第一章 前半
僕は海が大好き。
海は完璧じゃないから。
海は綺麗で、色々な人の心を綺麗にしてくれる。けど、場所によっては汚れているところもある。そんなところって言ったら罰当たりな気がするけど僕は海が好き。
それに、海を見てるとなにか懐かしい気がするから……
空が蒼いのは海のおかげ。
だから僕は夜の海より昼の海の方が好き。
この世界は今、恐怖に侵されていた。
魔物。生物が何らかの霊に取り憑かれたもののことを指す。
取り憑かれたものは、自我を忘れ、凶暴化し、図体が大きくなるものもいれば、
おかしな能力を手にするものもいた。
飽くまで取り憑かれるのは生物。
それも、この日本各地の街で暴れ回り、
人を殺すのは動物だけだった。
昔の書物にはこう書かれてあった。
「あれは化け物。必ず大元がある。
それを締めなければならない。
このままじゃ世界は悪によって支配される。」
数年後の別の書物には
「神が舞い降りた。
顔は布で隠れて見えなかったが、
あれは神様だ。根元を封印してくれた。
取り憑かれたものはみんな解放された。」
(※一部わかりやすいように変化)
と。
それが再発した今、日本だけ化け物が暴れているのにもかかわらず世界が混乱していた。
そんな危機的状況もいつしか当たり前になった。頭がいい人が沢山日本に来て研究をしたが全員お手上げ。
それもそう。
政府が全部隠蔽しているから。
それに、研究しに来ていたのなんのって話はもう数十年前のお話。
国民も慣れ始めてきたという異常事態。
そして、裏の世界で生きて人を助ける死人。
“狩人”
……
「先生、行ってきます。」
僕の“お母さん”は僕に先生と呼びなさいと
言われた。この頃の僕は特に気にせず素直に先生と呼んでいた。周りの人は違うのはもちろん知っていた。けれど、僕の家のルールってもんだと思っていて、別に疑問には思わなかった。
「ミナ、おはよ〜」
ミナは僕が挨拶をするといつも晴天のような笑顔を見せてくれる。
「おはよっ!
じゃあ行こっか!」
この子は親友のミナ。産まれた時からの幼馴染で、自分で言うのもなんだけど、本人よりお互いのことを知ってる自信がある。きっとミナもそう思っていると思う。
◇◇◇
親友だとしっかり思い始めたのは幼稚園の頃くらいからだったっけ、正直産まれた時からの親友なんて言ってるけど、幼稚園入るまでの記憶はほとんどない。思い出そうとしても、まっさらでただただ何も無い空間をさまよってるみたいだった。だから最近はもう考えもしない。親友になったのはある出来事がきっかけだった。
「そこに描いてあるものの
好きな方を丸してね。」
先生がそういった時、
みんなはどんどん丸をつけてった。
その紙を見せ合う、
言わば自己紹介みたいな感じだった。
“わーわー!ぎゃー!!”
泣いたり、笑ったり、にこにこしている中僕はなかなか笑えなかった。病気とかじゃなくて怖いとかでもなくて、上手く笑おうとすると出来なくなって、元々笑えなかった。笑い方が分からなかった。先生は別に気にしなかった。と言うか気づいてなかったから自分から言わなかった。だから友達ができなかった。話しかけてくれてもみんな離れていっちゃうから。
そして年中の始業式の翌日。
「ねーねー、お名前は?」
いつも通り一人でいた僕は突然とある女の子に話しかけられた。当時はちょっとびっくりした。みんな面白くないって口を揃えて、初対面でも中々僕と話そうとしてくれる人なんていなかったから。
「蒼空。文月、蒼空。」
愛想なくたんたんと返しちゃったけど、
今思ったらちょっとは仕方が無いと思う。
「す、そ?くん?」
聞き取れなかったのも仕方がない。人と話す事なんてあんまりしない事だから、
「違うよ、蒼空。そら」
苗字は諦めたのかわからないけどはっきりと名前だけを二文字言った。
「蒼空くんかー!
えーっと、ミナはね、
えーっと、……なんだったっけ?
まぁいいや!ミナ!!」
いつもどっちだっけとなっているのかは分からないけれど迷いながらも最後には自信気に言っていたのを覚えてる。
「ミナちゃん、よろしくね。」
「ん〜、!!、
あははっ!!」
その時、彼女がお腹を抱えて笑ったことを
僕はその時凄く不思議に思った。
「……何で笑えるの?」
「だ、だって、見て見て!
この好きな物、ぜーんぶ反対だもん!」
そう言った後もその子はずっと笑ってた。
不思議だと思った、何で笑えるのか、
何がそんなにおかしいのか。
「あらあら、ミナちゃん、
そんなに笑ってどうしたの?」
もちろんこんな大声で笑っていたら先生にも聞こえるから先生が近づいてきてこういった。
「あのねー!見て見て!」
ミナがそう言うと僕のカードをバッと取ってそれを先生に見せようとした。
「あ……」
「こら、ミナちゃん、人のものを勝手に
とったらダメでしょう?」
「あ、、ごめん!!
ちょっと貸して?」
「う、うん。」
「先生!みてー!
全部逆!!」
「……、だ、ダメでしょ?
人と違うからってこれは間違いとか
じゃないから、人それぞれだからね。
はい、ミナちゃんは
他の人のところ行こっか!」
「えー!!
まだ話したいー」
そう言って暴れながら先生に担がれて
他の人のところに連れていかれた。
特に何も思わなかった。
もちろんその後もずっと1人で、
そのまま1人で帰ろうとした。
「蒼空くーん!!」
後ろから急に抱きつかれた。
「わっ、!
ど、どうしたの?」
「蒼空くんって一人で帰ってるの?」
「え、う、うん。」
「じゃぁ、一緒に帰る?」
「でも、……ミナちゃんは?
お母さんお迎え来ないの?」
「?来てるよー!
でもさっき話したからだいじょーぶ!」
「……そっか。」
「って、歩くの早くない?!」
「そう?いつもこれくらい。」
「あ、そういえば蒼空くんって……」
◇◇◇
とか、
あの頃は色々話しながら帰ってたなぁ。あの頃はって言っても、今もずっとそうだけど。
「はぁ、今日で卒業かー、早かったな〜、」
その声に不安や寂しさはほとんどなく、どちらかと言うとプラスの感情が籠っていた。
「そうだね、次は中学生か……」
「楽しみだなー!たしか、人数が結構増えるんだよね?」
「うん。
お母さんが1学年300人くらいだって言ってたよ〜」
「多いよね、
2クラスで奇跡的に6年間ずっと
一緒だったけど流石に離れるかな、」
「だろうね、
10クラスあるって聞いたから、」
「しかも知らない人ばかりでしょ?
私たち他のクラスメイトと家が離れてるからさ……、なんと言うか…心配だし……、?」
「ミナなら大丈夫だよ〜!
…そう言っても僕も心配だけどね〜……」
「って、何かもう卒業したみたいになってる!」
「ふふっ、確かに」
そんな雑談をしながらの登校は毎日の日課、というより習慣に近いかもしれない。学校は徒歩で1時間弱。結構遠いけど話していたらあっという間に感じる。
席は別に近くは無い。教室に入ると色んなところから泣き声が聞こえる。もちろん僕も寂しかった。ミナがいるから大丈夫。とは思うけど、僕は環境が変わるのが苦手だから寂しいというより、怖いって言うの方が強いかもしれない。寂しさよりも恐怖を感じてしまう……、また新しいところで1から作るのは好きじゃない。
「おはよ。蒼空。」
なんて思いながら窓の外を眺めていたら、友達が挨拶をしてくれた。慌ててその子の方を見て僕も挨拶を返す。
「おはよ〜」
「ってもう泣いてんの?!」
え?!あ、……ほんとだ。や、やっぱ意外と僕も寂しいって感じてるのかな……、
手で涙を拭う。
「あはは、
ちょっと寂しくなっちゃってさ〜……」
「あー、そっか、
蒼空はみんなとは別の中学だもんな。」
その子も寂しげに言ってくれる。こういう友達がいるのはとてもいい事だ。僕は本当に、周りの人に恵まれてる。
「うん……、
やっぱり、みんなのこと大好きだから。」
「蒼空ー!
俺も寂しいよ〜……」
色々話した。思い出話やこれからの話。お腹が痛くなるまで沢山笑った。泣きながら、笑って、……みんなといると温かかった。家では感じることが出来ない温かさがあった。家では感じないとか、今は結構どうでもいい。
ただただみんなと最後の時間を過ごす。これが一番、今を楽しめそうだから。
そして、いよいよ卒業式本番。
もちろん“先生”も見に来るからしっかりしないと……
……卒業式後
教室で解散したあと、各々好きなところに行って談笑する時間。僕は運動場で先生を探していた。
「蒼空。お疲れ様。」
暗い紫色の、ちょっとボサボサした髪。身長は、この年代の女性にしては高い方だと思う。
「あ、せ……、お母さん。
僕、もうちょっとだけ、みんなと話したいな。」
「何を言っているの。
今日もこの後勉強でしょう?
あなたは中学生でもトップで有り続けるの。」
「……うん。わかった。」
「でも不信感だけは抱かせたらだめよ。
ほら、いつもの笑顔でさようならだけ言いに行きなさい。」
「うん。」
いつもの事。別にこれが不幸せとも思ってないし、これが普通なんだって思ってる。けれど、最近ちょっと違和感を感じてきた。学校にいる温かさと家で感じる冷たさが変な感じだった。自分でも原因とかわからなくて、何なんだろうって最近はそればっかり考えてる気がする。
「みんな、今までありがとう。
お互い、中学校生活頑張ろうね。」
上手く言えてるかな、顔に出てないかな、
泣かないように、ちゃんとしないと。ちゃんと……みんなとまたねって、……
もうちょっと、話したかったなぁ……
「……蒼空、?」
「ごめん、もう行かなきゃ。」
「待て、!
その、前から気になってたんだが、
お前ん家の親……、その、大丈夫?」
言えない、言ったら……、君に影響が出るかもしれないから。、
いや、違う。
僕はただ気づきたくないだけだ。
気づいてしまったら僕は悲しいと感じてしまう。それが酷く怖い。
本当に、僕は臆病者だ。怖がりで、足がくすんで、結局何も出来ないまま終わる。君の優しさも、無駄にしてしまうほどに。
「うん。普通のお母さんと変わらないよ。
って、僕この後用事あるから〜!
みんな中学校でも頑張ってね!」
「え、あ、……行っちゃった。」
これでいい。
これでいい。
別に、寂しくもないし、苦しくもない。
それに、中学校はミナとは一緒だから。
でも……、そっか、
この髪と目について
話触れられたらどうしよう。
この国は今、混沌に満ちている。いくら多様性だとか言っててもこればっかりはどうしようもない。
「異色……」
それは髪や目の色が違った人のことを指す。もちろん、病気の可能性はあるが、ここでは健康体で、なんの不自由も無い人がただ髪色と目の色が黒や茶ではないと言うだけ。
僕の髪は真っ白で目は水色だ。……移植の中でも割と目立ってしまう部類だ自分でも思う。
ちなみに、ミナは髪は薄茶色で目の色は赤色だ。髪は……時々赤のグラデーションになっているから、もしかしたらミナのお母さんが染めてるだけかもしれない。
「蒼空。
じゃあ、行くわよ。」
「うん。」
そう言って僕は車に乗る。
バイバイ、元気でね。みんな。
もしまた会えたら、次も仲良くして欲しいな。
僕はこうやって寂しかったり、悲しかったりする時が結構ある。だから、そんな時は目を瞑って笑顔になれることを思い出すんだ。
◇◇◇
「みてみてっ!
ミナね、魔法使えるのっ!」
「魔法……?」
「うんっ!
見ててね、いくよ!」
そう言ったミナは手のひらから細いけれど、
綺麗で、暖かい炎を出した。
「……、綺麗だね。」
「……!!
えへへ、でしょっ?」
◇◇◇
あれ以降だった気がする。
僕が“らしく”生きられるようになったのは。
それを思い出すだけで不思議と不安が消える。初めて笑えた日。自分でも最初は気づかなかったくらい自然に笑えた。
ふと、疑問に思った。
何で先生はこんなに悲しそうな顔をするんだろうか。いつも怒ってる時に先生はすっごく悲しそうな顔をする。辛そうな、何かを、必死に訴えかけてくるような。……そんな表情。
「……ねぇ、先生。」
「何?」
「先生は、何で」
“ガシャン!!!”
そう言いかけた途端、大きな物音が聞こえた。それと同時に、車のガラス越し、と言うよりガラスは割れて目の前に大きな化け物が現れた。それは大きな唸り声を上げて僕の車を鷲掴みにした。
「……」
その時、先生は動かなかった。
ただ目の前の恐怖に襲われて、僕を守ろうともしなかった。別に、気にはならなかったけど、この状況でも僕は怪物より、先生が怖かった。
次の瞬間、その怪物の首(と思われる所)が何者かによってはね飛ばされた。
「……!!」
そう、それは紛れもない“犯罪者”。
狩人だった。
「何が……、起きたの……、」
最初に口を開いたのは先生だった。
僕は何も言えずに助手席で呆然とその一連の様子を見ていた。
すると、さっきの狩人が車の正面からふらっと近づいてきた。
「……」
何も言わない、ただフードを被った人が立っているだけ。よく見ると僕より年下かもしれない。数秒正面を向いていると突然背を向けてどこかへ飛んでしまった。
「先生……」
「どうしよう……、どうしよう、
終わりだ……、バレたら、もう、もう、」
そこには急に青ざめた先生がいた。
焦っていて、まるで自分のせいだと言わんばかりに。
「お、落ち着いて。
1回帰ろう?」
「うるさい!そんなの分かってる。」
そう怒鳴るように言って先生はハンドルを握ると速度違反所ではないスピードで家へ帰った。
……
それから先生は変わり果ててしまった。
僕に突拍子もない暴力を振るったり、
家に閉じこもったり……、
洗濯や料理などの家事は僕がしなければならなくなった。
1度ベランダで洗濯物を干していると隣の家のミナとたまたま目が合ってびっくりした。
「蒼空くん?!
洗濯物干てるなんて珍しー!」
「う、うん!」
すぐ来た春休みは大変だった。
昼食は自分で作らないといけないし、
先生の分まで……、
過労死するかと思ったぐらい目まぐるしがった。
先生の存在がどれだけ有難かったのだろう、と思うと同時に何故このタイミングで壊れたのだろうと、……
そして迎えた入学式。
物品販売や入学の手続きは先生が全部やってくれてたから助かった。
でも、本番はこれから。、
学校に行きつつ先生の昼食を用意しないといけない。これが一番きつそう。
「……」
「蒼空くん!」
「……」
「蒼空くんってば!!」
「……」
「蒼空くん!!!!」
「え?!!、
あ、あぁー、……、どうした?」
「もー!それはこっちのセリフ何だけど?!
蒼空くんがそんな感じって珍しくない?」
不味い。……こういう時、ミナとか、友達に相談するのが1番っていうのは知ってるけど……、どうも進んで相談出来る気分ではなかった。なにより、これを話して皆に迷惑をかけたくない。
「そう、?
今日入学式だからかなー、……、」
「確かに、クラス違ったもんね、」
「先生なら察して同じにしてくれると思ったけど逆にダメだったのかな〜……、」
「もしかしたらあるかも……、
……ねぇ、」
ミナちゃんが僕の方を見て話しかける。そこにはいつもの明るさはなく、手が少し震えていた。
「ん?」
「蒼空くんも不安?」
「……少しだけだけどねー、
意外となんとかなるって思っちゃったりして〜って感じ!」
「そっか、
うん、そうだね、!」
その時僕は、僕自身も結構追い詰められていてミナちゃんの変化に気づけなかった。
いや、言い訳かもしれない。
けれど、案外気づかない方が幸せなことも
あるのかもしれない。
それから少し歩いて中学校に着き、
それぞれの教室に入った。
ガヤガヤとしている中、僕は1人だった。
もちろんと言えばもちろんだけど、
変な目で見られてるのはすぐに分かった。
異色のせいだよね……
普通はみんな染めるものだ。偉い人が言うには、日本にいる人の約3割が異色で、その中のほぼ全員が髪を染める、もしくはカラコンを入れてる。……でも、僕は染めて貰えない。
理由はわからない。何度か先生に染めたりカラコンを入れたいと言ったことがあるけど、
怒られたからもう最近は言っていない。
◇◇◇
「先生、僕、髪染めたい。」
「……なんてことを言うの?!
貴方は貴方何だから合わせたらダメなの。
そんなのも分からないの?
まだ、言葉が足りなかったかな?」
◇◇◇
正直これはちょっとおかしいと自分でも思う。
みんな染めてるし、カラコンも入れてる。
でも、怖くて言い出せない。
完璧でいなくちゃならないから、
完璧にしないと、先生が……、
友達も、作らないと……、
勉強も、良い点数取らないと、
朝ご飯、昼ご飯、家事、洗濯、……
正直、この頃の自分は追い詰められていた。
一歩間違えたら廃人のようにぽっくり折れていたのかもしれない。焦りすぎて、周りが見えていなかった。
入学式なのでもちろん自己紹介があった。
一人一人立っていく、いつものアレ。
「文月蒼空です。
好きな物は、海で、
嫌いな物は……、寒いところとか、?暗いところです。
よろしくお願いします。」
他の数人は自己紹介の後は拍手やよろしくねーなどの掛け声をしていたにも関わらず、僕の時は何もなかった。
その時僕は、とてつもない孤独感を感じた。
僕がそれを感じていたということを担任の先生は感じたのだろう。休み時間になると声をかけられた。
「文月くん、ちょっとおいで。」
「はい、」
そう言って先生について行った僕は、
人気の少ない廊下に出た。
「文月くん。
私が言うのもちょっとあれだけど、髪、
染めた方がいいと思う。
そ、そりゃ、個人の考えを尊重したいから無理にとは言わないけれど……、ほ、ほら?
