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召喚勇者はロボットで女の子  作者: 乱咲恋華
10/15

魔女と魔術師とメイドとロボット4

 「はいはい、皆さん。言いたいことはあるでしょうが,静かにニトロの話を聞きましょう」


 ニトロとアリスが泊まる、スイートルームのリビングです。2人では広過ぎ、豪華過ぎの部屋ですが、今はそうでもありません。理由は複雑? 状況は簡単明解。魔女と魔術師と将軍が、1つの部屋に収まっているからです。すっごい空気がギシギシしてます。油でもささないと壊れますね。

 まず魔女と将軍が、何故! だとか、どうして! と、黙っているニトロに文句を言い募ってきました。静かに、と言ったのを聞いていなかったのでしょうか? 魔術師を見てください。静観の構えです。


 「魔女さんの持つ文書を解読すると言ったんですが、1人だけと言うのも何なので魔術師さんと、おじ様のも解読しようかと思いまして」

 「それだけの理由?」

 

 魔女が驚き満点でニトロの言葉に疑問をはさみます。ちょっと煩いですね。


 「それだけですね。それだけの理由でみなさんに来てもらったのですよ。一度に説明する方がお得ですからね」

 「説明とは? 条件等に関してか?」

 

 今度は将軍が口を挿んできます。どう聞いてもニトロは今から説明するところです。静かにして欲しいですね。魔術師を見習うべきです。

 ニトロは静粛に! と、厳かに全員に言い渡します。もちろん今回もフカフカソファーにどっぷりと浸かりながらです。ニトロはこのソファーが大変気に入りました。旅道具に加えるのもやぶさかではありません。野盗が出現する度にソファーに座って、貴様らごときが我に逆らうか! とか言ってみたいですね。その状況でなら、後ろで立っているだけのアリスも演出としてはその美貌が大いに役立ちそうです。 


 「条件は簡単、1つだけ解読してあげます。1人ひとつですよ? いい大人が我儘はいけないですからね」

 「「「……」」」


 魔女と魔術師と将軍が揃って無言で唸っています。皆さん器用ですね。

 ニトロも真似してみます。

 上手くできました。

 何も面白くありませんでした。

 なんだこれはっ! と、ニトロは憤りを無言で発します。ニトロも器用ですね。


 「そうは言ってもどの文書に何が書いてあるのか分からん。選べんのか?」

 「将軍! いい事言うわ。そうね! どうせなら新しい術式が欲しいに決まってるわ! ニトロちゃん。せめて大体何が書いてあるとか分からないの?」


 将軍の言葉に魔女が勢いづいてます。なんですかね? ニトロの言葉を聞いていなかったのでしょうか?


 「我儘言うなら解読しませんよ?」

 「「……」」


 魔女と将軍が黙ります。


 「……考えたが、俺は別にどれを解読してもらっても助かるから文句は言わん。お前達も黙って従うべきだ」


 魔女が魔術師をすごい睨んでいます。やっぱり仲悪かったんですね。それにしても、クッキリ隈さん魔術師の癖にちょっと格好が良かったです。なので、そうだー、そうだー、と小声でニトロも援護射撃しておきます。これだとニトロの援護をしてくれた魔術師をニトロが援護するかたちに成ります。面白いですね。

 

 面白いかはともかく、これで話がスムーズに進みました。魔女とは既に報酬の話をしていたので、魔術師と将軍。その2人と、その辺の話を終わらせます。しかしその後、また揉めました。解読してもらった文書は他人に明かさない。とする魔女。3人とも詳細はともかく、お互いの文書を大体の内容だけでも知っておくべきと言う将軍。そして誰であろうと完全に公開するべし、と主張する魔術師です。

 あーだ、こーだと煩かったので、結局はニトロの前で3人揃って発表会をすることで収まりました。これだと将軍の意見をニトロが押しているように見えますが、そうではありません。単純に文書を解いて何かするなら見てみたい。というニトロの単純な希望からでした。あと1人ずつ他の日、とかはメンドイので同じ日に揃って発表会となったのです。でもって、翌日からニトロの元へ文書を持って来ることが決まったところで、解散となりました。


