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元悪役令嬢、毒を以て毒を制する  作者: セピア色にゃんこ
第1章 悪役令嬢、家出する
13/53

光苔草の採取依頼

以下に、エピソード13をアドバイスを基に書き直しました。Webtoon化を意識し、視覚的描写やキャラクターの感情を強調しています。


---


### **エピソード13:光苔草の試練**


朝日が窓から柔らかく差し込み、部屋の中を暖かく照らしている。

カイが膝の上で丸くなり、規則正しい寝息を立てていた。私は彼の毛並みをそっと撫でながら、昨日の銀葉草採取のことを思い返していた。


「冒険者としての第一歩か……。」


小さく呟くと、胸の中で少しずつ何かが膨らんでいく感覚がする。けれど、同時にこれから挑戦する新しい依頼への不安もあった。


「おい、ルナフィーネ! また考え込んでいるのか?」


突然の声に驚いて顔を上げると、そこにはサイラスが立っていた。

扉の向こうから彼が顔を覗かせ、手には一枚の紙を持っている。


「何か……あったんですか?」


「これさ、新しい依頼だよ。ちょうど君にぴったりだと思ってね。」


そう言って彼が渡してきた紙には、「光苔草採取」の文字が書かれていた。


「光苔草……ですか?」


その名前を見て、私は思わず声を漏らした。

光苔草――それは、暗闇で微かな光を放つ苔であり、傷の治療や毒消しに使われる希少な素材だった。


「ほら、この依頼書に書いてある場所、そんなに深いダンジョンじゃないんだ。難易度的にも君にちょうどいいと思うよ。」


サイラスの言葉に、私は少し考え込んだ。前回の採取依頼は成功したが、今回はダンジョン――未知の場所に足を踏み入れる必要がある。それがどれほどの挑戦になるか、私には想像もつかなかった。


「やらなければいけない理由でもあるんですか?」


そう尋ねると、彼は真剣な表情になり、少しだけ目を細めた。


「冒険者として生きるなら、避けては通れないんだ。最初の一歩を踏み出した君なら、次に進めるはずだよ。」


その言葉に、私は小さく頷いた。



ダンジョンの入り口に到着すると、そこは木々に囲まれたひっそりとした場所だった。

光がほとんど差し込まず、湿った空気が漂っている。足元には苔が広がり、微かに光るものも見えるが、それは光苔草ではなさそうだった。


「さて、準備はいい?」


サイラスが振り返りながら問いかける。

私は用意してきた小さな採取道具と薬草袋を確認し、静かに頷いた。


「行きましょう。」



ダンジョンの中は薄暗く、空気がひんやりとしていた。

壁には時折、小さな光を放つ苔が点々と生えており、それが唯一の明かりとなっていた。

サイラスが先頭を歩き、私はその後ろに続く。


「光苔草は、このダンジョンの奥にあるよ。湿気が多くて暗い場所が好きだから、見逃さないようにね。」


「分かりました。」


私は注意深く足元を見ながら歩いた。湿った地面には滑りやすい苔が生えており、慎重に進まなければ危険だと感じた。



しばらく進むと、微かな光が私の目に留まった。


「あれは……!」


壁際に、他の苔とは明らかに違う光を放つものが見えた。


「それだよ、光苔草!」


サイラスが嬉しそうに声を上げる。

私はその場所に近づき、そっと観察した。小さな緑の苔が、薄い青白い光を放っている。その光は、どこか穏やかで優しい雰囲気を纏っていた。


「すごい……本当に光ってるんですね。」


「綺麗だろ? でも慎重に採らないと傷つけちゃうからね。」


彼のアドバイスを受け、私は丁寧に手を伸ばした。小さなナイフで苔を少しずつ削ぎ取り、用意した布袋に収める。


壁際に生える光苔草をひとつずつ摘み取る中、ふと足元がぬるりと滑る感触がした。


「っ……!」


驚いて後ろに飛び退くと、そこにはぷるぷると揺れるスライムがいた。


「出たな。」


サイラスが剣を抜き、私の前に立つ。


「スライム……!」

「動きが遅いし、中の核を狙えば一発で倒せるんだ。任せて。」


サイラスが剣を構えたその瞬間、私は道具袋から小瓶を取り出した。


「待ってください。」


彼が一瞬振り返る。


「これを試してみます。」


瓶の中には、毒薬――ただし、致死性ではなく、生物の動きを鈍らせるものだ。


スライムの柔らかい体に液体を振りかけると、ぷるぷると震えたあと、動きが徐々に鈍くなった。


「効いてるみたいだな。」


サイラスが笑みを浮かべる。


「これなら核を狙いやすくなるはずです。」


私はナイフを構え、スライムの中心にある核に狙いを定めた。

心臓が鼓動を打つ音が耳に響く。


「はぁっ!」


ナイフを一気に突き立てると、スライムの体が崩れ、核だけが残った。


「やった……!」


手元に転がる核を見つめながら、小さく息をついた。


「お見事。毒薬の扱いが上手いね。さすが。」


サイラスの言葉に少し照れながらも、私は毒薬を戻し、再び光苔草の採取に戻った。



採取を終えた私は、深く息をついた。


「やったね、これで依頼完了だ。」


サイラスが笑顔で言う。私はその言葉に少し安堵した。


「こんな場所に自分が来られるなんて……少し信じられません。」


「そう? でも君ならこれからもっとすごい場所にも行けるよ。」


彼の軽い言葉にはどこか本気が感じられた。



ダンジョンの出口に向かう途中、サイラスがふと足を止めた。


「ねえ、ルナフィーネ。」


「はい?」


「次の依頼、君がやりたいものを選んでみるといいよ。」


その言葉に、私は少しだけ驚いた。

冒険者としての選択肢が私の手に委ねられる。これが、私が今まで選ぶことができなかった「自由」なのだと思った。


「……分かりました。考えてみます。」


静かに答えると、彼は満足げに頷いた。



ギルドに戻ると、職員が笑顔で迎えてくれた。


「光苔草の採取、お疲れ様でした! 無事に完了ですね。」


渡した苔を確認し、職員は満足そうに頷く。


「これで次の依頼も問題なく受けられますね。」


そして私は、未来への一歩を再び踏み出す決意を固めた。

この依頼、ルナフィーネにぴったりだ!と思い

ギルドの掲示板からひっぺがしてきちゃったサイラス

あとでギルドの受付のお姉さんに怒られたそうです

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