リナの初めてのパーティ戦
サイラスからパーティへの加入を誘われた日から、リナの心は揺れ動いていた。
「どうしよう……。」
一人の冒険者としてCクラスに昇格し、ギルドからの信頼を得られるようになったのは嬉しい。だが、これまでは常に単独行動で依頼をこなしてきた。誰かとチームを組むことなど考えたこともなかった。
(私みたいな新人が、あんなすごい人たちのパーティに入るなんて……大丈夫なのかな。)
サイラスはSクラスの冒険者で、単独で高難易度の依頼をいくつもこなしている実力者。ミリアはサポート魔法に秀でたAクラス冒険者で、カイエンもまた攻撃力に優れたAクラスの戦士だ。そんな彼らと肩を並べるなんて、自分には無理だと思えてならなかった。
それでも、サイラスたちの真剣な誘いに応えたかった。彼らはリナを必要としてくれていると信じてくれていた。それなら――自分も一歩踏み出してみよう。
ダンジョン挑戦の日
パーティへの加入を決めたリナは、初めてサイラスたちと共にダンジョンへ挑むことになった。そこは、かつてサイラスたちが全滅しかけたほど危険な場所だった。
「今回はリナがいてくれるから大丈夫だ。俺たちで絶対に攻略する。」
サイラスの言葉に励まされながら、リナは装備を確認し、必要な回復薬や解毒剤を準備した。自分にできることを最大限やるしかない――そう決意を胸に、ダンジョンの入口を踏みしめた。
ダンジョンでの連携
ダンジョンの中は薄暗く、足元には罠が仕掛けられている。さらに、あちこちから突然モンスターが現れ、チームを襲ってきた。
サイラスが前衛に立ち、冷静にモンスターの動きを見極める。その隣でカイエンが強力な一撃を繰り出し、瞬時にモンスターを倒していく。ミリアは回復魔法で二人を支え、魔法で罠を解除していく。
リナは少し後ろに位置し、彼らの動きに合わせてポーションや解毒剤を準備していた。必要に応じてアイテムを投げ渡しながら、状況を的確に判断してサポートを続ける。
「こっちを頼む、リナ!」
「了解!」
サイラスの指示が飛び、リナは迷いなく動く。それぞれが自分の役割を全うし、連携が自然に取れていることにリナは驚いた。
(すごい……何も言わなくても、みんながどう動くべきか分かってる。私もその一員になれてるのかな……?)
一方で、不安も募る。リナは時折、動きが遅れてしまう自分に苛立ちを感じていた。
(私、足を引っ張ってるかもしれない……。)
リナの力が発揮される瞬間
ダンジョンの奥深くで、強力なモンスターとの戦闘が始まった。サイラスとカイエンが前線で攻撃を仕掛けるが、モンスターは毒を放つ能力を持っており、二人は徐々に状態異常に陥っていった。
「ミリア、回復を!」
「間に合わない……!」
その緊迫した瞬間、リナが素早く調合した解毒剤を取り出し、サイラスとカイエンに投げ渡した。
「これを飲んでください!」
二人がそれを飲み干すと、即座に毒の影響が薄れ、動きが復活した。リナの解毒剤は他の冒険者が持つものよりも格段に効き目が強く、そのおかげで戦況は再びパーティに有利な方向へと傾いた。
ミッションクリアとリナの気づき
強力なモンスターを倒し、パーティはダンジョンの最奥にある宝を手に入れることができた。数か月前には攻略できなかったこのダンジョンを、今回は見事にクリアすることができた。
「リナ、本当に助かった。お前の解毒剤がなかったら、今回も危なかったよ。」
サイラスが満足げに笑いながら言う。
「でも……私、もっと早く動けたら良かったのに……。」
リナは肩を落とし、申し訳なさそうに呟く。
「いや、そんなことはない。お前のおかげで俺たちはここまで来られた。自分の力をもっと信じろ。」
サイラスの真剣な言葉に、リナは驚いたように顔を上げた。
「リナのポーションや解毒剤は、普通のものよりずっと効き目があるのよ。今回それがどれだけ助けになったか、自分でも分かるでしょう?」
ミリアも優しく微笑む。
「……私、ちゃんと役に立ててたんだ。」
リナはようやく、自分の存在がこのパーティにとって重要であることを実感した。そして、自分の力をもっと信じてみようと思えるようになった。
新たな一歩
帰り道、カイエンがリナに声をかけた。
「お前、初めてのパーティ戦にしちゃ上出来だったな。まあ、まだまだ磨くべきところはあるが……これからだな。」
その言葉には警戒心が薄らいだ温かさがあった。リナは小さく笑い、静かに頷いた。
「はい。これからもっと頑張ります。」
リナにとって初めてのパーティ戦は、不安と発見の連続だった。それでも、彼女は確実に一歩前に進むことができたのだ。このパーティの一員として、そして冒険者として――リナの新たな挑戦が始まろうとしていた。




