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第7話 九重優のピンチの脱出方法

潤が桐島を不幸を呼ぶ妖精だと信じてしまって、潤はオレの背に隠れているのを男子は目を血走って、眉間にシワを寄せていた。


「こぉ~こぉ~のぉ~えぇ~っ!」


男子は一斉にオレを呼んでいたのでオレは、いつもの真顔の表情のまま、首を傾げ、『何?』と言った。呼ばれたから答えたにすぎないオレなのである。


その男子の異変にビクビクしてしまう潤。オレの袖を掴む力が強くなっている気がするが

こんなに弱々しいヤツだったけか?


「あーも、男子っ!夕崎さんが困っているでしょっ!九重くんはいつも通りの真顔だけど、困っているよっ。多分・・・」


女子はオレの表情を読みとってオレが困っていると言うのだが、発言に力がなく、本当に困っているのか?と疑っていた。それもその筈、真顔でずっとクラスの連中に接していたからな。そして、クラスの連中はそんなオレの表情に慣れて普通に話してくれるのだ。


「でもさ、何で桐島の事を避けようとするんだ?あ、さては、お前・・・」


男子による怒りの矛先はオレから桐島に向けられた。何も事情を知らない桐島はというと・・・


「えっ?!えっ?!し、知らないよっ!何もしてないよっ!」


顔を横にブンブンと振り、潤に何もしていないと男子を説得するのだが、確かに何もしていない。あ、待てよ?あの時の話をするか?

オレは、とある記憶が脳内にヒットし、その内容を口にする。


「そういえばさ、朝にさ。この子の名前を無理やり聞こうとしてたじゃん。ナンパみたいにさ。それを思い出して怖がってるんじゃないか?」


そう、朝の出来事だ。これで一応辻褄が合う話となった。

今日たまたまこのクラスに転校生としてくる夕崎潤という人物がこの高校への道のりが分からなくなっていたのを、たまたまオレが見つけて案内して、桐島がたまたま発見し、桐島が夕崎潤の名を聞きたがっていて、それに夕崎潤はビビり、今会った桐島を見てそれを思い出して今至るという物語が出来上がっていた。


「うっ!そ、そういえばそうだったーっ!」


桐島は頭を抱えて、今朝の悪行を思い出したご様子。

これにてオレと潤との関係が特に深くないとと確認出来た所でオレは安堵するが、潤は言わなくてもいい事を言いやがったのだ。


「あっ、あのっ!そ、その人は妖精ですよっ!語りかけられて、何かしらの反応を示したらダメになっちゃいますよっ!」


オレが潤に伝えた桐島の情報を皆に言ってしまったのだ。皆は、キョトンとした表情で潤を見るのだが・・・このままでは潤が変なヤツだという誤解が生じてしまう。電波女なのだが、その情報はオレの胸の中にしまっておく事にした。


「え?え?ち、違うの?優が教えてくれたんだけど・・・」


潤は皆の表情を見て、何かがおかしいと感じたのか桐島が妖精ではないのかと確認するが、皆は顔を横に振る・・・そして、桐島はというと・・・


「こ、こ、こぉこぉのぉえぇぇーっ!夕崎さんに変な事を吹き込みやがったのかーっ?!」


桐島はカンカンに怒っていて、ギャアギャア喚くのだが・・・男のくせにネチネチうるさいヤツだ。だからモテないのだ。あ、オレもモテないが・・・オレの事はそっとしておけ。


あ、そういえば桐島と話をしなければなかったな。


「うん」


何も反省の色を見せず、真顔のまま桐島の質問に答えてやったのだ。


「素直かっ!だからあんなにビクビクしている訳だっ!」


ツッコミ役の桐島のツッコミが炸裂。皆はオレ達の漫才?を見てクスクス笑っていた。潤もそして濱田さんもだ・・・やはり濱田利香の笑みは和むなぁ~・・・だがしかし、そんな可愛らしい濱田さんの事を諦めなければならない。一度しか告白していないが、濱田利香は他に好きなヤツがいるらしい。そんな濱田利香をオレは応援するしかない訳なのだ。


