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元悪役令嬢、毒を以て毒を制する  作者: セピア色にゃんこ
第1章 悪役令嬢、家出する
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リナの初めてのパーティ戦



サイラスからパーティへの加入を誘われた日から、リナの心は揺れ動いていた。


「どうしよう……。」


一人の冒険者としてCクラスに昇格し、ギルドからの信頼を得られるようになったのは嬉しい。だが、これまでは常に単独行動で依頼をこなしてきた。誰かとチームを組むことなど考えたこともなかった。


(私みたいな新人が、あんなすごい人たちのパーティに入るなんて……大丈夫なのかな。)


サイラスはSクラスの冒険者で、単独で高難易度の依頼をいくつもこなしている実力者。ミリアはサポート魔法に秀でたAクラス冒険者で、カイエンもまた攻撃力に優れたAクラスの戦士だ。そんな彼らと肩を並べるなんて、自分には無理だと思えてならなかった。


それでも、サイラスたちの真剣な誘いに応えたかった。彼らはリナを必要としてくれていると信じてくれていた。それなら――自分も一歩踏み出してみよう。


ダンジョン挑戦の日


パーティへの加入を決めたリナは、初めてサイラスたちと共にダンジョンへ挑むことになった。そこは、かつてサイラスたちが全滅しかけたほど危険な場所だった。


「今回はリナがいてくれるから大丈夫だ。俺たちで絶対に攻略する。」


サイラスの言葉に励まされながら、リナは装備を確認し、必要な回復薬や解毒剤を準備した。自分にできることを最大限やるしかない――そう決意を胸に、ダンジョンの入口を踏みしめた。


ダンジョンでの連携


ダンジョンの中は薄暗く、足元には罠が仕掛けられている。さらに、あちこちから突然モンスターが現れ、チームを襲ってきた。


サイラスが前衛に立ち、冷静にモンスターの動きを見極める。その隣でカイエンが強力な一撃を繰り出し、瞬時にモンスターを倒していく。ミリアは回復魔法で二人を支え、魔法で罠を解除していく。


リナは少し後ろに位置し、彼らの動きに合わせてポーションや解毒剤を準備していた。必要に応じてアイテムを投げ渡しながら、状況を的確に判断してサポートを続ける。


「こっちを頼む、リナ!」

「了解!」


サイラスの指示が飛び、リナは迷いなく動く。それぞれが自分の役割を全うし、連携が自然に取れていることにリナは驚いた。


(すごい……何も言わなくても、みんながどう動くべきか分かってる。私もその一員になれてるのかな……?)


一方で、不安も募る。リナは時折、動きが遅れてしまう自分に苛立ちを感じていた。


(私、足を引っ張ってるかもしれない……。)


リナの力が発揮される瞬間


ダンジョンの奥深くで、強力なモンスターとの戦闘が始まった。サイラスとカイエンが前線で攻撃を仕掛けるが、モンスターは毒を放つ能力を持っており、二人は徐々に状態異常に陥っていった。


「ミリア、回復を!」

「間に合わない……!」


その緊迫した瞬間、リナが素早く調合した解毒剤を取り出し、サイラスとカイエンに投げ渡した。


「これを飲んでください!」


二人がそれを飲み干すと、即座に毒の影響が薄れ、動きが復活した。リナの解毒剤は他の冒険者が持つものよりも格段に効き目が強く、そのおかげで戦況は再びパーティに有利な方向へと傾いた。


ミッションクリアとリナの気づき


強力なモンスターを倒し、パーティはダンジョンの最奥にある宝を手に入れることができた。数か月前には攻略できなかったこのダンジョンを、今回は見事にクリアすることができた。


「リナ、本当に助かった。お前の解毒剤がなかったら、今回も危なかったよ。」

サイラスが満足げに笑いながら言う。


「でも……私、もっと早く動けたら良かったのに……。」

リナは肩を落とし、申し訳なさそうに呟く。


「いや、そんなことはない。お前のおかげで俺たちはここまで来られた。自分の力をもっと信じろ。」

サイラスの真剣な言葉に、リナは驚いたように顔を上げた。


「リナのポーションや解毒剤は、普通のものよりずっと効き目があるのよ。今回それがどれだけ助けになったか、自分でも分かるでしょう?」

ミリアも優しく微笑む。


「……私、ちゃんと役に立ててたんだ。」


リナはようやく、自分の存在がこのパーティにとって重要であることを実感した。そして、自分の力をもっと信じてみようと思えるようになった。


新たな一歩


帰り道、カイエンがリナに声をかけた。


「お前、初めてのパーティ戦にしちゃ上出来だったな。まあ、まだまだ磨くべきところはあるが……これからだな。」


その言葉には警戒心が薄らいだ温かさがあった。リナは小さく笑い、静かに頷いた。


「はい。これからもっと頑張ります。」


リナにとって初めてのパーティ戦は、不安と発見の連続だった。それでも、彼女は確実に一歩前に進むことができたのだ。このパーティの一員として、そして冒険者として――リナの新たな挑戦が始まろうとしていた。


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