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革命前夜


月明りがわずかに差し込む地下牢の中、王女は満足気にほほ笑み、時代がうねる音に耳を澄ます。彼女の黒髪は地下牢の闇に溶け、アメジスト色の瞳が月明かりに照らし出されている。


地下にまで伝わる人々のうごめく気配。街の空気が新たな時代を迎えようと震えている。

民の胸には新たな時代への希望と、強い光がつくる影への不安が宿っているのだろう。大きくうねり始めた時代は誰にも止められない。新たな時代を叫んだ革命家も、それに続く民も、止まることはできない。


ーーーわたくしの役目は果たし切った。


地下牢に閉じ込められている王女、アレクサンドラ・ヴィヨレの名は悪政をしいた王族の一人として歴史の片隅に刻まれる。悪政に苦しめられた民によって、王族は長きにわたって君臨した王座から引きずりおろされた。王である彼女の父は革命家たちの手が届く直前に自ら毒杯をあおり、その命を絶っている。王族に名を連ねていた彼女の同胞たちもとうにこの世の者ではなかった。アレクサンドラが最期の王族だ。


かつて国の頂点に立ち豪勢な生活をしていたアレクサンドラにとって薄汚い地下牢に入ってることは絶望的な状況であるはずだが、彼女の表情には絶望の欠片もなかった。


アレクサンドラは民のためではなく己のために、国を、時代を終わらせた。

すべてを失ってなお、彼女は満足していた。


ーーーさあ、解放を、自由を歌いましょう。


美しい歌声が優しく地下牢に響く。それは海辺で子どもたちが自由を夢見て歌う童謡。

アレクサンドラ・ヴィヨラはここで終わる。




日が昇れば最後の王族の処刑の時間がくる。

美しき幕引きを嘆き悲しむ者たちの声は王女に届いていない。


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