オープニング
《オープニング》
「白恵には、絶対に触れさせない。」
多分僕の目は赤くなっているだろう。
こんなことになるのはなんとなく想像がついていた。母さん譲りの勘の良さは良いところも悪い所もある。今回は良い方……いや、悪い方かな。
こんなの知りたくなかった。
信じなくたかった。
僕が死ぬことが正しいんだって。
いや、最早今考えることではないか。ずっと覚悟してたじゃないか。
今はとりあえず腕の中にいる白恵を護ることだけを考えよう。多分、母さんと父さんは約束通りになっているだろう。
「ふふふ。さぁ、君にできるかな。」
黒い髪をした女性は目を瞑りながら。
目が見えないのだろうか。大方、リーダーと言ったところかな。そして近くにいる彼は……少年、?黒い瞳に黒い髪。……羨ましいと思ってしまう反面、可哀想だと思うところがある。
「すっごい殺気だね。FAILUREにいていい器じゃないよ。海外に行ってロニとかと仕事したらどう?
ふー……、っ」
深呼吸をする。
封印の力は応用ができる。魔法はいらない。黄色い弾をマシンガンのように発射させるけど、……まぁ当たらないか。
「虚、やれ。」
へぇ、虚って言うんだ。……痛いなぁ。
お腹を思いっきり殴られる。
どんな気持ちで彼は僕を殴っているんだろう。
「……、弱いね。」
君よりは強いよ。
「グダグダと続く戦闘はしないよ。舐められたものだね。
“この土地から棘の岩が◾︎◾︎を突き刺す。”」
「ぐっ!!!、……、」
言われた通りになった……、なるほどね。そういうやつか。
「動きを確実に止めてからやるなんて、リーダー油断しないね。」
君は一体どう言う気持ちなんだろう。
「当たり前だ……っと、ふふふ。やはり立ち上がるか。」
僕のアビリティは巻き戻しだ。とりあえず岩を土地に仕舞って、体も見た目は治そう。あぁ、このまま時間も巻き戻ってしまえばいいのに。
「……、迎えが来た。」
僕がそう言うと2人は驚くような顔をする。リーダーもそんな顔するんだ。目つぶってるのに。
「っ……◾︎◾︎!!!」
どうか泣かないで欲しい。
覚悟は出来ていたからか分からないけれど、死に対しての恐怖はない。……いや、違うかな。元々死に対しての恐怖なんてない。いつもあるのは好奇心だけだ。
そう、好奇心だけ……、僕にはわからないことはほとんどない。考えなくてもわかってしまうこの体には呆れる。けど、僕のことだけはいつも教えてくれなかった。僕って誰?僕は何者なんだ?誰も教えてくれない。いやだ。嫌だ。自分が何者かも分からないまま死ぬなんて僕はそんなことしたくない。
僕はそんなのを口にできるはずもなく笑顔でこういう。
「……あははっ!!、◾︎◾︎◾︎。そんなに泣かないで欲しいな〜……なんて、、」
「……バ」
「◾︎◾︎!!!」
◾︎◾︎◾︎が言いかけた瞬間、◾︎◾︎◾︎が机をバンと叩き、怒鳴り声をあげる。
「……本当に、ごめん。
お母様もお父様も消えて……、少し頭に血が上っていたよ。」
そんなんじゃない。いつも口は自分が思ってることと反対のことを言う。
「お前が……!!お前が死んだら、もうどうにもならないのに……、、」
「……ここじゃなんだ。◾︎◾︎◾︎。島の地下に空間があるだろう?そこに繋げて欲しい。」
「……いいよ。」
拗ねたようにそういうと、島の地下にある部屋に5人は出現する。
「僕も、今封印やらなんやらを使って生きてるだけだから、手短に話すね。」
「んな聞いてられるか!!」
「◾︎◾︎◾︎なら、わかるでしょ。
……続けるね。◾︎◾︎◾︎、頼みがある。」
「……それは駄目だ。」
「あはは、流石◾︎◾︎◾︎。よく直ぐにわかったね。予め話しておいて正解だったよ。
……僕のお母様とお父様が“自ら封印された”理由を考えたんだ。……これ以上いる?」
「ちっ……、はぁ、わかったよ。やる。
やる……が、お前はそれでいいのか?」
「…………いいよ。」
「んだその間は。」
