#12 第一位VS第二位-後編-
5桁に近いかずの人間が見つめる中、注目の的となる二人。
一人は能力者育成施設能力テスト第一位の核 海聖。
もう一人は第二位の神島風音。
「私の能力がわかった?」
「ああ・・・・たぶん・・・これさえすれば完全なる確証が得られる」
「?」
海聖は背中から何か煙らしきものを出している。
「そんなことして、何になるっていうの?」
「俺の能力・・・何だと思う?」
「自分の身体をあらゆる物質に変えることでしょ。そんなの今更」
そんなことわかりきっているわと勝ち誇った顔をしながら鼻で笑う風音。
だが、海聖も同じく勝ち誇ったような顔をしていた
「そう、それは正解です。ただ、足りないんだよな・・・一つ」
「足りない?」
「ああ・・・俺の能力は自分の身体をあらゆる物質に変えるだけでなくそこらの物質を別の物質に変えることもできる」
「ど、どういうこと?」
私の言っているのと何が違うの?
彼の言っている事は私には理解できない。
「ほう・・・理解できませんってか?なら見せてやるよ」
背中から噴き出す蒸気はしだいに色が濃くなっていく。
そして、先程まで晴れていた空はしだいに曇っていく。
「ま、まさか!!」
「そう・・・俺は身体を蒸気に変え、その蒸気を雲へと変えた」
「何なら自分の身体から雲を作ればいいじゃない」
「これだけの空を覆う雲を作るのにどれだけかかると思う?自分の身体が足りなくなるだろう?だから元となる物を作って、それに空気中の水分や塵を混ぜて雲を作り上げたんだ」
「そ、それが・・・な、なにになるのよ?」
「強がるなよ・・・・」
海聖は体中を再び鉄に変え、風音に近付く。
風音は手を前に振り出し、脅しをかける。
「鉄は電気を通すって言ったでしょ?感電するわよ?」
「ならすればいいじゃないか?」
風音の手が海聖のお腹に触れる。
「どうした?これなら外れないだろ?」
「う、くうううう・・・」
「もしかして、電気出せないんじゃないか?」
「!!」
一瞬風音の身体がびくっと震え、額から汗が出てくる。
「図星だな。神島 風音・・・・お前の能力はエネルギー変換だろ?」
「・・・・当たりよ」
力が抜けたのか膝がカクンとなり地面に倒れる風音。
「おっと・・・」
「あなたとの戦いで力使い果たしたみたい。とりあえず今は休ませて」
「おいおい・・・あれだけ俺に攻撃を仕掛けておいて俺は攻撃なしか?そりゃ割に合わない」
そう言うと海聖は手を風音の顔に近付ける。
「ちょっと!!さすがに顔には傷つけ・・・ないで?」
「おりゃ!!」
「痛っ!!」
海聖がした事。風音にでこピン。はいこれで終了。
「・・・・・ほら行くぞ。取りあえず俺の勝ちってことで」
「もういいわよ・・・・あんた最初から手を抜いていたことわかってたし・・・」
「あれ?ばれていた?」
海聖は取りあえず審判役の教師に確認を取って判定勝ちという何ともつまらない勝ちを手に入れた。
「核 海聖か・・・・」
この頃私はよく空を見る。
あの戦いの後倒れた私は保健室へ連れて行かれた。特に異常はないと言われたが取りあえず寝ておけと。どっちなのかしらね?
で、最初に見舞いに来たのは戦った彼。核 海聖。
「よう。案外元気そうだな」
私は彼を殺すつもりで本気を出して戦ったのにこのテンションは何なのかしらね?
「おかげさまで・・・でこピンで済んだからよ」
「それは褒め言葉かな?」
「どちらでもいいわ。それより、私の能力どうやって見破ったの?」
私は誰にも言った覚えがない。教師しか知らない。
つまり、あの状況で答えを知るには推理するしかない。
ならどうやって見破ったのか?
