桜の散る頃に
これが私怨に走り何人もの人間を殺してきた私の末路。
『あなたも私みたいになりたいかしら?』
もしそうでないなら人なんて恨まないことね
真顔のまま神岡は後退りする私との距離を詰めゆっくりと迫ってきた。
『...怖かったよね、ごめんね』
『嫌...やめて...』
そして神岡は刃物を構える私を気にすることなく優しく抱きしめ、その腹部に刃物をめり込ませていく。
やめようにも体が固まって刃物から手が離せない...
次第に刃物から血が伝わり私と彼のセーターを赤く染めていく。
恐怖、ただ恐怖でしかなかった。
逃げ出したいのに恐怖のあまり身動きがとれない。
神岡は抱きしめたまま唇を重ねてきた。
震え固まる私の口の中に苦いタバコの味がひろがっていく。
『できるなら一緒に死にたいけど僕は由乃を傷つける事はできないから、
愛した人の手で死ねるならこれほど幸せな事はない、
僕の死に様をよく目に焼き付けて覚えてくれ、
そうすれば僕は君の心の中でずっと一緒でいられるんだ、愛してるよ由乃...』
そう話すと神岡は静かに膝をつきそのまま息絶えた。
...これが神岡の本懐だったのだろう。
『...』
頭の中が真っ白だ...
神岡の考えなんて知りたくもないし考えたくもない。
でも、
その気持ちが痛いほど分かってしまう自分が悔しかった。
歪極まりない愛かもしれない、
でも本当に愛して大切にしてくれたのだと感じる。
私自身も愛してる人に先立たれたり、今後別れてしまうのではと将来の不安を感じるくらいなら幸せな今のうちに愛した人と一緒に死にたい、愛した人の手で自分の人生に幕を終えられたならばそれは私の中ではハッピーエンドでどんなに幸せな事だろうと思った事があるからだ。
『ほんと、似た者同士ね...うぅっ...』
雪の降る夜、外の強い風が窓を揺らし
私は白いセーターを赤く染めたまま咽せび泣いた。
後日、神岡のスマホを確認するとサブ垢を含め49ものアカウントを使い誹謗中傷を繰り返していた。
ほんとどうしようもない奴...
そして数ヶ月の時が経ち
『苦い...何度口にしても慣れないわ』
大嫌いなタバコにも手を染めた、そして咽せる...
苦い過去をごまかせそうな気がしたから。
頬に涙がつたう。
勘違いしないで、煙で目が染みただけ...
線香のように立ち昇る白い煙を見送ると白い花弁が落ちてきた。
ふと見上げて
微笑んだ。
『...桜、綺麗ね』
=完=
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...いずれ私も裁かれる日がくるだろう。
私は自白するかのように今迄の事を小説に綴った。
そう、あなたが今読んだ小説だよ。
このはらわたの奥底にあるドス黒い感情を留める事ができずどうしても吐き出したかったのだ。
...君が誹謗中傷してる事は知ってるよ。
『次はあなたよ、まっててね』
それが嫌ならもう憎まないことね...
最後まで見届けてくれた皆様には感謝の言葉しかありません、ありがとうございました♪
稚拙な文章を綴りながらも無事最後まで続ける事ができたのは皆様のおかげです‼︎
改めて小説を綴る奥深さや難しさ、
そして楽しさを学ぶ事ができました♪