 次の日には魔女と魔術師が競う様に文書をニトロの元へ持ってきます。解読自体は夜、寝る前にでもササッと紙にでも写すので、ニトロ的には大した苦でもないのです。なので魔女を馬車馬の如く働かせて観光をしました。大きな建物、綺麗な建物。魔導具展に甘いスイーツ。店番をする兎に戦う亀。書き間違えたのであろう結果的に意味深になった看板など、いろいろ見て回りました。

 さらに次の日には将軍も文書を持ってきました。もちろん、そんなものは後にしてニトロは観光です。

 しかしです


 「有給を申し出ます」


 将軍が帰ったと思ったらこれです。

 先日服屋で買ったばかりのピンクで星模様が可愛らしい、パジャマアリスがそんなことを言い出します。


 「有給も何もアリスさん仕事してました?」

 「メイドっぽく後ろで控えているのが私の仕事かと」

 「……」


 ニトロは否定できませんでした。仕事の出来ないアリスですが、後ろに控える。それだけは完璧です。しかもそれだけでニトロの格も上がって見えるので、凄まじい効果です。アリスが居るだけでニトロはどこへ行ってもお嬢様扱いなのです。要するにニトロは御満悦なので有給を出さざる負えません。金塊で良いですかね。


 「有給は了承しましたけど。観光しないんですか? 一緒に行きましょうよ」


 なんだかんだで連れは多いに限ります。話し相手は欲しいですよね。ちなみに魔女はガールズトークが出来ないので微妙です。 


 「では行きましょう」


 いつものメイド服と澄まし顔でアリスが答えます。いつ着替えたんでしょうね?


 「流石はアリスさんです。出来るメイドは違います」

 「流石はニトロ様です。見る目が違います」


 仲が良いのは良いことです。言葉通りですね。この調子なら、これから数日も楽しい観光が出来そうですね。


 「……私も居るんだけど……」


 魔女はガールズトークの練習が必要ですね。





 散々観光して、遊んで食べて更に何日も経ちました。いよいよ発表会です。それにしても発表会と言うと、なんだか凄そうじゃないですね。発表祭とかで良いですかね。規模が大きくなった感じがします。


 「では私から解読結果を発表しよう」


 円卓から立ち上がった将軍が堂々と宣言します。場所はホテルの会議室です。当初はニトロの部屋で今回の催しが行われるはずだったのですが、残念ながら魔術的な機密性が低いとかで、この場に変更となったのです。

 スイートルームの魔術的機密性が低い……悪意しか感じないですね。ギルティです。


 「ニトロ殿が解読した結果。私が持ち込んだ初代魔術師が書いたと思われる文書は――」


 ちなみに文書は読めないくせにサインは読めるそうで、それで遺産を判断しているそうです。


 「――嬉しいことに術式だった。それも聞いたこともない飛行術式だ。試した結果、完全に使いこなせることさえ出来れば、飛行速度、機動制能が今までの50%は上昇する見込みだ。しかもこの飛行術式、魔女や魔術師しか使えない複雑怪奇なものではなく、ある程度の修練を積んだ者ならば扱うことが出来る。というとこりが素晴らしい。この事実により我が軍は飛躍的な戦闘力の増強が出来るであろう」


 どうだ! と言わんばかりの言い切った顔で将軍がどっしりと腰を下ろしました。大変男らしくてカッコいいと思います。


 「詳細を説明しなさいよ! 具体的にはどんな術式なのよ!」

 

 魔女です。


 「50%だと……いったい……」


 魔術師です。


 「え? 実際に飛ばないんですか? それだけですか? すごくつまらないんですけど」


 これがニトロ。


 「会議室で飛べと言うのは無理があるでしょう。と言いますか室内で発表する時点で術式が手に入ったとしてもライバルの前で使う気なんてないですよね? 気付かなかったんですか?」


