表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/29

#6 救出

「・・・ネットワーク侵入開始・・・検索・・・エンジェル対策本部」


今や脳みそがスーパーコンピューターとなった海聖はSTOのネットワークに侵入し“エンジェル対策本部”を検索している。


「・・・“エンジェル対策本部”各当3件・・・エンジェル・・・北日本人民解放戦線せん滅作戦時に現れた新型完全自立機動型アクトロイドのコードネーム・・・写真閲覧・・・俺の事か!!」


脳内描写された写真は明らか自分だと解るような写真だった。


「・・・動画・・・ああ、あの時のか・・・成程・・・ん?」


脳内再生された動画の最後には綾菜が海聖を運んでいる姿が映っていた。


「成程・・・これで俺はあいつの家にいたのか・・・まてよ?」


“エンジェル対策本部”・・・それはコードネーム“エンジェル”と呼ばれる新型完全自立機動型アクトロイドと思われている海聖の対策を練るために設立された物。

海聖についての情報が少ない以上、調べなければならない。

つまり、エンジェル対策本部の連中にとってはこの動画に映っている綾菜を取り押さえればいい。

そして彼女から情報を聞き出す。


「・・・・マジか!!探さなくては」


海聖が色々調べた結果、STOがしている事はアメリカがしていること以上に非人道的だ。

自分達に逆らう者達の情報を仲間から聞きだすためには死なない程度に殺す。殺人未遂にあたる程度の事を繰り返し、思想犯の烙印を押された物はシベリアへ抑留される。そしてシベリア開拓のためにこき使われる。


シベリアの開拓された土地は人口超過を起こしている中国人の新しい土地となる。中国人の繁殖の仕方はゴキブリレベルだ。


「もしかしたら綾菜も・・・」


エンジェルの情報を聞きだすためには殺しはしないが相当ひどい事をしているに決まっている。ましてや日本人を恨んでいる中国人や朝鮮人のやることだ。爪をはいだり、歯を抜いたり・・・別の方面へ行けば強姦もあり得る。


「そんな事はさせない!!」


海聖は脳みそをフル稼働させる。

あさる所はSTO北日本支部のコンピューター。その中からエンジェル対策本部についての情報を探り出す。


「エンジェル対策本部・・・重要参考人物もしくは調査活動について、またはそれと酷似した内容へ絞り込み検索・・・・・」


傍から見ればさっぱり意味のわからない事を言っており、いわゆる電波人間という烙印を押されてもおかしくない状況なのだが、海聖はまったく気にせずブツブツとつぶやく。


「見つけた・・・重要参考人については思想犯収容所において尋問をせし・・・・成程」


ならばすることは一つ。スーパーコンピューターと化した脳みそをこれだけうまく使う方法はないだろう。


「クラックする・・・STO本部・・・・STO北日本支部・・・思想犯収容所・・・」


STO本部のコンピューターをクラックしそこからさまざまな情報から

思想犯収容所という単語を絞り込む。


最終的に行きついた思想犯収容所。どの収容所にも思想犯管理のために監視カメラが仕掛けており、警備室のモニターで全て管理できるようになっている。


「・・・・これじゃない・・・・これじゃない・・・」


日本中の思想犯収容所に映る監視カメラをその情報処理能力を活かし、確認中である。

どこに綾菜がいるかを・・・


「いた・・・・綾菜が泣いている」


海聖が探し出した監視カメラの動画には、拘束服を着せられ、椅子に縛られ、泣いている映像だった。海聖は無意識のうちに手を握っていた。その手は汗でしめっている。


「待ってろよ・・・・場所は・・・・この近くか・・・」




その頃

――――思想犯収容所

(なんで?私達がいつ悪いことしたの?ここにいる人たちがいつ悪いことしたの?)


あちらこちらで聞こえる平手打ちのような音。そしてそれに続く叫び声。


地獄―――――

人々は厳しい責め苦を受ける世界を地獄と呼ぶ。綾菜がいまいる思想犯収容所は正に人々が地獄と呼ぶ世界に一寸の狂いもないだろう。


「た、助けてくれええ!!!」


「吐け!!」


「ぎゃあああああ!!」


ビシビシと鞭打ちの音や鈍器で殴るような音が絶えず聞こえてくる。綾菜は聞きたくないと願っても聞かざるをえない。なぜなら手足は椅子に縛られているからだ。寝たくても眠れない。耳を塞ぎたくても塞げない。


(海聖・・・・)


一か月と数週間位しか過ごしていないけど、彼がいた日々がどれだけ幸せだったか、彼女はその世界と離れて実感した。


(助けてよ・・・)


綾菜は今何もしゃべれない。下を噛まないように口の中に猿轡さるぐつわを噛ませられている。

そんな届くはずもない願いは、何処かで運命の歯車を回していた。たった一つの鞄と一枚の紙によって・・・


(・・・何この音?)


