#6.5 閑話
「お前いつまで泣いてるんだ?」
「ご、ごめんね」
「いや、謝れとは言ってないが・・・」
「あの・・・・再会したばかりで悪いんだけど・・・・ちょっと席外すね」
「あ、ああ」
泣いていたやつが突然もぞもぞとした動作をして走り去って行った。
「なんなんだ?」
俺には女という生物が理解できない。笑ったり泣いたり怒ったり・・・喜怒哀楽が激しいというか・・
その頃
―――――思想犯収容所廊下
「はっ、はっ、はっ」
今私は人生最大のピンチを迎えています。
えっ?さっきの尋問の事じゃないのかって?残念です。それではありません。
「は、早くしないと・・・」
私は朝の8時から夜になるまでずっと尋問。まだ顔とか背中とかいろいろ痛いけど、今はそれどころではありません。なぜなら・・・
「も、漏れちゃうよ!!」
ずっと拘束されていて、身動き一つできなかった。トイレにも行かせてもらえなかった。
変態趣味どものあいつらは私が漏らすとでも思っていたのかしらね?
でも、さすがに我慢の限界。よく海聖と再会した時に気が緩んで洩らさなかったかと自分でも感心感心。
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「遅いな?・・・10分以上たったぞ?」
俺はスーパーコンピューター状態の脳みそで時間を確認した。
「・・・しっかし長いな・・・この時間ならトイレ行っても大丈夫か。うんこしたくなったし・・」
そう言うと海聖はトイレを探しに出かけた。
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「はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・なんで、トイレがないのよ!!」
海聖と別れてから10分は経ったと思う。
いくら探してもトイレが見つからないのよ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・だ、ダメ・・・も、漏れちゃう・・」
何でトイレが見つからないのよ!!
心の中で文句ブツブツ垂れていた私にも希望という物があったのね。
「あった・・・・男子トイレだけど」
この際仕方がない。プライドも捨ててやる。
男子トイレに入った瞬間ものすごい自分に対する失望感とかいろいろ混ぜ込んだ感情が心をうごめいた気がしたがそんなこともうどうでもいい。
「やった・・・・和式だけど・・・」
そう言うと綾菜は鍵もしないですぐ手前のトイレに入った。
「・・・トイレ発見」
海聖はそう言うと男子トイレに入って、すぐ手前の扉に手をかける。
「うんこうんこうん・・・・こ・・・・」
「えっ?・・・・」
やべっ!!鍵閉め忘れた。
そう思った綾菜はすぐさまに扉の方を向く。そこにはよく知った人物が・・・・いた。
「「・・・・・・・・」」
沈黙の10秒。なんか・・・水の音が聞こえる気がするが・・・
「悪い」
ガチャン
「・・・・ひっひっ・・・うわああああああああん!!!!」
「ご、ごめんなさい!!!」
俺は速攻で扉越しで土下座した。
「ひっく・・ひっく・・ひっく・・うわあああん」
「悪かった!!俺が悪かった。だから泣きやんでくれ!!」
必死の思いで俺は謝るがトイレの中にいる綾菜は泣きやんでくれず許したとは言い難かった。
「か、海聖に、み、見られ、見られた。も、もう、お、お嫁にいけない・・・よ」
「うっ・・・」
「海聖のバーカー!!死んじゃえ!!ひっぐ・・・えっぐ・・・馬鹿あああああ!!」
「悪い!!本当にすまなかった」
「ヤダヤダ!!絶対許さない!!」
もうやけくそだ。
「お嫁でも何でも取ってやるから許してくれ!!悪かった」
「ひっくひっくひっく・・・・えっ?い、今なんて、い、言った?」
「えっ?許してくれ?」
「いや、その前に・・・なにかすごい、事聞こえた気が・・・」
「何言ってたけかな?」
俺のスーパーコンピューターの脳みそでも忘れることあるんだな。
「・・・でも、なんか嬉しいこと言ってくれた気がするからいいけど・・・・」
「良かった。なら早くトイレから出てきてくれ。俺大きい方したいんだ」
「トイレ・・・?ふーん・・・そう。他にトイレ開いてないってことよね?」
な、なんか綾菜さんすごいダークなんですけど・・・
「ああ、そうだけどってここしか大きいの出来ないから早く出てきれくれ」
「・・・・ダメ」
「はあ?ちょい待て!!俺に生き恥をさらせと?」
さすがに冗談が過ぎるんじゃないか?
「私は生き恥さらされたようなものよ!!あんたに・・・お、おしっこ知ってるところ見られたんだからね!!」
「それについては謝っただろう?」
「う、うるさい!!そこで自分の罪を償いなさい!!」
「ちょっと待ってくれよ!!やばい!!頭まで出てるから!!早く出て!!」
俺は必至に命綱にでもすがるような思いで懇願する。
だが、その願いはことごとく打ち砕かれた。
「ダ~メ♥」
「そんな時にハートいらないから!!マジで勘弁してくれ!!」
「や~だ(^_^メ)」
「ホントに俺が悪かったから、一生言うこと聞くから!!出てくれ」
「あら?人に頼む時にしては言葉遣いがなってないわね」
ドSすぎます。ホントにドSすぎますよ綾菜さん。
「ト、トイレをぼ、僕のためにあ、開けていただけないでしょうか?」
「却下!!」
「これでも満足しないのかよ!!」
「もう少し丁寧に言いなさい。名前と様が足りないわよ」
「あ、綾菜様・・・ぼ、僕のためにトイレを開けてはいただけないでしょうか?」
「ぷっぷっ・・・」
「・・・・・(こいつ・・・・)」
爆笑してんじゃねえ!!
「なんか言った?」
「何も言ってねえよ」
「却下・・・」
「ちょっと!!」
こうして海聖は綾菜に20分もトイレを開けてもらえず苦しみ抜いた末に立ち小用トイレで
したのは別の話。