも思いっきり体は震えているのでプラマイゼロです。


 「2人同時がいいいらしいわ! バイバイ!」


 爪女がまぁ、そこそこ早い速度で爪を横薙ぎに振り抜きます。距離的には届きそうにもない場所で、です。もちろん衝撃波的なものがニトロに迫ってきました。とりあえず同じように腕を振り抜いて相殺します。


 「ぎゃぁあああああああああああああ!!!!!」

 「お嬢様!!!!」


 おっと、どうやらピッタリ相殺は出来なかったようです。爪女の腕一本が消滅しています。血が肩から勢いよく流れ出るのをメイドが必死に抑えています。大惨事ですね。決してワザとじゃありません。


 「よくも!!!」


 メイドの手から炎が飛び出てきます。室内で火は危ないです。なのでニトロはサクッっと返してあげました。火だるまメイドの出来上がりです。


 「フゥー……フゥー……おのれよくも!!!! 何者か知らんが顔は覚えたぞ!!!」

 「……アツイ……アツイ……アツ……」


 女が片腕でメイドを抱えて逃げて行きました。力持ちですね。ニトロの何万分の1の力でしょうね?


 「アリスさん。……何だったんでしょうアレ? あ、食べ物探してる最中でしたね。そういえばアリスさん焼肉って知ってます?」

 「……肉だけはお願いですから止めてください」




 

 われは魔物である。旅する魔物である。だがまだ旅は始まったばかりでもある。まずはあの、ニトロと名乗る人間が言っていたように、国を探そうと思う。

 そんな時だ。急に襲われた。吃驚びっくりである。我を襲うなど生き物としてどうかしておる。しかも襲って来たのは我と同じ森に住んでいた、畜生である。我と同じような頭を持つ、二足歩行の畜生だ。四本足の素晴らしさを捨てた畜生でもある。こ奴が何故か襲って来たのだ。「偉大なる方の元についた。力をもらった。もうお前など怖くない、人間も沢山殺した」などと吠えておった。言葉まで話すのには驚いたが、意思の疎通を試してみたが吠えるだけだった。やはり畜生は畜生だ。我を襲うなど同じ頭のよしみでも許されん。その喉笛のどぶえを掻っ切ってやったわ!

  

 われは魔物だ。旅は腹が減る。動けば余計に腹が減る。畜生は不味くて食えんので他を探すしかない。

 我は運が良い。腹が減ってトボトボと歩いていたその時だ。とても香ばしい匂いが漂ってきた。林で木に隠れるように人間が居た。片腕の姿がヒラヒラした珍しい人間だ。我は話をした。その焼いた肉を少しで良い、分けてくれないか? と、だ。人間は話が出来る。出来るならば仲良くいきたいものだ。

 ところがどうした! 人間は何故か怒り狂って襲ってきたのだ。……何がいけなかったのか。

 しかし、我を襲うとは許されん。その喉笛のどぶえ掻っ切ってやったわ! 

 

  

分かりにくい?

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