#22 海聖VS鈴花-後編-
「私を助ける?」
「ああ。それが俺の答えだ!!」
海聖はそう言うと右腕を再び砲身へと変える。
「だから・・・いくら、海聖が強力な武器を作ろうと、私にはその攻撃は効かないのよ」
海聖の今まで攻撃した回数50回。
そのうち遠距離攻撃49回。近距離攻撃1回。
遠距離攻撃はすべて方向を変え撃った本人の海聖の元へと向きを変え進んでいった。
そして近距離攻撃は鈴花に当たった。そう、確実に腹部を切り裂いたのだ。
でも、切れていたのは海聖の腹部。
この結果からわかる事は鈴花に攻撃してもすべて自分に帰ってくる。しかも、反射とかそういう類ではない。
「そうかい。なら一回喰らってみるといいさ」
海聖はそう言うと標準を鈴花に向ける。
「・・・・・・」
狙うは頭部。しかし狙ったところで跳ね返ってくるだろう。でもそれでいいんだ。
そう、跳ね返ってくるように設定してあるならば・・・
砲身に電気が流れる感覚がある。そう、これは電磁投射砲。英語で言うならばレールガンだ。
風を切る音。目では見分けのつかない速さ。
そしてその弾丸は今まですべて跳ね返ってきた。だが、今回は違った。
「!!」
突如として海聖から放たれた弾丸は鈴花の少し手前で爆散した。
「な、何これ?」
「吸ってみればわかるさ・・・」
口を押さえる鈴花だが、何もならない。
「どういうこと?」
「ただの酸素だ」
俺があの中に入れたのはただの酸素だ。だが、その酸素はどうやって作られたか?
「鈴花・・・一つ聞いておけよ」
「な、なによ・・・」
「今ここで蔓延している酸素は俺がつくったものだ。そしてお前はそれを吸った」
「そ、それがどうしたのよ」
「その酸素・・・俺の物なら俺が自由に操れるんじゃないかってね・・・」
「ま、まさか!!」
もう鈴花の肺に到達しているだろう。海聖が作り上げた酸素が。
「悪いね。俺が思うように操作すれば今からどんな物質にでも変えられる。だが、俺が作り上げる物は二酸化炭素か?または毒物か・・・俺以外誰も知り得ない」
「な、何をするつもり?」
「こういう事さ」
“パチン”
海聖は指を鳴らし鈴花の方を向く。その瞬間
「うっ!!」
「どうした?」
「な、何でもないわ」
突如として肺を押さえて苦しむ鈴花。その痛みの原因は鈴花自身わかっている。
海聖が作り上げた酸素を吸い、それが別の物質に作り上げられたことだ。
その物質が肺のどこにあって、そして何の物質なのか理解できればまだいいのだが・・・
「どうした?早くして見ろよ」
「なにを?」
突然楽になった肺に違和感を感じながらも鈴花は知らないふりをする。
「もう吐いちまえよ。俺は解っているんだぜ。予測した出来事と全く逆の出来事にする。だがお前はどんな事が起きるか予測できない限り、俺に攻撃することすらできない。それが鈴花。お前の能力だ!!」
「・・・・あたりよ。言い方を変えれば事象変換あなたがこれから私の身体で何するか解らない。予測しようのない事は変換しようがないもの。降参よ」
今まで弾丸が見えないのにもかかわらず操作で来たのは自分に弾丸が飛んでくると予測していたから、その事象の対象が鈴花から俺に変わったというわけだ。
近接攻撃は自分に攻撃してくるのはいつかも解らないし、どのように攻撃してくるかもわからない。だから、自分の身体が切れてから事象変換をすれば海聖が切れたことになる。
だが、海聖生成酸素については体内のどこにあるのかもわからないのにどうやって海聖と事象を変換する?さらには酸素を別の物質に変換されたとしても、何に変換したか解らず結果的に事象変換が行えない。
「じゃあ、これでOKだな」
「ええ。もう、私にはみんなに合わせる顔も、お兄様に合わせる顔もないわ」
「意味のわかんねえ事言ってんな!!ほら行くぞ!!俺を学校まで案内しろ」
「えっ?」
思いっきり乱暴に、でも優しく鈴花の手を引っ張ったのは海聖だった。
「少しでも罪悪感があるなら今ここで償え。お前ならやりなおせる」
「待ってよ!!」
そう言って海聖の腕を強引に振りほどく。
「私のせいなのよ・・・・こうなったのも。私さえいなければ・・・・星霜学園のみんなも・・・」
立ち崩れ、泣き叫ぶ鈴花。先程とは雲泥の差の弱弱しい鈴花を海聖は強く抱きしめた。
「なら、俺がお前を友達として必要としているなら問題ないだろ?私さえいなければ?今更遅いんだよ。過ぎた事はしょうがない。なら、今から修正しに行くぞ。その能力。役に立つからな。さあ来い」
立ちあがった海聖は崩れた鈴花に手を差し伸べる。
「う、うん!!」
海聖は鈴花と共に学校へ向かう。星霜学園奪還のために。