「君はいつも体中から電気を放出しているよね?」
「ええ・・・次元上昇中は。普段は次元上昇してないからあれだけど・・・」
能力者は次元上昇オート型とON/OFF切り替え型がいる。ほとんどの能力者は後者だが・・・
「電気に冷却・・・放熱。しまいには爆発を防いだ。けれど、その中で君がよくしていたのは電気なんだ。そこからピンときて、確証を得たのは俺が翼で出した風だ」
「風?」
「ああ。もしエネルギー変換能力なら風力発電みたいに発電するのではないかなと思って。そしたら案の定、風を受けている時身体から放出されている電気が強くなったから・・・」
「成程ね。それで雲を作って太陽を覆い私から電気を奪ったのね。でもね・・・あれでも実は発電で来たのよ。微弱だけど・・・」
「まあ、あと水素と酸素の爆発を防いだってのも・・・燃料電池的な感じでエネルギー変換をしたから無傷だった。そういうことだろう?冷却も放熱も冷蔵庫やIHみたいに電気エネルギーを熱エネルギーに変える。なかなか応用が聞いた能力じゃないか」
「あなたに褒められてもね・・・」
「まあ、これで俺も学習したよ。戦い方ってやつを。それについてはお礼を言っておくよ」
「お礼を言いたいのはこっちだわ。変なことにつき合わせて。むしろ謝罪かな」
「ふん・・・どっちでもいいさ。俺のプライドは守れたから・・・」
そう言うと海聖はじゃあなと言って保健室を出た。
「私はあきらめない!!」
海聖は風音を後押しする起爆剤になったということに本人は全く気付いていなかった。
「ってのがあって・・・」
「へぇ・・・・そんなことが・・」
「そっ。当時は武器の構造さえ知らなかったから身体をただの物質に変えることしかできなかったのよ。今考えると進歩したものだわ」
いまでは日本陸軍が採用している兵器の構造をほとんど理解しているからよほど大きくない限り・・・つまり、自分の身体で賄える程度の大きさなら作り上げることができる。
「で、彼を外した理由は?」
二人とも過去話に浸り過ぎて、本来の目的を忘れてしまっていた。
なぜ、前線から核 海聖を外したのか?それだけが、宮下の疑問だった。
「多次元日本救済計画に彼が含まれていないのよ」
「ど、どういう意味ですか?」
「そのまんまよ・・・彼がここにいる。いや、本人が多次元日本救済計画の一人としてきたと言っているが・・・正直私はそんなこと知らされていなかったのよ」
「じゃあ、なぜ思想犯収容所へ?」
「予知したのよ。私たちは第一次多次元日本救済計画としておくられてきたから・・・第二次もあるかと思って予知したところ・・・」
「そういうことですか・・・」
「でも、私たちよりあきらか彼の方がここにきているのが早いわ」
「そうですよね・・・・あなた方が来たのは一か月前。国境で大規模武力衝突に発展する2週間前ですから・・・・・」
海聖はその時点で一カ月と数週間前にきていたから最低でも今から2カ月前にきていたとなる。
「普通に考えたら第二次は私たちなはずなのよ・・・・なのに第一次で・・・で、計画は技術支援と、予知で、敵の行動を探り、味方を指揮しろとしか言われてないのよ・・・」
「・・・・何なんでしょうかね?」
「・・・・さあ?でも、もしかしたら・・・これから起こる別の何かに備えるために送られてきたのかもしれないわね」
「別の何か?」
「戦争ではない・・・別の何かの備えて・・・」
謎は謎を呼ぶ。これ以上考えてもしょうがないと彼らは核 海聖について語り合うのはやめたのであった。
その頃
「へ、へくち!!」
「お前・・・可愛いくしゃみするな」
「え?ああ・・・・それ綾菜にも言われた」
隣の席の横川龍介に、綾菜と同じ事を言われているのであった