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第6話 九重優は優しい人?

男子による、変な言いがかりを言われ続け、途方に暮れたオレを、とある救世主が救ってくれたのだ・・・その人物とは・・・


「あーも、男子っ!九重くんはそんなに下心をむき出しにして女子には接しないんだよっ!だからあなた達はモテないのよっ」


「そうよそうよーっ。少しは九重くんを見習いなさいよーっ」


女子だ。中学から一緒だったヤツも高校から知り合った女子の救いもあった。特に面識がないヤツからの救いもだ。何故、オレの事をそんなに信頼しているのだろうか・・・オレ、何かやったっけな?女子に信頼されるような事を・・・記憶にないな。


「うっ!な、何で九重の味方すんだよっ!」


「そうだそうだーっ!」


男子は思わず反論。だが、女子もそれに反論するのか、男子の前に詰め寄る。それが嬉しいのか男子はニヤつく。


「そう、そのニヤニヤしている顔!気持ち悪いのよっ!でも、九重くんはねっ!」


今度は女子全員、オレの目の前に立つ。オレは、その予想も出来ない女子の行動にキョトンとするしかないのだ。


「見てよっ!なんかポカンとしているだけよっ」


キョトンもポカンも同じ表現なので、特に気にする事はない。しかしだな・・・濱田さんをだな?なんとかしてくれよ・・・ずっと気まずいままなんだよ・・・でも、どうする事も出来ないし、何も言えないのでそっとしておく事にした。


「くっ、九重っ!覚えておけっ!」


男子は、捨てセリフを吐き、自分の席に着席し、女子に負けた・・・弱いのなお前ら。

まぁ、それはともかく、女子はオレを救ってくれたのでお礼を言う事にしたのだ。


「なんだか知らんが、ありがとな?皆のおかげで、救われたよ」


真顔でお礼を言った。そして、女子は大慌てで両手をブンブンと振り、気にするなと言い、自分の席に着席したのだ。もうそろそろ朝のホールルームの時間だしな。


ちなみに、ホールルームとは、小学校や中学校で言う、朝の会や帰りの会という、十分程度の連絡事項とか時割変更とかを話す時間の事を示す事だ。


学校ごとにそのホールルームの開催される日にちが違うらしいが、オレの高校では、学校が休みの日以外毎日開催される訳だ。連絡事項や時間割変更に関する事がなくても、それがないという再確認もとれるという教師の案で今至るという訳だ。


そんなこんなで数分後に、教室の扉が開き、オレ達の担任である吉村よしむら明日香あすか先生が登場した。

美人でおっとりした口調で話すというのんびりとした人で、男女問わずに大人気の吉村先生。身長はやや高い170センチぐらいで、スタイルはスラッとしていて、髪型はショートカットにしているがそれが異常に顔と相性が抜群であり、教師の間でも人気があるのだそうだ。


「はぁい。それでは朝のホールルーム始めまぁす。時間割変更は、ありませんので通常通りとなりま~す」


のほほんとした声が教室に響く。ある一部の男子はニヤつきながらも吉村先生の話を聞いていて、それを見ている女子が苦虫を噛んだような表情で見ているという日常を淡々と過ごし、オレは吉村先生の話を聞く事にした。


「それと重大な連絡事項がありま~す」


吉村先生はのんびりとした声で重大な連絡事項があると言い、オレ達は何事かと構えるのだが・・・吉村先生のその反応では、大したことないと思われるぞ?いつもの、のほほんモードだしな。


「なんと、このクラスにぃ~?転校生が来ました~っ」


『え?!!』


吉村先生の発言に耳を疑うオレ達。転校生がこのクラスに来るという嬉しさと期待が込められた声を上げる男子。それもその筈、女子だからだ。それ以上の理由はあるか?


「それでは、どうぞぉ~」


吉村先生の声は、その転校生の耳に入ったのか、転校生がオレ達の目の前に姿を現す。その人物はオレがよく知っている・・・潤だ。


『おーっ!』『キャーっ!』


男子は雄叫びを上げ、女子は黄色い声を上げ、オレは無言。別に嬉がる事はないが、まさかこのクラスとはな・・・しかし、設定上では漫画のような展開だな。


転校生がこの学校へと向かったのはいいのだが、道が分からなくて途方に暮れていたのを、たまたまオレが発見し、転校生を道案内してあげ、何とか学校へとたどり着けた。そして、その転校生とたまたまオレと同じクラスになった、というベタベタの転校生フラグを立たせた。という認識がクラス全員に渡ってしまったのだ。


