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元悪役令嬢、毒を以て毒を制する  作者: セピア色にゃんこ
第1章 悪役令嬢、家出する
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グランディールからの使者

朝日が差し込む部屋の中、リナは鏡の前に立ち、ミリアの手によってグランディール王国の正装を着せられていた。


白を基調とした優美な衣装は、繊細な刺繍が施され、裾にかけて銀糸が織り込まれている。


リナは肩にかけられた白いショールを手で整えながら、少し戸惑ったように呟いた。


「本当に、これでいいんでしょうか……?」


ミリアは満足げに頷きながら、リナの背後から姿勢を正して答えた。


「大丈夫よ。グランディールの女性が正装として着るものだから、これ以上ふさわしい服はないわ。」


「でも、こんな立派な服を着るなんて久しぶりで……少し緊張します。」


リナが気恥ずかしそうに笑うと、ミリアは優しく微笑んだ。


「緊張するのは当然よ。でも、サイラスが一緒でしょ?彼ならちゃんと支えてくれるわ。」


その言葉に、リナは鏡越しにそっと頷いた。


「……そうですね。」


ミリアはリナの背中を軽く叩き、笑顔で言った。


「さ、行ってらっしゃい。あなたは十分に美しいし、その服がきっと力をくれるわ。」



一方、サイラスは別室で黒を基調としたグランディールの王族の正装に袖を通していた。


襟元には銀色の装飾があしらわれ、肩には王家の象徴である紋章が刺繍されているマントが掛けられている。


彼は手袋を整えながら、ふと窓の外に目をやった。


(リナ、大丈夫だろうか……。)


そんな考えが頭をよぎったが、すぐに口元を引き締め、気を取り直した。


控え室で二人が再会すると、サイラスは目を見張った。


白い衣装に身を包んだリナは、どこか凛とした雰囲気をまとい、美しく輝いていた。


リナもまた、王族らしい威厳を漂わせたサイラスの姿に一瞬言葉を失う。


「……サイラス、素敵です。」


リナが小さな声で言うと、サイラスは微笑みながら返した。


「お前も、似合ってる。まるで、グランディールの国の姫みたいだ。」


その言葉に、リナの頬が少し赤く染まった。


「そんな、そんなことありません……。」


「本当のことだよ。行こう、リナ。」


サイラスが差し出した手にリナは戸惑いながらもそっと手を重ねた。



王宮への潜入当日、リナとサイラス、そして途中で合流したローレンツは王宮へと足を運んだ。


馬車の中は静かな緊張感に包まれていた。


リナは膝の上で自分の手をそっと握りしめ、心の中で自分に言い聞かせるように深呼吸を繰り返していた。


ローレンツは対面の席で書簡を広げ、王宮地下に関する伝承を確認している。


サイラスが窓越しに景色を眺めていた顔を彼女に向けた。


「リナ。」


その静かな声に、リナははっとして顔を上げた。


「王宮に入ったら、何が起こるか分からない。予想外のこともあるだろう。だが、お前が危険な目に遭うことだけは絶対にさせない。俺が守る。」


サイラスの言葉に、リナは胸の奥が温かくなるのを感じた。


「ありがとうございます、サイラス。私も、私にできる限りのことをします。」


リナは力強く頷いた。その表情には覚悟が宿り、どんな困難が待ち受けていても向き合うという意思が滲んでいた。


「まったく、若い二人のやりとりは微笑ましいものだな。」


ローレンツが茶化すように言いながら、眼鏡越しにリナを見た。


「でも、サイラス殿下の言葉通り、王宮の地下は危険な場所だ。心してかかることだな。」


「はい、ローレンツさん。」


リナが少し緊張した笑顔を浮かべると、ローレンツは満足げに頷いた。



馬車が王宮の門前に到着すると、立派な石造りの門が二人を迎えた。


壮大な庭園が広がり、その向こうに豪華な建物がそびえ立っている。


サイラスは静かに馬車を降り、門兵に近づいた。


「サイラス・エルヴィス・グランディールです。陛下にお目通りの許可をいただいています。」


門兵たちは書簡を確認し、すぐに敬礼をして門を開けた。


ローレンツもまた、研究者らしい落ち着いた振る舞いでサイラスの横を歩いていた。


王宮の中に入ると、その華やかさにリナは思わず圧倒されそうになった。


だが今のリナは、かつてのルナフィーネ・アルベルトではない。その名前を捨て、新たな人生を歩む冒険者リナだ。



しばらくして、謁見の間へと案内された三人は、広々とした部屋に足を踏み入れた。

奥に玉座があり、国王が威厳ある姿で座っている。その周囲には側近たちが控えていた。


サイラスが一歩前に出て深々と頭を下げる。


「サイラス・エルヴィス・グランディール、謁見に参りました。」


国王の低く響く声が広間にこだました。


「サイラス殿、よく来られた。」


リナとローレンツはサイラスの一歩後ろで深く頭を下げる。


国王の視線が一瞬リナに向けられたが、すぐにローレンツに移った。


「ローレンツ殿、我が息子が在学中にそなたの世話になったようだな。」


ローレンツは静かに一歩進み出て、深々と頭を下げた。


「そのようなお言葉を頂き、光栄に存じます。王子殿下は優れた生徒でいらっしゃいました。」


ローレンツの落ち着いた声が広間に響くと、国王はわずかに頷いた。


「そうか。そなたの知識が今も王国のために役立っていると聞いている。これからも頼りにしているぞ。」


「畏まりました。」


ローレンツが再び頭を下げると、国王の視線がサイラスに戻った。


「して、サイラス殿。ルミナス王国を訪れた理由を聞こう。」


サイラスは落ち着いた口調で答えた。


「陛下、この度の訪問は、国際協力の一環として行わせていただいております。辺境の地における瘴気の広がり、並びに魔獣の発生原因について調査を行っております。」


その言葉に、側近たちがざわめき始めた。国王は手を軽く上げてその声を静めると、サイラスを見据えた。


「瘴気と魔獣の発生……。確かに問題となっている。だが、その調査に王宮地下の封印がどう関わるのか、説明してもらおう。」


サイラスは一瞬だけリナに視線を送り、それから再び国王に向き直った。


「王宮地下に存在する封印の柱が、瘴気や魔獣発生の原因に何らかの関係を持つ可能性がございます。そのため、柱の調査を行う許可を賜りたく存じます。」


国王の眉がわずかに動いた。


「封印の柱……。確かに古き時代から存在すると伝えられているが、それに手を触れることが許される者は少ない。」


国王の声に静かな圧力が込められていたが、サイラスは冷静さを崩さず続けた。


「もちろん、柱に手を触れることは一切いたしません。ただ、その周囲に残る魔力の痕跡を調べさせていただければと思います。」


国王は少しの間黙り込んだ後、重々しく口を開いた。


「よかろう。ただし、王立研究所の魔術師と王宮騎士団の一部が同行する。そなたたちだけでは地下への立ち入りを許可するわけにはいかぬ。」


サイラスはすぐに頭を下げた。


「陛下のご配慮に感謝いたします。」


リナとローレンツもそれに倣い、深く頭を下げた。

グランディール王国からの使者

挿絵(By みてみん)

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