政府とかも、政策として異色排除みたいなこと行ってるじゃない?」
その時僕は戸惑った。
先生のことは絶対に言ってはいけないし、
ううん。なんにしろ、完璧でなければいけない。
「……、そうですね、
ありがとうございます。
親とも少し相談してみます。」
……
そこから4月、5月と時が進んで……今は6月。取り上げるハプニングは特にない。
けど、ミナちゃんと一緒に帰らなくなった。
正確には帰れなくなったって感じだけど、
僕が異色ってのが原因かは分からないけど小学校の頃より視線を感じたり、変なことをされてるような気がする。
気づいたら筆箱が無くなってたり、
椅子蹴られたりとか、
まだ2ヶ月しか経っていないのに筆箱はもう3つ買った。けど、3つ目も無くなったからもうペン単体でポケットに入れて持っていってる。
ミナちゃんに迷惑をかけたくなかった。
あんまりミナみなちゃんと話してるとミナちゃんにまで嫌がらせをさせられるかもしれない。
でも、……
「あ、蒼空くーん!
今日久々に一緒に帰ろ!!」
そう言ってミナちゃんは小学生の頃と変わらない感じに話しかけてくれる。
「……、うん!」
戸惑ってしまう。
最近話してないからかもしれない。久しぶりに話すなぁ……本当は、断らなきゃ行けなかったのに……、、断らなきゃ行けないのに。でも、中学からはちょっと遠いし、ここくらいはいいよね。
そうして僕らは歩き出す。
「そう言えば、蒼空くんって帰宅部だっけ?」
「う、うん!、なんか、何やりたいか分からなくて……そのまま期限過ぎちゃった。
そっちこそ、ミナちゃんって何部だったっけ?」
「帰宅部!実は入ってないんだよねー」
「えぇ?!小学校の時やってたバレーは?」
意外だった。ミナちゃんは小学校の頃バレーを物凄く頑張っていて、何かの大会で優勝したぐらい強かった。体力テストの結果もあの学校で1番だったと自慢していたくらいには運動神経抜群のミナちゃんが……、勝手にバレー続けるものだと思っていた。
「ん〜、続けたかったんだけどさ、
他にしたいことあってーって感じ!」
「そうなんだ、!
ちなみにどんなのか聞いてもいい…?」
「えー!」
その時、僕とミナちゃんは話に夢中で全く音を聞いていなかった。久しぶりに話して嬉しかったからかもしれない。
えー!と隠すような笑みを見せた彼女の後ろの通路には、大きな化け物がいた。
「秘密っ!」
ミナちゃんも多分気づいていないんだと思う。
そして、その化け物は明確な目的。ミナちゃんを掴もうと手を伸ばした。
「……っ?!」
その時、自分が何をしたかは分からない。
覚えてる範囲ではミナちゃんと怪物の間に入ってミナちゃんを守ろうとしたこと。
全力で手を止めようとこちらも両手を伸ばした。その瞬間僕は怪物に叩かれた。
「何でこんな時に……、
って蒼空くん!!?、」
「……っ、」
話すこともままらないくらい体がきつい。
訳が分からない。あぁ、早く逃げて……ミナちゃんは、動けなさそう、あぁとにかくなんでもいいから、。この化け物をどうにか出来ないかな……、
そう思っていた瞬間、何者かが化け物を炎で焼いたのが見えた。
僕はその時目が眩んで何も見えなかった。けれど、炎が近くにあることだけが分かった。
炎が消え、次見えたのは何事も無かったかのような先程の道だった。
「……、蒼空……くん……?」
「なに、……これ、。
何が起きたの?、」
「蒼空くん……目を瞑って、、、、」
わからない、頭がぐるぐるする。ミナちゃんはなんて言ってるのだろう……
「って、あれ?!ミナいるじゃん!」
暗闇の中、元気な少年の声が聞こえた。
「……!そ、蒼空くんが…、」
「蒼、空?」
「突然……魔物に襲われて、、、」
「……その蒼空くんって子は?」
「え、そこに……、
って、た、倒れてる、!!」
「……、死ぬようなのでは無いけど、傷が深い。それに、、、色々この子には聞きたいことがあるから一応救急車呼ぶ?」
「美羅先生は、?」
「あー、どうだろ、でも一応この子今のところ“一般人”だから救急車がいいかも!
とりあえず呼ぶねっ!」
なんて、ほとんど僕の耳には届かなかったが、その言葉を最後に僕は意識を手放した。
……
夢を見た。
気を失っていたのか眠っていたのか分からないけど、“ありえない記憶”を見た。
◇◇◇
「母さん、白恵とお散歩に行ってもよろしいですか?」
「ふふっ、本当に彼のことが好きなのね。
いいわよ。存分に遊んでらっしゃい。」
「……良かったな。あいつも、一時よりは生きやすそうにしてるじゃないか。……だが、本当に良かったのか?弟なんて……」
「……分かってます。けれど、私、昔から勘が優れていまして、何か近いうち大きな出来事が起きる気がするのです。これが正しいのかはわかりませんが私は子供たちが1番なので。今だけでも……笑ってくれればそれで十分です。……それに、彼は十分に頑張っていますよ。……みんなを守るために。」
◇◇◇
あぁ、美しい人だな……、
綺麗で、凛としていて、
でも、多分夢の中の人……なんだと思う。
それに、封印とか、なんだかすごくファンタジックだから、
いいな、僕も異色の代わりにこういうのが貰えたら良かったのに……
「……」
ゆっくりと目を開ける。どれくらい眠っていたのだろうか。眩しくて目が慣れない……、
「あ、蒼空くん!」
「ミナちゃん……?
ここは?」
そろそろ目が慣れてきた。ベッドに横になっていた僕は上半身だけを起こし、ミナちゃんの方を向く。
「病院。」
「そっか……、
……ミナちゃんは怪我ない?」
「うん、おかげさまで___」
「こんにちはっ!」
「「?!!?」」
だ、誰?!
ミナちゃんの弟?いや、でもミナちゃんに弟はいなかったはず……、それに、……髪が真っ白だ。この子。それにこの背丈……どこかで見たことあるような……?
「ミナの従兄弟のシエだよっ!
蒼空くんのお母さんからのお手紙貰ってきた!」
「お、お母さん……から、?」
「とりあえず読んで読んで!」
「あ、蒼空くん、これ。
あの時壊れちゃってたから私のやつだけど、はい!」
「え、これ……眼鏡?」
僕眼鏡なんて使ったことないんだけど……、
何か理由があるのかな…?
「うん!合うかわからないけど、
とりあえずつけてみて!」
「うん」
?!、なにこれ……、
さっきまで先生からの手紙が書かれてあったのに……文字が、変わってる?!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
蒼空君へ。
急に文字が浮かび上がってびっくりした?
この現象について説明したいところだけど
残念ながら僕は忙しくて時間が無いから
また後で説明するね!
従兄弟って言うのは実は嘘でね、
本当はただの知り合い!
で、本音を口で話せない理由なんだけど、
蒼空くんが異色だからか分からないけど
監視カメラついてて、音も拾ってたら
バレちゃうから手紙にしてる!
え?バレちゃいけない理由?
まぁまぁ諸事情諸事情。
それも後で話す!
さて、こっからは真面目に行くよ。
僕の予想ではあと数分後に看護師さんが来て
症状やその他諸々について話があると思う。
今日の夜か夕方辺り退院出来ると思うけど、
また別の問題が起きちゃってね。
別件の方に行ってもらわないと
行けないと思うからそれ含めたら
最終的に蒼空くんが家に帰ってくる時間は
ちょっと分からない。
まぁ色々動くから不安な気持ちもわかるけど
良かったら僕たちに協力して欲しいな。
覚悟が決まったら色々片付いたあと、
今夜中に海へおいで。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
……、これ、この子が書いたのかな、
驚きってよりも、ちょっと悲しい。
だって、どんな生活をしてたらこんな歳で
こんな文章が書けるんだろう……、
「……と、とりあえず……、持ってきてくれてありがとう。」
「ん、読んだならよし!
じゃ、僕はちょっと用事あるから帰るねー!」
「あ、私もこの子送らないといけないから、
じゃ、またね。」
「う、うん。
待っててくれてありがとう。」
なんと言うか……、
気まずいな、元々あんまり話せてなかったのに、余計なんか話しにくくなった。
こんなこと今まで無かったのに。
「失礼します。
蒼空くん。色々説明しに来ました。」
ミナちゃん達が出ていった後、直ぐに看護師さんが来た。……というか、ここが個室でよかった。
「こんにちは。
よろしくお願いします。」
「えー、まず蒼空くんについてなんですが、
腹部に浅い傷と、……気絶はそのショックでしょうね。いくら傷が浅いとはいえ、広かったので。他に異常は見当たりませんでした。まぁ、経過を見るって感じですね。今は全然何ともなさそうなので。
で、それより大事なことがある。
救急車レベルの熱だったから
勝手に学生手帳見てお母さんに
電話したのだけれど……、
出なかったから住所行ってみたんだ。」
それ色々大丈夫なの……?と一瞬思ったが、それより僕には懸念するべきところがあった。
「そしたら、その、……
お母さんがさ、酷い精神状態でね。
突然だけど入院することになったんだ、」
「…………」
やっぱり……、薄々おかしいのは気づいてたけど、変に人に迷惑かけたくなかったし……、あんまり言いたくないし、思いたくもなかったけど結果的に良かった気がする。
っていうか、これから僕はどうするんだろう……、まぁ一応ここ数ヶ月ほぼ1人で過ごせたし、このまま過ごすってのもありだと思うんだけどな……
「それで、なんだけどさ、
流石にずっとここで預かってる訳にも行かないし、あの状態なら多分蒼空くんが世話とか自分のご飯とかも作ってたんだよね……
って話になって、、、どう?1人で過ごせそう?」
「……はい、負担が軽くなって今までよりは楽だと思います。」
「そっか、……
治るまで入院の上、病名もわかってないんだ。どの精神病にも当てはまらなくてね。もしかしたら今後悪化して二度と会えなくなるかもしれない。最後に会うならこれが最後のチャンスだけど、どうしたい?」
「……、やめておきます。
僕が会いに行ったら余計悪化しちゃいそうなんで。」
「そう……?
なら、もうこの病院からも出ることになるけどいい?……生活出来る?」
「はい。
親戚とかに当たってみようと思います。」
「そうね、確かにそれがいいかも、
じゃあ、これはちょっと私情だけど、
病院費とかはこっちで何とかするね。
頑張ってね。」
「……!はい!
ありがとうございます。」
そう言って僕は病院を出た。
出た頃には辺りがうっすら暗くなっていて、
黄昏時だった。
白恵くんは夜中って言ってたし、一回家帰ろっかな。
そう思った僕はそのまま家へ帰った。
「ただいまー……」
誰もいない家。
一軒家だった僕の家は2人暮らしでも広いと感じていたのに余計に広く感じて寂しさを覚えた。
こっちの方が楽なのに……、何で寂しいんだろう。
案外、心残りとか言われ続けてきたことってのは心臓に深く根付いて、呪いのようになることがある。
今日は色々ありすぎた……、
眠たい、けどもし今寝たら約束の時間に間に合わないよね、それに、覚悟って……
一体何のだろう……
そうグルグル考えながらももう一度僕は手紙を読む。しかし、メガネはもう返してしまったのでそこにはダミーの文字である、嘘しか書かれていない。
「……ミナちゃんは何を知ってるんだろう、」
ここでグズグズしても意味が無いし、何も進まない。そっちに少しだけでも希望があるなら、行ってみる価値はありそう……なのかな。
とりあえず、約束の場所には行ってみよう。
……浜辺にて
「あ、来た!!」
「こんばんは、
ってえぇ?!ど、同一人物ですか?」
「もちろんっ!あっ、ミナは今家いるよ!
んで、覚悟は決まった?」
「……それが、イマイチどんなことか分からなくて、」
「そっかー、そりゃそうだよね、急に──」
「でも、!多分僕はここで誘いを蹴ると、
一生後悔すると思うんです。
それに、このままグダグダ生活するより、
変わりたい、です。」
そう、僕の人生はここから加速して行った。
静かで誰もいない夜の海。
ようやく見つけた。いや、見つけてはいた。正確には、見つけてもらった。が正しいかな。月明かりが2人を照らす。
真剣な顔をして言う僕は内容はさほどかっこよくないが、以前よりはかっこよ見える……だろうか。
「……へー…、なんか意外!」
「意外って……、
結構どストレートに言いますね……」
「いやいや〜、だって何か気弱そーで
遠慮しがちななんか
「自分なんて……、迷惑ばかりかけて、、」
とか言ってそうなイメージだったからさ!
新しい一面が見れたって感じだよ!」
あながち間違えではない……、
「うっ……、た、たしかに……、気が弱い自覚はありますけど……。じゃ、じゃあとりあえず、その話について聞かせて貰ってもいいですか?」
「おっけー!もちろんっ!任せてーっ!!
あ、あと歳下に敬語とかイヤだからタメ語でよろしく!
じゃ、百聞は一見にしかずって言うので、僕の手元見ててね!」
「?、う、うん。」
そう言うと白恵の手のひらが黄色に光り、
ワープゲートのようなものが開く。
「じゃーん!」
「……?
え、えぇえええぇ?!!な、なにこれ!?」
「ふっふっふ、
ま、詳しくは中で話すよ!
おいで!」
「……、うん!」
戸惑いながらもどこか吹っ切れたのか、蒼空は興味津々に入っていった。
「えへへっ、どう?」
白恵が自慢げに見せるように手を広げる。
そこには雰囲気の良い全体的に黄色、オレンジの街があった。ヨーロッパのある街の国にそっくりだった。
「おぉ〜……!!
めっちゃ綺麗な街並み……」
蒼空は結構気に入ったらしく、目を輝かせながら街を見渡している。
「ほんと、
学園長の妹さんの趣味全開って感じだよねー!」
「学園長?!、え、学校?」
「あー!いやいや、この街に学校があってね!
その人がこの空間……あっ、名前はラコルトって言うんだけどね!それを創ってるからさっ!」
「……?、
あ、そういえばまだ説明何もされてないけど、そろそろ聞いていい?」
「うんっ!
って言いたいところだけど僕説明が下手くそらしくてね……、
ってことで変わりにリーリエって人が説明してくれるよ!」
「りーりえ……さん?」
「そそ!」
そう言いながら白恵はスマホのようなものを取りだし、チャットを打っている。
「こんばんは、白恵さん。」
一瞬の間に綺麗な金髪黄金の瞳の女性がその場に現れる。高く1つに纏められた髪は、サラッとしている。
「やっほー!じゃ、後はよろしく!」
そんな位の高そうな人に対しても「やっほー!」とか言ってしまう白恵に蒼空は驚いている。とか思ってる間に白恵はもういなくなっていた。
「はい。じゃあ、まずお名前、聞いていいでしょうか?」
「……、文月蒼空です!」
戸惑いつつも、恐怖より好奇心やワクワク感が勝ってしまった蒼空は元気よく名前を言う。
「文月さんですね。
私は白恵様専属の騎士、兼子供保護施設、マイハートの施設長をやっております。白恵様からはどこまでお聞きになられましたか?」
「全く、何も聞いてませんね……」
「そうですか、」
彼女は小さくため息を着くが、困惑することも怒ることも無く。
「それなら、わかりました。
手、触ってください。」
そう言いながら彼女は彼に手を差し出す
「?、は、はい。」
疑問を抱きながらもその手に触れると、
ホワイトボードがある部屋にテレポートする。
「では、少しお勉強と行きましょうか。」
「ん?!」
テレポートしたことに酷く驚いているのか蒼空は硬直している。
「メモ用のノートとか、いりますか?」
「えっと、は、はい!」
テレポートについても解説があるのだろうか、とか思いながらも。リーリエからペンとノートを受け取る。外国風の街並みや建物の雰囲気だが、ペンやノートは日本のものと対して変わらない。
「では、説明を始めるので座ってください。」
「……はい!、よろしくお願いします、!」
「まずは私達、狩人についての説明です。
狩人は日々人々に襲いかかってくる魔物と呼ばれるバケモノから人々を守るために結成された組織です。
ニュースを見ていたのであれば少しはご存知だとは思いますが私達は能力と魔法を持っています。能力はこの世界ではアビリティと称しまして、アビリティはとある宝石から自分の好きな物を一つだけ登録することが出来ます。
そして魔法は魔物を討伐するために数百年もの期間、上限を知ることなく成長させられてきた魔法。ファンタジー系の絵本とかアニメ、漫画とか見てたなら想像するのは簡単だと思います。魔力が人それぞれあり、魔力の多さは単純に魔法の威力と比例します。そしてその強さは髪や目に色として表れます。でも魔法と器の持ち主は保護者の考え方とかによって黒染めしていたり、カラコンを入れたりしているので見ただけじゃ一般人と変わらないんですよね。だから白恵や校長先生がスカウトしに行く人は、染めたりカラコンを入れてない人。一般的な保護者は染めたりする人が多いのでスカウトされる人は割とその、孤児や色々な事情を持ってる人が多いんですよ。ここまででなにか質問などございませんか?」
丁寧に図を描きながら教えるリーリエ。……関係ないが、絵が上手だ。
「いえ、!すごく分かりやすくて助かります!」
「ふふっ、それなら良かったです。
では続きを説明しますね。
これで魔法とアビリティについての説明は以上となります。続いては狩人世界のお話です。これから狩人となる蒼空くんにとってはとても大事なところになりますのでよく聞いておいてくださいね。
まず、狩人とは先程説明した通り魔物と戦います。そしてそれは政府からは犯罪とされています。理由は、白恵様の考えによると権限を持たれたくないから、と言う理由らしく、警察は私たちを襲ってきます。
政府と狩人は一方的な対立関係。
緊迫した状態で、情報を与えたら最後となってます。だから外の世界では仕事中、基本喋らない。というのが原則です。あ、プライベートの時はもちろん構いませんよ。
と、まぁだいたいこんな感じですかね。
どうですか?分かりました……?」
「はい!
