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元悪役令嬢、毒を以て毒を制する  作者: セピア色にゃんこ
第1章 悪役令嬢、家出する
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いざ、冒険ギルドへ!

「さて、今日は街に行くぞ。」


唐突にそう言ったマティア婆さんの言葉に、私は驚いて顔を上げた。

「街……ですか?」


「そうじゃ。買い物があるし、お前さんも少し外の空気を吸った方が良かろう。」


私はその提案に少し戸惑った。今までこの森の中で穏やかな日々を過ごしてきたが、街という言葉には少しだけ不安を感じていた。

けれど、マティア婆さんが私を見つめる目は真剣だった。


「行かない理由でもあるのか?」


その言葉に反論の余地もなく、私は静かに頷いた。



馬車に揺られること小一時間、街の広場に到着した。

見慣れない活気あふれる景色に、私は目を奪われた。


広場にはたくさんの人が行き交い、商人たちが声を張り上げて商品を売り込んでいる。

屋台からは香ばしい匂いが漂い、子どもたちの笑い声が響いていた。

久しぶりに見る賑やかな光景に、私は少し圧倒されていた。


「ほれ、遅れるぞ。」

前を行くマティア婆さんの声で我に返り、私は急いで彼女の後を追った。


「ここじゃ。」


彼女が立ち止まったのは、木製の看板が掲げられた建物の前だった。

そこには「冒険者ギルド」と大きく書かれている。


「えっ……!」


私は思わず立ち止まる。

ギルド――それは、私にとって未知の世界だった。


「悩むなら、一歩踏み出してみるんじゃ。」


マティア婆さんはそう言うと、私の背中を軽く押した。

「行きなさい。」


「ま、待ってください!」


私が慌てて声を上げる間もなく、扉が開かれた。



ギルドの中は予想以上に賑やかだった。

壁には数えきれない依頼書が貼られ、冒険者たちがカウンターで熱心に話し込んでいる。

笑い声や、時には小さな口論も聞こえる。


「……ここが、ギルド……」


初めて目にする光景に圧倒されていると、見覚えのある背中が目に入った。


「あれ、ルナフィーネさんじゃないですか?」


振り返ったのはサイラスだった。

彼の軽い笑顔を見た瞬間、私は少し緊張がほぐれた。


「ギルドに用事でも? もしかして登録?」

「えっ、いや……その……。」


動揺して言葉を探している私に、マティア婆さんが背後から声をかける。

「ほれ、詳しいことはあんたから教えてやるがええ。」


「えっ、僕が? そういう感じですか。」


サイラスは困惑したような表情を浮かべながらも、私をカウンターへと連れて行った。



ギルド登録には保証人が必要だと説明され、私は少し戸惑った。

けれど、隣にいたマティア婆さんとサイラスは、すぐにそれを引き受けてくれた。


「この子は薬草の知識が豊富で、森の中でもしっかり動ける。」

「僕も保証します。この前だって冷静に解毒剤を作ってくれたくらいですから。」


二人の言葉に後押しされ、登録手続きはスムーズに進んだ。


「これで登録は完了です。ただし、初回の活動として試験を兼ねた採取依頼がありますが、いかがでしょう?」


職員がそう提案すると、私は少し緊張しながら頷いた。

「採取依頼ですか?」


「はい。近くの森に『銀葉草』という薬草が自生しています。それを一定量集めてきていただければ、正式に登録が完了します。」


「銀葉草……」


薬の調合に使われる薬草だということは知っていたが、自分で採取した経験はなかった。

それでも、初めての挑戦に対して不安よりも期待の方が大きかった。


「ルナフィーネさんなら余裕ですよ。僕も付き合いますから。」


サイラスの言葉に後押しされるように、私は静かに頷いた。



その日の午後、私はサイラスとともに森へ向かった。


「銀葉草って、どんな場所に生えているんですか?」

「湿気の多い場所だね。あと、銀色っぽく光る葉っぱだから、意外と分かりやすいよ。」


森の中は静かで、木々の間からわずかに差し込む光が幻想的だった。

足元には落ち葉が敷き詰められ、湿った土の匂いが鼻をくすぐる。


「注意すべきモンスターは?」

「んー、小さい毒虫がいるくらいかな。でも君なら解毒剤もあるし大丈夫でしょ?」


彼の軽快な口調に少し戸惑いながらも、私は彼の後をついて歩いた。


「この辺りに銀葉草があるはずだよ。」


彼の言葉に頷き、私は目を凝らして銀色に輝く葉を探し始めた。

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