表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

nachuring story・・・0007 そして交差点

週末の午後。


東三郎は目印に指定されたカフェの前に立っていた。街路樹が影を落とす交差点、車の音、そして心臓のコドウが、優雅にまじりあう・・・。


 真理子には「散歩してくる」と告げてきた。




通話のあと、何度も会うか会わないか迷った。自分の中の未断を、置き去りにすることが、自分を前進させない壁になるきがした。


 ガラス越しに店内を覗くと、美佐子はすでに座っていた。紺のワンピース。髪は肩で跳ね、視線はカップの紅茶の縁に落ちていた。

店内に入り、美佐子の肩にそっと触れると彼女は顔をあげて、微笑んだ。


 「元気そうで、よかった」

 「思ったより、元気です、催眠の効果かも・・・」

東三郎は冗談ぽく言ったが、美佐子の顔は、くもった・・・。


 「ごめんなさい、催眠術を使わせてしまったのは私なのに・・・」

 「違う、、、俺が勝手に好きになって勝手に行動しただけだから」

紅茶の湯気が二人を見守っていた。


 仕事や音楽の話を交わした後、美佐子が小箱を差し出した。


 「あなたが送ってくれた花束のリボンをずっとしまっておいたの」

箱の中には白いリボンが入っていた。

 「このままで終わりたくなくて、でも"新しい始まり"が創れるとも思えなくて、リボンを返したかったの」


小箱を見つめながら東三郎が言った。

 「じゃぁ、これは『お別れのしるし』?」

 「違うわ・・・ありがとうの"しるし"、ダメかな・・・」


♢♢♦


その時、店の外から誰かが店内を覗ていた。東三郎がふと気づき、視線を向けるとそこにいたのは真理子だった。

 手に紫陽花の包み、そしてまっすぐの視線は、東三郎と美佐子を見ていた。


時間がとまったようだった。真理子は微笑みかけたけど、目が笑っていなかった。


真理子は軽く頭を下げそのまま歩道を渡って行った。


 「追わなくていいの?」

 「でも・・・」

 「大切な人なんでしょー?」

その言葉は思ったより深く心に響いた。


 「彼女ね、私よりずっとあなたの"今"を見ているわよ」

東三郎は窓の外を見た。


真理子の後姿は小さくなっていた。

 

 「じゃ、行ってくる、俺」


美佐子は大きく頷いた。

 「行ってらっしゃい」

とても澄んだ声の贈り物だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