「いや、これだと白恵と次の僕に負担がかかるな……って。」
「はぁぁぁぁぁ……、結局お前は死ぬまでお人好しかよ。偽善者め。そういうところ本当に嫌いだ。」
そう言いながら◾︎◾︎◾︎は僕に手をかざし、アビリティ、コピーを発動させる。
数秒後、僕の隣に幼稚園児くらいの頃の僕が出現する。
「ふ……、なんだかんだ◾︎◾︎◾︎は甘かったよね……」
「……誰のせいだか。」
呆れたようにため息を着く◾︎◾︎◾︎。
「◾︎◾︎◾︎。」
おいでとも言うように手を伸ばす僕。
「……、◾︎◾︎。」
涙を大量に流したせいか、顔はぐちゃぐちゃになっている◾︎◾︎◾︎。その手の下に入ると、僕は彼女の頭を撫でる。
「ごめんね、◾︎◾︎◾︎。結局、君が忠告した通りになっちゃった……、ごめん、本当に……示しがつかないよ。」
「……もういいの。謝らないで。
私はずっと、そのままの◾︎◾︎が好きだから。」
これは伝えるべきだろうか。
彼女の左目にはいつも傷がある。
時々、この世を見ていないような目をする。
ぼーっとしているわけでもなく、ただただ恐怖を感じている目。それだけはわからなかった。
いや、違うか。この3人のことも分からないことが多かった。他の人間とは違って何かがあった。そう、何かが。僕にはそれが何なのかは結局ここまで分からなかったけど……。
「ありがとう、、◾︎◾︎◾︎。
次、エリム。」
「もう少し、私たちを頼ってくれても良かったのにね?」
圧をかけるように見下す。
「ひぃ……、ほ、本当に申し訳ないです……」
もちろん彼女の言うことは冗談と分かっている。
「はぁ、どうして“歴代の”澄川家は自己犠牲の精神が高いんだか……。はい。終わり。」
「あはは……、じゃあ、最後……かな?」
「…………いい。」
後ろを向きながら言う声は微かに震えている。罪悪感で押しつぶされそうだ。
「ごめん……。本当に。」
「思ってんのか?」
急に前を向くと、僕の方に近寄る。
「変わんないねぇ、◾︎◾︎◾︎は。
……ワガママなところが良いとこでも、悪いとこでもあるよ。」
「はぁ?!最後の最期俺への文句かよ」
「あっはは!冗談だよ冗談。
……押し付けるようで悪いけど、狩人は白恵が成長するまで◾︎◾︎◾︎が持つことになる。
それと、新しい僕は今の僕じゃないからね。くれぐれも、……勘違いしないように。
……性格こそ似てるかもしれないけれど、人の違いって歩んできた人生、経験によるからさ。別人だと思う。」
「あぁ……そういうことか。分かった。
お前も、もうちょっと仕事してからでも、良かったんじゃない?」
いじるように◾︎◾︎◾︎がニヤニヤしながら聞く。
「酷!!澄川家でも働いてた方だよ?!」
「ははっ、もうすぐ死ぬやつとは思えない元気さだな。」
どこか寂しげに◾︎◾︎◾︎は言う。
「……、あと、僕の死体はここに置いてて欲しい。次の……僕のために。次の僕が、少しでも何かを思い出せるように。あ、いや、その……、記憶が無いから思い出すも何も無いかもしれないけど……ほら、運命の奇跡とか言うじゃん、?、そ、それはさておき、次の僕は街に置いて、普通の生活を送らせてほしい。そうすることによって、、きっと次の僕は狩人の希望となる。」
「ロマンチストだな。そんくらいやってやる。」
「ふふっ……ありがとう。じゃあ、僕は最後の仕事をしなくっちゃ。」
僕は遠隔で扉を閉じ、固く“封印”する。
「……、俺たちは異世界から出るってことだな?」
◾︎◾︎◾︎が確認のためにそう問いかける。もうあまり話せないかな、頷くだけにしておこう。
「さて……、短い時間だったけど、ありがとう。◾︎◾︎◾︎……よろしくね。」
それだけを言い残すと、僕は眠りにつくように瞳を閉じる。
「ちっ……、……何も、出来なかった……!!」
それまで押えていた怒りがとうとう抑えきれなくなったのか、壁に拳をうちつけ悔しがるようにそう言う。
その隣で子供が泣きわめくように◾︎◾︎◾︎が号泣している。