「ゆ、夕崎、潤ですっ!よろしくお願いしますっ!」


潤は頭を下げてオレ達に挨拶。黒板に名前を書いて自己紹介をしないというのは、少々いただけないが、緊張の余りそれを忘れてしまったのだろう。


「はぁい。よく出来ましたね~。それでは、夕崎さんの席は・・・」


吉村先生は辺りをキョロキョロと見渡し、潤が座るべき席を探し、そこに座らせようとするのだが、そうはさせまいと思ったのか、潤は・・・


「あっ、優~っ!同じクラスだったんだね~っ!奇遇だね~っ!」


無邪気な笑みを浮かべ、オレに向かって手を振るのだが・・・男子の目線が痛いのは気のせいだろうか?うむ、気のせいだ。


「あれ?九重くんを知っているの?なら、九重くんの隣に座る?ちょうど隣が空白だから、机と椅子を用意しますね~」


吉村先生は机と椅子をオレの席の右隣に置き、そこに潤はチョコンと座る。


「えへへ~。さっきぶりだねっ。優~」


無邪気な笑みをオレに見せる潤・・・そして男子の痛い視線を感じるオレ・・・一体どうしろと言うのだ?答えが分かるヤツは、すぐにオレに教えてくれ。


「おう、さっきぶりだな」


模範解答が見つからず、いつもの真顔スタイルで応対。この時、笑いとか表情を変えようとしたのだが、いつもの癖で真顔になってしまった。


「はぁい。今日は、朝のホールルームはここまで~。じゃあ、一時間目の授業が始まるまで、夕崎さんと仲良くなりましょ~う」


吉村先生はそれだけを伝え、教室から出た。すると、クラス全員潤の近くに集まる訳だ。


「ねぇねぇっ!なんで九重くんの名前を知っているの?」


「ズバリ、九重くんとの関係は何ですかー?!」


そしてオレと潤との関係を聞く女子。ってか、話を聞いていなかったのか?こいつら・・・ただ道案内してあげたというのに・・・


「え?あの、その・・・」


優はオレをチラチラと見て、女子の質問に答えようとするのだが・・・あの事は忘れていないよな?あの約束を・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーー

side 九重 優 (今朝)


「絶対に誰にも、オレの家に住んでいるという事は言うなよ?そして、家族という事もだ」


制服を身に纏ったオレは、同じく制服を身に纏った潤に、注意をする。


「何で?」


潤はキョトンとした表情を浮かべつつ、首を傾げ、オレの質問の意味が分かっていないご様子。マジか?こいつ・・・


「・・・はぁ。いいから、絶対に言うなよ?分かったか?」


アホっぽい潤に、誠意を込めてお願いした。すると潤は、納得出来ない表情を浮かべ、頭を立てに振り、オレはその仕草を見て、潤を信じたのだ。


ちなみに、有希や両親にも、ある程度口止めした。何故なら、家族が急に一人増えた事を疑問に思った人が警察か何かを呼ぶ可能性があり、オレ達が誘拐か何かをしたという誤解が生じる為だからだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

side 九重 優 (現在)


さぁ、あの約束を守ってくれ。

オレは必死に願う。そして、その願いは・・・天に届いた。


「い、いや、今日会ったばかりだし、特に深い関係ではないよ~。本当だよ~?あ、それから、名前は自己紹介してもらったから、それで知る事が出来て・・・ね?優」


潤は両手をブンブンと振り、オレとの関係を皆に伝える。しかも、オレの願いも叶えてくれた。しかし、ここまでは順調だ。だが、やはりかと言いたくなるような質問をある女子がぶつけてきた。


「え?じゃあ、何で名前で呼んでいるの?しかも、呼び捨てで」


そう、呼び方の問題だ。異性同士が名前で呼び合っている法則性は、恋人かもしくはそれに準ずるもの。つまり、幼なじみとか友達以上恋人未満の関係。そして、家族だ。


だから女子による呼び方の質問の返し方が検討つかず、アタフタしていた。家族だから、という答えがあるのだが、オレの願いでそれを封じた為、潤はパニックだ。


はぁ、仕方ない・・・オレが言ってやるか・・・


「そいつは男女問わず呼び捨てで名前を言う癖があるらしい」


『え?』


いきなりオレが答えてやったので潤も疑問の声を出した。すると潤は、はっとした表情を浮かべ、口を開く。


「そ、そうなのっ。わ、私、そういう癖があるので・・・」


オレの嘘に潤は、乗っかる。よし、打ち合わせはなかったが、いい作戦だぞ?潤よ。


「へぇ~・・・なら、九重くんを見て、かわいい笑顔を浮かべるの?ずいぶん楽しそうに、まるで・・・」


女子は更に質問するのだが、ヤバい所まで来たな・・・あの言葉に続くのは多分だが『恋する乙女のように』だと思われる。

女子の心は有希や部活の仲間にて勉強になったので大体分かるようになってきたので、オレは口を挟んだ。あ、それと度々すまんが、部活の事はもう少ししたら語るので待ってくれな。


閑話休題。


「明るい性格だからだろ?」


いつもの真顔の表情でただの推論を披露。それに乗じて潤は、コクリコクリと頭を頷く。

すると納得したのか、全員はコクリと頭を頷き、潤とオレとの関係がただの友達以下の存在という誤情報を信じ切っているご様子。


「私、少しでも友達を増やしたかったから・・・だから呼び捨てにしちゃえって思って・・・ダメだったかな?」


潤は、クラス全員に上目遣いをし、その目を男子は顔を真っ赤にさせてじっと見つめていた。その反応を冷たい眼差しで見る女子。うーむ、たかだか潤を見ているだけなのに、そんな事されなくてもと、同情してしまったのだ。


そして、その言葉を聞いた男子達は、一斉に自己紹介し、名前だけを言い、我先に呼び捨てにされたいが為に、多数の人間が一人の女の子に迫るという暴走をし始めたのだ。


「お、俺っ、桐島聡っ!聡と呼んでくれっ!」


桐島はオレと同じクラスなので、潤に自己紹介するのだが、すっかりオレが忘れていた事があった。それは・・・桐島が妖精という設定だ。(※第5話参照)


「・・・っ!」


潤は、桐島に話しかけられたから驚いてしまい、潤はオレの背に隠れて、フルフルと身体を震わせ、オレの袖を掴むという男性ならばドキドキする仕草を見せる。が、オレは別に何とも思わないのだ。が、潤がオレに頼っている姿を見た男子は、更に暴走する事を、想像出来ると言えば出来たオレなのであったーーー。


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