めっちゃ分かりやすくて助かりました!」
嬉しそうに、にこっと笑う蒼空。
もしかしたらこっちが彼の本当の顔なのかもしれない。今、特別なことを学んだことによって元の世界や学校、“先生”の呪いから少しだけ、ほんの少しだけ解き放たれたのかもしれない。
「ふふっ、ありがとうございます。
蒼空くんならきっと良い狩人になれますよ。
頑張ってくださいね。」
そう言いながらリーリエは母親のように蒼空の優しく頭を撫でる。
「はい!」
蒼空は年頃にも関わらずそれに照れもせず、明るくて眩しい笑顔を見せてそう返事をした。
……
そこから蒼空はリーリエに連れられ、異空間の中の街を歩いていた。
「あ、そう言えば学校について説明してませんでしたね、今大丈夫ですか?」
「あ、はい!」
「えっと、狩人はもちろん大人たちもいて、
その人たちは殆どが狩人学校と言うところの卒業生です。狩人学校は名前の通り狩人を育てる学校。先程もお伝えしましたが家を持てない子が多くいるので戸籍を登録せずにこの空間で生活しています。例外もいますがね。蒼空くんの事は多分白恵様が担当していらっしゃるので聞いたらわかると思います!」
「なるほど、ありがとうございます!」
「呼んだー?」
気配を消していたのか、それとも先程のテレポートをしてきたのか。2人が歩いている目の前に突然現れる。
「え?!」
「あれ?蒼空、なんか変わった?」
素直に首を小さく傾けながら問いかける白恵。
「……?」
その質問の意図を理解していないのだろう。蒼空も同じく首を傾ける。
「あー、いや!なんでもない!
リーリエ、ありがと!あとは任せてっ」
白恵はにこっと笑い、リーリエは微笑みながら礼をするとその場から消える。
「あ、そう言えば僕の学校ってどうするとか決まってるのかな?」
「あー、うん!
本当だったら戸籍消して死んだことにするんだけど、蒼空くんにはとあるプロジェクトをして貰うからそのまま通ってもらいます!」
「え……、?」
「ま、偉い人?なんか、狩人代表…最高なんとかかんちゃら……、最強……?強い人を助けるって考えてさ、多少辛いかもしれないけどお願い!」
「う、うん!いいよっ!って、え?!
最強……?」
どこか嫌そうだったが、それより後半の白恵が最強と言ったことに驚いている。
「あれ?リーリエから説明無かった?
僕は“今のところ”“正式な”狩人では1番強いんだよねー!あ、試したことは無いんだけど……、多分ね!だから正式じゃないし、狩人以外を含めたら1人どうしても勝てない人はいるけどね、」
あははと白恵は苦笑しながらそういう
「えぇ、そんな人にタメ語って、本当に大丈夫……何ですかね?」
「大丈夫大丈夫!むしろ僕からお願いしたいし!
そして……、僕から説明しないといけないことがある。」
「了解……!、」
一旦ポケットに直していたメモ帳とペンを取りだし白恵の方を見る。
「うん!まず直球に言うとね、
蒼空って僕のお兄ちゃん何だよ!」
「……え?」
え?以外の声が出ない蒼空。そりゃそうだ。今までずっと一人っ子だと思って暮らしてきた。それに、蒼空には母親しかいない。……弟ができる、っていったらその母親がどこかで作ってきたしかありえない。でもそんなことできるくらいあの母親が蒼空の家を留守にしていたことは無い。
「そうなるよねー、
でもほら、髪色とか!似てない……?」
ここで蒼空は何となく察する。あぁ、……多分、自分は異色だから捨てられて、拾われた子で、その後にできた子なのだろう。と。
とりあえずそこの話題はあまり白恵と関係がなさそうだったので口にはしない選択をした。
「目は……」
そう。蒼空が口にしたとおり、髪色こそ似てたが瞳の色が若干違った。こちら側見て左が赤色、右が青色の瞳をしている……つまりオッドアイの白恵。蒼空はどちらも蒼に近い水色だ。
「そりゃ親の血混ざってるからね、
多少違うでしょ!それに、意外にも狩人トップと言うか始まりの血を継いでるから偉い人だったらしい!」
「狩人の始まり……?偉い人……?」
「ごめんね!リーリエと違って説明が下手くそだから感覚でわかって欲しい!
大きな家計だっからルール的なものがあって、その中の一つに1番血の強かった人、その時の当主の第1子?は兄弟を産んだら行けなかったんだって!詳しくは僕も分からないんだけど……、一番最初の人がいるらしくて、その人から代々継いできたのが僕たちって感じ!……らしい。」
「なるほど……?」
「そう、つまり、その人のおかげで魔法を使える人が増えたってこと!ちなみに異色の子はみんな親戚だよ!」
「!、魔法の始まりの1番血の強いのが僕達……ってこと?」
「そうそう!
んで、魔法の他にアビリティってのがあるんだけどそれも遺伝!
話は戻るんだけど兄弟を作ったらダメな理由はね、血の力が分散しちゃうんだって!
その、ややこしいんだけど僕達だけはもう1つ能力が継がれていて、封印って言う能力。魔物を殺して止めるんじゃなくて封印して元の動物に戻す!簡単に言ったらそんな感じ。それがさ、兄弟を作ったら分散しちゃって段々少なくなるんだって……、何で僕を産もうとしたの?って助けてくれた人に聞いたんだけど何とも言ってくれ無くてね、」
あははと白恵はどこか寂しそうに苦笑しながら。
「……、」
それを感じ、何かを言おうとするがスケールの大きすぎる話になんと声をかけたらいいかわからず、悲しそうな瞳で白恵を見つめる。
「ま、とにかく!
完全に封印しないと日本どころか地球が終わるって話!
ねっ?お兄ちゃん。終わらせよう。」
「……うん。」
勝手に想像して勝手に落ち込んでいた自分を励ますように両手で頬を叩き、真剣な表情で言う。
「……ありがとっ!」
嬉しそうににこにこと笑う白恵。
「って言っても正直、この世界のこと全然知らないし、めっちゃ迷惑かけちゃうかもしれないけど……、」
「だからこその狩人学校だよ!
そこで経験と知識と感覚を掴めばいい!」
「……、え、3ヶ月の経験の差って……、埋まる……のかな?」
「埋まる埋まる!1ヶ月!1ヶ月僕が見てあげるから頑張ろう!!
あ、蒼空は魔法使えないけど代わりに封印あるから大丈夫!僕と違ってアビリティも設定できるし、成長すれば全然僕より強くなるって!」
不安そうな蒼空を励ますように白恵が応援する。
「……、」
蒼空は目を輝かせる。表情こそぽかんとしているが、それは、強い光に当てられたような。眩しい光を見たような。とっても、わくわくするもので。蒼空の瞳は晴れていた。
「これでも不安?」
ニヤニヤとしながら白恵はその瞳を見る。
「ううん、全然!」
顔を上げて蒼空は笑顔でそう言う。
「そう来なくっちゃ!
さて!今日から忙しいよーっ!」
「……!うんっ!」
そこから彼の、彼らの長いようで短い物語が始まった。
「ってな訳で、これ、月給!」
そう言って白恵は封筒を渡す。
「?!、え、何もしてないけど、……」
「いいのいいの!生活費とかに当ててもらってほしい!その分こっからしっかり働いてもらうからねーっ!あ、ちなみに家事とか、1人で生活できる?」
「うん!、一応ここ数ヶ月は生活出来てたから大丈夫だと思う。」
「そっかそっか!良かった!じゃ、とりあえず今日は帰る?」
「そうして貰えると助かる……!!」
「あ、あと2人の時はその………、えーっと、べ、別に嫌だったらいいけど…さ…」
「……?」
「ほ、ほら、……、家族じゃん……、?
ほぼ初対面見たいな感じだけどさ……、
……だから、ね、?お兄ちゃんって呼びたい……っていうか、……、憧れ、……だったから、、」
歯切れの悪い感じで言う。その表情は恥ずかしがっている、というよりどこか寂しげな表情だ。暗く、心配そうに。……甘えなれていないのだろう。
「、!うん!もちろんいいよ!」
「……!あ、ありがとう、」
「むしろ僕も嬉しいから全然大丈夫だよ〜」
蒼空が素直にそう言うと、白恵は顔を隠すように顔を俯きながら。でも声はどこか喜んでいるように聞こえる。再び2人は手を繋ぎ、白恵は蒼空の家まで送る。
「到着ー!」
「ありがとう!
そう言えば、白恵くんはどこに住んでるの?」
「僕はあっちに家あるんだー!
って言ってもあんまり帰らないけどね」
「やっぱり忙しいんだね……大丈夫なの、?」
「これくらい大丈夫!
ほらほら、明日からお兄ちゃんも忙しくなるから今日は早めに寝ておいた方がいいよー?」
「うん!、わかった、ありがとう!」
「明日えーっと、緊急が無ければ6時には迎えに来るね!じゃ、また明日ー!」
そう言いながら白恵はその場から飛び去る。それを下から見る蒼空。……やっぱり、現実なんだ。と、ぽかんとしてしまう。
「ま、またねー!」
我に戻ったのか、大声で手を振りながらそういう。そのまま蒼空は自分の家へ帰り、リビングを見渡す。
誰も居ない……、静かな家だ。
蒼空は誰も居ない部屋をぼーっと見ながら。
今日は本当に色々なことがあった。そんなことを思いながらソファに寝転ぶ。
目を瞑り、色々考え事をした数分後体を起こし、風呂に入ったり自分で料理したパスタを食べ、再びソファに座る。その時、時計の針は午後1時を指していた。
あまりにも急に実感のない話ばかりをされたからか、ソファに仰向けになる。左手を顔に当て、天井をぼうっと見つめる。
不安と、好奇心。
先程までは好奇心の方がやや強かったが、深夜1人になったことで不安の方が強くなっできてしまったのだろう。表情が明るいとは言えない。
「……文句ばっかり言ってても始まらないよね……、」
そう呟くと同時に目を瞑り、蒼空は眠りに着く。
……
“ピンポーン”
“ピンポーン”
“ピンポーン”
「んー、……、えいっ!」
魔法を使い、蒼空の家のドアを破壊する。蒼空はその音を聞いて急いで玄関に向かう。
「わっ!?
し、白恵くん?!ドアを壊さないで!?」
玄関に辿り着くと、綺麗なドアの前に白恵が立っていた。……ドアは壊れていない。
「もしかしてインターホン聞こえなかった?」
「え……?、ど、ドアは?」
「ドア?あぁ、突き破っちゃってごめん!でもちゃんと魔法で治ったから安心してっ!っていうか、インターホン壊れてるの?」
魔法ならそんなことも出来るんだ、と素直に信じた蒼空は特にそこに対して問いただすことも無く、インターホンを確認する。
「インターホン……、あ、壊れてる……、」
「壊れたの?!こんなピンポイントで……、」
「あ〜、いや、多分文月さんだと思う。」
「文月さん……って誰?」
「えーっと、」
子供にも分かりやすい説明がいいよね、お母さんって言ったら兄弟なのにってややこしくなっちゃうし、かと言ってはっきり「今病院にいる人」とか言ったら気まづくなっちゃうしなぁ、と色々考えながら。
「……?」
「僕を育ててくれた人!」
結局はそう表現することにしたのだろう。若干変な顔をしながらも蒼空はそう伝える。
「なるほど……?
ま、とりあえず行こっか!」
「うん!」
「おっけーいっ!
えっと、狩人は政府に情報を与えたらダメみたいなところがあるから、その、2人で行動してるところを見られてもダメ……?だと思うからお兄ちゃんにはギャラリーとして見てもらいます!」
「なるほど……、、?」
「ま、百聞は一見にしかずってことで、
早速魔物を探しに行こーっ!」
元気に白恵は指揮をとり、白恵だけ高く空に浮く。
辺りをキョロキョロと何かを探すような仕草をする。目的のものを見つけたのか、3秒後くらいにそのまま降りてくる。
「こっち!」
そう言いながら蒼空の手を引っ張って走り出す。走ってる途中に白恵の見た目は一瞬で変わっていた。ポニーテールや背丈はそのままで、色だけが変わったという感じだ。黒い髪に黒い目。
「えぇ?!、白恵くん……?」
「しっ!異色が二人いたら怪しまれるでしょ!」
小さな声でそう言う白恵。その後はそこまで走るわけでもなく、あっという間に魔物がいる路地裏へと到着した。
「……、」
あまりに大きい魔物を見て息を飲む蒼空。
昨日自分はこれに立ち向かったのか、と恐怖を覚えるような目をしていた。
「大丈夫大丈夫!安心して?
あ、あと念の為僕らは他人のフリをしよう!見られたらヤバいからねー、」
そう言いながら白恵は指輪を填め、ボタンを押すとフードの着いた黒紫色の服が展開され、それを装着する。
どこか楽しげにしている白恵は、はしゃぎつつもフードを被ると、魔物に向かって手を出し、その手から炎が噴出される。だが、その炎はよく見るような濃いオレンジではなく、黄色寄りの鮮やかで綺麗な色をしていた。
引火することなくその炎は魔物の体だけを焼く。
“ガアアアアア”
魔物が苦しそうな声を上げ、少し大人しくなる。白恵はそれを確認した後、魔物に近寄ると、両手をかざす。その手は7つの色が光り、やがて1つの白色になり。その光を浴びた魔物はどんどん小さくなる。
「……」
その様子を見ていた蒼空は何が起きたのか分からず、じっと見ている。
「あ、あはは、久しぶりに使ったけど、
やっぱり難しいね。」
疲れたように少しふらつきながらそういう白恵。魔物によって壊されていた建物は綺麗さっぱり治っていた。
「い、今のは……、?」
「最後の白い光は封印!擬似だけどね、ほら、この間言った通り兄弟を産んだことによって能力は分散しちゃったけどお兄ちゃん9割僕1割見たいな感じで頑張ったら使えるんだよねー!」
「なるほど、え、じゃあ炎は?」
「炎は魔法!あ、魔法はお兄ちゃん使えないと思うんだけど……、一応どんなもんかってのを見せたかっただけ!
んで、本題はこれから、お兄ちゃんには
あの白く光ったやつを習得してもらいます!」
「え、あ、あれを……、?
僕が……?」
「深く考えすぎだよ!
僕よりはすんなり出来るはずだから自信もって行こう!」
「う、うん!」
「まずは体力作りからかな、
今のままだったら狩人学校入っても何も出来ないと思うからねー、
ちなみに部活は?」
「すみません、な、……何も入ってないです……」
「んー、なるほど、ま、
何かしら具体的な目標は考えておく!学校はもちろん実戦もあるからね、最低でも封印が僕みたいにふらつかずノーリスクで撃てるくらいになったら嬉しいかも!」
「ノーリスク……、」
なんとなくできる実感がわかないのか不安そうにつぶやくだけの蒼空。
「そうそう!」
「でも、どうしたらいいんだろ……、
あんまりイメージできないって言うか、
これって多分調整とかそんな感じの話だよね……、」
「それがね、実を言うとそうでも無い!
僕もあんま慣れてないから使うとふらついちゃうんだけど、これって出力とかの話じゃなくて慣れの問題らしい。工夫して使うよりもひたすら撃ちまくって慣れる!
ごめんね、資料がなくてこれくらいしか言えないや」
「全然!ありがとう!」
「、ど、どういたしまして!
って訳で、習うより慣れろとも言うし、」
そう言いかけながら白恵の足元に落ちていた葉っぱを拾い、蒼空に見せる。
「……?」
「これ!今封印してみて?」
「……ん?!」
「何も封印は魔物の悪霊だけしか出来ない訳じゃないんだよ!石くらい小さいものからビルくらい大きいものまで!やったことないから多分だけど……
ま、物は試し!やってみて!」
「う、うん。」
蒼空は何だかよく分からないまま葉っぱに手をかざして念じている。
「んー、やっぱダメか。」
白恵はわかってたかのような言い方でつぶやく。
「やっぱり……?!
え、分かってて……」
「いや!葉っぱは封印できるよ!
やっぱ気持ちが大事なんだなーって、あっ全然お兄ちゃんがダメって訳じゃなくてね!封印もそういう仕組みなんだなーって思っただけ!」
「は、はぁ……」
白恵があまりにも慌てて説明したので蒼空は曖昧な相槌をうつ。
「じゃあ、“この葉っぱ封印出来たら死ぬ”とか考えながら……って急に言われても実感湧かないよねぇ……、」
どうしよっかなーと色々考えている。もちろん白恵は狩人界隈では名の知れた実力者。力はあるが教えることに至ってはまだ齢9の子供なので上手いとは言えないのだ。
「……、いや、もしかしたら……、?」
素直で信じやすい蒼空。半分冗談のつもりで言った白恵の発言をガチで出来ると思い始める。
「流石に無理だと思うよ。お兄ちゃん。」
白恵は自分で言っときながらもすごく冷静な声でツッコミを入れる。
「ん〜……、どうしたらいいんだろ……、白恵くんは最初どうやって出したの?」
「最初は……あー、1回だけ追い詰められちゃったことがあって、……そんときに出来た!1回出来たらあとは出来たんだけどねー……、」
「……ぶっつけ本番……?」
「あはは……、ま、まぁ、そんな感じ……」
「……僕なんかもう次の言葉予想できるんだけど……、大丈夫、?」
「……よし。お兄ちゃんも実戦形式でやろう。はい。これ!」
白恵は自分に填めていた指輪を外し、蒼空に軽く投げて渡す。蒼空はしっかりとそれをキャッチし、自分の人差し指にはめる。
「……、ここからは、どうするの?」
「そのボタン押したら展開するよ!」
それを聞き、蒼空は言われるがままボタンを押す。すると、先程のように服が展開する。
「お、おぉ〜!!!
