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普通の家

 クロに聞く。


「下の部屋にじいちゃんがいるけど今挨拶するか? 夜にはどのみち家族に紹介するけど」

「アキラのおじいさんにゃ? しておこうかにゃ」

「ならついでに一緒にリビングで昼飯にするか」


 買ってきた服のタグを外し、クロを着替えさせる。

 2人でリビングに降りていく。

 リビングに入るとじいちゃんはクロの顔と体を見て少し眉を顰める。


「お前、もう子供ができてるのか?」

「まあ、ちょっとあって。俺の子だそうだから」

「酒も煙草も女もやらないみたいだから心配してたんだが、そうか」

「うん。えっとクロ」

「クロウフォルトです。クロと呼んでください。よろしくお願いします、おじい様」


 ちょっと待て、こいつ普通に喋れるじゃねーか。

 猫被りやがったな猫娘だけに。

 と思ったが貴族出身と言っていたので、昔に矯正されたりでもしたのだろう。

 たぶん俺との喋りかたが素だ。


「よろしくクロちゃん、俺は小河原章一(おがわら しょういち)だよ。外国の娘かな?」

「うん、両親ともに外国人だって。夜の街で酔っ払ってたのを助けたのが出会い。そこからたまに会ってた」

「ふうん、そんな出会いもあるんだね。まるで映画みたいじゃないか」

「まあ今時そんなもんだよ。じゃあ昼ご飯を食べよう」


 クロの耳と尻尾の話にはならない。

 たぶん願いが効いたのだろう。

 クロはよくわからないがニコニコしている。

 冷蔵庫からばらちらしを3つ出してきて箸と一緒に長テーブルに並べる。

 ついでに箱買いしているペットボトルのお茶も3つ。

 うちの食卓は洋室のリビングに普通に座布団へ座って食べる、じいちゃんは椅子だが。


「アキラさん」

 

 クロに呼ばれて目で何か合図された。

 ああ、箸がわからないのか。

 代わりにスプーンを出してやる。


「ありがとうございます、まだこちらの生活に慣れなくて」


 どうやらそういう方向で行くらしい。

 いつまで猫被りがばれないのかは定かではないが、そのうち素で喋り始めるだろう。

 クロはこちらをチラチラ見て様子を伺っている。

 生魚も米も食べたことないよな。

 もっとイージーなものにしてやればよかったか。


「いただきます」


 じいちゃんがそういって蓋を開けて食べ始めるので、俺も蓋を開けて醤油をかけて食べる。

 米を食べるのは久しぶりすぎる。

 クロも同じように蓋を開けて、スプーンですくって口に入れた。

 直後は目をシパシパさせていたが口にあったらしく、どんどん食べている。


「とても美味しいです」

「いつもアキラが買ってきてくれるんだ。こいつの舌と目利きは確かだよ」


 普段そんなことを言われないから少し恥ずかしい。

 ペットボトルのお茶を飲む。

 クロも真似して開けて飲んで、少し眉を顰めたように見えた。

 濃いお茶だからな、苦かったのだろう。

 

 「ごちそうさまでした」


 食べ終わって、食器をシンクに置く。

 あとで洗えばいいだろう。


「部屋に2人でいるから」

「はいよ」


 飲みかけのお茶を持って、クロを連れて部屋へ戻る。

 と、その前に洗濯物を干さなければ。


「クロ、ちょっと待ってくれ」

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