普通の家族
「人? これ誰の目を借りてるのにゃ?」
「あ~、それは別のところのやつをカメラっていう人の目の代わりになるものでこっちに映してる。誰かが見たものをここに映しているっていうのはあってるかな」
「他の場所のをここに映してるにゃ?」
「そうだよ。遠い場所の出来事をここで見られる。そして覚えきれないものは残してもおける」
俺もテレビについて詳しく話せと言われても無理だ。
「こっちも同じにゃ?」
「そっちは勝手に流れるんじゃなくて、自分から探す用かな。まあテレビの使い方だけ教えるよ」
クロにテレビのリモコンの使い方を教えてやる。
「この番号のところを押せば流れているのが変わるから、面白いと思ったのを見てればいいよ」
「わかったにゃ」
クロを俺のゲーミングチェアへ座らせてやる。
「あんまり近くで見ると目が疲れるから。後ろに頭を付けて見な」
テレビへかじりついていたので注意してやる。
肩もすごい力が入っているようだ。
あとで揉んでやろう。
俺はスマホで買うものを考える。
俺が買いにくいものは母親に頼もう。
妊婦用のものなんかは俺には想像もつかないから。
そうこうしているうちにあっという間に夕方だ。
俺は洗濯物を取り込む、人ごとに畳んで分けていく。
玄関のドアが開いた。
カサカサというビニール袋の音、母親が先に帰ってきたみたいだ。
俺は洗濯物をリビングに持っていくついでに母に話をする。
「母さん、今彼女が来てる。ついでにしばらく泊まると思う。邪魔そうなら近くのホテルでも取るけど」
「何? アキラに彼女? 私もついにおばあちゃん? まさか若いのに家に泊まるなんて。別に
いいよ、お金もったいないでしょ」
「そのことなんだけど、実はもう子供がお腹にいる。あとお金は心配いらないから」
母はポカンと口を開けていた。
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。
「仕事もしてないのに、そんな・・・・・・相手の親御さんは?」
「実はもう天涯孤独らしい」
「そんな子なの・・・・・・あんたもう逃げられないじゃない」
言われた通りだ、俺はもうクロとずっと一緒にいるつもりで連れてきたのだから
「お金は大丈夫ってどういうことなの?」
「実は宝くじが当たって億万長者になってる。あとで通帳は見せるよ。昔からの約束も忘れてないよ」
「作り話がうまくなったね~」
「アキラの言うこと、彼女はホントだぞ。俺は昼飯一緒に食べたから」
「父さんほんとなの?」
部屋へ戻る、クロはテレビに夢中だ。
肩を叩く。
「クロ、母さんが帰ってきたから挨拶してくれ」
「にゃ! アキラ、にゃあの頬っぺたつねるにゃ!」
すべすべぷにぷにの頬をつねってやる。
「これでどうですかアキラさん」
「・・・・・・行くか~」
2人でリビングに戻り、クロを母に挨拶させる。
「子供ができてる、まさかあんた無理やりしてないよね? 蚤の心臓のあんたがそんなことあるわけないか」
「もちろん私からねだったんです。一緒にいたいからって」
話が捏造されていないか? まあいいや。
事実は動かないのだから。
そこで父も帰宅してきた。
リビングに弟以外集まった。
弟は20時くらいに起きてくるはずだから、会うことはないかもしれない。




