#11 第一位VS第二位-中編-
「あらあら?顔に余裕が消えたわよ」
「・・・・」
能力者育成施設前代未聞の能力者バトル。能力者テスト第一位VS第二位。
観客数数千人。だが、先程から更に人数は増えており、一万人を超えるのも時間の問題だろう。そして誰もが勝負がつくのも時間の問題と見ていた。
「どっちが第一位?」
「あの女の人じゃない?」
「いや、今押されてる・・・ほら軽い赤のかかった髪の人」
「ああ・・・・あれが、核 海聖か・・・」
「どうやらあれ“かく かいせい”じゃなくて“さね かざと”らしいよ」
「そんなものどうでもいいけど・・・」
「電気を使って・・・氷結系も使う。しまいには・・・炎系統か・・・・」
「あら?お手上げかしら?」
「いや・・・」
どんな能力を持ってるか解らない・・・・なら、こちとら本気で行くか
俺は頭の中である原子の構造を思い浮かべる。
「あら?眼なんか閉じちゃって?」
「・・・・・」
無視をするんだ。俺は徹底的に無視を決め再び身体を鉄に変える。
「この匂い・・・・だ~か~ら!!鉄は電気を通しやすいって言ったでしょ?」
彼女の腕が青白く光り手のひらから電気が海聖めがけて進む。
電気のまばゆい光は雷みたいに直進して海聖にあたり、感電する。
そう、先程はそうだった。海聖は言葉通り感電した。さらに身体が鉄となっていたため身体中に電気が流れ、痺れて動けなくなった。
今も先程と同じ鉄状態だ。だから同じように感電する。
はずだった。
「な、何!!」
風音の掌から起こった大爆発は風音だけでなく、海聖自身、いや、グランド全体を巻き込み、観客席まで爆風が届いていた。
「ふぅ~あぶねえ。身体を鉄にしなければ俺まで危なかった」
「な、何が起こったの?」
「いや、第二位の神島が電気を第一位めがけて放ったら、急に大爆発を起こして・・・」
「なにが起こったんだ?」
「もしかして、第一位の能力?」
「これで終わったか?」
海聖はゆっくりと風音の方へ歩き出した。爆発の副産物である煙と水は治まってはいなかった。
「成程ね・・・・そういうことか」
「おお、大丈夫だったか?」
「大丈夫?あんたまだ本気出していないの?」
「えっ?」
突然起き出した風音の姿は無傷だった。
あれだけの爆発を喰らったのなら服が燃えて、火傷の十か所はくだらない。
「そ、そんな・・・あれだけの爆風を喰らって無傷とは・・・」
「水素を身体から作り出し・・・電気による引火。大爆発。よく考えたわね。あんたが身体を鉄に変えたからてっきり頭が悪いかと思って・・・まやかしだったとは・・・」
「いや、爆風から逃れるためだ。しかし・・・どうやって防いだ?」
「あら?あなた私の能力まだ解らなかったのかしら?なら、本気で戦うことね!!」
「くっ!!」
狭まった距離をいいことに風音は勢いよく俺に電気を浴びせかけてくる。
「避けたわね?」
海聖たちを取り巻いていた砂煙から天高く上昇する事によって脱した海聖は戦術的撤退をした。
(なんなんだ?あの能力。様々な能力を使うだけでなくあの至近距離の爆発を防いだ)
見当もつかない。風音からの電気攻撃が来ない空でスーパーコンピューター並みの頭脳に変えた海聖は高速演算を行うが、Unknownもしくは能力の応用。
そして最後の言葉は
“能力は一人に一つ。それ以上はありえない”
「能力の応用?・・・まてよ」
能力の応用・・・例えばさっき俺がしたみたいに電気系統の能力者も水を電気分解して、酸素と水素を反応させ爆発を起こし、相手を惑わすことぐらいできる。俺みたいなのなら、さっきしたみたいにあらゆる物質を生み出すから応用性に優れる。
(しかし・・・あいつは常に電気を体中から放っている・・・いや、電気を放っていないといられない環境だとしたら?)
そして、連発してこない冷却・放熱。しかし、常に電気を放っているのは確かだ。
「まだ、確証がない。戦って確かめるか」
そう言うと海聖は翼をはばたかせ下へ急降下する。
「うをおおおおお!!」
翼を先程とは比べ物にならないほどの大きさに変え羽ばたかせる。
「す、すごい風。これが人間のする事なの?」
「あれだけのバトル繰り広げて人間語らねえだろ・・・・」
「それにしても綺麗な翼ね・・・」
「くっ!!」
風音は地面一帯を凍らせて、自分の足を固定する事によって海聖の暴風を防いでいた。
(やっぱり・・・)
俺が翼をはばたかせて生み出した暴風を喰らった瞬間、風音の体中から出ている電気が強力になった。
「もう確定だな」
「な、なにが?」
「お前の能力だよ!!」