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#8 新生活

「月見里 萌仁香よ。よろしくね」


「は、はぁ・・・」


月見里 萌仁香。年齢16歳。海聖のスーパーコンピューター化した頭脳でスキャンしたところ身長146cm。子供だ・・・小学生だ。誰もが思う感想だ。


しかし、これでも地球を一極支配している日本の国家プロジェクト“多次元日本救済計画”の欠かせないメンバーの一人であり、超能力という人外な能力を有している数少ない新人類の一人である。


「それで、本当にそんなこと思ってたの?」


「う、うん」


「ばっかじゃないの?」


ただいま海聖は綾菜と宮下亮哉と呼ばれる多次元日本救済計画メンバーが急遽設立した日本陸軍特務部隊隊長、そして多次元日本救済計画の実質リーダー的な見た目小学生の月見里萌仁香の3人と一緒に綾菜の家にいる。


「いや、だって、そんな事聞かされてないし・・・てっきり俺一人で暴れまくって解決で終わるかと思ってた」


「・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・・」


3人とも同じ意見。こいつ馬鹿だとか阿呆とかそういうレベルじゃない。

呆れて言葉が出ないのだ。


「・・・・ねぇ、海聖?」


「なんだ?」


半分呆れて半分憐れんでいる綾菜がある事を尋ねる。


「本当に・・・その、勉強的な意味で成績が良かったの?」


「ああ。脳みそをスーパーコンピューター化させているから、未解決問題である婚約数は無限に存在するかを12秒で解けたぞ」


「あの時の話を出したか・・・さすが史上最強のカンニング王ね」


海聖の過去を知る萌仁香は額に指を当てて呆れが増している。


それに対し宮下と綾菜は何の事だかさっぱり。

婚約数が無限に存在するか?なにそれ、おいしいの?


「何を言っているのかわからないから、もう少し解りやすく言ってくれないかしら?」


「円周率を10分かけて12京ケタまで計算したぞ。ほかには曽呂利新佐衛門の指数関数の1年後の米粒計算を0.000000(以下略)2秒で演算したぞ」


指数関数。どんどん累乗になっていくやつね。たしか一日目は一粒。二日目は2粒。三日目は4粒。4日目は8粒って増えてって・・・40日後には日本国内の米が無くなるという逸話だったかしら?


「あのね・・・海聖」


「なんだ?」


「そういうのをね・・・一種のカンニングって言うと思うよ」


一般的にカンニングとは自分の頭を使わず人のテストを見るというのが正解だが、今の世代計算機は小型化し手のひらサイズの携帯電話で計算ができるほどだ。


さらに言うと英語も国語、化学など、あらゆる科目が3G回線でインターネットがつながっている携帯で答えを得ることができる。


「カンニングとは、自分の力を使わずに卑怯な手を使って答えを得ることだろう?俺は自分の能力を無駄なく使い、それによって答えを得たのだ。これのどこがカンニングなんだ?」


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


再び3人とも同意見。呆れて言葉が出ない。


「・・・あの核君。そういうのをチートっていうんだ。うん。他の人にはない力を使うこと自体が問題だと思うよ」


宮下亮哉。自力でここまで上がってきた彼はとてもとても為になる事を言うのだった。


「で、そこら辺はおいて、私達技術支援チームがここに来た以上、海聖を好き勝手にはさせないわ。海聖には私たちの管理下に置かせてもらうわ。文句ある?」


「いや、特にないが・・・」


続きを言おうとしたのだが海聖は言葉を詰まらせた。

海聖を管理下に置く。つまり目の見える範囲で海聖を置いておくということだ。

じゃあ、綾菜はどうなる?