「しかしだな・・・だからって、あの時俺のスネを蹴り上げる事はないだろうがっ!九重っ」


桐島はまだオレに文句があるらしく、何故スネを蹴ったのかと怒った表情でオレに文句を言うのだが、事情を知らないクラスの連中は首を傾げ、『九重くんが暴力?珍しい~』とざわざわする訳だ。


「お前のナンパに怖がっている人を守りたかったから。それ以上の理由があるか?」


オレはいつもの真顔の表情を浮かべ、真っ直ぐな目で皆の目を見て、理由を言った。そして、女子達は頬に朱を浮かべて


『九重くん、カッコイイーっ!』


黄色い声援をオレに送ってくれたのだ。オレは照れ隠しのつもりで真顔のまま頭をポリポリと掻き


「いや~。照れるな~」


いつもの声を発する。他の者がこの発言を耳にしたら・・・


「照れてるのか?!それでっ」


いつもと変わらないオレの変化に男子は一斉にツッコミを入れるのだが・・・オレはボケ役になったのはいつからだろうか?うーむ、記憶にない。


「えへへっ。えへへへっ。優のクラスは面白いねっ。私、このクラスに入れて良かったよ」


潤は無邪気な笑みを浮かべ、純粋に楽しんでいた。その笑みを見た男子は頬に朱を染めて潤の事をじっと見つめていた。おっと、女子も一部頬に朱を染めているヤツもいるが、潤の事を受け入れてくれるのなら、関係ないさ。


しばらくクラスの連中と潤とで雑談を交わしつつ、一時間目の授業が始まろうとしていたので、その授業の準備をしつつ、担当の先生を待ち、ようやく一時間目の授業が始まったのだったーーーー。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

時は流れ、昼休み。

いやいや、一時間目と二時間目の授業は大変だったぞ・・・


潤は教科書を持っていなくて、オレに教科書を見せてくれと潤に頼まれて、オレと潤の机を互いにくっつかせて、教科書をその間に置き、一緒に教科書を見るという傍から見たら、羨ましい光景を男子は怒り狂った表情でオレを睨んでいるのを知らんフリして授業に集中したという出来事があったのだ。


「ねぇねぇ、優っ。一緒にお弁当食べようよっ」


そんな思い出に浸っている中、潤はピンク色の巾着を持ち、オレと食事がしたいご様子なのだが・・・この発言を耳にした桐島はというと


「なぁなぁ!俺も混ぜてくれーっ!」


弁当箱を手に持ち、笑顔をオレ達に向けて、潤との関係を深めたいのか一緒に食事をとろうと言うのだ。仕方なく、机をくっつけてオレ、潤、桐島は食事をとろうとするのだが・・・


「おれもー」「俺だってー」「ズルいぞー」


ゾロゾロと男子がオレと潤の元へ集合するのだが・・・男子はニヤニヤしていた。気持ち悪い笑みだが・・・何故そんな笑みが出来るのか分からなかったオレ。


「うぅっ。こんなにたくさんの人の前で、落ち着いてお弁当が食べられないよ・・・優~、助けてよ~」


潤は視線をあちらこちらへと移し、挙動不審になってしまうが、潤は男性が苦手なのだろうか?だが、もしそうならオレも苦手となる。ならば、人見知りか?うーむ、まだまだ潤の事がよく分かってないなオレ。


