素直な捻くれ者
小学生の頃の話。
運動が得意だった彼女は、ある日のかけっこで二位になった。
「二位だから悔しくないよ」と周りに言っていたその笑顔を覚えている。
その日の帰り道、他の誰にも見せないように泣いていたことも。
高校生の頃の話。
一番仲の良かった相手と他愛もないことで喧嘩をしてしまった帰り道。
「あんなやつもう知らない、清々した」と言っていた怒り顔を覚えている。
その日からしばらく塞ぎ込んだことも。仲直りした日に泣きながら笑っていたことも。
社会人になってしばらくした頃の話。
「結婚しよう」と言ったら泣いていたのを覚えている。
「お互いにいい歳だから仕方なく」受けてくれた君の顔が、とても嬉しそうだったことも。
子どもたちが独り立ちしてからしばらくした今日の話。
「いま幸せ?」と尋ねてみたら、君は笑顔で、いつものように素直に捻くれた答えをくれた。
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