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第一話 拾われて、救われて

毎日更新 20:00に更新予定 全10話

読んでくださる皆さんが笑顔になってくれれば光栄です。

誤字、脱字、感想等ございましたらどしどしお書きください。

それでは皆さん、ほっこりしていってね!

 ある晴れた日の公園にて、わたしはもの凄い速さで空を飛んでいた。いや、正確に言うと男の子がわたしを握ったまま公園中を走り回っていたというべきか。


 ママからはぐれ、一人でいたわたしを捕まえておもちゃにしている男の子に一言いいたい。強く握りすぎて痛いです。もっと優しく扱ってくれないと圧死しちゃいます。


 ああ、それにしてもお腹が空いた。もう三日も食べてない。この子の手から脱出する力はわたしには残されていなかった。


 わたしは死んでしまうのだろうか。死ねばママに会えるのかな? だとすれば早く死にたい。

 そんなことをぼんやりと考えていると、誰かにふと呼びかけられた。


「ちょっと、その子かわいそうやん。ボクはその子飼う気あるんか?」


 わたしではなく男の子が声をかけられたようだ。公園にはいつの間にか女の人が入ってきていた。


 少しキツメの口調で話しかけられた男の子は返事に困ってしまった。手にじんわり汗を掻いているのが体越しに伝わるのですぐに分かる。


「飼う気ないんやったら、おばちゃんに渡してくれへんか? おばちゃんがうたるから」


 しばらく男の子は迷う素振りを見せたが観念したのか女の人に近づき、わたしを手渡してくれた。男の子もわたしがおもちゃではなく生物いきものであることが分かっていたようだ。解放してくれてありがとう。


「かわいそうに、こんなにボロボロになって……おばちゃんの家に連れてったるからな」


 女の人の腕の中は温かく、ついうとうとしてしまう。極限状態になると生物いきものは眠くなるみたいだ。


 


 

「ついたで子猫ちゃん、ここがわたしの家よ」

 

 うっすら瞼を開ける。ほうほう、ここが女の人の巣か、どれどれ……にゃあ? 大きい! 人間は車の下とかには住まないとは聞いていたが、まさかここまで巨大な巣に住んでいるとは。種族間のギャップを感じる。


 女の人は巣の中に入る。右も左も分からないわたしを連れ女の人はさらに進む。大量の段差を下り、広々とした場所に出る。うわあこれまた大きい! わたしには何に使うか分からないものも多かったが、とにかく広いことだけは分かる。


「うわ! お母さんその子拾ってきたん?」

 

 動く絵の箱を見ていた男の子が近づいてきた。ふむふむ女の人はオカーサンというらしい。


「うん、あまりにもかわいそうやったから。はい、とりあえずミルク」


 オカーサンは平たい何かに白い液を入れて目の前に置いた。母乳か? あいにく母乳は卒業している。それに、今は食べ物が食べたい。


「あれ、飲まへんな。もしかしたら具合悪いのかも知れんな、病院連れて行ってくるわ」

「そうやな。あ、この子目一つあらへんで!? ……決めたこの子の名前はマサムネや」


 目が見えてない? ああ、この膜のことか。これは風邪を引いたときに出る膜で、目を保護してくれているのだ。目がないわけではない。あと、マサムネ? 何だそれは、もう少し違う名前がいい。


「これは、膜張ってるだけや思うで。ほら……とれた!」


 オカーサンはお湯で湿らせた布でわたしの目を拭いてくれた。おお、見えるようになったぞ。

 ついでに体中も洗ってくれた。くすぐったかったが、ママの舌を彷彿させてくれる。案外気持ちのいいものだ。


 お母さんはわたしをカゴのようなものに入れると、家を出た。少年よもっといい名を考えておいてくれよ。

 

 しかし、ビョーインとはいったい何か。そしてこのカゴは妙に居心地が悪い。落ち着かない臭いがする。巣の中も微妙に嫌な空気を感じたのだが、いったいあれはなんだったのか。まあ、わたしの思い過ごしだろう。




 

 ビョーインとやらは凄まじかった。わたしと同じ猫やら、天敵の犬やらであふれかえっていた。


「帰りたいよう!」 「注射は嫌だああ」 「出せえ、ここから出せえ!」


 なんだかよく分からないが皆さんご愁傷様。わたし? 鳴く元気もなかったよ。そもそも上手く声が出ない。


 しばらくすると、オカーサンがわたしを奥へと連れて行った。目の前には白い服を来た女の人、なるほどこの人がビョーインというらしい。変わった名前だ。


「子猫ちゃんを拾ったんですね、飼いはるんですか?」

「はい。でも、この子ミルク飲まないんですよ。病気じゃないかと心配で……弱ってるみたいやし」

「どれどれ、ちょっとお口触るから我慢してね……あ! この子歯が生えてますね、ちょっと体重量ろうか?」


 ビョーインはわたしの口から手を離す。むむ、何だその台は。そんなものに私を乗せてどうしようというのだ。


「230グラムか、かわいそうに満足にえさ食べてへんかってんな」

「先生この子生まれてどのくらいか分かりますか?」

「歯が生えてることから考えて、生後六週間ぐらいやと思います。体重は平均の半分ですね、ミルク飲まへんのはこの子がもう乳離れしているからですよ」


 ビョーインはわたしの目の前に平たいものを置いた。おお、上に何か乗っている! 美味そうじゃないか。腹が早く食べ物を入れてくれと催促している。わたしは遠慮なんかせんぞ? とりゃあ! 


「こらこらそんな頭突っ込んでかきこまんでもええがな、誰も盗らへんのやさかい。

 これからこの子には離乳食を与えてあげて下さい」

「分かりました。ああ、よかったご飯食べて……ちょっとあんたそれは皿やで? 食べられへんがな」


 この平たいものは皿というらしい、ガジガジ噛んでみたがものすごく硬い。なるほど、皿は食えないのか覚えておこう。腹はふくれた、満足満足。


「あと血液検査しときましょ、病気あると困るからね」


 ビョーインはわたしをすっと持ち上げると、鋭利な物体をこちらに向ける。

 は、謀ったな!? これは罠だったのか。今ならわかるぞさっき皆が騒いでいた理由が!


「はい、終わったよ。えらいね、全然暴れへんかったやん」


 ビョーインが暴れる隙すら与えてくれなかっただけだ。くそ、腹がカユイ。


「あとこの子ノミがおるみたいやから、ノミ薬出しときますね」


 首筋になにか液を垂らされる。何だ? いったい何をしたんだ? こういうときは舐めて排除するのが一番……アレ? 届かない、おのれビョーインめ。





いかがでしょうか? 続きが気になる方はブックマークしてもらえれば大変嬉しいです。

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