武器屋へ向かう。
食酒所の清算は番号の書かれた木札を清算カウンターへ持っていき、そこで代金を支払うようだった。
「アキラ様、私がまとめて支払ってきますので、小銅貨3枚いただけますか?」
「はい。お願いします」
マレインに小銅貨3枚を渡した。手持ちはあと中銅貨3枚と小銅貨が2枚ほどだ。
マレインはゆったりとした動作で支払いに行った。
「支払ってきました。ではギルドに向かいましょう」
食酒所をでてギルドに入る。今日は昨日よりも暖炉の火が少し弱い。
確かに昨日が雪の日だったとは思えないくらい気温が暖かいのだ。
受付カウンターには昨日と同じでフマルがいる。
明らかに暇そうだった昨日よりは少しシャンとしていた。
「マレインとアキラ様、これから武器屋と家具屋へ行くんですよね?」
「ええ、そうです。ついでにアキラ様が服屋へ寄りたいそうです」
「わかりました。ではこれで箪笥を買ってきてください。あ、アキラ様は服を買うお金って持って出てきましたか?」
そういえば服屋へ行くつもりではなかったから持ち合わせが足りないかもしれない。
マレインは斜め掛けのカバンを受け取っていた。
「上着と小銭が入る腰か首から下げられる感じの紐が着いた袋が欲しいと思うんですけど・・・」
「えーと多分その2つで中銅貨5枚くらいですかね」
「ちょっと足りないかもしれないので部屋へ取りに行ってきます」
「いえ、面倒ですしとりあえずギルドのほうで建て替えておきますので。お金はマレインに渡しておきます」
フマルはカウンターの奥から革袋を追加でマレインに渡す。
とりあえず建て替えて置いてくれるらしい。
それほど親切にされるほど勇者候補は信用に値するものなのか俺にはわからないが。
「では2人ともいってらっしゃい」
「行ってきます」
マレインと連れ立ってギルドを出る、俺にはすべての場所がわからないのでマレインについて行くしかないのだが。
外は相変わらず曇りだ。
未舗装の土の道をマレインについて歩いて武器屋へ向かっている。
行き交う人はまばらで昼間の街なのに活気があるか、と言われれば微妙かもしれない。
まれに獣の耳と尻尾の生えた獣人と思わしき人もいるが。
そこは異世界らしい、気にしているのは俺くらいのようだ。
「マレインさん、この辺りの活気はいつもこのくらいなんですか?」
「そうですね、この区画に普段用がある人はそう多くはないので。大体は冒険者の方とかお役所に用がある人でしょうか」
「あと俺のいた世界にはいなかったのですが、ここでは獣の耳が生えた人たちも普通の人と同じなんですか?」
「同じ、というのがどのようなことを指すのかわかりませんが見た目が違う以上の変わりはありませんよ」
おおらかな世界なんだろう、この異世界には見た目や種族の差別もないらしい。