凄い……サイズもピッタリ!
え、あれ、?何で……?」
「何かね、僕も仕組みわかんないんだけど開発者が頑張ったんだらしい!」
「開発者……?!」
小声で驚くように呟く。そんな団体もいるくらい狩人の世界って広かったんだ……と、勝手に狭い世界だと思っていた蒼空はまだまだ知らないことが多いなぁ、と感じつつ。
「そそ!いやぁ、凄いよねぇ、
僕も尊敬する!じゃ、探しに行こー!」
「お、おー!」
……数分後
「はぁ、はぁ、やっと見つけた……」
別の路地裏には先程よりは少し小さめの魔物がいた。
「もー、遅いよー!
人多くなるから今日の実践はこれが最初で最後ね!」
「わ、わかりました……」
ただでさえ体力少ない蒼空は朝からこんなに走ったせいでだいぶ息切れていた。
恐怖で体が震えながらもその魔物に立ち向かっていく蒼空。
その背中を白恵は意外そうに見つめる。
オドオドしてる、と言うより自信がないのだろう。ふわっとしてるのにこういうところでは意外と動く。蒼空は自分なんて死んでもいい、なんて思っているのだろう。狩人はそんくらいの心構えじゃないとやってけないから別に問題は無い。しかし、時には助けられたはずの住民の死、同じ狩人の死も身近に体験することになる。
優しすぎる、天性的な善人にそのようなことが果たして耐えられるのだろうか?
善戦をしているとは言えない。魔物に殴られたり蹴られたりしてボロボロだ。一歩間違えたら死ぬくらいの怪我だが白恵は助ける気がない。すると突然魔物は白恵に向かって殴り掛かる。白恵は蒼空のことを考えており、それに気づいていない。
「……」
「っ……?!だめっ!!」
魔物から遠ざけようと白恵に体当たりし、襲ってくる魔物に対して手を伸ばす。
すると、その手から“あの光”が飛び出る。
「おぉー!」
それを見て白恵は感嘆の声を上げる。
「わぁっ、、」
その光を見て安堵の笑みを浮かべる蒼空。
魔物は小さくなり、やがて普通の犬へと戻り、その場から逃げ出す。
「いいじゃん上手!バッチリだよ!」
「!!、
あ、ありがとう!」
「今の感じをじゃあ、もう1回!
やってみよ!」
そう言いながら今度は石を拾い、蒼空に向けて軽く投げる。
「……っ!」
手に力を込めて発動しようとするが、不発に終わり、蒼空の額に石が当たる。
「あちゃ、ごめん!
まだ早かったかー……」
「いやいや、全然、……
何でだろ、感覚は同じなのになぁ……、」
手を顎に当てながら考える蒼空。
「んー、でもさ、僕が襲われる前までは全然出そうになかったよね!」
「あ、確かに。元あと言えば僕が命の危機になったら発動するみたいに言ってたけど、結局出なかったよね……」
蒼空は再び考える仕草をする。が、直ぐに白恵が口を開く。
「……守る者がいるかいないかとかかな。」
それは問いかけと言うより、呟き。口が勝手に喋った。そんな口ぶりだった。
「!、そうかも!」
朝。そして誰もいない静かな路地裏ということも相まって、その呟きは蒼空の耳に届いてしまった。
「……じゃー簡単だ!こう考えよう!
“この力を使いこなせるようになれば
たくさんの人を助けられる。”
“この魔物を放っておけばいつか人を殺す。”」
白恵は少し引きつった笑顔で説明をする。
「ん〜、……!」
蒼空はもう一度その石を拾い、力を込める。
蒼空の持つ石に7つの鮮やかな色が集結し、白いひとつの光になる。その光は白く凝縮されると、その石は消えていた。
「おー!」
それを見て嬉しそうな表情と声で白恵はそう言う。が、白恵はなんとも言えない気持ちになっていた。
今の狩人はそんな気持ちでやってたら、蒼空の心が持たない。今の狩人の人たちは、蒼空のような根っからの善人じゃない。人間そのものに嫌悪感を抱いている者がいたり、狩人に入る以前に何かあった人が多い。
つまりどういうことかと言うと、狩人の世界は一般人の中学生である蒼空には暗すぎる……ということだ。白恵はそれを十二分に理解しているのだろう。
「やった〜っ!」
そんなことを考えているなんて知らずに嬉しそうな笑顔を見せる蒼空に対して、白恵は申し訳ないという気持ちを持ってしまった。
「……、本当に、良かったっ!」
「うんっ!ありがとう!」
白恵は満面の笑みを浮かべる蒼空に後ろめたさを感じるのだった。
……2週間後、入学まで残り1週間
蒼空はこの2週間、必死でトレーニングをした。初めての事だったし手探り状態だったが、白恵が封印をメインに見てもらってることになっていたのでどうにか発動するくらいは出来るようになった。
蒼空は今度また改めてお礼伝えないとな、と、お礼のことについて色々考えていた。
あんまり堅苦しいの白恵くん好きじゃないし軽い方がいいのかな……とか。
そう思いながらも蒼空は早朝、自分の家の扉を開け、ランニングへと向かおうとする。
「おっはよー!」
そこには白恵が立っていた。
「え?!!
お、おはよう、!」
「あははっ!驚かせちゃってごめんねー!
それはそうと、今日は大事なお知らせをしに来ました!」
「大事なお知らせ……?」
「そそ!
実は……、入学日が早まって今日からになりました!」
「え……?」
「いやぁ、校長……、と言うよりその妹に君のこと話してたら興味湧いたらしくてさ!早く会いたいってうるさいんだよねー、」
「えええええええ!!!
ちょ、ちょっと、まだ心の準備が」
「なんて言ってられないんだよ!!
兄の方はめっちゃ怒ると怖いんだよ……、
遅刻したらやばい。」
「そ、それなら……」
「よし!じゃあ行くよ!」
「う、うん!」
言われるがまま蒼空は白恵に連れられて異空間に入り、大きな扉を開ける。
「し、失礼しまーす……、
遅れてすみません。」
あんなに子供のように賑やかだった白恵が、急に静かになる。そんな怖いのかな、と蒼空はどこか心配そうに白恵の後ろに着く。
「遅かったじゃーん!
久しぶりぃ!白恵!」
と、不安げな2人とは打って変わって。扉を開けるとそこには、元気な女性がいた。赤い瞳に長い黄緑色の髪。すらっとしているがやや身長は低い。カジュアルな服装をしており、親しみやすさ全開だ。
「ひ、久しぶり。あれ、レフトは?」
白恵は彼女が上記の様子なにも関わらず、相変わらず脅えている雰囲気で。
「え?あぁ!
にいさま!来客だよ!何忘れてんの!
もう!ボクが変わりにやるよ?!」
入口付近に立っていた2人は、その辺でようやく中に入る。そこは、アンティークな1つの部屋だった。……というのも、この部屋は1つの大きな施設の中に組み込まれているので、小さい部屋だが。洋風アンティーク。焦げ茶の木が使われている家具が多くあり、長方形の低いテーブル、その奥には校長先生が座っていそうな高貴な机。本棚。残念ながら本棚に入り切らなかった地面に置かれてある大量の本。シャンデリア。……まぁこれくらい書いておけば想像は着くだろう。
そして……、その本棚に本を直そうとしている男性がいた。
「黙れ。騒ぐな。
お前には関係ねぇだろ。引っ込んでろ」
暗く、低い声だ。悲しさや苦しさを全て押し潰しているような。……そんな、聞くだけでも苦しくなってしまう声で。ただ、表情は凍りついている。冷酷な、……そんなイメージを持ってしまうかもしれない。
「なんなのよ、兄様は!
大体、兄様がここにいないからボクがこうやっている訳で……」
そんな相手にも物怖じせず、バンバン強気に言い返す彼女。
「あーはいはい。わかったわかった。大体、遅れたのはこいつらだからな。分かったならもういいだろ。帰れ帰れ。」
しっしっ、と手で払うような仕草をして。
「ちぇっ、何なのよ。ボクのおかげで……」
彼女はその後も文句をブツブツと言いながらその部屋から出ていく。
「……」
校長はその後をギロッと睨みながら送る。
「え、えーっと……、本当に申し訳ございませんでした。」
遅れたと言っても本当に2分とかだ。こんなにかしこまって謝ることでもないが、余程怖がられているのだろう。申し訳なさそうに頭を下げる白恵。それを見て蒼空も頭を下げる。
「……それより、だ。
2人で喋りたいんだ。出ていけ。」
視線を送ることも無く、本をずっと直している。白恵の方は一度も見ずにそれだけを言う。
「……は、はーい……、」
震えながらその部屋を出る白恵。蒼空は内心、ここで一体一にされるのはちょっとキツくない……?と思いながらも呼び止めれるような雰囲気ではなかったので、彼の方を見る。
「で、話だな。本当は簡単な入学テストとかあるんだけど、……あんまり説明したくないがお前は複雑な事情があるからな。お前は面接だけで許すってことになってる。ルールは簡単。俺の質問に一文で応えろ。
それ以上言ったら不合格とする。
決まりを守るのが狩人の大前提。わかったな?」
そう説明しながら、彼は校長先生っぽい机に座る。……椅子ではなく、机に腰掛けるような感じで。
「……、はい!」
「名前は?」
蒼空は一瞬考える。
名前。
それは一体、どちらの名前なのだろうか。と。だが、本当に考えたのは一瞬で、それを思い出してから口が動くのは速かった。
「……、澄川蒼空です。」
「年齢は?」
「12歳です。」
「狩人に来た理由。意気込みとか。」
「困ってる人を助けたいから……?」
「…………、……、……白恵のことどう思ってる」
その言葉に酷く動揺を見せる。表情にこそ出ていないが、手の落ち着き、雰囲気、視線に出ている。
「しっかりしてる優しい弟です!」
「これからどんな事があっても狩人の秘密を守る?」
「はい!」
「……、お前が思ってる、いや、いい。
我々狩人は政府に秘密裏で魔物狩りをしている。魔物に情けはかけるなよ。」
何かを言い欠けるが、途中で言葉を切る。飲み込んだような表情をした後、厳しい声で蒼空に言う。
「……はい!
「………………、以上だ。白恵。入っていい。」
なんとも言えないような表情で。蒼空から目を逸らしながら白恵を呼ぶ。
「し、失礼します……、」
恐る恐る入ってくる白恵。
「……聞いてただろ。」
校長が白恵に圧をかけながら問いかける。
「……、」
それを聞いてだまることしかできない白恵は気まずそうに下を向く。
「はぁ、まぁ後ででいいよ。
結果だけど合格。くれぐれも辞めないように。」
「っ……、はい!」
「……蒼空。頑張ろうね。」
隣で白恵がそっと蒼空の手を握って笑顔で呟く。
「うんっ!」
元気よく返事をすると蒼空と白恵は礼をし、その部屋から出ていく。
「……地獄だな。」
「兄様の意地悪!言ったら良かったのに。」
「お前、聞いてたのか……」
「聞いてた、聞いてたよ。
本当に意地悪。性格悪。本当に。
さいってー!」
「……あいつは入学しなければならなかった。
言いたかったよ校長として先生として……そして」
「言うな。……言わないで。」
「……、はぁ。だったらお前も適当なこと言うな。……俺は、変えない。」
「変えるって話だったじゃん!!……何回も言わせないでよ。」
「はぁ?それであんなことになったんだろ。……未来に夢を見るな。停滞、いつもこのままが最善なんだよ。」
「……やっぱ合わないね。ボクはもう行くよ。」
彼女は睨みつけるように彼を見ると、その部屋のドアを叩きつけるように閉める。
「……、」
彼は睨み返すようにそのドアを見つめる。……そして、2人は同時に呟いた。
「過去なんて見たくない」
「未来なんて見たくない」
……
次の日。白恵と蒼空は廊下にいた。
ここは狩人学校の校舎内。……と言っても、この間校長と話した部屋も校舎内だったのだが。まぁキリがいいのでここら辺で描写しておく。狩人学校校舎は、1階建て。コの字のでっぱりの部分を短くしたような作りになっており、左先端から、作戦会議室、そして内側に校長室、緊急会議室、その向かいに医務室。再び内側に戻って中央に玄関、職員室、その向かい側に1組教室、2組教室、右側に談話室、先端に実験室。廊下の天井と横幅が広く、一つ一つの部屋含めて全体的に広い印象を受ける。少し昔の日本の校舎と洋風なアンティークさを混ぜ合わせられた、……独特の雰囲気だがかえって落ち着くような。そんな雰囲気だ。
そして、その2人は今、2組教室ドア前。廊下に立っていた。
「お兄ちゃん。
みんなの前ではただの先生と生徒って感じだから、そんな感じで!」
「うん!」
「……、多分蒼空が思ってるのと違うと
思うけど、頑張ってね!」
「……?わ、分かった……!」
「じゃ、行ってらっしゃい!」
「うん、!」
緊張しているのか、蒼空は恐る恐る2組の扉を開ける。
「……、本当は来週だったもんでな。
俺も会うのが初めてなんだ。
今日から入学の新入生。ほら、名前とかの軽い自己紹介頼む。」
教室からそんな声が聞こえたあと、蒼空は直ぐに前のドアから教室に入る。すると、まず見えたのは青髪で緑が濃い黄緑色の目をした先生らしき女性が立っていた。髪は長く、手入れしている様子は見受けられないがサラッとしている。
「初めまして、澄川蒼空です!
年齢は13歳で普通の中学生です。
これから、よろしくお願いします!」
感じていた恐怖から生徒の顔をしっかり見れなかったのか、上記のセリフを言うと1度礼をする。そして顔を上げた際、初めて生徒の顔を見る。
「……」
誰も拍手もしなければ興味無さそうな顔、と言うよりみんなロボットみたいな顔をしている。
それに関して特に思うことはなく、ただ生徒一人一人の顔を見る。正直、年齢はバラバラだが普通の学校と何ら変わりはない。みんなは静かに席に座っているし、教室の内装もほとんど同じだ。……何が違うかと言うと、異色の割合だ。一人一人が個性的な髪と瞳の色をしている。……蒼空は順番に生徒の顔を見ていくと、その人物を見つける。
「あれ!?!ミナじゃん!」
そこには見慣れた親友の顔があった。
「……、」
ギクッて顔をするミナ。気まずそうに分かりやすく顔を逸らす。
「……?、」
蒼空はそれに若干の疑問と違和感を覚えながらも教室の前に立っているということもあってそれ以上話しかけることはなく。
「えーっと、2人は知り合いか?」
「あー、はい!
知り合い、と言うより幼馴染って感じです!」
「……そうか。
終わったなら席に着け。今日は実演。
グループは予めこちらで決めてあるから、今日はそのグループで動いてもらう。」
その説明をすると、玲亜は黒板に下の文字を書き始める。
[グループ1]
タクト・楓絃
[グループ2]
リアム・エーデル
[グループ3]
ミナ・クレア
[グループ4]
リリ・ノア
[グループ5]
希・瑕疵
[グループ0]
玲亜・蒼空
「ぐ、グループ0!?」
「……、あ、あぁ。
お前は初めてだからな。」
蒼空の元気の良さに若干押されているのか戸惑う担任。
「あ、そうでしたね、確かに。」
蒼空はスっと納得がいく。
「俺は玲亜。1年2組担任だ。
一応チームとしても、担任としても。よろしくな。」
玲亜と名乗ったその女性教師は、スムーズに自己紹介と挨拶をする。
「はい!よろしくお願いします……!!」
「お前らはいつも通りに、
集合時間は短い針と長い針が真上に来たら集合。」
その独特な言い回しに蒼空は疑問を持つ。短い針と長い針が真上。つまり、時計が読めない人が多いということだ。蒼空はそれを察したのか、戸惑いつつもリーリエ(最初説明してくれた黄金髪の女性)ある言葉を思い出す。
◇◇◇
「一般的な保護者は染めたりする人が多いのでスカウトされる人は割とその、孤児や色々な事情を持ってる人が多いんですよ。」
◇◇◇
蒼空はその言葉を思い出して色々繋がる。色んな事情を持ってる子が多いなら、時計が読めないのもわかるし、この重い雰囲気も納得が行く。と。それに、自意識過剰かもしれないが、ミナが蒼空をやや避けていたのにも説明が着く。
「よし、授業開始。」
生徒たちはそのまま座ったまま、数秒経つと1人、また1人と消えていく。
「え?!消えた……、」
「そりゃそうだろ。って、慣れてないのか、」
「あ、そっか!、
こっちラコルトの方だったか……、」
「……、とりあえずこれ着替えろ。」
玲亜は教卓の上に置いてある籠から紫色のフードが着いた服を取り出す。
「?、あれ、僕が見た時指輪だったんですけど……」
「指輪……?あぁ、あれは、試験的に使用されてるやつだ。まだ正規ではない。」
「なるほど……、じゃあ着替えてきます!」
「あぁ。」
玲亜は蒼空の背中を見ると、何かを考えるような表情をする。
……数分後
「遅くなってすみません!、
思ってたより結構複雑で……、」
「そ、そうでも無いと思うが……、
まぁ着替えれたならいい。ポケットの中にイヤホンみたいなの入ってないか?」
「……?
