#10 第一位VS第二位-前編-
「明日の午前10時・・・グランド集合。か・・・」
能力者同士の戦闘は一般的に禁じます。それが施設内の掟の一つだ。
だが、その掟にも例外というものが存在する。それは教師の許可だ。
教員が立ち会って、安全を配慮したならば許可が下りる。
更に言えば、第一位VS第二位の戦い。教師としては今後のデータとして欲しいだろう。
しかし海聖はそんな事はどうでもよくてむしろなぜ自分のメールボックスに見知らぬ人からのメールが来ていたことにびっくりしていた。
誰からメールアドレスを聞いたのやら・・・
なぜか俺のメールボックスに“神島 風音”と書かれたメールが届いていた。
「俺は教えた覚えがない・・・・」
誰だかわからず一瞬記憶喪失にでもなったかと思った。
「神島 風音か・・・」
海聖の顔を見た時の彼女はすごい形相だったが、本来なら悪くない顔立ちだろう。
だが、海聖にとってそんなこと考えている余裕はなかった。
「向こうは俺の能力を知っているのか?だとしたら彼女の能力を知らない俺は不利ではないか?小学生に聞いても知らないと答えられそうだし・・・」
彼自身あまり友好関係が豊かというわけではなくむしろ乏しい部類で、登録されているメールアドレスは同じ学年の生徒が1000人近くいるというのに、20人前後だ。
「まあ、考えてもしょうがない。自分好みの展開にして勝とう」
彼は不良時代誰にも負けなしだった。調子に乗っている新入生に対する制裁“一年狩り”にきた2、3年を中一で叩きつぶしたという逸話すらある。テストは別として・・・
だが、この世界では全く通用しなかった。よわっちそうな奴でも能力を使って対応してくる。だから彼は努力した。全く能力が発現しなかった彼も半年してようやく発現。
1年後には能力テストで首席を取っていた。
能力テストで首席を取ってからはチート三昧。テストはスーパーコンピューター化させた脳みそで数学のテストは数分で終わり、国語や社会はネットにつないで答えを見るだけで終わり。一番ひどいのは教師のパソコンへクラックして答えをまる写し。カンニング王と呼ばれても、その名にふさわしい行いだった。
周りの連中からはむしろ重宝されて、教師にばれないように身体を変身させて答えを大々的に公開したり、Bluetoothで彼の目からとれた情報を携帯に送るなど、本人の言うとおり能力を無駄なく使っていたのは確かだ。
「いままでまともに使ったのがこれだからな・・・」
過去の能力使用歴を見ると9.999・・・・(以下略)99割は全部成績関係だ。そのうち能力テストに使用したのは1割ほど。残りの9割はカンニングだ。と自分の心の中で自慢げに語る少年。
「戦闘に使った事なんてないからな・・・」
とりあえず原子や分子の構造を覚えておこう。
覚えておけば身体を自由にその物質に変えられる。
海聖はネットで様々な原子や分子の構造を調べ、フォルダに保存した。
「怖気ないで来たわね」
「ん?ああ・・・来て欲しそうだったから来てやった。満足か?」
「いや、まだあんたを倒していないから。満足するのは倒した後よ」
まだ開始の音すら鳴っていないのに、二人は動き出した。
そして何千人もの観客が校舎から外からと色々な方向で見ていた。
それもそのはず。この能力者育成施設で能力テスト第一位VS第二位の今世紀最大の戦いが始まっていたからだ。
「さっさと終わらせてもらうぞ」
背中に翼を生やし高速移動する海聖を風音は手も足も出なかった。
(いける!!)
そう確信した海聖は体中を鉄に変え、高速移動したまま手加減して殴りつける。
このぐらいなら大丈夫だろうと。
「・・・・手加減しているつもり?あいにく・・・そんな手加減」
「!!」
「無用よ!!」
「うぐ!!」
目の前に広がる青白いまばゆい光。殴りつけようとした手から痺れる感覚。
そしてそこから体中に伝わる電気。
「知ってる?今更だけど鉄って電気通すのよ?」
「お前・・・発電能力者か?」
「そう思うでしょ?だけど、これは伴奏よ?」
「どういうことだ?」
彼女の身体から今の季節とは信じがたいほどの冷気が出てくる。
「ウソだろ?」
海聖が痺れて動けないのをいいことに、風音は海聖を凍らしていく。
「く、くそっ!!」
「私が発電能力者?そんなチャッチイ能力ではないわ。それと氷結系でもないわよ?」
「くそっ!!溶けろ!!溶けろ!!」
いくら溶けろ溶けろと念じても凍っている腕が溶けるわけがない。
「そんなにとかしてほしいなら、溶かしてあげるわ」
「ま、まさか!!」
彼が予想したくなかった事。
「そのまさかよ!!」
腕から炎ではなく、別の何かを放出する風音。
その何かによって身体の半分位が凍っていた海聖は瞬時にして溶け、それ以上に鉄と身体が溶けていた。
彼女の能力を知る者はいなく、教師のみである。したがって、観客からの声は動揺と不可思議に思う声でいっぱいだった。
「何なんだ?あの能力!!」
「あら?あなたそう言えば再生能力もメタモルフォーゼの副産物であったわね。こりゃ大変。さて、次はどう弄ってあげましょうか?」
彼女の解析不能な能力によって体中を熱で溶かされた海聖は、瞬時にメタモルフォーゼで再生する。
「あいつの顔に余裕が消えた?」
観客席から見る小学生こと萌仁香は何発もの能力を投下していく彼女よりもメタモルフォーゼの能力を持つ彼の顔から余裕が消えた事の方が不思議だった。
「能力は一人に一つなはずよ?そんな手品にだまされるなんて・・・」
観客が驚くのも無理はない。
なぜなら能力には適合したものがあり一人に一つしか発現しないからだ・・・
それを連発する彼女はいったい?