無数に聞こえる乾いた音。それに続く叫び声。しかし、その声が独特だった。


(・・・・日本人じゃない?)


「た、助けてくれえええ!!」


ふと、綾菜が閉じ込められている牢屋の前を四つん這いでのたうち回る警備兵。


「ひ!!し、死ねええええ!!!!!!」


怒り狂ったように銃を乱射する警備兵。残念ながら綾菜のいる位置からでは警備兵が何に恐れて発砲しているのかが理解できなかった。


「や、やったか・・・」


目の前の男・・・名前も知らない、知りたくもない警備兵の顔は安どに満ち溢れていたはずだった。その笑顔は僅か数秒で崩れ去った。


「悪いな・・・俺のこの翼はそう簡単に破壊されないぜ。とりあえず、綾菜を返せ!!」


背中には巨大な翼。腕はガトリングガン。左手には速射砲。そして体内に内蔵された無数の兵器。海聖は自分の能力“メタモルフォーゼ”を無駄なく使いこなしていた。


「ぐわああああああ!!」


綾菜の目の前でハチの巣にされた警備兵はもう二度と動くことはなかった。


「綾菜・・・・大丈夫か?」


「ふがふが・・・・」


猿轡のせいでまともに喋れないのに、さらに泣いているため余計に何を言っているか解らない。


「・・・感動の再会がこんなんじゃ台無しだ。今牢屋を開けてやる」


そう言うと海聖は牢屋の鉄棒を握りだし曲げ始める。その動作にはさすがの綾菜もびっくりしていた。


「ぷはっ!!」


海聖は牢屋をこじ開け拘束されている綾菜を解放する。


「大丈夫か・・?」


「はぁはぁ、だ、大丈夫なわけないでしょ!!!!」


綾菜は何故か海聖に八つ当たりをしてとびついてくる。


「おいおい、いきなり飛びついてくるなよ」


「ううう、うう、ううううう・・・・ううわあああああああああ」


「・・・・もう大丈夫だ。安心しろ」


いつもの日常では考えられなかった。泣き叫ぶ綾菜の身体を抱いた時、彼女の身体がこんなにも小さいとは・・・


「こ、怖かったよ・・・・さみしかったよ・・・・嫌だったよ・・・・」


「ああ・・・よく頑張ったな」


「ううううううう・・・ひぐっ・・・・」


「おいおい、そんなに泣くなよ。顔がぐしゃぐしゃだぞ」


「だ、だって、だって・・・海聖が・・・助けに来てくれるなんて、思ってもなかったから」


苦しい思いをしていたやつには悪いと思っている海聖だがそのセリフ・・・彼にとってはものすごく心外な発言だったということに綾菜は気づいていなかった。


「俺がそんなに頼りなく見えるのか?」


「そ、そんなこと、言って・・・・ない?」


「何で疑問形なんだよ」


「う、うるさい!!なんでもないわよ」


「よかった」


「えっ?」


「だって・・・お前が元気でいてくれたから」


「・・・えっ?」


泣きべそかいてた顔の頬が一気に真っ赤に染まっていく。その風景が面白くて海聖は笑い出す。


「な、な、なによ!!」


「別に?さっ、行こうぜ?」


「どこへ?」


「・・・・・・」


「・・・・やっぱね」


海聖お得意の無計画計画。その無計画計画をある一人の少女が断ち切ってくれるとは彼らはまだ知らない。






――――――NATO日本支部

「ここへ行きなさい」


「しかし・・・・」


「私の言うことが聞けないの?NATOとSTOはこの間の北日本人民解放戦線の件で武力衝突に発展したんでしょ?ならこの国境の片隅くらい奪ったって問題ないわよ。ここら辺まで進軍しなさい」


「・・・・」


NATO日本軍事委員会・・・北日本に駐在しているSTO軍に対抗するため南日本各地に点々と配置されたNATO軍の基地を管理する委員会。

その委員会の中でもトップのライマン・ブラッドレー大将の机の上に座って命令を出すのは身長150に満たない小柄の少女だった。


「返事は?」


「イエス・マム」


「そっ、よろしい。解ったならさっさと駒を進めちゃってくれないかしら?」


胸は綾菜みたいに控えめとかではなくつるぺたの完全ロリ体系のくせに言葉づかいは高慢ちきのお嬢様の風貌を漂わせているところがなんとも憎たらしい。周りの人間の誰しもが思っていただろう。


「私たちの多次元日本救済計画は誰一人として一ミリ足りとも邪魔はさせないわよ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