えーっと、あ!ありました!」
黒いワイヤレスイヤホンのようなものを一つ取りだし、耳につける。
『グループ0。場所は◾︎◾︎県◾︎◾︎市◾︎◾︎の商店街の中央辺りから見て南に進んで信号が見えたら東。そこそこ大きい魔物が出現。』
と、女性の声が聞こえる。
「……!!」
蒼空は急に聞こえたその声に少し驚きながらも、玲亜を見る。
「行くぞ。」
「はい……、!」
そう言うと、玲亜は蒼空の肩を軽く触り、ラコルトから出て現実世界へと戻る。
「狩人の基本動作的なことは聞いてるか?」
「いえ、全く!」
「……わかった。
じゃあまず声はなるべく静かにな。」
何も聞いていないことを知って小さくため息をつくと、蒼空の方を見て人差し指で静かに。のジェスチャーをする。
「はいっ」
「基本バレないこと優先。
例え誰が襲われてようと制服を着ていなかったり、バレそうな危険があった場合は絶対に助けないこと。」
「え……、でも、狩人って人を助けるんじゃ……」
「バレないのが最優先なんだ。
例え狩人が負けていたとしても。」
「……は、はい。」
「バレたら解体されて元も子もないだろ。」
「……」
それを聞いて何も言えなくなる蒼空。
きっと蒼空はこういうのをイメージしていたのだろう。
◇◇◇
「俺の命を捨てでもっ、!!
お前を助ける!!!」
◇◇◇
「この魔法どうやったらできる?」
「あー、そこ俺も苦手なんだよね、一緒に練習しよ!」
◇◇◇
「転校生くん!
狩人のこと複雑だから僕らが教えるよ!」
◇◇◇
そういった、なんかキラキラしたのをイメージしていたのだろう。
「ま、その辺の方針を決めるのは俺じゃねぇからな。中学生まで普通の生活を送ってたお前には慣れるのに時間がかかると思うが……」
「……、それでも、僕は……、頑張ります。
人を、少しでも魔物による影響で亡くなる人を少なくするために……、」
蒼空は真っ直ぐ玲亜を見て、曇りない。綺麗で希望に輝いている瞳で。
「……蒼空は、優しいな。」
その瞳を見て、どこか懐かしげに、それでいて、寂しそうに小さく呟く。
「……?」
「いや、何でもない。」
その後、2分ほど歩いていると、それは見えてくる。といってもここからじゃだいぶ遠いが。周りのマンションと同じくらいの大きさの巨大な猫がいた。
「ね、猫、?!」
「落ち着け。ただの猫だ。
ってか、白恵さんのところでこういうのは見てるだろ……」
「こ、こんなの……いつ見てもなれませんよぉ……、」
急にまた怖くなったのか、足がやや震えている。
「おいおいさっきまでの威勢はどうした……、はぁ、わかった。
じゃ、とりあえず後ろで見とけ。」
呆れたようにため息をつくが、普通の中学生ならそんなもんか。とすぐに納得が言ったのだろう。無理やり戦いに出す、ということはせずに。玲亜は銀色の細い棒を地面に突き刺し、思いっきり飛び、遠くに見えている魔物のところまでたどり着く。
「っし……、」
「は、速?!」
ぴょんっとうさぎが飛ぶような軽さで飛んで行ってしまったので蒼空は急いでそれを追いかける。
「……、」
玲亜は魔物の近くで作戦を考えていた。
蒼空に観せるってことをふまえて、魔法の中でも見やすいものを使おうとしているのだろう。恐らくだが、電気かなんかでしびれさせてそこを風で殴る。というのが彼女の作戦だろう。その2つを組み合わせは相性が上、見やすい。火力も申し分ない。街への被害も最小限に済むのでこのタイミングにはもってこいの組み合わせだ。玲亜はそう考えたのか、魔法を発動するために魔物に棒を持っていない方の左手を向ける。
と、ようやく蒼空が辿り着く。
「い、今のは……?」
「……今は関係ない。先に魔法だ。
とりあえずお前は観とけ。手出したら最悪バレる。」
「は、はい……」
蒼空が少し気に食わなそうに返事をすると、玲亜は攻撃を仕掛ける。
電気魔法と風魔法を組みあわせ、暴風で閉じ込めてからその暴風に黒い稲妻を帯びる。
「結構使えるな……」
呟きながら躊躇なくその渦の中に入っていく玲亜を見て蒼空は心配そうな表情をする。
「……、ぼ、僕も」
その声がギリギリ届いたのか、風の渦から顔だけひょこっと出して
「駄目だ。
その震えた体で何ができるか考えろ。
情報を与えるな。それだけだ。」
キツくそう言葉を投げ捨てると、その渦の中へと入っていった。多少風魔法の影響か、曇っており、目を凝らさないと中がどうなっているかは分からない。
「っ……、」
彼女の言う通り、蒼空は震えていた。
そりゃそうだ。つい最近まで何も知らないただの中学生……というか今もだが。そんな彼に動けるような度胸も勇気も動機もない。
「……」
風と黒い稲妻が渦巻いている中で大きな魔物と彼女は戦っていた。彼女は魔物に右手を向けると、その手からは黄色い雷が出現し、魔物にダメージを与える。魔物も反撃をしようと少しやけくそになっているのが蒼空にも見えた。
蒼空はあることに気がついた。
あの魔物の尻尾は玲亜の後ろに回っていた。
あのまま放っておくと、大きな尻尾が玲亜をたたきつけ……
「死ぬ……、?」
そう呟いたと同時にぞわっと蒼空に鳥肌が立つ。なかなか向かおうとしても足が動かない様子で、その様子を呆然と見ている。
体全体ピクリとも動かなくなっていた蒼空はただただ見つめることしか出来なかった。
ひたすら悔しそうな顔をする蒼空は誰かに背中を押された気がした。
◇◇◇
「蒼空、完璧でありなさい。
貴方はどこに行ってもずっと完璧でありなさい。それ以外は認めません。」
◇◇◇
その時の蒼空には怖かったはずの先生の口癖が聞こえた気がした。
蒼空の身に染み付いた“完璧”。
玲亜からの指示はない。ただ、バレたらダメだ。としか言ってない。震えたからだで何ができるかと言っていた、それなら震えてないからだなら?別に行くなとは言われてない。蒼空はそれに気がつく。……気づいたら、呟いていた。
「先生が望む、完璧は……、」
蒼空は足を踏み出し、その渦の中に入っていく。
「……」
まだ尻尾に気づいていないのか、魔法をバンバン打って戦っている。
「……、」
情報は与えたらダメ。つまりどういうことかというと、無言のコミュニケーションが大切ということだ。そう。それでいい。
そう信じた彼は尻尾に向けて両手を出し、封印しようとしている。
やがてあの光が発生し、魔物は小さく、元の猫になった。玲亜がそこそこダメージを与えていたおかげでスムーズに封印が成功したのだ。
「お、おぉ……、?」
玲亜は戸惑うようにその様子を見る。
「よ、良かった……、」
蒼空は息切れながら呟く。
数秒その様子を黙って見ている2人。
「……え、あの猫は……?」
玲亜は封印の詳細を知らないのだろう。すっごく困惑した様子で蒼空に説明を求める目を向ける。
「封印っていう力らしいです。……そのー、……えーっとですね、魔物を元の動物に……封印するらしいです!」
「あー、なるほど。……澄川って、白恵さんところと同じ苗字か……、……えっそれって」
『2人とも何してるの。さっさと立ち去れ。』
玲亜が驚いた様子でそう言いかけたところで、2人のインカムから厳しい女性の声が聞こえる。
「了解。」
玲亜が無線でそう返事をすると、蒼空と2人で路地裏へと逃げるように走っていった。
「つ、疲れましたね、……」
「あぁ、それにお前初仕事だったもんな。
続きだが、……えーっとアレが封印ってやつか?扱い難そうだな。」
「はい、って言ってもさっき初めてひとりで魔物相手に使ったんですが……、……なんとか上手くいってよかったです。」
自分に詳しく説明しなかった白恵に少し呆れながら小さくため息を着く玲亜。
「なるほどな。、
あと数分で時間だから戻るぞ。」
「はいっ!」
そう言うとゲートをくぐり、あの世界の教室へ戻ってくる。
「まだ20分前だからな。
人数が少ないのは気にしなくていい。」
「はい、……、」
蒼空は話したいことがあるのか、自分の席には着かずに教室の前の方に立っている。
「……好きに話せ。」
玲亜は教室の前にある謎の椅子に座って蒼空の話を聞こうと。
「……ずっと気になってたんですけど、ここのクラスの人ってあんまり喋らないんですね。」
そう、蒼空はずっと気になっていた。先生とは普通に会話ができたので、別にコミュニケーションが不必要って訳では無いのだろうと思って違和感を持っていたのだ。
「あー、まぁそうだな。
ちなみに1組もこんな感じだ。
お前中学普通に通ってるから違和感があったよな。簡単に説明したら……その、学生は基本。 ……、言い方悪いが、捨て駒みたいなもんだからな。」
「捨て駒?!
ど、どういうことですか……?」
「あぁ。ま、学生の暗黙の了解見たいになってる。ここに来ている人は言わばワケあり。1度は死んだ人生って考えてる奴が多い。もちろん例外もあるが、友達とか、話すって概念を知らない人もいる訳で……、
本当に悪い言い方をすると校長はそれを利用している。」
「……、そんな、、」
「狩人のこととか一般人のこと思えばこれが最善なんだろ。下手にコミュ力上がって情報漏れたりするのも困るしな。」
「……本当に、?」
「……と、いうと……?」
「本当に、そうなんですかね……、
だって、白恵くんはそんな感じじゃありませんでしたよ。」
「落ち着け。さっきも言ったが方針を決めてるのは俺じゃない。
文句言うくらいなら自分で行動したらどうだ?例えば、校長に直接言ってみるとか。」
「……、校長って……、」
「あぁ。入学ん時話しただろ。……レフト先生だ。
正直言って、真面目に話を聞いてくれるとは思うが……、それを聞きいれてもらうのは難しいと思う。
……俺だって言いに行ったことくらいある。
俺は普通に、一般人だったからな。が、話せなかった。」
「玲亜先生が、……話に行ったって……、それに、
話せなかった……?」
「……まるでこっちの考えてること全部わかってるような圧のかけ方をしてきた。俺は諦めたよ。
俺はそんな、みんなを救えるような主人公にはなれねぇ。」
我ながら情けない。と、どこか諦めも含めたような乾いた笑顔を見せる。
「玲亜先生……、」
それを見て、蒼空は実感する。あぁ、この先生は、悪い先生じゃない。と。自分と、同じ考えで、……ダメだったけど、同じだったんだと。
「俺はクビになりたくねぇからな……、
とりあえずこの話はここだけで終わりだ。ほら、戻ってくるぞ。」
玲亜はそう言うと、その謎の椅子から立ち上がって教卓の前に立つ。
「じゃあ、今の話は秘密ですねっ!」
玲亜の方を見てにこっと笑顔を見せる。( )
(呑気というか、なんと言うか、……)
「……、眩しいな」
小さく聞こえない程度に呟く玲亜。
「……?」
なんか聞こえた気がする&考え事をしていそうな玲亜の顔を見て疑問に思う蒼空。
そんな話をしていると、続々と生徒たちが帰ってくる。ボロボロまでは行かないが、
無表情のまま息切れしているのは蒼空にとってすごく違和感を覚えたのだ。
「……、今日は以上だ。
疲れただろうから今日は家へ帰って休み、
明日に備えろ。」
「……」
(相変わらず無反応なんだよなぁ……、)
違和感と言うより、玲亜さんは寂しくないのだろうか、と思いながらもそう説明する玲亜のことを見ている。
「解散」
そう言うと、礼をせずに生徒が次々に帰っていく。
「あ、えっと、
あ、ありがとうございました!」
玲亜に向けて元気にそう言いながらお辞儀をすると、誰かを追いかけるように走って教室を出る。
教室に1人残された玲亜は、
(大方、あの力があるから入学できたんだろうな。、
あのタイプ、レフトさんが殺さない理由が分からない。)
「死ぬなよ、蒼空。」
誰もいない教室に小さくつぶやく。
……
「ミナ、だよね……?」
「……」
気まずそうに目をそらすミナ。
「ミナ……?」
「……、蒼空くん、…、
ごめん、!」
少しキツめの口調でそう伝えると、ミナはゲートをくぐって元の世界へ戻ってしまった。
「あ……、」
(……学校でも、あの襲われた日から
すれ違ったりはしてたけど、全く話さなかったんだよね……、何か僕、怒らせちゃうようなことしたかな、)
その後を見てぽつんと1人廊下に取り残される蒼空。
すると、後ろからコツコツと歩く音と話し声がだんだん聞こえてくる。
「……だから、あれは無茶だったよ。
もう少し静かに倒せないのかな。」
「んだよ、俺がいなかったら倒しきれなかったくせに、あと、しれっと半年経ってるが俺はしゃーなしで付き合ってんだ。」
「僕だって帰りたいよ。
蒼空くんやサラ、白恵が今頃どうなってるか心配だし、教室の雰囲気もたまったもんじゃない。」
「……あいつら、上手くやってっかな、」
「……そう言えば、この間退学の子がいたらしいけど転入生今日来たらしいよ。」
「別に興味ねーよ……、、?!」
「?!、そ、蒼空くん?!」
「え、?」
蒼空は突然名前を呼ばれたので驚いたように振り返る。すると、急に蒼空より体格が良い2人が蒼空に抱きついてくる。
「良かった、見つかって、
蒼空くんもこっちに来てたんだね。」
「……、転入生って、お前の事だったんだな。」
「え、え、ちょ、!
ど、どうしたんですか……?」
「「?!」」
「す、すみません、
どなたでしょうか……?」
「……、お、驚かせてしまって、すまないね。」
金髪の青年が直ぐに離れて戸惑いながらそう言う。
「どういうことだ……?
おい、アロ。見ろ。」
「わかってるさ。」
せっかちな銀髪の青年に怒りながらそう返事をすると彼の目が光る。
「……、」
何が何だか誰もわかっていないこの状況で蒼空はただ呆然と2人の顔を見ている。
「、蒼空くんだ。
来る途中に記憶でも飛んだのかな?
蒼空くん、今までどんな風に過ごしてきた?」
(正直、ここで「覚えてない」って言ってくれた方がありがたい。考えられる事としては4つ。1つは、こっちに来る時に僕らと一緒に飛ばされて蒼空くんだけ記憶も飛んだか。
2つは、そもそも蒼空くんは飛ばされていない、そっくりな他人、的な。でも名前呼んで反応したからこれはなさそう。
3つは、蒼空くんが僕らを他人だと勘違いしている。正直、制服来ているし、身体は前みたいに大人じゃないからこれも有り得る。
そして4つ、……嫌だけど、これが一番可能性が高い気がする。)
「えって、ふ、普通に……、中学生として。」
「……そっか、。
驚かせてしまって本当にごめんね。」
「ちっ……、おい、さっさと説明しろ。」
「うるさいなぁ。分かってるってば。
この子は蒼空くんだけど僕らの知ってる蒼空くんではない。ほら、白恵さんみたいな。」
「……、蒼空、か。
でもこいつ何か違ぇぞ?ほら、白恵んときはあんま違和感なかったんだが……なんというか、俺らの知ってるのはもっとこう、……
……、子犬感。」
「それはわかる。激しく同意。
何かね、あの感じがないよね。
この子はなんか、頼りどころがない見たいな?」
「あぁ。
こっちは何か、風船みてぇ。」
「確かに。」
「こ、子犬?風船?、
すみません、用事がないならこれで……」
「待って。ごめんね。
説明させて欲しいんだ。僕らはラコルトの住民でね。そっちの世界で君と全く同じ人がいたから、てっきり一緒に飛ばされてたのかと思って。」
「い、ラコルト……?!」
「うん。実は白恵さんもそこにいたんだよ。
ラコルトから飛ばされてくるのはよくあることらしくて、僕達もその仲間って感じ。
自己紹介が遅れたね。僕はアーロン。アロとでも呼んでくれたら嬉しいな。」
(や、優しい人……、
他の組も同じ感じって玲亜先生は言ってたけれど、案外そうでも無い……のかな?
あ、でもそっか、この人たちは高校生(多分)くらいまでは普通に過ごしてきたから普通に会話ができる……のかな、そんな感じ……?)
「……俺はランツェ。呼びにくいからランってみんなから呼ばれてる。」
「は、はい、!
アロさんに、ランさん。よろしくお願いします!」
「ふふっ、敬語じゃなくていいよ。
だってここでは同じ学年なんだから。
僕らはおと……、こっちで言う高校生だけれど、別に気にしなくていいよ。」
「……、アロ。他クラスに友達作ったって意味ねぇだろ。」
「ラン。それは違うよ。
彼もまた、あの世界の蒼空くんと同じように、呪われているのかもしれない。
僕達では解けなかったけれど、
拠り所になって欲しいんだ。
それに、あの空気の中は蒼空くん、息苦しそうじゃないかい?」
2人は付き合いが長いのか、全く聞こえないくらいの小声でも会話ができるらしい。
もちろん蒼空は気づいていない。
「それは……、そう、だな。」
「折角なら同じクラスが良かったな、
ね?蒼空くん。」
「、うん、!
でも、話せる人ができて良かった!