 そして佇むメイド。


 「……騙されました。と言いますかアリスさん。どうしちゃったんですか? 頭良さげですよ? 見た目通りですね。はい、つぎー」

 「詳細は!」

 「言う訳なかろう」

 「だからつぎー!」


 ちょっと、ごちゃごちゃしてきました。会議みたいです。勝手なイメージですが。ここが会議室でよかったですね。

 魔女が将軍から詳細を聞き出そうと躍起になっています。研究者然としている魔術師よりも魔術に貪欲ですね魔女。だから魔女なのでしょう。よく分かりました。しかしだからと言って、はい、どうぞと喋る将軍ではありませんよね。傍から見ると魔女が駄々をこねているだけです。ニトロの言葉なんて聞いていません。ニトロは温厚で上品な、お嬢様ロボットではありますが、我慢の限界があります。そんな中、アリスに続いて暫定2位のマイペースこと魔術師が立ち上がります。猫背です。長身が台無しです。


 「俺が解読してもらった文書も術式だ。当たりを引いたと言えるだろう」


 魔術師が一旦言葉を切ります。魔女が静かになりました。流石、貪欲な魔女です。貪欲に聞き耳を立てています。魔術師、声小さいですしね。


 「どんな術式なのだ?」


 将軍はちょっとせっかちですね。将軍なんて立派な役職なんですからもっと、どっしりと構えていてもらいたいものですね。


 「簡単に言えば通信だ。とは言え一方通行だが――」

 「それだと現在使われている術式より劣っていないか?」

 「いや、もっと言えば記録したものを送ることが出来る。違うな端的に言うとだな――」

 「まだるっこいわね! 早く教えなさいよ! 何がすごいのかを!」


 煩い魔女に目を向けずに魔術師が口を開きます。


 「――そう、なんと! 映像を送ることが出来る! ということだ」


 ニトロは訝しげに魔術師に視線を送ります。ちょうど今回の催しは失敗だったなーとニトロは思い始めていたので、新しい刺激は望むところではありますが、魔術師が胡散臭いのでついついこの様な目つきになったのです。


 「ニトロさんには後で説明しよう」

 「じゃあいいです」

 「では実際に術式を今この場で使おうと思う」


 お、実践してくれるようです。これは面白そうですね。

 見る分には低レベルの【霊子操作】であろうと工夫があればニトロ的には面白いので良いですね。真似しろと言われたら吐き気がしますが。


 魔術師がローブから古そうな如何にもな、小さな杖を取り出します。そして目を閉じました。そして数秒、杖が複雑な軌道を描きつつ振るわれます。するとどうでしょう。円卓の中央が光り出し、魔術師が光の中から出てきます。スッとです。決して這い出してはいませんよ。


 「立体映像ね。素晴らしいわ。幻影の曖昧さがない。現実感があるわ」


 評論家の紫魔女です。偉そうです。

 

 「戦闘用としては身代わりくらいしか思いつかないが、娯楽に使えば文化の発展は確実だろう。しかし一般の魔術師程度では相当の修練を必要とするのが問題ではある」


 話したのは映像の魔術師です。映像も声が小さいです。ボリュームの調整は出来ないんですかね? 出来ないとしたら確かにこれは問題ですね。魔術師限定ですが。


 「また普段言いづらいことも一方通行なため言いやすいだろう。……たとえばそうだな魔女」


 普段言いづらいことを実践してくれるそうです。悪口ですか? 陰湿すぎません?


 「なによ?」


 映像に向かって不機嫌な表情を作って見せる魔女もなんだか滑稽です。


 「……ふぅ……」

 「あ、嫌な予感がします」


 ニトロです。


 「魔女よ! 結婚してくれ!」


 その声はとても大きく男らしいものです。背筋もどことなく伸びているように見えました。何ですか……ボリューム調整要らないみたいですね。 



 



 

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