表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/11

空の色は


民宿で一泊した後、

次の場所へ向かう途中で老婆に声を掛けられたの。

少しだけ時間に余裕があった私は天気の話をした。

ただ、それだけ。



ある晴れた昼さがり、

そこにはぽつんと縁側に座っている老婆の姿があった。

誰かを待ってるかのようなそんな雰囲気だった。

『お嬢ちゃん私暇なの、良かったらお茶菓子もあるからお相手してくれないかしら?』


多少時間に余裕があった私は老婆の誘いを受け隣に腰掛けた。


『あなたちゃんと寝てるの?顔色良くないわよ』

老婆は心配そうな顔で覗き込んできたけど顔を横に背けた。


『寝てます、でも夢の中で出会うのは殺した奴らだけなの。

殺され足りないのかしら...

もし夢の中で愛した人が出てくれるなら私は永遠に眠っていたいのに』


『面白い事を言う子ね、

人間どうしても話が通じない相手がいる。

話し合いで解決するなら戦争なんて起きないからね、

そういう人間とは関わらないのが一番なのよ』

老婆はお茶をすすり空を見上げた。


『そうね...』

ふと自分の手を見た。

血だらけ傷だらけになった手、

次は何に手を染めるんだろう...

苦いお茶をすすり空を見上げた。


『お婆さんも苦い過去があったのね』


『そうね、後悔しかしてないよ。

私は時間の使い方がとても下手だったのかもしれない。

色々なものを失くしてから気付いて繰り返して...

今ある時間を大切にね、無駄にしてはいけないよ』

老婆はもう何も入っていない湯呑みをすすり空を見上げた。


『この気持ちを曇らせたまま燻っていたくはないの、時間の無駄にはなるけど復讐すると気分は晴れるわ』




『...あれ、さっきまで何の話をしてたかしら?』

キョトンとする老婆の顔を見て私は空を見上げた。




『そうね、空が綺麗ですねって話をしてたとこよ』




老婆は欠けた湯呑みを使っていた。

『お婆さん、あそこにあるトンボの絵が描いてある湯呑みは使わないの?』

『亡くした人の物だから私は使わないの。

でもまた会える、何故だかそんな気がするの』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