本当に、ありがとう、!」
嬉しそうに満面の笑みを見せる蒼空に
「……どこでも変わんねぇな。」
「あぁ。とても眩しい。」
と、どこか大人の雰囲気で微笑む2人だった。
「あ!、
そう言えば、そっちの世界の僕ってどんな感じなの?」
「「……」」
何と言おうか、って感じで視線を合わす2人。
「んー、
白恵さんと兄弟とか、眩しいところとか、
置かれている立場は違えどそっくりだよ。
そうだね、何か違う点をあげるなら、
あっちの蒼空くんには相棒がいた。ってところかな。」
「相棒……?」
「うん。でもこれが不思議なことに、親友って感じではなかったんだよ。相棒ってのが一番しっくりくる。僕には振り回されてる感じに見えた時期もあったけど、何だかんだ信頼し合ってた仲だったよ。」
「相棒……、か。
なんか、イメージつかないなぁ、」
「ふふっ、いつか会わせてみたいな。
あ、そろそろ僕らは帰らないと。」
「アロ、言い過ぎだ。分かってて、」
「しー、後で話すから。
じゃ、またね!」
「うんっ!
ありがとう、またね〜!」
……
「言い過ぎ。」
「いや、あれは言わない方が駄目だった。」
「……見たんか。」
「うん。別に、この判断で大きく変わる訳じゃないけどね。それに、何で言ったらダメなの?」
「あんま、昔話はしたくねぇ……」
「立派に寂しがっちゃって、
そうならそうって言ったらいいのに。」
「……くそっ、この、猫被りめ。」
「相変わらず酷いね。君だからこういってるんじゃないか。」
「ちっ、……、お前ほんとガキの頃から変わったよな。あんなに可愛かったのによ。」
「小さい頃は誰でも可愛いものだろう?」
「なんかあの蒼空見ると思い出す。
何でもかんでも自分一人でやってやろうって思ってるところとか。お前そっくりだよな。」
「……そうでも無いよ。結局は君に頼ったんだし。そんなこと言ったら白恵さんの方が抱え込んでるよ。あっちでは結構僕らのことを頼ってくれたけど、こっちはそうでもなさそうじゃない?」
「それは、、わかる。
なんか、狩人のボス見たいになってるな。
あっちは国を動かすって言っても俺らや蒼空のこと頼ってくれてたんだが、こっちは1人でやってる感あるよな。
いや多分、俺らが知らないだけでこっちの白恵も他の人と繋がってはいると思うんだが……」
「それは僕も思うよ。
1人で動かすのは大変な事だし、流石にもう数人は動いていると思う。けれど、やっぱり精神的には一人でやってそうだよね。」
「あぁ、絶対なんか隠してる。」
「うん、ま、かと言って何か僕らができる訳でもないけどね。」
「……あんま言いたくねぇけど校長だろ。」
「ラン。、って言いたいけど、そうなんだよね。この学校の方針決めてるのはレフト先生だし、」
「噂……知ってるか?」
「噂、?狩人をやめる人はその人も殺されるってことなら本当らしいよ。」
「いや、違ぇ。
俺らが帰えれるかもしれない噂。」
「……?!本当に?」
「あくまで噂だが、
火のないところに煙は立たないだろ?話だけしたかった。」
2人は話しながら立ち去って行った。
蒼空は2人の背中を見ていた。
(なんだか、楽しかったな、!
友達としっかり話すのなんて、久しぶりかもしれない。なんか、良かったな……。
不思議な人達だったけれど、狩人の人たちって、怖いわけじゃないんだ……)
嬉しそうにそう思いながら、ゲートを開き、蒼空も帰路に着く。
(そう言えば、白恵くんはゲートから入って、帰る時はその入った場所に出てくるって言ってたけれど、あの時どうやって◾︎◾︎県に行ったんだろ……、)
そんなことを考えながら蒼空は家へ帰っていく。家に帰ると、そのままソファに寝転ぶ。
(色々分からないことが多すぎるなぁ……、
白恵さんに詳しく聞かないと。、
あ、でも忙しいって言ってたよね、
次の学校もいつあるとか分からないし、
そう言えば、制服の中に色々入ってた気が、)
制服に着いているポケットから色々取りだしてみる。
「こっちは、地図?、で、
なんか大きなインカム……、玲亜先生はこれで位置とか聞いてたんだ……
これは……、スマホ……?」
一人でボソボソと喋りながらそのスマホらしきものをぽちぽち触る。
「あ、ついた。えーっと、?
連絡用って感じ、かな?カレンダーみたいなのある。」
そのアプリを開くと、カレンダーには分かりやすくスケジュールが書かれてあった。
(おぉ〜、?
いや、でも平日とか普通に行けない気がする……、必須授業とそうじゃないのがある、
僕は、なんかイレギュラーらしい、から
それ用に設定されてない、とか?
んー、わからない……、
スマホとか触ったことすらないし、、)
そのまま数秒頭を抱えていると、
“ピリリリリ”
突然スマホから音が鳴った。
「えぇ?!」
突然の事だったので驚きの声を上げながらも緑のボタンを押す。
『もしもし、こんばんは。』
「?!!、
こ、こんばんは……」
『私は昼間情報を与えていた人。
いずれ会うことになる。だから自己紹介はしない。貴方の名前を教えろ。』
「……、」
(な、なんか、変な人……、出てきた……、
なんか……、変な人、)
『あっれー、?、駄目だった?
え?似てない?もっと、あー!なるほどね、
もう少し冷静な感じで言った方が良かったのか!』
その通話の奥にもう1人の声が薄ら聞こえた
「白恵くん?!」
『え、違うよ!ボクは、……あ。
わ、わ……、わた……、え?無理?あー!ごめん!いやいや、蒼空くんに電話かける手段これしか無かったんだって!!
さっさとやれって?本人確認までこんな時間たってたら間に合わないって!、あー、もうダメだ、終わった!兄様にバレて殺されるー、あー!』
(なんか、元気な人、と言うか、
あの人に似てる……)
「もしもし、僕は澄川蒼空です。
もしかして、今朝お会いした方でしょうか?」
『おぉー!!ね、ね!ちゃんと澄川って苗字使ってるよ!わー、泣くなって〜!良かったね!ってこんな話してる場合じゃない、
えーっと、最初はあんな感じで話してしまってごめんなさい!ボクはレフト校長の妹のライトって言うんだ!よろしくっ!
いや、こんな話してる場合じゃなくてね、
明日、“家から”ゲートに入って学校の校長室前に来て欲しいの!あ、呼び出しとかじゃなくて、全然!色々説明とかするからー!
あ、ごめん時間が、』
「あ、はい!って……、切れてる……、?」
(すっごく元気な人だった、……
なんか、狩人の強い(多分)人達って、
元気な子が多いなぁ……)
その様子に驚きながらもそう思う蒼空はあることに気がつく。
(え?!、明日?!
学校あるし、時間も聞いてない……!
どうしよう……)
“ピリリリリ”
再び蒼空の持っていたスマホから音が鳴る。蒼空はそれに応答ボタンを押すと、今度は違う人が出た。
『こんばんは!あれ?そっちってこんばんは?、今はまだ昼かな、っていやいやそれ関係ないんだけど、さっきは驚かせてごめんねー、あの人元気でさ、僕にも手が負えなくって……、なんか、明日学校終わったくらいに来てだって!』
「なるほど、
丁度時間が分からなかったから助かったよ〜、ありがとう!」
『いーえ!あ、じゃあ僕はまた仕事に戻るから、またね!』
「うん!ありがとう。」
電話は切れ、時計を見るともう3時になっていた。
「お腹すいたなぁ……、」
(家事なんてできるって言っちゃったけど、
正直ちょっとやる気が、……と言うより疲れた……
あ、でも学校の課題もしなきゃだし、寝れないか。)
そうおもった蒼空は重い体を起こし、お湯を沸かしている間課題をしたり、時間が経ったら風呂に入ったりと一般的な生活をしていた。
そして就寝時間。
(なんか、僕が人を助けるような仕事に就くなんて、夢見たい……、)
もちろん色々あったその日はすぐ寝ることが出来ず、結局寝たのは夜の12時を回っていた。
……
「ん……、」
そして目覚めたのは朝の9時。
「朝の9時?!!
え、えぇ?!」
思わず飛び起きて時計を2度見する。
(昨日……、の疲れ?、ってより、
封印のせい、なのかな……、
いやいや、そんなこと言ってる暇じゃない、!)
蒼空はダッシュで朝ごはんを食べ、急いで中学校へと向かった。
……
「おはようございます!、」
急いで教室のドアを開けた蒼空は教室を見て不思議な顔をする。
(先生……、あ、自習?!
どうしよう、職員室行った方がいいかな。)
「……」
(……、視線が痛い、
……今日はもう、帰ろうかな……)
「あら、文月さん。来ていたのね。」
後ろから先生が話しかける。
「先生!、おはようございます。
すみません、朝寝坊してしまって、」
「これからは遅れる時きちんと連絡するように。」
「はい、すみません、……」
【先生には伝えなかった。
親のことも、あの事件があったことも。
別に親が入院した。とだけなら話すことも可能だったけれど、僕は自らそれを拒んだ。
理由な色々あるけど、1番は……】
(されるか分からないけど特別扱いが嫌なんだよね……、
何でだろ、別にそこまで特別な理由がある訳じゃないのに……)
……学校終了
「何帰ろうとしてんの?
あんたどうせ暇でしょ、ちょっと来なさいよ。」
悪い声で蒼空に話しかける同じクラスの生徒達。
「ご、ごめんなさい、
この後外せない用事があって……」
震えて怯えながらも断る蒼空。
「そんなんどうでもいいから来いよ。」
きゃははと笑いながら女子たちは蒼空のことを殴ったり蹴ったりしている。
抵抗できる物理的な力は前と違ってあるのに精神力が着いてきてないからか反抗できずに無言でそれを受けている蒼空。
そこから30分くらいそんなことをされていて、ようやく女子たちが帰っていった。
「……っ、」
前まではそれが普通だと思っていた、その上諦めていたから辛くはなかった。
だが、今はそれが少しおかしいことに感覚的に気づいてきており、そして物理的な力も女子3人には勝つくらいにあったので少し期待していた自分がいたのだ。
蒼空はそんな心情の中、涙を零す。
「なんでっ……、僕だけ……、っ、」
いい意味でも悪い意味でも純粋に拗れてしまった少年は壊れることも、救けを求めることも、逃げることも思いつかないのだ。
そんな低迷している少年は悲しいだけである。唯一心の拠り所だった親友とも“離れなければ”ならなくなった。
そんな心情の中でも彼は進まなければならない。
……
「いらっしゃーい!」
白恵は青ざめながら元気にそう言う。
「な、何かあったの?!
大丈夫、?」
「いやー……、レフト、ねぇ………?
怖いよねぇ……、ねぇ……?
よく、ライトが……堂々と喧嘩できるよねぇ……、」
「……、」
「わかる……?
今からその先生と戦うんだよ、
最悪、死ぬよ……?怖いよ、?僕。
と冗談はさておき、なんでそこまでするの?
蒼空は別にあの雰囲気が嫌いなら狩人辞めてもいいのに。」
「退学したら殺されるって聞いたから、?」
「あー、それね!
えーっと、蒼空は例外。 封印の力もってるから殺しちゃいけないんだよ!って言っても、元々お兄ちゃんに拒否権とか与えないつもりだったから!」
「……?!そ、そうだったんだ……」
「って僕が聞きたいのはそこじゃなくて!
じゃなんでここまでするの?
なんか理由があるの?」
「ん〜……、
違和感、と言うか、
考えて嫌だったから、かな……
同じクラスの人が死ぬって……」
「同じクラスって……、
この学校ではほぼ他人みたいなのに?
それかミナのこと?」
「それも、あるかも。
だけど、やっぱり、……
想像してみたんだよね、あのクラスの人や、
白恵くんがやられるところ……、
凄く、嫌だったから、。」
「……、僕が?」
「うん、
あ、白恵くんが弱いから心配って訳じゃなくて……、むしろ強いからって言うか……、」
小声でぼそぼそと呟く蒼空。
「……?、
ま、とりあえず行ってらっしゃい!」
「……、はい!」
蒼空はモヤモヤしながら校長室へと入っていった。
「……いらっしゃい。
で?何?」
最初のいらっしゃいは優しく聞こえたが、後半は人が変わったようにそう聞く。
「今日は、お話が……、」
覚悟を決めている様子で蒼空は真剣な顔と声でそういう。その様子を感じ取っているのにもかかわらずレフトは振り向きもしないで本を整理している。
「忙しいから早くしてくれる?
君と違って。」
「……そこで仕事しててもらって大丈夫です。
単刀直入に聞きます……、
なんで捨て駒みたいに扱っているんですか、?」
「、これだから入学させたくなかったんだよ。
こちらも単刀直入に言うと狩人を絶滅させたいからとしか言いようがない。」
「え………?!」
「別にあっち側に加担したいとかじゃないんだけどさ。俺だってやりたくてやってる訳じゃない。おかしいと思わないのか?お前らは。
この国の神とも言える政府から狩人は犯罪者だ。なんて言われてるのにこっちはコソコソと命をかけて人命救助?わけわかんないだろ。それくらい考えろ。多分生徒もみんなそう思ってる。」
厳しい声と言葉とその圧でレフトは冷たい目で蒼空のことを睨む。
「それは、違うと思います!
クラスメイトには色々な理由を抱えて狩人になったのは知っています……、
具体的なことは聞かされてませんが、きっとその中には過去に人に対してトラウマがあるような人もいると思うんです……
それで、人間に対して恨みを持ってるって考えるのが普通なのかもしれません。
でも、ここに来てる人は少なくとも死ぬほど恨んではないと思います。
じゃなければ、人を助けたりはしません。」
それを聞いてレフトは驚いた。正確には表情や仕草には出ていないが、心の中で驚愕した。
(……この子は、。才能がある。
生まれながらにして持っていた善性。
どこで?誰かの影響……、親の話は粗方聞いたがむしろ子がグレるタイプの親だった……
その中どこの性格。そして、
“果てしない想像力”。
“人とは思えない着眼点”
一人称とか二人称とかの次元じゃない。他の人の立場に立って考える。と言う一般的なことが完全に人のそれ(範疇)を超えている……、そしてさらに勘が鋭いと来た。
なるほど、完全に見えている世界が違うのか。
これは遺伝とは言え、中々……、
気持ち悪いな)
と、心の中でレフトはにやにやしている。
「……知らないからそういうの言えるんだよな。わかった。そんなに全力なら、
力ずくで説得しろ。泣き虫め」
蒼空のことを強く睨み続けるレフトは蒼空に近づき思いっきり殴る。
その後床に押さえつけて
「痛っ……、?!」
「それか質問に答えろ。
同級生の女子に何も言い返せないお前は
何故学校の校長である俺にそれほど反発ができるのか?」
「っ……、なんで、それ知って……」
「黙れ。質問に答えろ。」
「……、」
「黙秘か。
言えないのかわからないのか言わないのか。
自信がないなら助けたいもんも助けられんぞ。自分なんか、自分なんか、って思ってるうちに目の前で人が死ぬ。
狩人とはそういう所だ。持ってるなら使いこなせよ?
俺に文句言ってる暇があるなら行動しろよ。なぁ?、その文句言ってる間に周りは俺含めてどんどん進んでいっちゃうぞ?
置いていかれんなよ。」
意味深な言葉を残してその場からレフトは急に消える。
「……、何が……、
何が言いたいんだろう……、」
床に倒れたまま蒼空はそう呟く。
蒼空は涙目にもなっておらず、ただただヒリヒリした頬を気にしながらしばらく天井を見つめていた。
(そもそも、……、
なんで知ってたんだろ……、)
何も考えられないようにぼーっと天井を見ている。数十秒後、その場にゆっくり立つと蒼空はドアを開ける。
「おぉー、生きてる?」
そこには黄緑色の髪をした赤い瞳の女性、ライトが立っていた。
「せ、先生?!」
「兄様ほんっっっとうに最低!
こんな小さい子に、可哀想だとは思わないのかな?!、
あと、ボクは先生じゃないよ」
「えーっと、お名前は……?」
「あれっ?てっきり白恵が紹介してるかと……、まぁいっか!
ボクはライト!この世界を創っている者であり、……言いたくないけどアイツの妹でもある。」
「え、?!そうなんですか?!」
「うんっ!
ねー、アイツヘタレだから!今まですっごく長い時間変わらなかった狩人システムを変えることにひよってるの!だからあんまり気にしなくていいからね〜!
なんかのためならすーぐ嘘つくから、アイツ。」
彼女は遠回しに自分とアイツは似ていない。と言っているようにそうペラペラと話す。だが、髪色と目の色は皮肉にもそっくりだ。
「そ、そうだったんですね……、
教えて頂きありがとうございます、!」
「いえいえ〜、
こちらこそごめんね!」
幼い感じで笑う彼女はその後何かを思い出したようで、表情を固める。
「……?」
「やっば!この後ボク仕事だ……」
「それ、忘れたらやばくないですか?!」
「やばいよ!
あー!またあの人に怒られる……、
じゃ、またねっ!」
そのまま彼女は嵐のように走り去っていった。
「……文句を言う暇あるなら行動しろ……か、」
相当深く受け止めているようで、それもどこか心当たりがあるように呟く。
(ビビり……なのかな、
文句を言っているだけ……、言い訳……
行動力、?それがないと、)
「100点にはなれない……?」
……数日後
(来た……、狩人学校の日……!
、アレを試す……、?本当に僕なんかに、
って、もう言い訳はやめるって決めたんだった、!違う、僕なんかにじゃなくて、とりあえずやって見る!それで様子を見る、
そうすることにする!)
