湖へ3。
役所はここから西に少し歩いたところへある。
2人でゆっくり歩いて向かう。
「いらっしゃいませ。御用はなんでしょう?」
受付の女性に聞かれる。
とても整った顔だ、見た目も選考されていそうな感じ。
「えっと、北の門から湖へ行きたいんですけど、発行される木簡がいるって聞きまして」
「お客様2人分ですかね?」
「俺は・・・・・・これで通れるんですよね?」
冒険者カードを見せる。
「ええ。もちろん大丈夫ですよ」
手招きされる。
首を傾げながら近寄る。
こちらの耳に口を寄せ、他に聞こえないくらい小声で、
「新しく来た方ですよね? マレインから聞いております。形式上は検査しますが絶対通しますから」
「助かります」
ニコッと笑顔を向けられる。
ギルドには本当に感謝だ。
「では、そちらの方、あちらで身体検査を受けてもらいます」
「はい・・・・・・」
クロは別の部屋へ連れていかれる。
5分くらいたっただろうか、クロが戻ってくる。
「問題ありませんでした。木簡は中銅貨2枚になります」
クロはカウンターに中銅貨2枚出す。
「はい、いただきます。では、どうぞ」
代わりに木簡を受け取る。
名刺サイズの木簡、名前と使える期間が書いてある。
こんなに簡単だと偽造し放題だな。
「なにか偽造防止ってされてるんですか?」
「いいえ、特にしていませんよ。家族内で使うのもよくあるので」
よほどでなければ作れるっていうのはこのことかな。
「よし、北へ出発しよう」
北門へ向かう。
道中で水とバスケットに入ったサンドイッチを買う。
もしかして外の地図が必要か?
帰ってこられなくなるのは勘弁だぞ。
北門から出る。
門番に冒険者カードを見せ、クロはフードをとって木簡を出す。
クロが止められたりするか?
「・・・・・・通ってよし。行ってらっしゃいませ勇者様方」
「あ~、湖ってすぐですか? 地図なしでも帰ってこられる?」
「全然平気ですよ、小さな子供でもなければ帰ってこられます」
それならいい。
無事に街の外だ。
門の近くには馬を留める厩舎のようなものもある。
目の前には草原が広がっており、少し遠くに水辺が見える。
「♪~~♪~」
鼻歌を歌うクロは上機嫌のようだ。
空気が美味しい。
特段街の空気がよどんでいるわけではないと思うが。
「アキラ~~、め~ちゃくちゃ広いにゃああ~」
まだ門が近いから恥ずかしいんだが。
「あんまり無茶くちゃするなよ。帰る体力残しとけ」
クロは聞こえなくなるくらい前へ行っている。
ついて行くか。
ちょっと走って追い付いて、2人並んで歩く。
「にゃあは獣人にゃから運動したかったにゃ」
「そうなのか」
「にゃあたちだったら先祖は猫って教わるにゃ」
「ふーん、人間ではないんだな」
人間と猫の中間と教わってはないらしい。
見た目は人間よりなんだが。
耳と尻尾以外は特に変わりないし。
「そんにゃのはどうでもいいにゃあ。街の外ってこんにゃににゃにもにゃいんにゃ」
かなり聞き取りづらいが、言わんとしてることはわかる。
「確かに完全に湖まで平原だな」
これなら子供でも帰るのは難しくないのはわかる。
30分くらい歩いただろうか、湖の前に着いた。