「だそうだお前ら。人の意見は尊重して、散れ」


オレは潤の頼みを聞き、男子にお願いを頼むのだが、男子はムッとした表情でオレに反論したのだ。


「えーっ?!何でさーっ。俺達も仲良くなりたいぞーっ!」

「そうだそうだーっ。夕崎さんは転校生だし、少しでも学校に慣れさせないとだなーっ」


男子はブウブウ文句を言うのだが、何故オレに文句を言うのだ?潤に文句を言えよ。しかし、潤に大勢の人で押しかけるという行動はいただけないぞ?男子よ。


「ちょっとぉ!いい加減にしなさいよっ。そんなにデレデレしちゃってっ!二人とも困ってるから桐島くんも夕崎さんから離れなさいっ」


女子全員がオレと潤を助けてくれて、男子は渋々自分の席に座り、弁当箱を広げ黙々と食べていたのだ。

オレは女子に感謝の意を現し、オレは飯を食べたかったので母親作の弁当箱を広げ、潤も同時に弁当箱を広げていくと・・・


「あれ?夕崎さんと九重くんの弁当の中身同じだね?どうして?」


女子の二~三人がオレ達の近くに残っていて、オレ達の弁当箱の中身が見えたらしいが・・・その中身がヤバかったのだ。オレと潤の弁当のおかずは全て同じであり、しかも配置すらも同じ。まるでオレ達の弁当を作った人間が同一人物かのように。


それもその筈、母親が作ったからだ。潤は料理は大の得意の分野らしく、本当は作りたかったと言ってきたが、母親の過保護により子供の面倒を見るのは親の仕事と言い、母親がオレ達の弁当を作ったのだが・・・癖か何かなのか、弁当の中身は一緒なのだ。


しかし、言い訳が見当たらない。潤の本当の両親は居ないし、育ちの両親もどこかに行っているらしいから、どうにも出来なかった・・・


「た、たまたまじゃないか?」


焦りが生じたが、いつもの真顔で女子に接したのだが、女子は、首を傾げ、更に疑問をぶつけてきた。


「だとしても、おかずの配置も同じだし・・・」


ぐうの音も出ないとはこの事だろう。おかずの配置すらも指摘されては・・・くそ・・・この際、開き直ってやるっ。オレの思考回路がショートし、勝手に口を開いてしまったのだ。


「まるで同一人物が作ったかのように、か?・・・フッ。面白い冗談だ」


オレは無意識に喋ってしまい、口元を緩ませ、笑顔を見せてしまったのだ。高校入学して初めて見せた笑顔なのだ。その笑顔を見た女子はというと・・・


「キャーッ!九重くんが笑ったーっ!」

「見た?ねぇ、さっきの見たーっ?」

「うんうんっ!かわいかったよーっ!」


黄色い声を上げて互いを見つめ合って、オレの笑顔が衝撃的らしく大騒ぎな訳なのだが・・・オレが笑う事がそんなにおかしい事なのだろうか?あ、てか、最近こうやって笑ったのいつ以来だったけな?中学・・・いや、小学生ぐらい以来だな。


別に暗い過去はないし、ただ真顔で接するのが癖になってしまって、感情を剥き出しにする事が少々少なくなっただけなので、心配ご無用だが・・・まさか濱田さんにフラれた理由は、オレがこんなんだからなのだろうか?


しかし、もうどうでもよくなった。好きになってくれないから好きにならないという訳ではなく、自分に自信がなくなってしまったのだが、だからって恋愛しないという事はしないので心配ご無用という訳だな。


「皆ーっ!九重くんが笑ったよーっ!一瞬だったけどっ」


女子はクラス全員にオレが笑ったという情報を伝え、クラス全員はオレの元へと集まり、マジか?とか笑ったのか?等々・・・を言い、オレが笑うという驚きの情報を信じてなかったのだが・・・オレの事を何と思っているのだ?人間だぞ。


「こ、九重っ!あの時のように、無邪気に笑ってくれるのかっ?!」


オレの過去を知っている唯一の人物である桐島がオレの笑顔を見たさに、詰め寄ってくるが・・・顔を近づけさせるなよ・・・ハッキリ言って気持ち悪いぞ・・・


「・・・お前がスカイツリーの頂点で命綱なしで逆立ちしていたら、腹を抱えて笑ってやるさ」


オレは真顔のままで、桐島の願いを叶える為にとても優しい条件を出してやったのだ。これ以上の優しい条件なんて、ないも当然だ。


「死ぬわっ!」


桐島は、オレが出した優しい条件を断り、ツッコミを炸裂させ、クラス全員は大爆笑し、ぼのぼのとした昼休みは終了したのであったーーー。


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