蒼空は狩人学校の教室、ドアの前で1つ深呼吸をするとドアを開けると同時に
「……おはようございます!」
と元気いっぱいな挨拶をする。
「……」
もちろん挨拶くらいはここの生徒は知っている。だが返すもの、と言うよりここで話していいのかわかっていないのか、なんかポカンとしている。
その中に1人顔色を変えている人がいた。
「ミナっ、おはよ!」
そう、ミナだった。ミナは蒼空のことを見て怯えたような表情をしていた。
「……、お、おはよう…!」
どうにかミナは笑顔を作って挨拶を返す。
その事を汲み取ったのか蒼空はにこっと笑顔を返すだけで席に着く。
「おはようございます、!」
と少し怖がりながらもその様子は見せず蒼空は隣の席に座っている女子に話しかける。
「……、おはようございます。…?」
ぽかんとするが、疑問形でも挨拶は返してくれた少女。彼女は紫色の髪でツインテール、横髪は水色だ。目も綺麗な水色と紫色をしていた。
「まともに話すのは初めてですね!、
えっと、あ、お名前聞いてもいいですか?」
「名前……、クレアです。」
戸惑いながらも答えてくれる彼女は少し心の中で楽しいという感情を抱いているようだ。
「クレアさん!僕は澄川蒼空って言います!」
蒼空は会話ができることが嬉しく、にこにこしながら元気に話す。
「澄川蒼空……さん。何と呼べばいいですか?、」
「好きに呼ん……、あ、
蒼空って呼んでほしいです!」
「……!、
蒼空さん、蒼空さん、……
えっと、よろしくお願いします!……?」
蒼空も嬉しいと感じているのか嬉しそうににこにこしながら話している。彼女は表情こそは変えないが、雰囲気的に嬉しいんだろうなと言うのが伝わってくる。
他の生徒はそれを驚いている様子で見ている者も、聞こえていないようにいつもと変わらず前を向いている者もいる。
ミナはそれを見ずに前を向いていた。
「クレアさんは何歳ですか?」
「16です!」
もう緊張はまったく無いようで、ハッキリ話すクレア。
「16?!、
じゃあ、僕より年上ですね!
僕12なので、」
「12……めちゃくちゃ若いですね。」
「狩人学校って別に年齢は関係ないだ……、
初めて知りました!」
「私も知りませんでした。
まさかここに来て人と話していいなんて、
そのおかげで知れることも沢山あるんですね。」
「僕が来る前も全く話してなかったのですか、?」
「はい。
みんな、シーンって感じで、過ごしてました。」
(なるほど……、
クレアさんの感じ的には話すって言う選択肢がそもそもなかった……のかな。
話して見た感じ、すっごくいい人そうだし、
聞いてみても……良いのかな、)
「……、クレアさんは何故話さなかったんですか?」
「んー、なんと言ったらいいんでしょうか。
あ、棚から鱗的な感じです。」
「棚から……?!ウロコ?」
「あれ、違いましたっけ、エビで鱗を釣る?」
「目から……じゃないですか?」
「あー!それでしたそれでした。
そうそう、目からウロコって感じだったんですよ。」
「なるほど……、」
(やっぱり、選択肢すらない……んだ。)
「じゃあ、私からも1つ、
蒼空さんは何で私に話しかけたのですか?」
「ん〜、、あ、席が隣だったからです!」
蒼空は少し考えて話した。
(校長から捨て駒扱いされていて、
それを受け入れて命を無駄にして突っ込むクラスメイトに“生きる意味”として友達になりたかった。なんて言えないよね……)
そんなことを思っているとはもちろん相手には伝わって居らず、クレアは合図値を打っている。
「なるほどー、」
「だから、その、黙ったまま狩人をするよりも友達と教え合いながらした方がたくさんの人を助けて、もっと魔物を倒せると思ってるんです。えっと、ほぼ初対面なのにすみません、
狩人学校で一緒に友達を作りませんか?」
「……!、
私も、ですか?」
「うん!って言っても、嫌だったら全然大丈夫だけど……」
「やって……みます。」
先程まで元気にハキハキ話していた彼女とは一転し、大人しく、静かにそう呟くように言葉を零す。その様子を見た蒼空は小さな違和感を感じる。が、聞くほどでもなかったのか、
「ありがとう!」
と朗らかな笑顔を見せる。すると彼女は直ぐに表情を元に戻した。
直後、先生が教室に入ってくる。
「今日は賑やかだな。
珍しい。まぁそんなことは置いて今日も授業始めるぞ。
今日は2組と合同練習だ。」
(2組と合同……、
そういえば、2組はまだ見てないな。
どんな人がいるんだろう、)
……
先生からの説明が終わり、廊下を移動してグラウンドに出る。そこには既に2組が待機しており、生徒がまばらに立っている。その中では話している人もいた。
と言っても2人組が2組いるだけだ。
するとその2組のうち人組が蒼空に近づき、話しかける。
「蒼空くん、おはよう。」
アロが優しい爽やかな顔で挨拶をする。
「おはよ。」
隣のランも続けるように挨拶をする。
「おはよう〜!」
「元気そうでよかった。
あれ以降会うタイミングが見当たらなかったからね。」
「うん、アロ君とラン君も!」
「ふふっ、あ、今日は魔法の授業らしいよ。蒼空君は扱えるの?」
(正直、あっちの蒼空は魔法の扱いは下手……、と言うより魔力が多すぎて扱えきれないって感じだった。こっちの蒼空は、何か魔力が感じられない。そんなものなのかな。
でもちょっと違和感を感じる。)
「え、あー、使えない、らしい、
今日どうするんだろ……」
「使えないらしい、試してねぇのか?」
ランが驚いたように口を開く。
「試したことないも何も、白恵君に使えないって言われたから、」
「使えない……?」
「うん。白恵君に才能?見たいなのが寄ってるらしくて、」
「「……」」
ランとアロは疑問に思うようにお互いの顔を見る。
「な、なんかおかしかったかな……?」
「い、いや、白恵……様のことを君呼びしてることが珍しい……というか意外でね。」
(そういうこと……?!
確かに白恵君は“僕が1番狩人で強い”見たいなニュアンスで言っていたような……言ってなかったような、、兄弟だからって言いたいけど、言って大丈夫なやつ、なのかな……?)
そうこう考えているうちにグラウンドに玲亜と教師らしき人がもう1人やってくる。
「始めるぞー。」「始めるよ~」
同時に声をかけると、直ぐに生徒は綺麗に並ぶ。
「今日は魔法の練習をメインにやってもらう。毎回言ってるが、魔物相手には魔法が1番よく効く。みんな真剣に取り組むように。今回は新入生もいるとのことで復習も兼ねて基礎を説明する。」
「はいは~い、
まず、魔法と言うのは自分の魔力を外に出すことによって発動することが出来るって物。ただ出すだけだと何も起きないからそこに自分の持ってる力を込める。ま、感覚は説明ってより慣れとかが近いから難しいけどね~、」
「それぞれ得意不得意の属性がある。
じゃあ……、ミナ。見せろ。」
「……、」
一瞬驚いたようにビクッとしたが、そのまま生徒の前に出て、玲亜を振り返るように目を向けた。
「いつもの感じでいい。」
玲亜が小声でミナに伝えると、ミナは目を瞑りながら深呼吸をして目を開けると手のひらを外に広げるようにして両腕を前に出す。
玲亜が小さな声でミナに話しかけると、ミナは目を閉じて深呼吸をしてから、目を開くと手のひらを外に向けて両腕を前に伸ばした。
この瞬間、彼女の身体からは静かな力強さが漂っていた。彼女の姿勢は完全に整っており、蒼空にはまるでミナが魔法使いのように見えてた。そして、蒼空はミナが何かを実現するために自分自身を整えているように見えた。
コンマ何秒後、ミナの手のひらから、と言うより地面から1つの大きな炎の渦が出現した。急な温度上昇による風が吹き、その勢いは圧倒的な迫力があった。
それを目の当たりにした蒼空は1つのことを思い出した。
【僕は、これを見たことがある。
これを見るまで、妄想だと思っていた。
僕の“おまじない”。
夢とも現実とも取れなかった僕にとって大きな出来事。今、はっきりと思い出した。
あの時は優しく見えた炎とは違う、
魅せるだけの炎だ。その炎は、僕を僕の中で包み込むように広がり、美しさと危険性を兼ね備えた魔法のように僕の目を惹き付けていった。 】
(凄いな……、)
【友達としてでも、親友としてでも、そんなんじゃなくて、ただ凄いと思った。良くも、悪くも。感覚的に、ミナとの距離を感じた。】
(ミナ……、いつから狩人のこと知ってたんだろう。)
洗練された魔法を涼し気に発動しているミナを見てそう思う蒼空。数秒間だけだったが、蒼空にはとても長く感じた。
その魔法を解除すると、ミナはもう一度玲亜の方を振り向く。
「ありがとう。
こんな感じで、魔法を扱えるようになるとラグなしで発動することが出来る。」
「そそ~、
属性は12個くらいあるから自分の得意な武器を伸ばすべし!得意属性を中心に練習!」
「そういうことで、前置きが長くなったが……、練習開始。」
そう言うと、皆はそこそこの広さに素早く広がって、練習を始める。
その中で蒼空は玲亜の所に向かう。
「先生、!
僕魔法使えないんですけど、どうしたらいいですか?」
「ん?あー、なんか白恵さんが言ってたな。えーっと、概要見たいなのわかるか?」
「一応、封印って言う技、と言うか能力見たいなので、生物問わず物を消滅……封印することが出来ます。魔物に対して使う時はほかのものを封印するより数倍効き、魔物を封印する場合はそれごとでは無くて、取り憑いてる悪霊見たいなのだけを封印することが出来るそうです。」
「……、ほう。ちなみに条件とかは?」
「白恵君が言ってたのはある程度ダメージが無いと出来ないと言っていました。
ゴリ押しとかでもダメらしいです。
だから、その、僕単体だと魔物を倒せない。と言うか……、」
「なるほど。武器が欲しいってことか。」
「はい!、
白恵さんはもしかしたら使い方によっては封印も“封印目的”以外に使えるかもしれないって言ってましたが、僕の先代の古文書?見たいなのが見つかってないとの事で、」
「……、」
玲亜はその話を聞きながら考え込んでいた。何か突っかかっているところがあるらしい様子で。
(そうなると……、アレはどうなんだって話になるからな。白恵さんが言うには大丈夫って言うが……、確証が持てない上、まだ秘密にしなければならないから、……難しいところだな。)
と、内容的にはこんなことを考えていた。
「どうしたらいいんでしょう……、」
小さい声で蒼空は呟く。
その玲亜と蒼空が話しているのを遠くからチラチラとミナが気にしているように見ていた。もちろん2人ともそれには気づいていない。
「その、とりあえず封印ってやつの練習しとけ。目的以外のも手探りで探しながら……、まぁ難しいとは思うが頑張れ。」
「分かりました……!
ありがとうございます!」
そう言って蒼空はお辞儀をすると、いい感じに人がいないひらけた位置に着く。周りの魔法とかが気になっているのか、他の人のことを見る。
(ん〜、皆結構完成してる、けど、魔法って合わせたり出来ないのかな?あ、クレアさんだ。……凄い、けど、他の人と比べたら出来てない方っぽい……?話しかけてみよ。)
「クレアさん!」
「……?蒼空さん、?」
「今ちょっと気になったんですけど……」
「、?敬語外さないんですか?」
「ん?!」
「いや、この間話した時最後の方外してたんで、気になっただけです。」
「外した方がいい、なら、外す!
それなら……、クレアさんも外して欲しいかな。ほら、友達って感じがしないかな?」
「……私クセ見たいになってるんですよね。人に言っておいて何ですけど。」
「全然大丈夫だよ!
好きに話したいな、友達だから、!」
「ありがとうございます、
それで、気になることって……?」
「あぁ、!
えーっと、魔法のことで、その、僕色々理由があって魔法が使えないらしくて、みんなの事見てて思ったのが、属性?って混ぜれないのかな?」
「……、例えば、この闇魔法と、この氷魔法を同時に発動的な感じですかね。」
そう言いながら闇魔法?なんか黒いモヤっとした丸い物を発動し、順に氷魔法もそんな感じで出す。
「うん!危なそうだからやめておいた方がいいかな……」
「……物は試しです。やってみましょう。」
そう謎に自信ある感じで言うと、クレアは片足を少し後ろに下げ、手を前に突き出すと、ビリビリやらバリバリやら音を立てながら黒いモヤモヤがでかくなっていく。え?氷魔法はどこいった?みたいになっている。
「ちょ、……?!ちょ、っ?!
なんか、ヤバくない……?」
「……」
彼女は集中しており、まるで耳に届いていない。どんどん黒のもやもやはでかくなっていき、……そのまま爆発する。
その寸前で蒼空はそれを封印する。
「危な……かった……、
魔法って混ぜるとこんなことになるの……?!」
「え?何で止めちゃったんですか?」
「ご、ごめん!
爆発しそうだったから……」
「って言うか、魔法使えないのに……?
なんですかそれ。」
「あ、これ?、
これは、えーっと、魔法の代わりみたいな感じらしい!
僕自身もまだあんまりよく分かってないんだけどね……封印って言うらしいんだけど……、」
「なるほど、にしても魔法爆発しそうになるんですね。気をつけましょう。」
「そうだね……、本当にごめん、危ないことさせちゃった……」
「何言ってるんですか。普段の仕事の方がよっぽど危ないですよ。」
「……確かに…?」
「さて、では私は魔法の練習を続けますね。」
「うん!ありがとう。」
そう言い終わると、蒼空はクレアから少し離れ、再び考える。
(いい感じに掛け合わせたら行けそうな感じがするだけどなぁ……、どうなんだろう。)
彼は昔から勘が良かった。彼の経験上、自信というよりかそれが普通だと思っていたので今までも結構頼りにしていた。
(いいや、今はそんなところじゃないか、……
練習しないと、)
そう思って気持ちを切り替えると、再び封印の練習を続けようとするが、
「…何すればいいの……?!」
小さい声で呟く蒼空。彼は2択で迷っている。
(封印をするべきか、別の形を探すか……、)
そこそこ優柔不断な彼はうーん、と頭を抱えていた。その中でも自由な発想を得るためにイメージを固めていた。
(なんか、僕の封印のイメージ的には箱に詰めて鍵をかけるみたいな感じなんだよね、その度に。こう、封印って入れるみたいな感じで、出す事って出来るかな……)
そうイメージを練りつつ発動しようと手を出すが、全く出る気配がない。
(ん~、出来る気がしないんだよね……、
封印は白恵くんの見てたから割と直ぐにできたんだけどなぁ……、まだその段階じゃないって考えると、もっと重くて大きい物を封印するのに慣れる練習の方が効率良さそう……)
そう考えた蒼空は遠くにいる玲亜のところまで走っていく。
「先生!あの木って練習に使ってもいいですか?」
蒼空が指を指す方向には見上げるほど大きくて立派な木があった。
「練習……、あー、まぁいいとは思う。
校長の妹さんが自由に生やせるみたいなシステムだった気がする。」
「ありがとうございます!」
丁寧にお辞儀をすると、その気の根元まで走っていく。
(この大きさのは試したことがないから……、どうだろう……)
チャレンジしてみようと木の幹を触る。
加減を間違えたのか慣れていないのかは分からないが、今までと比べ物にならないくらいの強い白色の光が放たれる。
(ああああぁ、……間違えた…………、
間違えた……?これはまだ大きかったのかな、封印って、調整できたっけ…………
最近は小さいものしかしてなかったから忘れてた……、)
色々考えながらも蒼空はその場に倒れて気絶してしまう。
……
「ー、教えてください!」
「ちょちょ、ミナちゃん、落ち着いて!」
「だって、何があって蒼空くんが狩人になったんですか?!
………………、、」
「……?どうした?」
「起きそう……、すみません、私がここにいなかったことにしてください!」
「蒼空さんもきっと会いたいと思いますよ。」
「っっ~……!それと、これは、ち、違う……、と、とにかく!私はいなかったってことにしてくださいね!」
(この声は……ミナ、?
って、ここどこ?!、)
急に体を起こす蒼空。
「おはようございます。
大丈夫ですか?」
「お、おはよう……!、
うん、今は全然大丈夫だけど……、、
それよりさっきミナいたよね……」
「ミナ……さん?誰ですか。」
凄く自然に嘘をつくクレア。そしてそれに騙される蒼空。
「気のせい……、」
蒼空は小さく呟き、
「こんにちは、初めまして。」
そこにはすらっとした青い髪の女性がいた。
「!、こ、こんにちは……」
「うん、顔色はもう大丈夫みたいね。
まだ慣れていないからか分からないけど、無理はしたらダメだよ。」
「は、はい……、
すみません、迷惑かけてしまって、」
「わかったならよし!
帰って大丈夫だよ。」
「ありがとうございます!失礼します。」
軽く礼をすると、クレアと同時に保健室らしきところから出る。
「……今話すことか分からないんですけど、蒼空さんの来る前の人ってどうなったんでしょうか。」
「前の人……?!いたの?!」
「はい。真面目そうな、メガネかけててガリ勉って感じでした。」
「なるほど……、?、
え、……僕が来たから辞めた……、って訳では無い…よね………?」
「わからないです。」
その時蒼空には嫌な予感が過った。
(……辞めた?、……、僕が来たから、?
狩人を辞めるって……、つまり、、死ぬ……ってこと……、?死んだの……?)
そう思った瞬間、廊下の遠く先にある部屋からとても大きな爆発音が聞こえた。
「え?!」
「あー、あの実験室からですかね。
最近ドンドンうるさいんですよ。」
「大丈夫かな……、?」
「いつものことですよ。」
「んー…、でも気になる、
行ってみていい?」
「なら私も着いていきます。」
そう言って2人は実験室の方向へと走っていく。
「大丈夫ですか?!」
実験室の扉を思いっきり開けた蒼空は心配そうにその中にいるであろう人に話しかける。
「……あぁ、!、おぉ?、!?!
