#24 反抗
「キャアアアアアア!!」
「ひゃひゃひゃ!!」
飛び交う銃弾。何度も耳に入る悲鳴。そして破壊音。
流れ弾により被弾していくのは、何の罪もない生徒たち。
そして銃弾をまき散らすは敵国の兵士。
「がは!!」
星霜学園を警備していたNATO軍はEMP攻撃を喰らってから通信網と電子機器の破壊から復旧できずに指揮系統がグダグダになりSTO軍の落下傘部隊による強襲で次々と兵士が殺されていく。本部としていた放送室が発見され、中にいる兵士が殺されるのも時間の問題だろう。
「・・・・敵に気付かれないように敵を倒すか・・・・」
「無理難題言ってごめんなさい。でも、こうするしかないわ。多次元日本救済計画メンバーがここにいるってばれたら綾菜は・・・」
それだけは避けなくてはならない。
「・・・・ちょっと厳しいわね」
「確かに・・・」
ここをばれずに通るのは無理だ。海聖はそう考えたが鈴花は全く違う事を考えていた。
「あなたの事よ。まだ100分の一にも満たない力では・・・・難しいわよね」
「ば、馬鹿にしてんのか!!」
「しっ!!」
「ふがふが・・・」
つい大声を出してしまったのかうつ伏せ姿勢で鈴花に顔面を地面に押しつけられる。
「で、どういう意味なんだ?」
「あなた・・・・何でも物質を作れるとか言っているけど・・・電気とか音とか火とかって作ったことある?」
「・・・・・そういえば・・・ないな」
「出来る?」
「物質を作り上げて化学反応を起こさせれば出来るが・・・まずやった事がない」
「もし出来るならでいいけど・・・EMP攻撃ってわかる?」
「ああ。それぐらい勉強した」
戦争するためにここにきているんだ。それぐらいの軍事用語ぐらいは学んでいる。
「学校が入る位の範囲に電磁波を展開できないかしら?」
「成程・・・それができれば・・・」
「通信網はグダグダ。ばれずに救援作戦を行えると」
「わかればいいのよ」
「成程。だが、敵もバカではない。EMP対策ぐらいしているだろう」
EMP対策・・・その名の通りEMP攻撃に対抗する手段である。電子装置に金属箔などでケーブルをシールドするとか、破損されそうな部分に半導体の代わりに真空管を使うなどである。
「大丈夫よ。あいつらは経費削減とか言ってそんな対策本国でしかしてないから。前線部隊にはされていないわ」
「了解」
俺は言われた通りにイメージしてみる。手のひらに炎を出すような。
「・・・・・」
だが、一向に手から炎が出ることなどなかった。
「だめだ・・・・」
「やはり100分の一じゃ・・・」
そう言いかけた鈴花は海聖の方を向くと息をのんだ。
「な、なにそれ?」
「携帯EMP兵器。もう一つの日本で実用化されたコンデンサを利用した電磁波弾頭が搭載された携帯ミサイル。前線に取り残された部隊が、敵の戦闘兵器を無力化し生き残る確率を上げるために作られた兵器だ。半径は500m位だが・・・まあ、それなりに使えるだろう」
ついでにスパコン脳みそはただの脳みそに変えておこう。電磁パルス食らったらたまったもんじゃない。
標準は星霜学園上空。
スコープを合わせ、トリガーを軽く引く。
白い煙と共に発射されたミサイルは空高く舞い上って行き・・・
「いまだ」
海聖のその言葉と同時に爆発する。その瞬間
「ん?・・・電源が急に?」
「どうしたんだ?」
校舎内の兵士から次ぐ次ぎと聞こえてくる声。ヴェレスが故障した。無線機が使えん。電源が落ちたetc…
「あのLWもう動かないぞ」
「なら成功ね」
侵入経路の前にいたLWと境界外骨格を装備していた兵士の膝がガクンと落ちる。
制御システムがダウンし、人工筋肉が動かなくなったLWは重さに耐えきれず。
また強化外骨格を装備している兵士も油圧駆動を制御するシステムがダウンし全く動かず。
今はただのおもりをつけているだけにすぎない。そこらのガキよりも弱い人間だ。
人一人殺さず侵入経路を経た海聖達は綾菜を探しに校舎へと向かう。
「綾菜・・・生きてろよ」
切にそう願う海聖と鈴花だった・・・