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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

たまる

作者: 歪杢木の枝

 ネズミが脳漿をぶち撒けて死んでいた。

 よほど高い所から落とされたのか、恐らく人が同じ様に落ちたとしてもこうなるのではないかと想像出来てしまう様な綺麗なぶち撒け方だった。

 脳漿のぶち撒けオブ・ザ・イヤーがあったのなら文句なく上位に入るだろう。

 あまりにも綺麗な死に様に私は30センチはありそうな巨大な体躯に詰まっていたであろう脳はチュッパチャプス程度でしかないんだな、と少し見入ってしまった。

「うわ……!?」

「うぉっ!?」

 という向かいから歩いてくる通行人カップルの悲鳴にハッとする。

 人が二人、通れるかどうかの狭い歩道の真ん中で巨大なネズミがまだ多分に赤みの残る綺麗な脳漿をぶち撒けて死んでいるのだ。

 彼等の反応の方が正しい。

 そしてこのまま歩みを進めれば間違いなくそのネズミの死体を挟んでどちらがどう避けて進むかの選択を迫られる事は明白だ。

 改めて確認するが我々が使える範囲はネズミの死体のせいで狭まっている。

 向こうは未だネズミの死体に釘付けだ。

 ならばと私は足を止め、彼等が死体を避けて余りあるスペースを確保した。

 特に交通量もない二車線の道路。

 ガードレールもない歩道なのだから一歩二歩と車道に出ればすむ話だというのに、我々はその歩道から降りるという行動を頑なにとろうとはしなかった。

 まるでそんな選択肢など頭から抜け落ちているかの様に。

 誓って言うが我々はそのネズミを殺してはいない。

 犯鳥もしくは犯人を探して上を見やるもそのマンションのベランダには何の影も痕跡も無かった。

 ただ死を連想させるには少なすぎる血と脳漿を垂らしたネズミの死体がそこに在るだけだった。

 程なくしてカップルが死体から目を切り、私の横を通る。

 私もその後は立ち止まる事なく彼の死体をあとにした。

 次にすれ違った婆さんがどんな反応をするのか気になって少し歩いた後、振り返ったが声一つあげる事なく素通りしてるのを見て興味が失せた。

 あれだけ綺麗だと思った死体は1週間後に通ったら跡形もなく消えていた。

 特に何も思わず私は歩道の真ん中を歩いた。

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