俺がいなくなったら余計に危なくなるのではないか?そう考えていた。

再び拉致され、この目で現場を見ることはなかったが顔の傷、背中の細い傷跡。思想犯収容所でひどい事をされたのは見なくても解ることだ。


「でも・・・綾菜はどうなる?」


「えっ?」


いきなりの言葉で綾菜は動揺した。海聖がいなくなるような気をしていた綾菜だったが、まさか自分の心配までしてくれるとは思ってもいなかった。


「こいつが、思想犯収容所でひどいことをされていたのはその現場を見ていない俺でもあんたらでもわかるだろう」


綾菜はその言葉に唇をかみしめ下を向いた。


「こいつがこうなったのは俺の所為で、そして、俺達多次元日本救済計画のメンバーの所為じゃないのか?」


「・・・・・そうね。でも安心なさい。ここはもう北日本じゃないのよ」


「ど、どういうことだ?」


「カーテンを開ければわかるわ」


そう言って海聖はカーテンを開けて外を見る。

そこにあった光景は


「・・・・嘘だろ?」


「言った通りでしょ?」


ついさっきまで俺達を助けてくれた特務部隊しかいなかったはずだった。

だが、上空には埋め尽くすばかりの爆撃機とヘリ。そして地面には埋め尽くさんばかりの陸上部隊だった。


「そんな、音は聞こえなかったぞ?」


普通これだけの大軍が進軍していれば大音量で聞こえるはずだ。

更に言えば、住民たちがその姿を見て騒ぎだすだろう。


「消音装置や光学迷彩でもつけていたんじゃないかしらね?」


「ACMか・・・」


ACM・・・Attack Counter Measureの略で日本語に訳すと攻撃妨害装置。

その中に光学迷彩や消音装置が含まれる。


両方とも敵軍が攻撃をするための証拠を消し去る物だ。光学迷彩は姿を。消音装置は音を。

証拠がなければ敵は攻撃をしない。つまり敵の攻撃を未然に妨げる。そこから攻撃妨害装置と付いたのだろう。


「これも多次元日本救済計画の支援品の一つよ。この前の小規模な武力衝突は大規模な武力衝突に変わるわ。そして、敵軍はこの新兵器により混乱。もう、ここは北日本じゃないのよ」


「・・・・・うそ?」


「本当だ。もう、ここは北日本じゃない。俺達の言う事を信じてくれ」


手を握り締めガッツポーズをとる宮下亮哉。その隣で小学生のように頭を撫でなでされる萌仁香。


「・・・やったな綾菜」


「・・・・海聖!!!!!」


「うをっ!!」


綾菜は嬉しさと感動のあまり海聖に飛びついた。本日二度目。


「よかった。よかった。これで、ここの日本人移住区の人たちも安心して暮らせる」


「・・・うん。よかったな」


そう言うと海聖は綾菜の頭を撫でた。


「子供じゃないよ!!」


「悪いな」


「でも、来るならもっと早く来てほしかったな」


「・・・・・ゴメンな。もっと早く来れば綾菜の父さんも母さんも助けられたのに・・・」


「いいよ。もう、過ぎた事だから。今は・・・平和な日本に暮らせる事だけでうれしいから」


「そっか・・・」


綾菜は他の二人に見られているという事を気にせず海聖に抱きついていた。


「・・・お、ゴホン」


「「あっ!!」」


その恥ずかしさに気付いた二人は一気に背を向けてはなれた。


「若いっていいですな」


「あんたもまだ27でしょ。おっさんですか?」


なんだかんだいってこの11歳離れた犯罪レベルコンビも仲が良かった。






――――――2050年9月

大規模衝突がNATO(主に日本軍)の大勝利に終わりSTOの勢力を北海道と東北地方、北関東まで押し返し、首都であった東京を日本は取り戻した。STOは日本支部を札幌へと転居し、国境沿いでは大小の武力衝突が絶え間なく続いている。


「さぁ!!行くわよ」


「はいはい」


海聖は相変わらず綾菜の家に住み込んでいるが、前とは変った生活をしている。

海聖は多次元日本救済計画メンバーによってつくられた特務部隊隊員の一人として、そして日本の学生として生活を始めた。


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