#27 鈴花死亡
「はぁ!!」
辺りから無数の見えない波を出す震煉。ソリタリーウェーブなのか、マイクロウェーブなのか?または別の波なのか?
「ふん」
だが、何もなかったかのようにそれを無にする鈴花。
「さすがわが妹」
「お兄様の攻撃パターンは読めていますから」
さすがと言うべきか・・・長年一緒にいた家族と言うこともあってどんな波動を生成してくるかわかっている。
そして起こった事象を交換する事を解っていたかのように反対の波動を生成してぶつけ合い無力化している震煉もさすがと言うべきか・・・
俺の事を神だとか言っていたが、俺とは比べられないほど強い。
なのになぜ俺が神なのかいまだ理解できない。
「さすがの俺もそろそろ飽きてきた。終わりにしよう」
「私を倒せたらの話ですが・・・」
「いいだろう」
そう言うと自分の目の前に手をかざす震煉。どんな波動が出てくるのか俺には想像もしがたい。きっと鈴花にはわかりきっている。そう思っていたのが間違いだった。
「う、う、う・・」
「どうした?」
「な、なんですの?」
突然頭を押さえ出す鈴花に俺は着いていけずただ見ることしかできなかった。
「音波。それも特殊な」
「音波?」
「能力者はG-細胞の適合者のみ生まれる。G-細胞を身体に摂取した者は遺伝子細胞が変化し、脳みそに多大な影響を与える。それに身体がついていけないものは細胞が劣化。化け物になる。ついていけた者は超能力と言う物が生まれる」
「そ、それぐらい知っていますわ」
「能力をつかさどる大部分は脳みそ。こいつみたいに例外もいるが、ほとんどの能力者は脳みそ。そして物には固有振動数と言う物があるように能力にも特殊な振動数がある」
震煉は海聖に眼を飛ばしながら話を続けた。例外と言うのは海聖の事だろう。
「振動数?」
「ああ。能力をつかさどる脳みその部分を封じる振動数」
「それって・・・つまり・・・」
「物分かりが速いようだな。譲ちゃんは」
口をつい先ほどまで閉じていた綾菜が珍しく開いた。
「能力を封じる・・・・」
「ああ。その逆もあるようだが、俺の能力波動生成の副産物であらゆる波動を読み取ることもできる。相手の能力を封じる固有振動数も・・・まあ時間がかかるが」
「まさか・・・」
「そう。鈴花。お前は今能力を使えない。覚悟しろ!!」
振りかざした手から出るのは光の筋。可視光線だ。
海聖の読み通り、震煉は光波を操れる。
「かはっ!!」
いくつもの光の筋が鈴花の綺麗な身体を貫き、宙には赤い雫が飛び散る。
吹き飛んだ鈴花の身体はコンマ数秒の間に地上に墜ちて行く。
「鈴花あああああああ!!!!!」
俺は叫んでいた。倒れた鈴花の元へ走る。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・待ってろよ。今治療してやる」
海聖の治癒能力。あらゆる物質を作り出す海聖にとって人間の細胞を作り出すなど朝飯前だ。だが、その朝飯前の行動すら、震煉によって遮られる。
「邪魔だ!!」
鈴花の時とは比べ物にならない大きさの可視光線をぶつけられる海聖。肩の大部分が吹き飛ばされ、大量の血しぶきが空を舞う。
「鈴花・・・」
鈴花の横に立つ“破壊者”震煉。その姿は正に破壊者だった。いや、破壊神とでも呼ぶべきだろう。
「俺の計画に邪魔をするなと言ったはずだ。それともこいつに情でも移ったのか?」
「ふっ、・・・なんと、で、も、言いなさい。私は、この人は、世界を救う、能力、者だと、信じている。だから、殺しちゃ、いけな、い」
「そうか。なら死ね」
「や、やめろおおおおおお!!」
震煉に向けて大声で叫ぶ。だが、その声など届かず。
「・・・あなたを・・・私は・・」
グシャ
突如として遮られたその声。
巨大な可視光線で下のコンクリート諸共吹き飛ばす震煉。実の妹を跡形もなく消し去った姿。もはや破壊神どころではない。
「リ、・・・リン・・・ファ・・・」
「次はお前達だ」
ようやく再生した身体で起き上がる海聖。
先程まであった恐怖はもう感じない。体中をめぐるのは怒りと震煉を殺すという想いだけ。
「ぶち、殺す」