連載第2回:相互フォローが作るこの世界の舞台
宇宙という巨大なキャンバスに、第1回でお話しした「エネルギーの材料」がぶちまけられたとして、次に必要なのは何でしょうか?
それは、私たちが存在するための「場所」です。
あなたが今、椅子に座っている。窓の外に遠くの山が見える。
当たり前のように感じているこの「距離」や「広がり」というもの。実は、これこそが宇宙で最も不思議な仕掛けなのです。
空間は「空っぽの箱」じゃない
多くの人は、宇宙を「最初からそこにある大きな箱」だと思っています。その箱の中に、星や人間という中身が入っているのだと。
けれど、最先端の物理学がたどり着いた結論は、その真逆でした。
空間は、中身がつながることで後から生まれてくるものだったのです。
「つながり」が「距離」を生む。――これだけでは少し難しいかもしれません。
そこで、私がこの理論を知ったときに「なるほど!」と膝を打った、ある身近なイメージをお話しします。
【宇宙は巨大なSNSネットワーク】
想像してみてください。世界中に、まだ誰とも繋がっていないスマホを持っている人たちがバラバラに存在しているとします。
この段階では、彼らの間に「社会」や「コミュニティ」という広がり(空間)は存在しません。ただ、個別の「点」が浮いているだけです。
ところが、彼らが相互フォローし、メッセージをやり取りし始めたらどうでしょう?
そこに目に見えない「つながりの網目」が生まれます。
仲の良い親友とは、情報のやり取りが激しいので「近く」に感じます。
ほとんど関わりのない知らない人は「遠く」に感じます。
実は、この宇宙の「空間」も、これと全く同じ仕組みでできているという説が有力です。
物理学では、この粒子同士の相互フォロー状態を「量子もつれ(エンタングルメント)」と呼びます。
【「距離」の正体は「仲の良さ」】
私たちが「ここからあそこまで1メートルある」と感じるその距離の正体。それは、実は「その二点間にどれだけ情報のつながり(量子もつれ)があるか」という密度の問題なのです。
情報のつながりが濃い場所は「近く」なり、薄い場所は「遠く」なる。
もし、宇宙からこの「つながり」をすべて削除してしまったら?
それは、世界中のスマホからネットワーク回線をすべて引き抜くようなものです。
どれだけ物質が存在していても、誰とも繋がれず、どこへも行けない。「広がり」そのものが消滅して、宇宙という舞台は一瞬で崩壊してしまいます。
私たちが当たり前のように歩いているこの3次元の世界は、無数の粒子たちが必死に「相互フォロー」し合って作り上げている、壮大な情報のメッシュ(網目)なのです。
【私の視点:見えない「絆」が世界を支えている】
いかがでしょうか。私はこの「量子もつれが空間を作る」という話を聞いたとき、鳥肌が立ちました。
私たちが普段、「あの人とは距離があるな」とか「心の距離が近い」なんて言葉を口にしますが、それは単なる比喩ではなく、宇宙の根本的な仕組みそのものなのかもしれない、と感じたからです。
超弦理論が教える「ひもの振動」が、お互いに共鳴し、フォローし合うことで、初めて私たちが生きていくための「舞台」が編み上げられる。
だとしたら、私たちが誰かと繋がりたいと願う気持ちも、この宇宙のネットワークを維持するための大切な「エネルギー」の一つだとは考えられないでしょうか。
あなたは、ふとした瞬間に「見えないつながり」を感じたことはありませんか?
目の前の空間が、ただの空っぽな隙間ではなく、濃密な情報のやり取りで満たされている。そう想像すると、孤独という言葉の意味さえも、少し変わってくるような気がするのです。
(第3回「投影された影」へつづく)




