第3話 今日から同棲生活を
どもども、最近寒いですよね。
雪が積もって車でどこにも行けない・・・
だからコタツの中で丸くなっています。
はぁ、コタツはいいよね~。
我が家の玄関の扉を開き、その玄関前に佇んでいた来客は・・・
「こ、こんにちわっ。そして、さっきぶりだねっ!」
自分の事を宇宙人と豪語する微笑みを浮かべた電波女。オレは一旦、玄関の扉をバタンと閉めた。
「ゆ、優?さっきの人誰?スッゴくかわいい人だったけど・・・し、しかも、む、胸が大きい人」
「知らん。そして気のせいだ」
妹の質問に嘘をつくしかないオレ。先程あの電波女に命を狙われたばかりなのに、はいどうぞと我が家に招き入れるのはバカだろう。でも、客人だから再び玄関の扉を開く。そして、その玄関前に佇んでいる客は・・・
「もぅっ!ヒドいよっ!いきなりバタンだもんっ!」
頬を膨らませて、怒っている電波女。可愛らしい仕草なのだが、なんかムカつく。
「すまんな。で、何用かな?」
ムカつくが怒るのも男として、いや人としてどうかしているので、普通に接してやった。
「あ、あの・・・そのぉ・・・」
電波女はモジモジして顔を俯かせ、上目遣いでチラチラとオレを見てくる。あ、ちなみにオレの身長は165センチぐらいで、電波女の身長は低めで、150センチ代だろう。なのにセクシーな身体つきだ。十五センチ程の身長差が生じて今至るという訳だ。
「き、今日からここで住まわせていただけませんか?」
「「「は?」」」
先程の電波女の発言を聞いたオレと、もっと話を聞きたいらしくて、いつの間にかオレの後ろにいた有希と母親のアホな声をあげた。
「そ、そのね・・・私には深い理由があって・・・だから・・・そのぉ・・・」
「あ、あの~。立ち話は止めて、一旦家に上がらない?話はそれからにしましょう」
電波女の話を遮って母親は我が家のリビングへと電波女を招待する・・・のだが、マジでか?何故、急にオレの家に住みたいという案が出たのか知らんが、またオレを殺そうとするのだろうか?
とりあえず、家族全員リビングに集合。ソファーに座り、黒いロングコートを身に纏った電波女はキョロキョロと家を見渡す。
「・・・ほう。この家に住みたいと言ったのか?このお嬢さんは・・・」
事情を知らない父親に俺達は電波女の事を全て話す。だが、肝心の何故この家を選んだのか。家出でもしたのか?等の疑問が生じてしまう。
「は、はい。事情がありまして・・・」
「その事情とやらを話してくれ。話せられなかったら、すぐに警察を呼んで保護してもらう」
父親のプレッシャーはヒシヒシと感じてしまう。こんな父親は初めて見た気がする。いつもは体育会系なノリで根性だの努力だのと暑苦しい言葉ばかりしか言わなかったのだが、今は違う人物のようだ。
「はい。私が物心ついた時・・・両親が亡くなったそうです」
『?!!』
いきなりの重い話だ。ま、まさか、こいつにそんな重い話があるとは・・・
「それで、親戚に引き取ってもらえたのはいいのですが・・・あまり私の事を良く思っていなくて、私の世話をしてくれませんでした」
キツくて重く、そして暗い過去だ。多分その過去の出来事で電波女になってしまったというのか?
「そして、私が邪魔に感じたらしく、次から次へと私は親戚中の家にたらい回しされるように他の家に追い出されて・・・ついには、こんなに大きくなったからって今の家から外に放り出されました」
『?!!』
邪魔だから外に追い出すという外道な奴らが許せなかった。オレは頭に血が上り、両手で拳を作り、怒りのあまり震えてしまっている。
「なら、今から警察呼んで、ソイツを・・・」
「ムダです。今、その家は、もぬけの殻で家具も何もありません。幸いな事に、私の着る衣類とか必要最低限のモノはありますが・・・でも、家の人はどこかへ逃げたんだと思います・・・けど連絡手段がないから・・・その人達がどこにいるのか知りません」
まさしく外道だ。同じ人類として恥ずかしい。いや、人類ではない。人の皮を被った悪魔だ。まだ子供なのに追い出す親がどこにいるのか?そんな奴はいない。でも、その被害者がここにいた。
「そ、それでですね「分かったからもう言うな」あ、はい」
電波女の名前を遮って父親は言葉を発し、電波女の話を止める・・・しかし、これはあまりにもヒドい話ではないのか?
