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元悪役令嬢、毒を以て毒を制する  作者: セピア色にゃんこ
第1章 悪役令嬢、家出する
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リナの決断

王宮地下の調査を終え、リナたちは地上へと戻った。

地下から噴き出す瘴気の記憶がまだ生々しく脳裏に焼き付いている。


護衛とエリオットは王への報告に向かい、リナとサイラス、ローレンツは控室で状況を整理することになった。

控室に着くと、リナは椅子に腰を下ろし、サイラスは地図を広げながら冷静に語り始めた。


「光魔力の痕跡を確認できた以上、封印を破壊しようとしている何者かの意図が明白だ。だが、その人物が誰なのかまでは特定できていない。」


「光魔法の使い手……。」


ローレンツが眉をひそめながら口を開く。


「私が調べてみます。王宮でこれだけの術を行える人物は限られているはずですから。」


「頼む。」


サイラスが短く返すと、ローレンツは立ち上がり、静かに控室を後にした。



ローレンツが去ると、部屋に静寂が訪れた。

リナはじっと考え込んでいたが、やがて視線を上げ、サイラスに向かって話しかけた。


「地下で見た術式……あれはアルベルト家に伝わる古い封印の形式に似ていました。」


サイラスはリナをじっと見つめた。


「つまり、アルベルト家の知識が必要ということか?」


「ええ……でも。」


リナの声は小さく震えていた。

追放された身でありながら、あの家に戻ることへの不安が彼女を縛っている。


「リナ。」


サイラスが静かにリナの名を呼んだ。


その声には、彼女の不安を包み込むような温かさがあった。


「君が柱の封印を修復したいと思うなら、過去のしがらみを乗り越える必要がある。」


彼の言葉に、リナは目を伏せた。


確かに、アルベルト家の知識がなければ、柱の封印を修復する術は見つからないだろう。


だが、自分を追放した父の元に戻ることへの恐れが、胸を締め付けていた。


サイラスはそっとリナの肩に手を置いた。


「でも、どんな選択でも君を支える。それだけは覚えておいてくれ。」


リナは顔を上げ、サイラスの瞳を見つめた。


彼の言葉には迷いがなく、そのまっすぐな視線がリナの心に灯をともした。


「……ありがとう、サイラス。」


リナは小さく息を吐き、決意を込めて頷いた。


「わたし、父に会いに行きます。」


その声にはもう迷いはなかった。


サイラスもまた微笑み、静かに答えた。


「一緒に行こう。」



翌日、リナとサイラスを乗せた馬車がアルベルト家の敷地に到着した。


リナは一瞬息を呑む。


見上げる屋敷は、昔と変わらぬ壮麗さを保っていたが、彼女にとっては遠い過去の象徴でもあった。


「リナ。」


サイラスがそっと声をかける。


リナは深呼吸をし、意を決して馬車を降りた。


広大な庭を歩き、玄関に向かうと、扉がゆっくりと開いた。


そこに立っていたのは、冷ややかな表情を浮かべた彼女の父、レオンだった。


「……追放された身で、何の用だ?」


低い声がリナの耳に届く。


父の厳しい視線に一瞬たじろぎそうになるが、彼女は震える手を握りしめ、顔を上げた。


「お父様、柱の封印が危険な状態にあります。アルベルト家の協力がどうしても必要です。」


レオンはリナをじっと見つめたまま、腕を組んで答えた。


「協力? 追放された娘のためにか?」


レオンの冷たい声がリナの耳に響く中、もう一台の馬車が到着し扉が静かに開いた。


「レオン。意地を張るのもいい加減になさい。」


そこに立っていたのは、威厳と気品を漂わせたヴィクトリアだった。

その言葉にレオンの目が一瞬大きく開き、リナは驚きの声を上げた。


「お婆様!」


ヴィクトリアは優雅にリナに目を向け、微笑を浮かべる。


「よく戻ってきたわね、リナ。あなたの決断を褒めてあげたいわ。」


「母上……どうしてこちらへ?」


レオンが困惑した声を漏らすと、ヴィクトリアは彼の言葉をさらりと受け流した。


「可愛い孫娘とアルベルト家の危機に、田舎に引きこもってるわけにはいかないでしょう。」


彼女は優雅に進み、リナのそばに立つと、その肩に手を置いた。


「この子は帰るべき時に帰ってきた。それを認めなさい、レオン。」


ヴィクトリアの視線が鋭くレオンを射抜く。


「アルベルト家が代々受け継いできた闇魔法の知識は、この子のような者によって守られるべきものよ。それとも、あなた一人で全てを背負うつもり?」


「……それは。」


レオンは言葉を詰まらせ、目を伏せた。


彼女の言葉が、彼の心の奥底に刺さったのだろう。


ヴィクトリアはさらに一歩進み、彼に厳しい声で続けた。


「リナはアルベルト家を救おうとしているのよ。それを理解しなさい。」


レオンはしばらく沈黙していたが、やがてゆっくりと顔を上げた。


その瞳には、かつて娘を追放した時には見せなかった迷いや苦悩が浮かんでいた。


「……分かった。」


彼は低い声でそう呟くと、リナに目を向けた。


「ただし、本気でこの危機を乗り越える覚悟があるなら、その覚悟を証明してもらう。」


リナは深く息を吸い、力強く頷いた。


「はい、お父様。私はアルベルト家を救うために全力を尽くします。」


ヴィクトリアは満足そうに微笑むと、リナの肩を軽く叩いた。


「それでいいわ。これで、話が前に進むわね。」


そして、鋭い目でレオンを見やる。


「レオン、あなたも覚悟を決めなさい。この家と、この子の未来を守るために。」


レオンは重く頷き、扉を開いた。

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