……、め、珍しいね。こんなところに人とは、何か用かい?」
ノリで返事をした後、その2人の姿を見て驚くようにおぉ?!と言った後、咳払いをし、我を取り戻すように落ち着いた様子で話す。
黒いモヤ見たいな煙が晴れると、そこには黒髪でオレンジ色の瞳をした男性がいた。
「人が変わりましたね。」
そしてその仕草に対して直球でツッコむクレア。
「クレアさん?!
え、えーっと、用って訳では無いんですけど、ただ、爆発したので、心配になりまして……」
クレアがあまりにも直球、しかも真顔で言ったので蒼空が驚くようにクレアの方を見て名前を放つ。その後少し誤魔化すように早口気味で彼の方を向いて話す。
「それなら心配いらないよ。それに、気になったなら驚かせちゃってすまないね。
俺はリアム。よろしくね。」
「僕は澄川蒼空って言います!
よろしくお願いします」
「私はクレアです。
あれ?リアムさん……、?
あー、思い出しました。この人が蒼空さんが来る前の人です。」
「え?!そうなの?!、」
「あぁ。クレアの言う通り、俺は蒼空君の前の人──」
「良かった!!、
生きてた……、!」
涙目になりながら急に叫ぶ蒼空。
「?!、……勝手に殺されていたのかい?俺。」
「いやっ、僕が入ったからそのせいで死んでたかと……」
「なるほど……、
それに関しては大丈夫だよ。開発者として、狩人に携わることになったからね。」
「開発者……?、
じゃああの試作品だった制服リング見たいなやつ作ったのって……」
「あぁ。俺だよ。」
「凄い……!!」
「……、お二人で盛り上がっているところ申し訳ないのですが……、無事だったこともわかったので戻りませんか?」
「その事なんだけれど、少し蒼空君と話したいことがあってね。なに、怖い話じゃないよ。ただ、その雰囲気に興味があってね。
ってな訳で、クレア。すまないけれど2人にしてくれるかい?」
「え、あ、はい。
では、蒼空さん。先に帰っておきますね。」
「えぇ?!いいの、?」
「はい。今日やった魔法の練習を固めとくので全然大丈夫です。」
「ふふっ、ありがとう。
では、蒼空君、おいで。」
「は、はい、!」
何を聞かれるんだろうと少し身構えながらも実験室の奥へと入っていく。
中は案外綺麗に片付いており、どこに何があるかわかりやすいようになっている。ただ先程の爆発で紙が数枚黒く焦げている。
「突然だけれど……、
俺の事について話そうと思う。」
「リアムさんの……?」
「あぁ。
毎回君だけには話しているんだけれどね。
俺は転生者なんだ。世界線を渡り歩いているんだ。」
「世界線……、あぁ、!
僕の友達が言ってました。」
「相変わらず飲み込みが早くて助かるよ。
死んだら別世界で転生を繰り返す……
んでその世界ごとで俺は毎回研究員という立場をとっている。転生の有効的な使い方だと思わないかい?今まで知識と思考力だけに全振りしてきたから、例えばだけれどあんな指輪を作るくらい簡単なことってわけだ。」
「それでも凄いですよ……、!!」
「あはは、ありがとう。
後アドバイスだけど、もう初対面からタメ口でいいんじゃないかな?
確か、狩人で友達作ろうとしてるんだっけ?白恵さんから聞いたよ。」
「は、う、うん!」
「理由は?」
「え、えーっと……、」
「別に隠す必要は無いよ。
俺はここの人達と違って色々な世界をその名の通り見てきている。
本当は君が考えそうなこと。ってなるとだいたい予想は着くんだけどね。」
「……、死なせたくないっていうのが、最初の理由だった。、
けど、クレアちゃん達と、リアム君と出会って、話せるようになって……、面白いって思った。から、今は純粋に、ただ純粋に、仲良くなりたい!からかな。」
小さく笑いながら上記を述べる。
「……!」
リアムはてっきり死なせたくないだけだと思っていたのでその言葉を聞いて少し驚く。
「……?
だ、ダメだよね……、もう少し真面目にしないといけないのはわかってるんだけどね……、」
「いや、やはり違う人なんだな、と。」
「……、?」
「同じ世界線に同じ人がいるという話はしただろう?今まで色々な澄川蒼空を見てきた。けど、そうしているうちに偏見や思い込みが増えたんだ。だから今まで実験を繰り返した。結果、それぞれの人は性格こそ似ているものの、似ているだけで同一人物では無い。今まで過ごしてきた環境によって同じ人でも性格や考え方が変わる。ってことが分かったんだ。
意識はしているんだけど、どうしてもそう思ってしまってね。」
「なるほど……、、」
「済まないね、口が回るもんでついつい話しすぎてしまうんだ。」
「全然!
別世界っていうのも興味があるから大丈夫だよ!」
「あはは、不思議な話だよね。同じ人なのに。」
「会ってみたいな〜……、もう1人の自分、か」
「そのうち、世界間旅行でも発明しようと思っているよ。いつになるかはわからないけれど……、気長に待っていて欲しい。
あ、そうそう、これが本題っちゃ本題だったんだが、さっき言った通り白恵さんから色々聞いていてね。封印だったかな?俺は開発者とは言ったが、魔法にも興味があってね。と言うかどちらかと言うと魔法を研究する方が好きなんだ。」
「なるほど!、
でもそういうことなら僕はあんまり役に立たなさそうかも、封印はできるけど……、魔法ができないらしくて……」
「そうそう、まさにそこなんだよ。
封印についても調べたいことが山ほどある。とりあえず、この試験管を封印してみてくれないかい?」
「いいの……?備品、」
「このくらい良いさ。
毎日10本は壊してるからね。どうってことないよ。」
真面目な顔をしてそこそこやばいことを言っているが、数百年も生きてるとこうもなるのだろうか……、
「わ、分かった……」
流されやすい蒼空は言われるがままにその試験管を封印する。
「……なるほど、言わば魔法の集大成みたいな感じか。発動直前に魔法の13属性それぞれの色が光って1つに収束され、やがて白い光になりそれは封印される。消滅……、はこの世の原理的にはありえない話ではある。どこかに存在している。、それこそ、俺が旅している世界線の間のようなものに保管されている可能性が高いと見える。いや、ほぼそれで間違いないと言えるだろう。
つまり、封印と逆のことも出来るはずってことだ。」
「す、凄い……、
今の見ただけでそんなに分かるものなの?」
「あぁ。何十回も人生をやってくると、と言うか毎回魔法に全力を尽くしているからね。何となーくわかるんだよ。」
「本当に……、凄い、!」
「フフっ、ありがとう。実験協力、感謝するよ。ゆくゆくは人を封印するとかもやってみたいかな。ま、今日はこれくらいかな。
また呼び出すこともあるかもしれないからその時はよろしく頼むよ。」
「人を?!、
きょ、協力はするけど、過度なことは無理かもしれない……」
だんだんと小声になりながらそう話す蒼空。
「ははっ、冗談だよ。
俺はいつでもここで実験とか発明をしているから何か行き詰まったときとかは来て欲しい。魔法が得意なわけじゃないから直接教えることは出来ないけど、ほら、さっき言ったみたいな、封印と逆のことが出来るかもしれないとかと言う視野を広げることに協力することは出来ると思うよ。」
「、そっか……、ありがとう。
封印と逆……、
そう、それも試したんだけどね、なかなか上手くいかなくて……、」
「……!、もう既に試していたんだね。
それで無理だった……、ということは澄川家に代々伝わる特別な伝授の仕方が何かあるのかもしれないね。」
「でも、封印は白恵君が見ただけで出来たんだよね……」
「なるほど……、それなら“見る”と言うのが大切になるという可能性もあるね。その件についてもこっちで試してみるよ。何か進展があったら教えるね。」
「本当に、ありがとう!、
リアム君がいると、なんか力強いなぁ、」
「いえいえ、それが本業的なところもあるからね。じゃ、」
「うん!、じゃあね!」
蒼空はそう言うと実験室から出ていく。
(出来る……のか、、“見る”ことが大切なんだったら、意外と難しい……のかな。
ん〜……、とりあえず封印をもう少し極めてからじゃないと前には進まなさそう……、)
どっちにしろ進まなかったな、と少しだけ落ち込みながら。
(いやいや、今はとにかく自分に出来ることをする!、……
あ、そうだ、学校の登校日を減らそうかな……、そっちの方が役に立てそう……、だけど、だめ、なのかな。、
狩人の方の仕事が……僕には合ってるし……、よし、白恵君に聞いてみよ!)
……1週間後
「え?無理だよ」
蒼空は先週考えたことを白恵に伝えると、当たり前のような顔でそう言われる。
「えぇぇ!、
な、何で……?」
「あー、うん、あー……、どうしよ……、……」
「出来れば……お願いしたい……、かな。」
そう蒼空が小さく呟く。その後、数秒だけ白恵は考えて口を開く。
「分かった!
1週間、1週間に1回登校する!どう?」
「ぎゃ、逆にいいの……?」
「うん!
お兄ちゃんは今後、狩人の核となるからね!丁度もっと今より強くなって欲しいって思ったたから!」
「僕が……狩人の核に……?」
「そそー!
この間も話したとおり、封印はそれくらい強くて特別だからね!……
まぁ、だからあんまり失いたくないから仕事に行かせなかったんだけど……、、」
「死ねない、ってこと、か……、」
「うん。
ま!狩人が“魔物との戦いで”死ぬことはほとんどないから大丈夫だとは思うけどね!」
「なるほど……!、
だったら、尚更頑張らないと……、」
「頑張れ!
あ、一週間に一回くらいリアムの所行ったらあの人喜ぶと思うよ」
「リアム君……?」
「うん。
2人とも気があってたじゃん?」
「気が……って、あの会話聞いてたの?!」
「いや?リアムが嬉しそーにお兄ちゃんのこと話してたからさ!あの人なんか、人には興味ありませんって感じたと思ってたから意外だなーって」
「なるほど……、?」
(まぁ、……話してた内容は魔法とかそっち系に近かったんだけどね〜、、)
「と言うことで、次の月曜日からガッツリ狩人の仕事入るから頑張ってね!
授業行ってらっしゃい!」
「うんっ!行ってきます!」
笑顔でそう返事をすると、部屋から出る。
「相変わらず……、元気だなぁ……、……」
(その元気が……、これからの狩人を引っ張って、いつしか僕がいる狩人で1番強い。って言う称号も……奪われるんだろうなぁ、)
……
「はぁー……、」
授業という名のただの自主練習を終え、解散の合図がかかってすぐの時、蒼空はため息をついていた。
「どうしたんですか?」
その蒼空の様子を見たクレアは急に話しかける。
「わっ!、え、えーっと……、
魔法……見たいなやつが何か上手くいかないなーって、」
「…………あんまり気にしなくていいと思いますけどね。ここにいるほとんどの人は学校入学前から魔法とか体術とかその他諸々鍛錬していたので、差がつくのは当たり前です。魔法は基本慣れですからね。
そんなことより、友達を作る話はどうなったんですか?」
「うぅ……!
か、考えてはいるんだけどね〜……話題がない……というか、何を話せばいいか、」
「私の時あんなにすんなり話しかけてきたのにですか?」
「ううぅ……!
と、隣だったから話しかけやすくて……、」
「なるほど。
て言うか、話している間に他の人帰っちゃいましたよ。」
「……あの子、なんか、どっかで見たことある気がする……、」
「あの子?って、あぁ、左前の……」
「うん、話しかけてみようかな……」
「こう言うのは勢いと勇気が大切なんですよ。私が言うのもなんですが……」
「……、がん……ばる。」
「私も一緒に行きますよ。」
クレアがそう言うと、2人でその子に近づく。その子……と言っても身長や雰囲気が幼いだけで普通に高校生くらいの子である。彼は薄茶色の髪をしており、目は少し暗めの黄色。ちょっとくせっ毛な蒼空とは違って髪はサラッとしている。
「こんにちは、!
えっと……、初めまして、僕は澄川蒼空!」
「私はクレアです。」
「……、お……、、
……僕は、タクトだよ〜、初めまして〜
えーっと、クレアちゃんは体術がすごい子で、澄川くんは確か……、途中から入ってきた子だよね〜」
ゆったりとした口調でのんびり話す彼。話してみて余計に幼さが増した気がする。
「うんうん!って、クレアちゃん、体術得意なの?」
「んー、そうですね。
魔法とか繊細な事するよりゴリ押しの方が得意です。
そんなこと言っておいてタクトさんも途中入学でしたよね。」
「あ〜そうだったね〜
みんなより1週間ぐらい遅れたんだっけ〜」
「……、あぁ!タクトくんか!
思い出した……!もしかして……あの世界的に有名なオーケストラ団の指揮者?!」
「ん〜?あ〜そうそう
えへへ〜、すごいでしょ」
「凄いどころか……、ビックスターだよ……、」
「へー。そんなに凄いんですね。」
「クレアちゃん知らないの?」
「知らないですね。外の情報とかあんまり興味無いですし、そもそもどこから入手するのかすらわかりません。」
「なるほど……、だからみんなあんまり反応しないんだ……」
「そうなんだよね〜、
僕の唯一の取り柄と言うか、アイデンティティなのにね〜……酷い話だよね〜」
「そうだね……、きっかけがないとやっぱり話しにくいよね……、」
「ま〜別に友達欲しかったわけじゃないからいいけどね〜
協力するよ〜、友達作るの」
「え?!何で知って……、」
「いや〜、こんな静かな教室で話してたら嫌でも聞こえるでしょ〜
少なくともクレアちゃんは気づいてそうだけど?」
「逆に蒼空さん気づいてなかったんですか」
ドン引きしているような目で蒼空のことを見る2人
「え……、あ、……、ご、ごめん……、
わ、わかった、わかったから、そんな酷い目で見なくても良くない……?」
……
クレアが帰り、タクトと蒼空が2人で家に帰っている時
「なるほどね〜、まぁ色々あるよね〜、」
「そう……、だから、その、タクトくんにも手伝ってほしいな〜って……、いや、別に嫌だったら全然いいんだけど、」
「ん〜、いいよ〜?
てか、さっきも言ったし〜。僕さ、人を操るのだけは得意なんだよね〜」
「人を……操る……?」
「そ〜、僕もいまいちわかんないんだけどね〜」
「……、と、とにかく!、ありがとう」
「どーいたしまして〜
じゃ、僕家ここだから〜」
「うん!またね〜!」
そう言うとタクトは小さく手を振りながら家に入っていった。
……◇
涙が零れる。
誰にも言えずに座り込む。
君は誰も信用できていないのだろう。
誰にも頼れない真夜中のビルの屋上。
泣きたくなり、こぼしてしまう。言葉を漏らし、時折誰か来ていないかを警戒する。
こういう高いところでは風が良く吹く。そろそろ夏。
星空が押し潰してきそうな気持ちになる。
「で、お前だれ?」
気配からして一般人ではなさそう。
となると、噂のFEILERかな?でも殺意が感じられない……
「姿を隠していたのにも関わらずバレるなんて、流石は狩人代表ってところかな?」
「それはどーも。お褒め頂きありがとう……、ございます。」
本当に僕はどうしてしまったのだろう。
リーリエにも、蒼空にも、先生たちにも、助けてくれたライトにも、見せれなかった。
「……」
どうして?なんで?もう、わかんないよ……
「助けて……」
…………
「少しは落ち着いたか?」
「……ごめん。」
「お前、変なやつだよな。」
「レオに言われたくない。」
「名前割れてんのか……、
今はな。もう時期黒恵となる。」
「あっそ。」
「味方には背中を預けられないって言ってるようなもんだぞ。その行動は。」
「……、黒恵もでしょ。」
「……お前の話をしている。」
「お互い変わり者だよね。」
「一緒にすんな。俺のは病気だ。」
「ふーん。」
「ちょっとぐらい興味を持ったらどうだ?」
「一応敵のボスってことになってるから興味無いわけじゃないんだけどね。情報収集する気が起きないんだよねぇー」
「なんだお前。」
「はー、良い友達になれそう。」
自分でおかしく思ったのか軽く笑う白恵。
「馬鹿かよ。なれてたまるか。」
「いやー、似たような立場じゃん?」
「一緒にすんなって。
俺は別に人を殺したいとか頭おかしいこと思ってない。」
「嘘だ!」
「嘘じゃない。」
「まー、思ってても思ってなくてもいずれ敵になりそうだし?今この場で戦う?」
「さっきとは別人だな。二重人格かよ。」
「いやー?
今倒した方が良いかなーって思っただけ。」
「思ってないだろ。」
なんでだろう。何もわからない。
彼は僕のことを心配しているのか、
心配していないのか。
騙されてるのかな。
こうやって、優しく抱きしめてくれて。
「……」
「そう、思いたいだけじゃないのか?」
「……っ、!!
は、離して!」
核心を突かれる。それも、自分では気づいていないところを。嫌になる。
「……、あー。狩人ってのはそんな集団なんか?」
「い、いや……、そういう訳じゃ」
「じゃなかったらこんなことになってないだろ。」
「……、」
「FEILERに入ったらどうだ?」
「……!!、そ、それはだ」
「めって思いたいんじゃないのか?」
「っ、……」
「じゃあな。俺は仕事があるから。」
「、!ねぇ!」
「?」
「なんでここに僕がいるってわかったの?」
「…………、俺がいつもいるところにお前がいたんだよ。探していたわけじゃないし、探したくもないね。」
いつもいるところ、なんだ。
なんで僕は、また会いたいなんて、まだ一緒にいたいなんて思っているのだろう。