「とりあえず、事情は分かった。そしてこれからも言わなくていい。それで、何故ウチを選んだ?」
事情を大体飲み込めた。後は、何故オレの家に住みたいのかという疑問なのだ。
「・・・その人に命を助けてもらったから・・・」
電波女はオレに向けて指を指す。両親や有希は唖然とした表情でオレを見る。
「どういう事なの?優」
有希は首を傾げ、オレに事情を聞きたそうにしていた。オレは、電波女が車にひかれそうになったのを助けた事を掻い摘んで話してやった。もちろん、命を狙われた話はしない。そんな話をしたら、オレの信用はガタ落ちだからな。宇宙人と名乗る目の前の奴に殺されそうになっただなんて、オレだって信じられないし、オレの見られ方が変わってしまう。おそらく、変人扱いされるだろう。
「「か、カッコイイ~っ」」
母親と有希は甘い声を上げてオレを褒める。照れるじゃないか。
「わ、私、今まで、ぐすっ、優しくされた事が、うぅ・・・なくって・・・それで・・・」
電波女は涙を流しながら自分の想いをオレ達にぶつける。そして、両親の答えとは・・・
「「合格!!」」
暗い過去を聞いた両親は、我が家に住んでもいいと了承。それを聞いた電波女はというと・・・
「あ、ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!」
何度もお礼を言って、何度も頭を下げる。なんだかこっちが電波女に悪い事をしたような気分になったのだが、気のせいだろうか?
「大丈夫だから、ね?今日からあなたは私達の娘よ。そして、ここがあなたの家よ。自由に使ってもいいから」
「は、はいぃっ!ありがとうございますっ!」
母親の母性本能が働いたのか、すぐに電波女を我が娘とした。
「今日から、パパの事はパパと言いなさい」
父親は、娘が出来たからか無邪気な笑みを浮かべてながら親指を立てて、泣いていた。
「えぇ~・・・お父さん、やめてあげなよ。この女の人が困っちゃうじゃない・・・」
そんな娘想いの父親を蔑んだ眼差しで見つめていた。
「わ、分かりました・・・ぱ、パパ」
「あ、ありがとーうっ!」
電波女は早速、父親の事をパパと呼んでいた。だが、恥ずかしいからか顔を真っ赤にして俯いていた。
「じゃあ、私の事はママね~」
「は、はい・・・ま、ママ」
母親も父親に引き続き、自分の事をママと言って欲しいと頼み、電波女は真に受けてママと言ってしまった。
すると、母親は『キャーっ』と黄色い声を上げ、頬に朱を浮かばせ、クネクネと身体を動かし、照れる。
そんなこんなで電波女が我が家の娘になったという事が決まったのだが・・・
「なぁ、自己紹介から始めようや・・・まだ名も知らないヤツを自分の娘にするか?」
「「「うっ!」」」
両親と有希は家族が一人増えた事によって、そんな事はどうでも良かったらしい。てか、名前は一番必要だろうが・・
「こほん。それでは、私の自己紹介を始めさせていただきます。潤です、よろしくお願いします」
電波女・・・いや、家族公認で娘になったから、潤と言おう。潤は、頭を下げて自己紹介した。だが、苗字を名乗っていないぞ?
「なぁ、苗字は?」
「え、えと・・・夕崎・・・です」
オレが苗字を尋ねると若干間を空けて苗字を答える潤。何か都合があるからかもしれないが、人の過去は探索してあげない方がいいだろうな。
「夕崎・・・そんで、『潤』と書いて『うるう』か~。じゃあ、潤は何歳なの?」
有希は潤の年齢を気にしているらしく、首を傾げて質問。すると、潤は、十五歳と答えた。要するに、オレと同い年だそうだ。
「え~?!と、年上に見えな~いっ!私より身長低いのにっ・・・(む、胸は私より大きいけどっ・・・)」
有希はブウブウ文句を言う。有希の身長は150センチ代なのだが、潤の方が頭一つ分くらい低いのだ。だからといって、文句を言われる筋合いなんてないだろうが。
まぁ、それはさておきだ。オレ達も軽く自己紹介し、潤には敬語を話すなと家族全員で釘を差した。両親曰く、のんびり過ごさせたいし、敬語なんか使っていたら疲れるだろうからと、潤の体調及び精神面の管理を家族で見る事を約束された。
「あ、ありがとうっ、ママっ、パパっ」
「キャーっ!またママって言われたわーっ」
「わははっ。パパはご機嫌だぞーっ!」
両親はママやパパと言われた事によって、嬉しがる。はぁ、もう勝手にしてろ・・・
ずっとギャアギャア喚いている両親と潤を見つめていると、ふと、ある疑問が脳裏に過ぎった。
「で?学校はどこだ?ここでも通学出きるのか?」
そう、潤が通っている学校の行き先である。
「え、えと、じ、実は、雷鳴高校という学校に明日から転入する事になったんだよ。あ、手続きとか制服とか色々私の方でやったのでご心配なく」
雷鳴高校・・・オレが通っている高校の名前だ。たまたまなのだろうか?今日たまたま会ったオレの命を狙う電波女が家に来て、なんやかんやで娘になったり、オレが通う高校に転入するという・・・何か作為的なモノを感じるのだが、そっとしておこう。
「じゃあ、私、荷物持ってくるからっ!」
「ちょっと待て。車があるからそれで運ぼうか?」
潤は荷物を取りに行くと我が家を出ようとするのだが、父親はそれを阻止し、車で荷物を運ぼうと提案。だが、潤は・・・
「ううん、大丈夫だよパパ。荷物は軽いモノだし、それに・・・家を見せたくないから・・・」
色々と都合があるらしく、一人で行けると説得。オレ達は納得し、潤は、我が家を出て荷物を取りに行ったのであったーー。